奇跡的にランエボのXを借りることができた。
性能を完全に使い切ることはできなかったが、驚愕のスロットルレスポンスや外からでは分からない運転フィールをしっかり確かめて動画化してきたぞ。
冒頭のまとめ
このランエボは強烈な加速力を一切隠そうとしない。
ちょっとでもアクセルを踏み込めばガンガンに加速しだす。
公道に持ち込んでもモータースポーツの世界に持ち込んでも、この強烈な加速力と高水準な旋回力の前に置いていかれそうになる。しかし手の内に収まる。
飽きることのない刺激がある。
同年代のインプレッサとの比較
別の日に2010年式のインプレッサ WRX STIのセダンに試乗した。(今回のランエボXは2007年式)。
乗り比べたところ主にボディ剛性と内装の質感でインプレッサがボロ負け。もはや勝負になっていないという驚きの結果であった。
インプレッサの方が新車価格が約100万円安くなっているため単純比較は出来ない。
しかしランエボXは現代車に匹敵するほどのボディ剛性の中で走る。
それに対してインプレッサは初期型のハチロクと同程度のボディ剛性しか有しておらず、街乗り領域のフィーリングにも低価格帯の旧式車特有のファジーな動きがある。
ベタ踏みしていてよりスリルを味わえるのはインプレッサのほうだが、私が乗り比べたところ完全に別のランク帯のクルマであった…
しかし、旧型(7~9あたり)のランエボに乗っている方が「10に乗ったらボディが違い過ぎて自分のクルマが惨めに感じるほどだった」とコメントしているのを見た。
いつか旧世代のランエボ・インプを乗り比べてみよう。
外観と内装について
外観
滅多に見かけないクルマだが、私はレースゲームでお馴染みだったので特段と珍しくはなかった。間近で見るとフロントバンパーの開口部が大きい。
ブレンボのブレーキが入っている。
内装
ステアリングにはカバーが巻き付けてあった。この年式・価格帯のことだからボロボロに剝がれるのかと思って中古を調べてみたが、特にそういうことは無かったようだ。
CR-Zの本革は剥がれまくってる個体が多いけど。
シンプルなメーター類。
ステアリングの左側にはARCのモード切り替え。
オートマ版には色々と言われがちなDCTが積まれている。
私が運転した限りは特に動作に問題は無かった。過剰なパワーアップや荒い運転を避けつつ、しっかりメンテナンスしておけば過剰に心配する必要は無さそう。
マニュアル車のようにリングを引っ張り上げてギアを変える。
ストレートタイプでこの形状だと、操作を行う際に左手が不自由な形状になりやすいので正直使いづらかった。
右下にはスポーツモードへの切り替えスイッチがある。
サイドブレーキやカップホルダーなど。
丸3連の非常に使いやすいエアコン操作パネル。
スイッチを回した際の操作感は悪くないが、取り付けがガバガバガタガタな感じがある。
車両中央にはメーターが3つ。
左からバッテリー電圧計・油温計・ブースト計だ。
油温計は暖機運転終了とエンジンの発熱の目安になり、ブースト計はコンピュータの内部制御を目に見えるところで感じられて面白い。
プッシュスタートではないが、ブレーキを踏みながら回すだけで始動が可能なスマートキー。
本格派のレカロシート。
リクライニングはおにぎり型のダイヤルを回すが、位置が奥まっていて少々手が届きづらい。
ウインカースティックの先端に「PUSH」と書かれたボタンがある。
公式サイトのオーナーズマニュアルまで見に行ってみたが、何のことだか分からずじまいだった。
ちなみにウインカースティックを奥に倒し込んでもハイビームの常時オンは出来ない。
奥まで引き切ってオンオフを切り替えるタイプだ。
試乗車のスペックについて
2007年式のGSRエボリューションXだ。新車価格は380~390万円ほど
- 車体サイズは4495×1810×1480mm
- 2リッター直4のターボ
- 最大出力は280馬力(6500回転)
- 最大トルクは422Nm(3500rpm)
- 車両重量は1540kg
- 最小旋回半径は5.9m
- 純正のタイヤサイズは前後とも「245/40R18」
例によってグーネットカタログの諸元ページを参照した。
実走行インプレッション
エンジン
人によっては命の危険すら感じるレベルの加速力をちょっと踏むたびに見せてくるクセに、低回転域の音量自体はやけに静かで驚かされる。
住宅地の中で深夜に始動して、コールドスタート状態でアイドリングするのには抵抗がある。しかし一旦動き出したり暖気が終了してしまえば驚くほど静かだ。
可変バルブタイミングによるものか、その領域に設計段階から特化させたハードとソフトウェアの味付けによるものなのか、4000回転を超えたところからあからさまにエンジンの表情が変わる。
停止中に空ぶかししていても分かるくらいに激変する。
このエンジンの特性をフルに体感できるのがスポーツモードだ。
無茶苦茶な言葉づかいで申し訳ないが、「VTECが入る」と言えばイメージしやすいだろうか。その分かれ目の回転数がだいたい4000回転くらいである。
スポーツモードは常にエンジン回転数をこのラインより上に保つように変速を行う。
ちょっと減速すれば容赦なくシフトチェンジしてエンジンを唸らせる。ハードもソフトも準備万端で、アクセルをちょっとでも踏めばドカンと吹っ飛んでいく。
公道で乗るには絶対に持ち余す。山道でスポーツモードに入れた程度では、僅かなアクセル操作にも過敏に反応しすぎるのでギクシャクしてしまう。サーキット・競技専用モードだろう。
GT-Rのnismoスポーツリセッティングの比じゃない過激さを誇る。
総合的な印象として、強烈な加速力を一切隠そうとしない凶悪なスロットルフィールである。
ちょっとでも踏めばクルマはガンガンに加速しだす。覚悟しながら操ってほしい。
吸い込まれるようなハンドリング
このランエボは魔法のようなハンドリングを持っている。
この手のクルマの中では少し大柄に感じるボディーサイズが魔法のような未知の力でスイッと曲がっていくような領域がある。
ハンドル自体は軽め。
切れば切るほど吸い込まれていくような謎のフィーリング。
ロール量自体は大きめで、しっかり荷重移動を作って曲がっていく感じだ。
安定性重視のアンダーステアといった味付けではなく、むしろクルマがグイグイとどこまで曲がっていこうとするため楽しい。どんなスピードレンジでも安定性と楽しさを発揮してくれそうだ。
乗り心地について
アシは基本的に硬い。残念なことに常に揺れている感じがある。
しかし耐えられない系の乗り味ではなく、セダンタイプの乗用車としての体裁をギリギリ保っているレベルだ。1日に6~10時間ほど走るような長旅でも一応行ける気がするが、私だったら良いクッションとこまめな休憩を用意するだろう。
ブレーキについて
踏み始めはドカンと来ないため乗りやすいが、踏力に対する制動力の立ち上がりが控えめでちょっと心許ない印象を受ける。
せっかくブレンボ製の良いブレーキキットが入っているが、純正パッドではスロットルレスポンスに対してブレーキ側がダルすぎるような味付けになってしまう。
私は初期からズドンと効きすぎるブレーキが好みではなくてよく愚痴っているが、このランエボのブレーキは宝の持ち腐れというか活かせていない感が出ている。
私だったらまずパッドを変えるだろう。
試乗前リサーチ
“その進化は、一瞬で次代を抜き去る。” というキャッチコピーにて2007年に登場した。
フレームこそギャランフォルティスと共有だが、専用のサスペンションメンバーを採用しているらしい。
しっかりとアルミルーフを採用。
ATモデルにはDCTが採用された。
オールアルミブロックの2リッターの直4ターボエンジンを搭載しており、280馬力・430Nmを発生する。馬力規制は既に撤廃されていたが、無駄な出力競争を避ける意図で抑えたらしい。マイナーチェンジで300馬力まで向上。
(テスラのモデル3のFRモデルは375Nmあるらしい。加速性能がどのようなものか楽しみだ。)
車両重量はだいたい1.5トンほど。