【30プリウス】経済性とサイズ感がベスト。ドライバビリティも高いが不穏な要素もある【試乗インプレッション】#100台目

試乗インプレッション
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試乗レポートシリーズ100台目は伝説の30プリウスだ。

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冒頭のまとめ

ダッシュボードとボディ形状のせいで感覚は掴みづらいが、コンパクトな車体サイズと優秀な小回り性能で意外と取り回しは良い。

50プリウスと同等の制御を行ってくれるハイブリッドシステムがエコもスポーツもしっかりと支えてくれるため、意外と元気の良い加速をしてくれる。

アシをある程度しっかりと動かしてくれるが、ボディにそこそこの衝撃が入ってくるため乗り心地は並み。

段差を超えた際にハンドルが暴れやすくはなるが、安定性重視のFFらしい信頼感ある動きで深夜の首都高を思い切り走っても安心感がある。

自由自在と呼んでいいレベル。

だが急加速中に段差にゴトンと落ちた際に制御ができなくなりそうなくらい暴れたり、40km/h程度でパワーモードで強くアクセルを踏むと事故りそうなくらいの加速を始めたり、単純にプリウスシフトがわからない人が多くいたりと不穏な要素も多く隠されている。

モーターと空力ボディが活きる優れた環境性能と共に、乗り手にまともさを問いてくる一台。

【30プリウス】万人向けで売るにはクセが強すぎた… #試乗レポート100台目

外観・デザイン

ド定番すぎて今更コメントすることもないといった感じだが、今から振り返ってみると商品としてよくできていたパッケージングだと思う。

空力特性の良さを感じさせるサイドシルエットや葉っぱのような形状のヘッドライト、穏やかな顔つきのまま後ろへと流れていくラインなど、風を味方につけて環境に優しく走る様子を外観からもアピールしている。

この車のデザインに対してカッコ良いと言う人はあまり見かけないが、コンセプトとの調和は高いレベルで実現していたと言えるだろう。

内装

清々しいほどの一面プラスチックにより高級感のカケラも感じられないが、私が借りた個体ははやけに清潔に掃除されたいたためクリーンな面が広がっており車内の居心地は良かった。

運転手を加工用に配置されるセンターコンソールパネルは操作性が非常に良い。

イルミネーションが無いボタンがあるため、借り物として夜間に乗るとどれが何のボタンなのかわからなくなることもある。

助手席のグローブボックスは上下に二階建て。

始動時にはメーター内にプリウスの絵柄が映し出される演出付き。

アクセル開度やエンジン始動状態を見られるアクセル開度メーターやバッテリー容量モニターに瞬間燃費計など、エコカーとして一通りの情報が見られるようになっている。

画面上になにか紙のメモの切れ端が貼ってあるが、レンタカーの運用に関係したものだろう。

燃費履歴が見られる。

エネルギーモニターは走行中にタイヤが回ったり、リアルタイムでエネルギーの流れが表示されたりするアニメーション付き。

2009年登場の200万円台前半のクルマでこのレベルのインフォディスプレイがあれば充分だろう。

二列目の居住性

なんか狭そうなイメージがあったが、実際に二列目に座ってみると意外なほど居住性がよくて驚いた。

スペースも充分にあるため日常的な移動程度なら問題なさそうである。

車中泊適正

シートを倒せばフラットなスペースが出てくるので意外と快適に寝れる。

だが座面は硬いのでマット類は必須。断熱性も弱い。

音響・遮音性

スピーカーが純正である保証がないが、この内装のこの年代のこの価格帯のクルマだとは思えないほど意外にも綺麗に響いてくれる。

低音から高音までしっかりと聴こえるのだ。

窓を開けながらほどほどのペースで高速道路を巡行していても音楽を楽しむことができる。

遮音性は高くないが、スピーカーのロードノイズにも負けない。

肝心の静粛性・遮音性についてだが、商用車のような徹底して遮音材を省いた系のクルマよりはマシ程度。

普通にロードノイズは大きめで、新東名を飛ばしたらしんどいだろうなと予想できる。

何よりも気になったのがザラザラとした綺麗でない路面を走っている際に、音のみならず振動も人間に伝わってきてしまう点だ。

中長距離ドライブのコンフォートをこの車に期待するのはやめておいたほうが良い。

グレード・スペック・価格について

初年度登録2012年のSグレードだ。(車体番号検索により確認済み)。新車価格はおそらく230万円。

今よりも全体的に物価が安いとはいえ、あの総合点の乗り物が250万円程度で買えてしまうとは…

ちなみにグレードはL→S→Gの順番で豪華になっていく。

グレードによってフォグランプやタイヤサイズ、ヘッドライトやステアリング、クルコンなどの装備などに違いが出てくる。

クルコンがあるという点で今から買うならGグレードがオススメ。

https://toyota.jp/pages/contents/prius/003_p_007/pdf/spec/prius_spec_201501.pdf

システム出力は136馬力だとされているが、モーターと1.8LCVTの組み合わせで速度の乗りは非常に良い。

特にパワーモードで低速域から踏み込んだ場合、そのまま暴走事故を起こしかねないような加速をしていく。

30プリウスのPHVモデルについて

phvモデルも存在したが、モーターやエンジンの出力に変更はない。

こちらのバッテリー容量は4.4kwhのみで、あくまで近場のちょっとした用事に使える程度であった。

このバッテリー容量、50プリウスでは8.8kwh、現行の60に至っては13.6kWhまで大幅に増量されている。

〇30プリウスのphvの諸元↓

https://toyota.jp/pages/contents/priusphv/001_p_005/pdf/spec/priusphv_spec_201506.pdf

実走行インプレッション

取り回し

走行中の周辺視界については意外と良いのだが、独特のボディ形状のせいか評判通り乗りづらい。

 サイズ自体が小さく、ハンドルがたくさん回せるので小回り性能は高い。

しかしバンパーに向かって上に盛り上がってくるような丸っこいダッシュボード形状のせいなのか、フロントの感覚は非常に掴みづらい。

足元の視認性もよろしくない。

駐車や狭いところでの取り回しには気を遣いそうだが、小回りとサイズ感自体は良好なので丁寧に操作すればよいだけの話である。

パワートレイン

モーターがしっかりアシストしてくれるため、アクセルを踏み込んでハイブリッドシステムに対して加速命令を出せばかなりの加速力を発揮してくれる。

低速域ではモーターでガンガンに走り、高速域ではエンジンの底力で引っ張る。

そこそこ軽いからなのか100km/hから上のモーターアシストが弱まるであろう領域でも気持ちよく伸びる。たった136馬力とは思えない粘り。

決して速いというほどではないが、30プリウスってこんなに気持ちよく伸び続けるクルマだったのかと少々驚かされた。

合流のために急加速が必要な場面でも全く力不足を感じることは無い。

モーターの力がエコにもスポーツにも活きている。

またハイブリッドシステムの制御もガソリン浪費を抑えることに大いに役立ってくれている。

というか、走行中の制御としては50プリウスとほとんど同じことをしている。

高速道路でもアクセルを抜けばすぐにエンジンを切ってくれるし、回生ブレーキで回収できる領域も広い。

軽さや空力と相まって燃費性能は本当に良さそうだ。

ただノーマルモードでは踏んでから加速するまでかなりの間があるため、クルコンのない本車で高速道路を走行する場合は常時パワーモードを使うことになるだろう。

下道でパワーモードを使うのは非常に危険であるため、ここの切り替えの手間は生じる。

エコモードは右足の修行である。前世でゴミのポイ捨てをした人への罰ゲームモードだろう。

なお停止時のハイブリッドシステムの動作は、やっていることが50プリウスと同じでも荒さが全く違う。

エンジンが始動したり停止するタイミングや、アイドリングストップ中に突然鳴るウイーンという謎の音や振動などは全体的に大きめ。

ゴトゴトと異音が鳴ったり結構大きく音が響いてきたりしておりうるさい。

経年劣化による要素もあるだろうが…

乗り心地

足まわりをしっかりと動かすことで揺れに対応しようとしてくれる。

その後にバンプラバー、というかボディ全体をゴシャッと押し潰すようにしながら揺れを受け止めていく。世代的にも剛性が微妙に足りないボディーだが、それ上手い具合にハマって独自の揺れの吸収がフレームでも行われている印象だ。

そして優しめにふわっと持ち上がるような動きが出る。

まぁだからといって、「乗り心地が良い」とはあまり言えないレベルでもある。

周期的に段差の継ぎ目がある首都高の直線区間を走っていると、継ぎ目のたびに少し飛び上がるような衝撃を受けてしまうため気になる人はいるだろう。

別に悪いというほどではないが、乗り心地に期待して買うようなクルマではない。

スピードを上げて行ってもあまり不安定感は出ない。

ハンドリング

「サイドスリップ調整ちゃんとやってる?」というレベルで左に流される9.6万キロの個体である点が気になる。

ハンドルを回していると、不定期に右フロントからゴトゴトと異音と衝撃が伝わってくる。

事故車を不完全に修理しているのか、アライメント関連が異常なのか…

そもそもの乗り物の安定感は弱いと言わざるを得ない。

センターがフラフラスカスカで、普通のペースで走っていても少し怖い。

ハンドルが段差を超えただけで大きく動いてしまうような恐怖感があるし、ブレーキングからターンインにかけても姿勢が定まっていかない。

ハンドルを切ってもその場でバッタンバッタンと倒れるレベルでロールは大きいし、少しハンドルを回した程度では車が曲がっていかない。ステアリングレシオが遅いという言い方が適正なのだろう。

70km/h台で高速道路を走っていてもハンドルには安定感がない。

コレを買うくらいならTNGA・DNGAプラットフォーム採用の新しい世代のヤリスやタントを買った方がまだ高い安定感を味わえるだろう。

しかし一旦追い込むと評価は変わっていく。

FFらしく安定性最重視な動きで、ロールが収束するというより切ったら切った分だけ入っていくイメージ。

アンダーステアや悪いクセはなく、道に合わせてハンドルを切っていればスムーズに曲がっていってくれる。

旋回しながらアクセルを踏んでもあまり不安定感が出ない。

思った通りのラインで気持ちよく走っていくことが可能だ。

自由自在に舞っていけるような身軽さすら感じる。

スポーツカーのようにドライビングを詰めて走っていけるのだ。

しかし、大きな段差にタイヤが落ちるような状況下では注意が必要だ。

足元が崩れ去りそうなレベルで大きな衝撃がハンドルを揺さぶってくる。

C1内回りの旋回中にジャンプするカーブを超えてもハンドルは全くブレない。

タイヤホイールが上下に動いただけで揺れが吸収され、フレームは一切動じずに段差を通過することができてしまったのだろう。

ちなみにブレーキについてはかなり奥まで踏んでから制動力が立ち上がってくるタイプ。

軽さが効いているのかブレーキング性能はかなり高め。

ドイツ車やスポーツカーのような軽く踏むだけでガッと止まれるタイプではないが、奥の方での強い制動力のコントロールが行えるため慣れればこっちも懐深く扱える。

この車の危ない要素

前方の視界性能が悪い

モーターパワーと軽さで異常に加速する

段差を超えた際のハンドル暴れ

ただし、このクルマ以上に危ない動きをするクルマなんて無数にいる。

この挙動が原因で起きている事故なんて全体の5%にも満たない。

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