EVシフトの渦中で、なにかと騒がれているbz4x。
豊田市のトヨタディーラーで、「dカーシェア」を用いて借りることが出来たので、ネットの与太話の真偽と、このクルマの本当の価値を見定めることにしよう。
また、この記事は、「YouTubeに投稿した動画に再解釈を加えたまとめ直し」である。主に記事内で利用する画像の、画質や明るさに難がある場合がある。必要に応じて、外部サイトからの引用を行うことで補うが、どうかご理解頂きたい。
ちなみに、「bz4x」というなんとも呼びづらい名前の由来は、とある海外ユーチュバーの紹介動画に寄ると、「Beyond Zero 4(four)wheel X(cross)over」だそうだ。
4はセグメントを示すらしい。
bz4xについて騒がれていた問題事項について
1日2回までの充電制限、リコール、テスラとの比較などで、bz4xに関する悪い噂話が飛び交っている。
真偽を検証していたらあまりにも長くなってしまったため、この問題については別記事にて取り扱うことにした。
試乗車のスペックについて
グレード・新車価格について
bz4xには、FFと4WDの、2つのグレードがラインナップされる。
今回の試乗車については、モーター内のシステムモニターから、四輪駆動モデルであることを確認済みだ。
サブスクオンリーであるため、新車価格は明確に存在しないが、kinto内の見積もりページにて、FF版は「106,700円」4WD版は月額「115,500円」であることを確認した。
あまりにも参考にならないため、兄弟車のスバル・ソルテラを持ち出させて頂く。
新車価格は大体600~650万円ほどだと考えるのが良いだろう。
諸々の諸元について
いつもお世話になっているグーネットの諸元ページが空欄だらけであったため、トヨタ自動車公式の、主要諸元表ページから情報をお借りする。
https://toyota.jp/pages/contents/bz4x/001_p_001/4.0/pdf/spec/bz4x_spec_202205.pdf
- サイズは4690x1860x1650mm
- 車両重量は2010kg
- 最小旋回半径は5.6m
- モーターの最大トルクは338Nm(フロント169Nm + リア169Nm)
- 定格出力59.0kWのモーターが前後に搭載される
- 上記のモーターの最大出力は80kWである
- バッテリー容量は71.4 kWh
- 航続距離はEPAサイクルで約482.1km(FFモデルは約499.1km)
- タイヤサイズは前後とも「235/50R20」(参照元サイト)
4WDモデルは前後にモーターが搭載されるが、その出力や規格は、前後で同一であるようだ。最大出力と定格出力の違いやバッテリー容量など、大変ややこしい話が続く。勉强が必要だ。
ここで最大出力を馬力換算してみよう。
109(PS)+109(PS) = 218(PS)
218(PS)を英馬力に変換すると、215(hp)となるようだ。
車重2トンに215馬力と聞くと遅いように感じるが、そんなに遅いわけがない。
間違いなく、体感400馬力近い加速力を持っていた。
外観について
本当に長くなったが、やっとクルマそのものに関する話にはいっていく。
まずは外観についてだが、なかなかにカッコいい。
顔つきはスタイリッシュで、角張ったデザインは、SUVとしての大柄なボディーをクールに見せる。
SUVとしての車体サイズや全高を活かした、良い形をしていると思う。
シャープなフロントの目付きから、空力のために寝かされたリアエンドまで、綺麗に繋がり、SUVとしてバランスが取れている。
内装・車内装備について
画面越しに見てもあまり高級に見えなからか、「安っぽい」という意見がある。
そういうのは実物に触れてから言って頂きたい。
実物に触れてみて、安っぽいとは特に感じなかった。
CX-60と比較すると何とも言えないが、単体で見れば充分に上質で、重厚感のある車内空間だ。
カッチリ感のある内装には「良く造られたクルマに乗っている感」がある。
新型プリウスと同じ方向性のステアリングとメーターはコックピット感が強い。
個人的に良いと思ったのが、空調関連の装備の充実度だ。
温度や風向は物理で変更できることに加え、ステアリングとシートのヒーターに、ベンチレーションや輻射ヒーター が備わる。
まあ輻射ヒーターをONにしてみても、私には何も感じられなかったが。
EVとしての航続距離に影響を与える空調を、可能な限り省エネで賄おうという心遣いを感じる。
また、センターコンソールの中央部には、ワイヤレス充電パッドが備わる。
センターコンソールは二階建てとなっており、下側には小物置きや、USBポートも装備。
EVのSUVであることを活かしている。
車内空間そのものも、なかなかに広く感じる。
シフトノブについては、「P」はボタン。銀色のリングを押し込んで回すことで、DとRを選択する。
右側には、電動パーキングブレーキ・ブレーキホールド・ワンペダル機能。
左側は、360度カメラやトラクションコントロール、スノーモードニエコモードのスイッチだ。
バックギアに入れると、横長のモニターを活かし、かなり見やすいアラウンドビューモニターも表示してくれる。
車体サイズとしては大きい部類に入るが、この手のアシスト装備と、視界の高さのお陰で、運転はしやすい。
ニ列目の居住性も良好だ。ルーフラインは寝ているが、車内空間自体は充分に広い。
興味があったのでトランクも開けてみた。
残念ながら、ここに収納は無い。
カバーもされておらず、EVではあるものの、補機類がミッチリと詰め込まれている。
私の50プリウスで見かけたようなレイアウトとなっており、bz4xがトヨタ車であることと、既存のものを組み合わせて作ったクルマであることを感じさせられた。
トランクの右側にはコンセントもあり、なにかと便利に使えそうだ。これがオプションで選べる車種を検討中なら、ぜったい付けた方がいい。
実走行インプレッションへ
いつもいつも長くなってしまうが、やっと始動だ。
内外装の質感は良かったため、オープニングサウンドを期待してしまったが、流れることはなく残念だった。
とりあえずカーナビを用いて目的地設定を行うが、指をスワイプしての移動もサクサクで、ダークモードも見やすく、使い勝手は良好だ。
5.6メートルの最小旋回半径と4690ミリの前後長と、SUVとしての視点の高さが効いて、取り回しはしやすい。
横幅は1860ミリもあるが、この手のSUVにありがちな「車体の大柄感」もほぼ感じなかった。
乗り心地について
ボディーのほうはあまり動かされず、小さいストロークでコツコツと動く、RAV4のような足回りだ。
アシはあまり動かないが、段差が連続する地帯に入っても身体が揺さぶられることはあまりない。
気になるところがあるとすれば、轍や路面のうねりに引っ張られてしまうことだろうか。
しかし、後述するが、とにかく走行性能が高いのだ。この走りと同時に、これだけの快適性が担保されているのだから、私は良いクルマだと思ったのだ。
総じて乗り心地は良い感じだ。少し硬い感じはあるが、空気圧を下げ、ホイールのインチダウンを検討し、シートにクッションでも敷いておけば、かなり快適に移動することが出来るだろう。
長距離でも快適に移動できそうだ。EVで長距離というと、基本的に充電時間がボトルネックとなるため、その充電時間も楽しめると感じるなら、買っても「裏切られた」とは思わないだろう。
ステアフィール・走行安定性について
トヨタらしく、SUVのネガティブイメージを払拭するほどの動きの良さがある。
バネ下が重いのか、ターンインの瞬間だけ曲がって行きづらいような動きがあるが、いざ旋回させると、ロールはピシっと収束し、フラットな姿勢を維持する。
圧倒的なモータートルクを相まって、SUVであることを忘れさせるほどの、かなりのハイペース走行が可能だ。
パワートレインについて
むちゃくちゃ加速が速い。一般人向けのトヨタのEVとして、許されて良いのか?と思ってしまうレベルで鋭い加速をする。
どういうことか物理的に説明するために、諸元表を再掲する。
- モーターの最大トルクは338Nm(フロント169Nm + リア169Nm)
- 定格出力59.0kWのモーターが前後に搭載される
- 上記のモーターの最大出力は80kWである
- 車両重量は2010kg
4WDは前後にモーターを積み、最大トルク338Nmで2トンの車体を加速させる。
だが、実際に感じた加速力はそんなものではなかった。
低回転域が有利なモーターの特性ゆえ、街乗りのスピード域で、踏み込んだ瞬間にこのトルクが出たんだろう。迂闊なベタ踏みは厳禁だ。
その他
シフトノブ左側のボタンから、アラウンドビューモニターを出すことが可能だ。
横長な画面を活かし、見下ろし地点や、前方を補うカメラなど、様々な視点を用いることが出来る。
ただ、もともとの視認性が良好なので、あまり出番はないかもしれない。
バッテリー残量がほぼ満タンの状態では、回生ブレーキのブーストモードを使うことは出来ない。
ブーストボタンを押すと、ピピっと言って、「回生ブーストを使用できません。取扱説明書を参照してください」という旨のエラーメッセージが表示されるのみだ。
これでは、「バッテリーが満タンだから使えない」のか、「ブーストモードになにかのエラーが起きている」のか、知っていないと判別がつかない。どこかのビッグマイナーチェンジかアップデートで、しれっと変更されていたら嬉しいのだが…
「ハンドルの上端がメーターと被りそうだ」と思うだろう?
そんなことは全くなかった。
シート高やステアリングポジションにもよるだろうが、そんなに心配する必要はない。
ウォッシャー液のノズルについては、ワイパブレード一体型ではなかった。
一気にレーシングカーっぽさを向上させられるパーツであるため、付いていないのは残念だ。
本体設定画面では、単色の背景に文字がズラっと並ぶのだが、正直使い勝手が良いとは言えない。
せっかく画面は大きいのに、上下に細く圧縮してしまって、指の誤爆を誘発する。タイル状に並べたり、字を大きくしたり、もう少しやりようがあったのではないか…
カーナビ内部から、「この範囲だったら行けるよマップ」のようなものを展開することが出来る。
豊田市からなら、ギリギリ東京都にたどり着けないだろう…
そういえば静粛性について、「微妙だ」という意見を聞いたことがあるが、疎い私はあまり気にならなかった。
まとめ
単体で見ればとてもよく作られているが、競合と比べると革新性や商品性が弱い。
そんな特性を持つ一台だった。
アップデートで電池残量の%表示と充電制限については改善されたし、リコールは実施すれば解決する。
多少使い勝手に難があろうとも、のんびり行けば良い。そういう、「お金にも心にも時間がある、中年世代の方々の快適通勤&週末お出かけ車」にうってつけだと感じだ。
私が乗った中でも数少ない、「これ欲しい」と思ったクルマであったが、さすがに本体が高すぎたため、断念してしまった。
私はbz4x、とても良いクルマだと思う。
トヨタシェアやタイムズカーシェアで、借りることも可能だ。
そもそもbz4xというクルマは、「エンジニアたちが、既存の技術の積み重ねで未来のクルマを創作した」感が強く感じられる一台だ。
自動車開発の現場までイメージしながら運転していると、開発陣の想いや営みが随所に感じられる。
日本のモノづくり文化の、ひとつの成果物なのだ。
なにかと言われがちなbz4x。読者さんが少しでも好意的な印象を持ってくれれば幸いだ。
コメント