【VWゴルフ】乗らされる車、置いてかれる人間【ドイツ流のヘタクソ向け】

試乗インプレッション

三井のカーシェアーズ(旧カレコ)にフォルクスワーゲンのゴルフが登場したので早速乗ってきた。

恐ろしいくらいスピードレンジが高い一台である。

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冒頭のまとめ

ドイツ流の究極の「ヘタクソ向け」がここにある。

車から「ぜんぶ私たちがやっておくので、あなたは適当にハンドル切っててくれれば結構です」という寂しい声が聞こえてくる。

ハンドルを切って行っても、深夜のC1を少し飛ばす程度ではロールを収束させることが出来なかった。

タイヤのグリップ限界がやけに高く、ハンドルを切れば切っただけただ曲がる。それだけ。

だがすまし顔で走っていけるスピードレンジが高すぎる。

足回りはまさにドイツ。

しなやかに動いてくれる一方で、余計な揺れや振動を一切入れてこないため快適性や安定性が段違い。

エンジンも非常に優秀で、1Lしかないクセにやけにパワフル。経済性と出力を完璧に両立している。

内装は簡素で寂しいが、性能込みで考えると恐ろしいほどのコストパフォーマンスを誇る。

乗り物を制御したい私は、持ち前の「乗らされてる感」があんまり好きになれないけどね…

試乗車のグレード・スペック・価格について

17インチのホイールを履いていたため、新車価格392万円のeTSIアクティブ プラチナムエディションである可能性がある。ベースグレードは16インチなのだ。

年式はもちろん2024年。卸したての新車である。

最も安いグレードの場合は341万円。昨今の物価高を思えば非常に手ごろである。

装備表を比較してみたところ、上位グレードになるとコーナリングライトが付いたり、エアコンが3ゾーン(フロント左右+リア)で別々に温度調整可能になったり、ヘッズアップディスプレイが標準装備されたり、スマートエントリーが付いたりするようだ。

やはりeTSIアクティブ プラチナムエディションで間違いなさそうである。

というわけで諸元を書いていく。

  • 車体サイズは4295mm x 1790mm x 1475mm
  • 車両重量は1310kg
  • エンジンは1.0Lの直3インタークーラー付きターボ
  • エンジンパワーは110馬力/200Nm
  • モーターは13馬力/62Nm(マイルドハイブリッド付き)
  • ホイールベースは2620mm
  • フロントサスはマクファーソンストラット(スタビ付き)
  • リアサスはトレーリングアーム
  • タイヤサイズは前後とも「225/45R17」

さてゴルフには様々なエンジンがラインナップされている。

1Lの直3ターボが110馬力の200Nm(1310kg)。

1.5Lの直4ターボが150馬力の250Nm(1360kg)。

2.0Lの直4ディーゼルが150馬力の360Nm(1460kg)だ。

これの他に、ガソリンの2L直4ターボで245馬力/370NmのGTIと、320馬力/420NmのゴルフR、333馬力/420NmのゴルフR20yearsも存在する。

外観

モデルチェンジで目が細いシンプルなデザインとなった。

違和感が無い範囲でライトを低い位置に配置したことで、重心が低く見えるようにもなっている。

私は先代の顔つきをカッコ良いと思っていたので、個性が無くなってしまったようで私は寂しい。

外観も内装も、全体的にシンプルと言えば聞こえはいい。

しかし没個性になってしまって所有する満足感が薄れているように思う。

リアデザインは従来型をブラッシュアップしたような形状。

こちらではゴルフらしさが上品に出ている。

ライト内の造形も美しい。

ダストまみれだがタービンのようなデザインのホイールも美しい。

エンジンルーム。グレードによっては2Lの直4ターボも搭載する。

理路整然と収まっている印象を受ける。エアクリーナーボックスがエンジンと同じくらいの横幅を取っているのが新鮮。

もしやと思って最上位グレードのエンジンルームを調べてみると、全く同じエアクリーナーボックスが使われていた。コスト管理のためにパーツを共用していたようだ。

出典:GENROQ

よく見ると左右に配置されている風を取り入れる用のダクトが片方埋められている。

空間にもある程度の余裕が見られるが、日本のノンターボのコンパクトカーほどスカスカというわけではない。

内装

ハッキリ言わせて欲しい。シンプルすぎて寂しいぞ。

開発陣はテスラを意識しているのだろうか、コストダウンのために内装には余計なものが何もない。

人間が取り残されている感をここからも感じてしまう。

さてフル液晶メーターを採用しており、精細度や鮮やかさ、見やすさなどは良好。油温を出せるのも嬉しい。エンジン音は非常に静かである。

私が借りた際の油温は既に57℃。誰かが数時間前まで乗っていたようだが、エンジン始動ボタンを押してもエンジンは始動しなかった。Dレンジに入れて初めてエンジンが掛かる

ボルボのEVのような挙動が取り入れられており、新世代のガソリン車であることを感じさせる。

ルームランプは上品だが、タッチ式となっているため慣れが必要。例の右左に動くスイッチだったら明快だったのだが、まぁ慣れの問題だろう。

メーター内のインフォディスプレイには任意の情報を割り当てられる。

左右で同じメニューとなっているようだ。

メーター右側がライト関連の操作系。全部タッチ式となっている。

物理ボタンよりタッチ式の方がコスト的には抑えられるらしいが、慣れるまで微妙に使いづらい

ステアリングの右側はナビ関連。

左側はクルーズコントロール関連。

右がワイパー。パドルシフトも付いているぞ。

左がウインカーとハイビーム。

ハザード周りにはエアコンや運転支援関連のショートカットボタンがタップ式で配置される。

ここをタップするとナビ画面に対応するメニューが出てくる。

例えば「CLMA」のボタンを押すと空調のメニューが出る。

ナビ画面の下側をタップすることで温度だけは変更できるのだが、これの操作が非常にやりづらい

夜に光ってくれないので見づらく、地面と平行になっており上から置くような形での操作となるのも使い勝手の悪さに拍車をかけている。

T-CROSSの際も愚痴ったが、なぜフォルクスワーゲンのエアコン操作系はこんなにも使い勝手が悪いものが多いのか…

オートエアコンと温度の上げ下げボタンだけで空調を整えられるので、購入を躊躇うほど酷いものではないけど。

温度の隣をタップするとオーディオの音量調整となるようだ。

「ASSIST」のボタンを押すと出てくる画面。

センターコンソールには始動ボタンやシフターが入る。

Pがボタン、下がDとスポーツモード、上がリバースの最も理想的な電子シフト。

左ハンドル用とのコストの兼ね合いなのか、使い物にならないトレイが配置されているのは残念。

ここのスペース、もっと有効活用できるんじゃないか・・・?

日本の軽自動車ならこんなことにはならないだろう。

その下が電動パーキング。もちろんブレーキホールド付きだが、このブレーキホールドはバックギアでも動作してしまうのが非常に気になる。バック駐車中に突然ブレーキホールドが作動するので、気づかなかったら乱暴にアクセルを踏んでからの大事故コースだ。この仕様は無くしたほうが良い。

バックビューモニターの解像度は良好。パーキングソナーのせいで狭くなっているが、他車種と比べると大した問題ではない。

カップホルダーはシュッと出てくるタイプ。

ドアもシンプルなものである。ドイツ車のエントリー系のベースグレードってこんなモンだよねっていう質感。

アンビエントライティングが美しく走っているが素材から高級感はあまり感じない。高価格な車ではないのでどうでもいいんだけど。

なぜか足元の小物入れの中だけ起毛仕上げされている。

これがキー。残念なことにピアノブラックであり、傷だらけになる未来が容易に想像できる。

保護ケースを用意したいものだ。

ETCユニットはどこ?

三井のカーシェアーズでゴルフを借りた人がETCユニットが無い!!とパニクる様子が見て取れる。

ここだ。

グローブボックスの中の上側にある。下から覗き込もう。

分かりづら過ぎるだろ…

実走行インプレッション

取り回しについて

車体サイズは小さく、運転フィールにも変なクセはなく。誰でも乗れるような一台。

乗り心地

タイヤホイールとダンパーの部分で乗り心地の雑味を消しており、車体に衝撃や振動がほとんど入ってこない。

ゴツゴツとした嫌な硬さが出ることもなく、柔らかいこともない。

ある程度のストロークの中で快適性を出しつつ、不安感や疲れにつながるような振動はしっかり打ち消す。

走りの上質さを感じるダンパーだ。

これぞドイツ車だよなぁと感じさせられる走りの世界を300万円台で出して来ることに対して、ただただ脱帽することしかできない。

うねりや飛び上がるような恐怖のセクションでもその手の不安感は一切なく、平然と走り抜けていく。

路面状況を伝えながらドライバーに走行ペースの判定を委ねるクルマが多い中で、狂人的なバカ走りでもしない限り、「実用上のすべての領域はあなたが運転慣れしてなくても私たちが勝手にいなしておきます」という感じ。

ハンドリング

ロールが収束することは実用上全くない。

切ったら切った分だけ、ただクルマが曲がっていく。

スパッと荷重を掛けてロールを収束させる必要はなく、ただ道に合わせてハンドルを切るだけでどこまでもコーナリングしていく。

ターンイン時は前がグイグイ入っていくのだが、強い負荷を与えると前がアウトに逃げていくような安定性優先なアンダーステアとなっているため限界領域でのコントロール性や安全性も高い。

曲がらされてる感があるので個人的には感覚に合わないが、他に乗ったことがないような曲がり心地であった。

ブレーキについては踏み込むと恐ろしいほど止まるが、踏み始めでガツンと来ることはないため非常に快適なオールラウンダー。弱点はダストが大量に出ることくらい。

踏めば踏むほど強い制動力が出てくるタイプ。

踏み初めからドカンと来るような車種が多かった中で、非常に扱いやすく進化している。

従来のドイツ車の純正パッドから乗り換えると、踏み初めの制動力の立ち上がりが弱いので慣れるまで怖いかもしれない。

パワートレイン

踏み始めからしっかりとトルクを出し、かなりの中間トルクでグイグイと加速していく。

その様子には恐ろしささえ覚えるほど。

多段式ATゆえのギクシャクが出る場面はたまにあるが、あまり気にならない。

どちらかと言うとアクセルを踏んでから本来の加速力がで始めるまでのラグが気になってしまった。

スポーツグレードでもないのにこれだけ走ってくれるなら充分すぎる。

燃費と出力を完璧に両立した非常に優秀なエンジンであり、世界一の1リッターエンジンなんじゃないかと思うくらい。

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