初代のジャガーXFに搭乗するチャンスを得た。
独特の世界や運転フィールを正確にレポートしていくぞ。
冒頭のまとめ
3リッターのV6を搭載しているが、アメ車のV8のようなドロドロとした迫力のある音を出す。
BMWのような、官能的な音を奏でつつ高回転域まで回っていく系のエンジンとはまた異なった味付けである。
ハンドリングや乗り心地もスポーティーというよりは、重厚感ある落ち着いた走りに重きを置いている。
例えば高速道路を高速巡行する際、ドイツ車ではオーバースペック気味で快適性が損なわれるが、日本車ではエンジントルクや遮音性・走行安定性が微妙に物足りない。
そんなドイツ車と日本車の間を埋めてくれるようなシャシー特性となっている。
また内装も独自の世界を持っており、年代こそ感じさせるが格式の違う世界を漂わせる。
格の違う高級感が演出された車内で、ゆったりと乗りやすく走って行ける。
それと同時に「ジャガー」の名を感じさせる迫力と高性能の片鱗を魅せる。
乗って数日経ってから、じわじわと良さが染みわたっていくような一台だった。
試乗車のスペックについて
何十分リサーチしてもグレードが特定できなかった…
具体的には、「ラグジュアリー」と「プレミアムラグジュアリー」のどちらかであるのか。またこの2つのグレードは何が異なるのか、どれだけ調べても見つけられなかった…
基本的にカーシェアにおいては安いグレードが採用されるという法則に基づいて推察すると、
2008年式のラグジュアリーである。
新車価格は650万円である。
今では中古が70万円程度で買えるが、最上位グレードは1000万円に達するような価格であった。
つまり、かつて新車価格1000万円で売るように作られたイギリスのセダンをレポートできるということだ。
ジャガーXFのエンジンには3つの選択肢がある。
私が乗った3LのV6自然吸気(238馬力)か、4.2LのV8自然吸気(298馬力)か、4.2LのV8スーパーチャージャー(416馬力)だ。
内外装について
外装
新車発売が2008年ということ古さこそ隠せないものの、過剰な装飾を行わずに上品さを演出する大人なデザイン。
最初に見た際はヘッドライトの形状が歪であるように感じたが、今となってはカッコよく思える。
リアはテールランプとメッキを組み合わせて横に一本のラインを通すデザインとなっている。
2024年から見てもあまり古さを感じない。
エンジンルームも開けてみる。
最上位グレードが4.2LのV8スーパーチャージャーを搭載するためか、3Lもある割には意外とエンジンルーム内のスペースには余裕がある印象を受けた。
布の切れ端ようなものがエンジンルームへのパイピングの上に乗っかっているが、これはエキマニではなく吸気配管だ。
とはいっても火災の心配はあるので取り除いた方が良いと思うんだよなあ…
スマートキーも軽く紹介していこう。
高級車を名乗るにふさわしいものとなっている。
内装
最上位グレードは1000万円で売られていたということもあり、これまでに乗ってきたクルマ達とはちょっと世界が違うような高級感を演出する車内空間。
車内の一面に走ったシルバー加飾やウッドの装飾。
閉じられたエアコン送風口やカップホルダーなどの組み合わせは想像を絶するものとなっている。
運転席に座ると真っ先に目に入るジャガーのエンブレム。この表情が思っている以上にイカつい印象を受ける。ドロドロとした排気音からも感じる。
なおステアリングのボタンは右側がクルーズコントロール、左側がオーディオ関連の操作となっている。
回転するホイールのようだが、一回上下に倒すと戻って来るものとなっている。
クルーズコントロールは上側に倒してセットする。
ウインカー・ワイパーのスティックもゴテゴテとしていて、操作感もバチっと決まるものとなっている。
どうやらオートワイパーを搭載しているようだ。先端を押し込むとウォッシャー液。
左側はウインカースティック。
ツマミを回すとヘッドライトのオンオフ・AUTOを切り替えられる。
先端のボタンを押し込むとトリップメーターのリセットや表示切替が可能。航続距離や区間燃費なども表示できる。
シンプルながら高級感に溢れるメーター。
変に装飾をあれこれ足さないところが素晴らしい。
右下にはフォグランプやトランク・メーター照度を調整できる操作パネル。
残念ながらトランクは電動ではない。
ドアの内張りも相当凝ったものとなっており、自動車というよりプライベートクルーザーのような作られ方をしている。
ミラーの調整は少しグニャグニャとした印象を受けた。
ペダルはアルミではないようだ。ボンネットのオープナーは左となっている。
カップホルダーの間にシガーソケットを配置。無駄のないレイアウトだ。
ぜんぶ開けると合計3つのカップホルダーとして使える。
反射が抑えられたシルバーが高級感に溢れていて、ブルーのイルミネーションが先進性も感じさせる。
エアコンを操作するとディスプレイ内にポップアップ表示が出る。
エンジンはスタートボタン長押しで始動だ。
シフトノブはエンジンを掛けたら持ち上がって来るタイプ。
クルクルと回してギアポジションを選択する。
一段一段がコチっと明確に分かれているため選択ミスも無い。
そのまま右に回し切ってもDで止まる。
DからSへ持っていく際は一旦押し込んでから右に倒すことになるため、入れ間違いのリスクが無く斬新で非常に面白い。
(故障して持ち上がってこなくなったらどうやってギアを選択するんだろう。。。)
さて電動パーキングブレーキが採用されているが、残念ながらブレーキホールド機能はない。
その上の「ASL」と書かれているボタンはリミッターモードだ。
クルーズコントロールとは別で存在する。
実走行インプレッション
エンジン
まずはエンジン音だけまとめた動画を見て欲しい。
始動した瞬間や低速域からアクセルを踏み増した際、シフトダウンで中~高回転域に上がった際に、ドロドロとしたエンジン音が響く。
しかし基本的にエンジン音は静かで、元気よく走っていてもあまり音が聞こえてこないのが残念だ。
低回転以下ではドロドロとして、高回転域ではアメ車のV8のような方向性の音の出方をする。
BMWのような官能的なV6ではなく、アメ車のような迫力あるドロドロとした音。これがジャガーらしさとなっている。
(動画で見返すと高回転域はフツーに官能的な音が響いているけどね。)
さてV6エンジンを搭載しているわけだ。踏んでいっても低回転域からのトルクで伸びていく。
高回転域ではそこそこ気持ちの良い音が鳴るが、243馬力もある割には特段と速いわけではない。
ギア比は比較的ワイドに設定されているようで、首都高を走っていても2~3速だけで事足りる。
下から難なく盛り上がっていくトルクとトップエンドの伸びの気持ちよさは、今となってはほとんど味わえないもの。
静粛性について
静粛性はかなり高めで、静かすぎてせっかくのエンジンの音を楽しめないレベル。
走行中のふとした瞬間にパワーウィンドウを閉じると、スッと車内が静かになる。
足回りと乗り心地
小さく動き、その先で押さえ込む。
ドイツ車ほどガチガチではないが、日本の一般的な大衆車のようなダルさも無い。
独特な立ち位置となっている。
全体的に細かい動きが多いが、強い揺れが来ないように設定されている。
硬めだが長距離と高速域でも快適。
日本車では高速域での安定性や静粛性・エンジントルクに難があるが、ドイツ車ではオーバースペックで快適性や乗りやすさが犠牲になりがち。その間を埋めるような立ち位置で個人的には好印象だ。
またボディ剛性についても2008年発売である割に全く不足を感じない。
「高炭素鋼やボロンスチールなどを採用し、クラス最高の捩り剛性を実現した」という説明はウソではない。
ブレーキについて
ドカンと来ることは無いが、踏んでいくとガッツリと車速を削ってくれる良いブレーキが入っている。
しっかりと高性能なのだが、それを表向きに主張することはしないイギリス車の美学が見え隠れしている。
バンドリング
センター付近は軽めだが、回していくと途中から重くなっていく。
スポーツセダンというより、ゆったり走るサルーンというハンドリング。
俊敏な旋回というよりは、どっしりと構えて曲がっていくようなフィーリングとなっている。
かといってアンダーっぽさはあまりなく、そこそこな重さと安定感の中でタイヤグリップを使っていく。