運転してみるとフィーリングの良さに驚かされて惚れ惚れするものの、トヨタのサービス体制やEVへのやる気・理解の無さには腹が立つ一方。
EVシフトに世界が揺れ動く中、乗ったことも無い人にポンコツ呼ばわりされるbz4x。
今回は高速走行時や充電関連の性能をテストするため、もう一度借りてきた。
今回の旅路について
夜の23時にbz4xを名古屋市内のステーションで借り、知多半島の南端まで高速道路を飛ばして電費をテストしてから、休憩がてら充電テストをしつつ下道で帰って朝3時に返却する。
4時間だけサクッと乗る、航続距離の心配のない気軽なテストドライブだぞ。
充電・電費性能・航続距離について
bz4xの実際の航続距離は300~400km程度になると予想される。詳細は後述。
今回の試乗の際に、「20kw級の急速充電器に30分繋ぐ」「高速道路をかっ飛ばす」「90kw級の充電器に繋ぐ」という3つの充電・電費関連のテストを行った。
詳細については以下の記事でまとめている。
まず20kw級に30分繋いだ場合、約40~50kmぶんの航続距離を回復できそうだ。
また高速道路をかっ飛ばした際の電費は4.5km/kWhであった。人によっては3.8km/kWh台の電費になっているものもある。状況ごとの航続距離と公称値との乖離を以下の記事で求めている。
外観と内外装について
外観
個人的にはカッコ良いと思うが、意見は二分されているようだ。
グレードによってリアスポイラーの有無が分かれているが、このグレードでは非搭載。
ヘッドライト周りが外に張り出しすぎではないかと思う。
内装
近未来的な内装で、シフトやナビ、空調などの使い勝手は私の感覚だと全体的に悪くなかった。
エアコンは温度や風量・風向のみが物理ボタンでその他は液晶をタップするものだが、使い勝手は良好だ。
カーオーディオを一時停止したい場合は中央上部の電源マークから。
シフトは押し込んでから右と左に倒すタイプ。Pはボタンでパーキングブレーキも連動する。
パワーウィンドウは普通に操作しようとするとリアを触ってしまう配置となっている。
グローブボックスは無いのだが、センターコンソールは二階建てなので助手席を散らかしがちな私でも車両を綺麗な状態に保ちやすそうである。
シースルーの置くだけ充電スペースにカップホルダー。
カップホルダーは手前すぎて、手首を折り曲げないと取れないのが少し気になる。
センターコンソールボックスはあまり大きくない。
トランク下部には充電ケーブルやアダプタ、三角表示板を入れておくのにちょうどいいスペースがある。フロンクは無いが、これで充分に代用できそうだ。
上位グレードにはパワーテールゲート付き。どうやら閉じた直後にロックする機能も付いているようだ。
メーターについて
新型プリウスでお馴染みとなったメーター・ステアリングだが、ちゃんとポジションを合わせれば一応メーターが隠されることは無い。
しかしドライビングポジションを自動車側から一方的に制限される感じがあり私は好きになれない。
私はドライビングポジションにはマジメかつこだわっているつもりだ。変な姿勢で運転なんかしない。
でもこういうのは好きじゃないなぁ…
ソルテラならフラット形状で見やすさが改善されているらしいが、それはそれでステアリングが綺麗な円形ではなくなってしまうというデメリットがある。
ショボっちいサウンドシステムについて
なお上位グレードのZには9スピーカーのJBLのサウンドシステムが備わるが、ハッキリ言って本質はイマイチ。音量を上げると解像度の低い音が鳴ってしまう。
高速域での遮音性もEVだと考えると高くはない。購入後のデッドニングやスピーカーアップグレードが必要となりそうだ。
600万円、リースなら月10万円も取るクセにこんなところでコストダウンすんなよ…
無視できない話として、シートとセンターコンソールの間のこの隙間に小物が2回落ちた。たった数時間の試乗で。隙間を埋めるクッションは必須だろう。
うっかり財布や駐車場のカード、スマホでも落とすと本当に面倒くさいことになる。
車中泊の適正について
二列目を倒してみたが、頭が二列目の足元に飛び出してしまう。
フラットで変な凹凸も無いため寝心地は悪くないが、少し足を畳んでやる必要があるのが残念。
車内でパソコン仕事が出来る
どうしても試したくて、以下の記事で登場したテスラ用の車内テーブルをbz4xにも持ち込んだ。
結果から言うと大成功であり、左右のアームレストを繋いだ仕事空間が完成した。
電源コンセントも車内に備わっているため、充電中や仮眠中にも仕事をしてお金を稼ぐことが出来る。
実走行インプレッション
前回の記事でも同じことを話したため、ある程度は略し気味に紹介していく。
乗り心地
基本的に良好な乗り心地だ。二列目も異様なほど広いため、全員が快適に移動できるだろう。
タイヤホイールの重さをうまく使っているのか、あんまり大きくはストロークしていないのに揺れが吸収されるためフレームに衝撃が入って来づらい。
断続して段差を超える状況では揺さぶられることもあるが、総じて許容できる範囲だ。
長旅の快適性を考える際に懸念事項となるのがシートとの相性だ。
ポジションの問題もあるだろうが、3~4時間以上乗り続けると腰が痛くなってくる可能性がある。
座面がレザーだとクッションを敷いても滑ってしまうことがあるため、私のようなクッション敷きたい派は注意したいポイントである。
パワートレイン
特にAWDグレードは突き抜けるような加速感を持つ。
他社の爆速EVに乗り慣れてきた私は「まぁこんなもんか」と思ってしまったが、冷静に考えて頭のおかしい加速性能を持つ。
制御できる範囲・人間の意識が保てる範囲に収まってはいるが、グイグイとした加速が続く。
140km/h~160km/hくらいなら普通に守備範囲。
「これこそがEVの魅力だよなぁ」と感じられるような加速がどこまでも続く感覚がある。
エコモードでも何も問題がないレベルで気持ちよく走れる。高速道路をかっ飛ばす状況下でも、エコモードで走って不満が何もなかった。
スバルとの共同開発の恩恵を受けており、Xモードやヒルディセントコントロールを搭載している。
普通に走っている限りは、雪道走行や坂下りでもない限り出番はないだろう。
微妙に新車価格が高いスバル・ソルテラとの差別化でXmode非搭載もあり得た中で、トヨタにもこれが積まれたのは嬉しいポイント。
ハンドリング
ハイドロプレーニングにも異様に強く、まったく姿勢が乱されない。
特にアンダーになることもなく車体がデカく感じたりすることもなく、ワインディングを軽快に流していくことが可能。
加速力と安定があるため過激なオーバーテイクも行けそうである。
しかし車重自体は2トンあるため、大きな回生ブレーキ容量があってもブレーキングには不安が残る。
プロモーション動画では雪道を軽快にドリフトしているが、凍結したダウンヒルの峠の急カーブでどの程度踏ん張れるか、今のところの不安が残る。
試乗車の諸元や価格
車検証の車体番号から確認済みだが、ZグレードのAWDモデルである。
新車価格650万円の最上位グレードだ。
重量と4WDシステムゆえ最も電費が悪いグレードではあるが、高い悪路走破性と加速力を誇る。
Gグレードは一般販売解禁時に価格を下げるため、装備を削ったグレードである。
例によって諸元を書いておこう。
- 車体サイズは4690mmx1860mmx1650
- 車両重量は2010kg(FFは1920kg)
- モーター出力は218PSと338Nm
- FFモデルの出力は203.9Psと266Nm
- バッテリー容量は71.4kWh
- 最小旋回半径は5.6メートル
- ホイールベースは2850mm
なお私が乗った個体は、前後共に20インチのホイールを履いていた。これにより電費性能はさらに悪化している。
充電時の使い勝手や正確な航続距離について
充電について
深夜に急速充電ステーションにやってきた。充電ポートはフロント側だが、個人的にはこれは嫌いだ。
窮屈な場所も多い状況では、バック駐車で入れられた方が絶対に便利である。
アラウンドビューモニターがかなり頼りになり、思っていたよりは車体も大きくないため慣れと丁寧さの問題ではありそうだ。
充電ポートは左フロント。
充電中のUIはクソである。
アップデートでバッテリー残量のパーセント表示こそ追加されたものの、「マイルームモード」という意味不明なモードが入ったり、「電力収支」というなんの役にも立たないモニターが出て来たり。
しかも肝心な「いま何kWhで充電できているか」を教えてもらえないという欠陥もある。
充電器を参照するか、OBD2からデータを取って来るしかないという現状がある。
大雨の中の充電は罰ゲーム気味。充電ステーションに雨よけ・日除けがあったら嬉しいところだ。
正確な航続距離
以下の表は、走行スタイルごとの電費とバッテリー容量から、状況ごとの航続距離を求めたものである。
満タンから0%の下までフルで使い切って300~400km程度となりそうだ。
走行スタイル | 電費 | 航続距離 | 30分回復距離(20Kw) |
公称値の電費 | 7.6km/kWh | 542km | 66.12km |
下道主体でゆったり | 6km/kWh | 428.4km | 52.2km |
高速道路をゆったり | 5.7km/kWh | 406.98km | 49.59km |
高速をカッ飛ばす | 4.5km/kWh | 321.3km | 39.15km |
真冬の高速を飛ばす | 3.79km/kWh | 270.61km | 32.9km |
詳細については以下の記事で説明している。
人には全く勧められない理由
EVとしての基礎能力に欠陥がある
緩和こそされたものの引き続き発動する充電制限やクソみたいなUI、やる気のないトヨタ運営陣。
特に優秀というわけではない電費性能や航続距離。
わざわざ買う理由を見いだせないのだ。
600~700万円もするクセにステータス性がない
600万円あったら何が買えるか考えてみて欲しい。
アルファードも一部のレクサスも新車で買える。中古で良ければベンツのSクラスやBMWの7シリーズだって買える。
誰も欲しがってないためリセールに不安あり
アルファードのような万人が欲しがる車種なら中古価格は下がりづらいだろうが、逆にbz4xなんて誰が買っているのだろうか…
トヨタ系のEVの販売推進の仕事をしている人がとりあえず罰ゲーム気味に買わされているだけではないのだろうか…
今は中古が400万円程度だが、そんな状態でkintoの契約期間が切れだしたらどうなるか。
300万円台に落ちて行くのは時間の問題であるように思う。
競合が優秀すぎる
私はbz4xが好きで欲しいと思っているが、冷静に競合と比較してこんなクルマ選ぶ理由が無い。
テスラでも買っておいた方がよっぽどマシである。
トヨタシェアの使い勝手→運営が無能気味
道中の充電について
車載のe-mobility-powerの充電カードで急速充電が可能だ。
充電代は無料。
しかしEVSmartさんのとある動画にて、充電カードの期限が切れていて充電ができなくなったというトラブルの事例が発生している。
この場合、自前の充電カードを持っているか、周辺の充電器がその場で使えなけば最悪の場合は電欠。行動不能である。
そうでなくても距離料金を取られているのに充電代も払わなければならなくなる。
キーについて
大抵のカーシェアはキーボックスから車両のキーを取り出すことになっているが、このトヨタシェアはスマホとの通信によってリモートでロック・アンロック・エンジン始動を行う仕組みになっている。
開錠する際はスマホと車両の接続状態を確認した上でアプリから操作する必要があるし、乗り込んだ後も電子認証が完了しないとプッシュスタートが応答しない。
車両を離れる際もいちいちアプリからロックする必要がある。それを忘れるとアプリから警報を鳴らされることも。
返却について
ケーブルを繋いで充電していないと返却が出来ないという仕様になっている。
これ自体は後続の人の充電忘れを防ぐために良いのだが、私が借りたステーションはChademoの90kw級の急速充電器で80%まで充電された状態で引き渡された。
私は早めに帰ってきたため、20分ほどチャデモを繋いでいると80%になって自動停止した。
そのあとにアプリから返却しようとしたら、以下の表示が出て返却が出来ない。
「まぁ時間になれば勝手に終了するだろ」と思っていたら、終了にならない。
コールセンターに電話を掛けて返却済みに処理してもらおうとしたところ、こっちからは対応できないと言われる。
一旦ステーションに戻って電話を掛け直せと言われた。
4kmほど引き返し、合計20分ほど使ってステーションに戻ったところ、充電が終わったbz4xにもう一度チャデモケーブルを挿し、その状態で電話を掛け直して返却処理をしてもらった。
なんでやねん…
充電残量も車両の座標も、コールセンターから確認した上で返却処理ができるんじゃないのか…
最終的にしっかりと無断延長料金を請求された。
2時40分には返し終わったうえに、その時間中に80%まで充電しておいたのに…
トヨタシェアのEV関連のサービス体制のポンコツさ
24時間で3万円もする高級レンタカーで、ネットで使い勝手が酷評されているEVということで、借りる人があまりいなくてディーラーもやる気がないのだろう。
いま申し上げた通り、トヨタを名乗れないレベルの欠陥がシステムに存在している。
そうでなくても、トヨタディーラーの急速充電スタンドはトヨタシェアのbz4xが充電マスを塞いだり繋ぎっぱなしになっていたり、在庫車で塞がれていて充電できない状態になっていたり、運用が酷いところが多い。
(これは急速充電スタンド検索アプリのレビュー欄で、色々なステーションにて確認済み。)
bz4xの使い勝手や不便すぎるバッテリーの充電制限機能を見れば分かる通り、トヨタグループ自体がEVを売る気ないのだ。
それにしてもあのコールセンター…
社内ニートが深夜帯の電話番に追いやられてんのか?
ともかく、トヨタシェアの注意点や不満であった。
でも自分は欲しい理由
フィーリングが良い
航続距離や電費関連の問題を置いておいて運転すると、乗り心地やフィーリングが非常に良いのだ。
開発陣の気持ちが伝わってくるような極限領域まで安心して負い込めるトヨタ譲りの味の良さ。
これだけで他の弱点を「まぁ何とかなるやろ」と思えてしまう
EVの動画はカネになる
私が自分のチャンネルで証明したが、とりあえずEVをdisっておけば結構なカネになるのだ。
毎月10万円払ってリースしても、ここから撮影用の旅費を払っても、ぜんぶプラスになりそうである。
旅の楽しみが増える
充電中に仕事したり観光したり、充電計画を練ったり、「EVはクソ」と書いてくれる人からお金を稼ぐために動画を作ったり。
特にクルマ系YouTuberである私は、仕事として旅が出来るようになる可能性がある。
開発陣と販売店・広報たちは別
さんざん愚痴ってきたが、個人的にはそこまで致命的な欠陥はなさそうだと思っている。
どの自動車メーカーでもそうだが、ディーラーやコールセンターなどの「顔」になるところの人たちと、クルマを実際に開発した人たちは別なのだ。
開発陣が良いものを作ってくれている以上、そこは分けて考えてあげたい。