私は前回、純ガソリン版のシビックの廉価グレードに乗り、「完璧なクルマだ」と評させて頂いた。
しかし気になったのは、「燃費性能がよろしくない」という弱点であった。
2023年の自動車として、アイドリングストップしか出来ることが無いというのはあまりにも弱いのだ。
…そこで、e:HEVの出番となる。
ホンダ社公式カーシェアサービスである「EveryGo」にて、日本に数台だけラインナップがあるのだ。
東京近郊に二台、大阪に一台、福岡に数台。ゴールデンウィーク中、全期間にわたって借り上げていた人が全国にいたため、手も足も出せず、かれこれ一ヶ月くらい「乗る乗る詐欺」が続いたのは内緒だ。
試乗車のスペックについて
なにを隠そう、最上位の「e:HEV」だ。
新車価格は約394万円のプレミアムカーである。
ちなみに、最廉価のLXで319万円。e:HEVのハイブリッド抜きとでも言おうか、上位のEXは353万円だ。
純ガソリン版ではMTが選択可能であり、実は「走る楽しみ」において違いが見られたので、双方に乗り比べた後の私は、ガソリンのLXグレードを選びたいかもしれない…
さて、グーネットにはモータートルクの記載が無かったため、公式サイトの諸元表からも引用している。また、個人的に純ガソリンモデルと比較したいと思った項目については、丸括弧で記載している。分かりづらかったら申し訳ない。
https://www.honda.co.jp/CIVIC/common/pdf/civic_spec_list.pdf
- サイズは4550×1800×1415mm
- 車両重量は1460kg (LXは1360kg)
- 2リッター直4エンジン+モーター
- エンジンの最大出力は6000回転で141馬力(純ガソリンは6000回転で182馬力)
- エンジンの最大トルクは4500回転で182Nm(純ガソリンは1700~4500回転で240Nm)
- モーターの最大出力は184馬力
- モーターの最大トルクは315Nm
- 燃料はレギュラー(純ガソリンモデルはハイオク)
- 最小旋回半径は5.7メートル
- タイヤサイズは前後とも「235/40ZR18 95Y」
- FFのCVT
- 国土交通省審査値の燃費は24.2km/L(純ガソリンは16.3km/L)
次の段落で説明する通り、エンジンとモーターの両方を加速に使うわけでは無いのだが、315Nmのモータートルクがどう走りを作っていくか。気になるところだ。
e:HEVの動作について
フィットRSのe:HEV版をYouTubeで紹介した際に、エンジンとモーターの動作について疑問が生じたため、公式サイトのイラストを元に簡易的にまとめておく。
「e:HEVのエンジンは発電専用だ」という旨のコメントを頂いておりますが、これは状況によります。
高速クルーズ時はエンジンとタイヤを直結し、ガソリンエンジンのみで駆動することがあるようです。
ただ、「加速時はエンジンは発電専用モーターにのみ接続され、駆動はバッテリーのみで行う」とも記載されております。
つまりベタ踏み時の加速は、車両重量1210kgに対して、最大出力123馬力馬力&最大トルク263Nmのモーターのみで行われているはずです。
CVTハイブリッドと加速感が似ていたため、私自身もよく分かっておりませんでした。
外観について
かなり珍しく、今晩のパートナーは赤色の個体だった。
並べて見比べれば違いはあるだろうが、カタログカラーの青以外の色を単体で見ると、どのグレードなのか区別は付きづらい。
どうでもいい話であるが、最初にラーメン一蘭を目指した。
深夜帯なのにたいへん混み合っており、奥の方に停めることにしたが、良い赤色だ。
深みと黒さがあり、目立とうとしない赤色だ。だが上品さがある。
上位グレードになると、ホイールが僅かにブラックアウトされる。
また、ミラーや各部のメッキ加飾も黒色メインで引き締められる。
純ガソリン同士のグレード差は主に内装の装備において。上位グレードのEXとe:HEVの差は、主にパワートレインにおいて生じているようなイメージだ。
グレード同士の詳細な比較については、別の記事を各自参照して欲しい。
内装について
廉価グレードのLXでも充分に質感は高かったが、それと比較するとあからさまに各部の質感が向上している。
「明確にココが良い」というよりは、各部の素材選びや装備追加により、車内全体が一新されている印象だ。あちこちにソフトパッドが追加されている。
なお、実用上最大の違いは、「ワイヤレス充電パッド」の有無かもしれない。
車内空間は上質そのもので、デザインも機能性も、非常に洗練されている。
ちなみに、シフトチェンジはボタン式だ。パドルは付いているが、回生減速力のコントロールのみ。
タコメーターも無ければ、マニュアル変速モードも無い。
というか、そもそも加速はモーターで行うため、そもそも変速機が存在しない系のパワートレインなのだ。新しいモノに感覚を慣らさなくては…
実走行インプレッション開始
走り出して思うのだが、車体が大きい。
前後に4550ミリ、横幅は1800ミリと普通のサイズではあるのだが、狭いところでは気を遣うサイズ感だ。
ただ、車幅感覚は掴みやすいので慣れの問題だろう。
パワートレインについて
エンジンはほぼ発電専用として動作するハイブリッドということで、静かに滑らかに進んでゆく。
無駄なアイドリングが無く、エンジン音そのものも静かというのは本当に素晴らしいものだ。
e:HEVというハイブリッドシステムは、高速クルージング時を除いて、基本的にエンジンは発電専用として動作するらしい。
トヨタのCVTハイブリッドに慣れていれば「知らないと気づかない」レベルのフィーリングである。普通のハイブリッドカー感覚で、自然に乗ることが出来るだろう。
なお、燃費については、エコドライブに徹すればリッター30は余裕で出せそうだ。
乗り心地
段差を越えた際、ほどよくアシがストロークしてから、揺れを素早く抑え込む。
安定性と快適性のバランスは最高だ。
少し硬めだが不快には感じさせず、重厚感ある乗り物を実現している。
ショックアブソーバーが沈められ、ストロークしていくのを乗っていて感じ取れる。
ドライビングプレジャーについて
ガソリン車版では、この要素こそが「完璧だ」と感じたところだ。
気持ちのよく伸びるエンジンに、ダイレクトなステアフィールが最高だった。
もちろん、e:HEVにおいても同じような気持ちよさがある。
ベタ踏みすれば突き抜けるように速く、乗り物の挙動も安定していて本当の頼もしい。
特に、コーナー出口に向けてアクセルを全開にしていった際、クルマが瞬間移動するかのように脱出していく。気持ちの良い走りだ。
…だが、攻め込んでいったときの挙動の差に「なにか違う」と感じてしまったのだ…
切り初めの動きは良い。フロントタイヤが路面を撫でているのを感じながら、絶妙な重さと共にロールしていく。
そして、一瞬の間をもって収束してから、安定して旋回していく。
しかし、やはりなにかが違うのだ。
それはまるで、前後で動きのバランスが取れていないような感覚だ。
純ガソリンモデルのときは、間違いなく無かった違和感。
明確に違うところと言えば重量だろう。
e:Hevは1460kgだが、LXは1360kg。
バッテリーを車両後部に搭載することにより、重量配分は50:50に近づいている。、
これだけ聞くと、運動性能的にはプラスであるように感じられる。
しかし、ターンインしていく際に前後が別々に動いているような違和感を感じるというか、純ガソリン版で味えたような気持ちよさが無いように感じる。
特に、路面が荒れて跳ねるような区間を飛ばしていくとき、「ひとつの乗り物」としての動作はしていないような感覚だ。
クルマ全体の挙動というかセッティングが、まだ煮詰めきれてない感を味わってしまった。
だが、これはあくまで個人の感想だ。
私だったら、純ガソリンでリーズナブルなLXグレードを選んでしまうかもしれない。
その他
カップホルダーの直径が大きすぎて、小さい缶がガタガタになってしまう。
社外品をなにか用意したほうが良さそうだ。
また、クルマをONにしたまま、スマートキーをポケットに入れたまま、ドアを閉めた際の「ピピピピッ」という警告音が少々うるさい。設定で切ることは出来るのだろうか。
また、クルーズコントロールと操舵支援の動作が俊逸だ。
どれだけ車線をはみ出そうとしても、絶対にレーンをはみ出すことがない。
また、前走車を誤認しやすい右カーブ内あっても、レーンの先を的確に捉える。
メーター中央のシステムモニターもテスラのようだ。長距離ドライブ中もしっかり頼れるだろう。
まとめ
フィットよりも大柄で、カッ飛ばして行った際にも重さが足を引っ張ってしまうが、コスパ良く所有できる「完成されたエコ高級車」といった一台だった。
見惚れてしまうほど美しい外観に、高級感に彩られた内装。リッター30を余裕で叩き出す燃費性能に、突き抜けるような加速感。
どんな用途にも、どんな旅の目的地にも、最高の相棒として寄り添ってくれる一台となりそうだ。
世界が苦し紛れのEVシフトを強制してくる中で、エコで静かで速いシビックe:HEVを買う。
良いじゃないか。
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