「完璧なクルマ」と聞いて、あなたはなにを思い浮かべるだろうか…
60台以上のクルマを運転し、インプレ動画を作ってきた私にとって、この新型シビックというクルマは、トヨタのスープラRZに並ぶほど良い一台であった。
そんなシビックの魅力、余すところなく伝えていきたい。
また、今回の試乗車は、「dカーシェア」内で借りた。
ホンダのEveryGoというサービスでは、eHEVのグレードにも試乗が可能だ。実は当記事の執筆に至ったのも、私がeHEVの予約を取ったからなのだ。
試乗車のスペックについて
例によって、以下の諸元ページから紹介する。
ちなみにホンダ公式サイトからも、情報を引用する場合がある。
また、今回乗ったのは、最廉価のLXグレードだ。6MTも用意されているのが嬉しいポイントだろう。
- 新車価格は319万円(むちゃくちゃコスパが良い)
- サイズは4550×1800×1415mm
- 車両重量は1360kg
- 1.5リッター直4ターボ
- 最大出力は6000回転で182馬力
- 最大トルクは1700回転~4500回転で240Nm
- 最小旋回半径は5.7メートル
- タイヤサイズは前後とも「235/40R18」
- FFでCVT
なお、上位グレードのEXは350万円で、エンジン出力的な差は無い。
スピーカーシステムやワイヤレス充電パッド、専用のホイールやパワーシート、LEDライトなどが追加されるようだ。
外観について
タイプRじゃなくても、充分すぎるほどカッコいい。
ガンダムのようなゴテゴテ感があった先代も、個人的には悪くなかったように思う。
だが、精悍さを増して、シンプルさの中にカッコ良さを持たされたこの顔つきは、本当に良いものだと思わされる。
ちなみに、4つのホイールすべてが、ことごとくガリガリになっていた。
前後に4550ミリ、左右に1800ミリの最小旋回半径5.7メートルは、自動車の中でも普通のサイズ感だ。
このサイズも安全に乗れない人たちにも、これだけの運動性能を持つクルマが与えられるというのは、カーシェアの恐ろしいところだ。借り物くらいまともに運転して欲しい。
内装について
車内空間も、また素晴らしく良いのだ。
現代車らしいスタイリッシュな見かけに、美術館のような装飾が水平に敷かれる。
かっこよさ、美しさ、使いやすさ、高級感。それら全てが高次元でバランスする。
エアコン操作盤は物理ボタンだ!
しかも丸3つなので、間違えようがない。運転中にも的確に操作できるので、これには大歓喜!!!
シフトノブのすぐ下には、ドライ日モードセレクターと、アイドリングストップのオフボタンに、電動パーキングブレーキの操作が備わる。ありがたいことに、その下はブレーキホールドだ。
手で引くタイプのサイドブレーキが消滅していってるのは寂しく思うが、それと引き換えにブレーキホールドと、使い勝手の良いクルコンが手に入るなら、まあアリなのかもしれない…
実走行インプレッション
ハンドルの裏にあるボタンを押して、ついにエンジン始動だ。
まず、うるさくないのがとっても好印象だ。
上質で、心地の良い低音が気持ちよく響いてくる。
車内のUI関連について
また、デジタル液晶となっているようだが、いい具合に光沢が抑えられているため、ただ映り込まないだけでなく、夜間でも眩しくない。
このマット加減がちょうどいいのだ。
コンピュータシミュレーションや理論だけでは実限できない、感性・感覚の領域でのクルマづくり。
私にとって、いちばん大事にしたい指標が、このシビックは、メーター内部からも感じられる。
オイル交換表示は、走行距離によって出てくるものだろう。
放置運用メインのカーシェア車なので、どうすることもできないし、放っておくことにした。
さて、ナビ画面についてだが、これもたいへん見やすくいのだ。
色合い、解像度、手の届きやすさ、すべてがちょうどいい。
「現在地に戻る」は物理ではなく、右下の、青緑系の色のボタンをタップ。
これが物理ボタンでないのは残念だが、すぐ押せるところにあるので、大した不満にはならないだろう。
ボリューム調整と、ホームと、戻る、曲の選択が、右側に物理ボタンとして並ぶ。
YouTubeに投稿した動画からスクリーンショットを切り出しているだけなので、ブレブレだったり低画質だったりする点はお許し頂きたい…
ホームボタンには使いやすいUIが並ぶ。ただのナビではなく、自動車に関する情報を統合的に管理できるし、ネットワーク接続系の機能も、初見では全容を把握できないほど充実しているようだ。
とりあえず「車両設定」とやらを開いてみた。
シビックにちなんだ画像が挿入され、文字も見やすく、本当に優れたUIだ。
ライティング設定を開いてみたら、オートハイビームやデイライトに関する設定があった。
マツダ車ほど豊富ではないが、ありすぎても混乱するばかりなので、これくらいが丁度いいのかもしれない。
動画内ではかなり複雑なことを言っているが、「ガソリンを満タンにしたらトリップメーターをリセット」という設定もできるらしい。
オーナーなら分かるだろうが、特にハイブリッドカーというのは、走行スタイルによる燃費の変動が、本当に激しいのだ。リッター30出る場面から、7を下回る場面まで存在する。
そのため、メーター内に表示される航続距離設定が、アテにならないのだ。
だからこそ、これまでの走行距離と、燃費と、燃料タンク容量に加え、これから走る道と走行ペースから、だいたいの航続距離を導き出せるというのは、地味にありがたい機能となる。
カーナビもとびきり使いやすいのだ。まず第一に、配色が優れているからなのか、夜間の東京も見やすい。いまどの地点を見ているのか、イッパツで把握することが可能だ。
(実は、メルセデスやカーシェア純正カーナビは、この辺が絶望的に使いづらいことが多いのだ…)
私のように、地図を動かしていって目的地を直接指定するスタイルの場合、これほどありがたいものはない。
指で動かしていく際、わずかに遅延があったように感じたが、許容範囲だろう。
あとは、右下の「目的地にする」をタップすればよい。経由地設定もワンタップなので、高速に乗ったり降りたり、ワインディングを選びたかったり、複数地点を経由する旅ルートを策定したり。ライフスタイルにあったルート指定ができるので助かる。
選んだ地点が高速道路と近かった場合、目的地を高速道路の上にするか、一般道の上にするか聞かれる場合が多いのだが、この際に出て来るUIも、いちいち見やすいのだ。
文字が大きく、色彩も明快で、操作に迷うところがない。
「人間工学」という言葉や開発思想を、ここまで強く感じて、恩恵を受けられるメーカーは無いだろう。
ダーク系の色合いの中に、蛍光色の黄緑で通るべきルートが敷かれる。
ここまで熱弁してしまうほど使いやすいカーナビであったということだ。
走り出しのフィーリングについて
長々と話し込んでしまったが、やっと実走行だ。
シフトノブはDのみで、「右に倒すとマニュアルシフト」といった機能が無いのは残念だ。
パドルシフトとスポーツモードは存在するため、「CVTを、多段式トランスミッションとして動作させ、パドルシフトで操る」という走りは可能であるから、そこは安心して欲しい。
ちなみに、運転モードを切り替えると、左側のメーター内にイラストが表示される。
細かい意匠も凝っていて、なかなかに良いものだ。
ちなみに、アイドリングストップこそ搭載しているが、燃費や市街地走行においては、間違いなくeHEVのほうが良い。この違いについては、後ほど私が運転して検証しよう。
さて、駐車場内で減速帯を乗り越えたが、その瞬間のショックの動きに感動させられた。
乗り心地がとても良いのだ。
ショックアブソーバーがしっかりとストロークすることで、揺れを充分に吸収してくれた。
ものすごく乗り心地が良い。快適性が考慮された、良いダンパーが入っている。
地下駐車場の不便さ
すこし小話を挟むが、このカーシェアのステーションは、「新宿サブナード」という地下駐車場だ。
フェラーリにランボルギーニ、ロールスロイスなど、名だたる高級外車が並ぶ。
だが、いまの私は、シビックのほうが好きだ。
そんなことより深刻なのが、「駐車場出口が異常なほど混雑する問題」だろう。
信号待ちにハマって、実測でも10分くらいは出られない。信号待ちも長いし、歩行者専用を挟むため、大幅に時間をロスしてしまう。この日は連続で5台ほど乗ったが、1時間に1台しか試乗を勧められなかったのは、信号待ちのせいだ。首都高に行くまでの時間が長いのだ。
街乗りについて
不便過ぎる駐車場への愚痴はほどほどに、まずパーキングソナーの動作についてだ。
当たるはずのない、衝突コースに無い位置の障害物や壁にも反応して、いちいち警告を送ってくる。
正直ジャマなだけであるため、切っておくのが良いだろう。
変速ショックも無く、エンジンの低速トルクも充分にあるため、スムーズかつ快適な街乗りが可能だ。
カーナビの案内も、とっても見やすい。
メーター内部の「あと〇〇メートルで右折だよ」表示も、ナビ画面のポップアップも、とても親切だ。
さて、交差点の右折で、いきなり事故りかけた。
東京の人の運転というのは、なぜこうも人の心が無いのだろう。
よく名古屋走りが取りざたされるが、名古屋在住の私から言えば、関東のほうが酷い。
関東と比べての名古屋の運転なんて、「空いてるスペースに入ってるだけ」だ。
いいニュースがあるとするなら、ブラインドスポットモニターが役に立つことだ。
私のような乱暴な運転の被害者にも、合流がヘタな人にも安心である。
さて、いちばん大事な領域について、まだなにも語れていない。
周りに合わせて安全第一で流す街乗り領域でも、あからさまにフィーリングが良いのだ。
直進性がとても高く、ステアリングの本革の触り心地は良く、ショックアブソーバーの動作も快適で、値段に見合わぬ上質さを味わうことができる。
首都高に入るためにUターンしたが、視界が良い。
本当に乗りやすいクルマだ。
深夜の首都高でハイペーステスト
誰もいないタイミングで料金所のゲートを潜り、スポーツモードの、パドルシフト1速固定でベタ踏みする。
凄まじく速い。184馬力?なにかの間違いだろう。
体感的には250~300馬力級の加速力があるように感じられる。
1.5リッターターボでこんな加速力を出すなんて驚きだ。
また、VTECらしいエンジン音や高回転域の陶酔感が明確に存在しており、ブン回す楽しみがある。
CVTの変速を停止させることで、擬似的に多段式トランスミッションを実限していることにより、レッドゾーンに入った後、途切れること無く変速されるのだが、その際にぐにゃーっとしたフィーリングが出る。
スパスパシフトアップしていってくれれば気持ちいいのだが、ここは素直に、高回転で唸り続けるCVTとしてではなく、多段式として操れることに感謝しよう。
バイクのような吹け上がりの良さと、速いんだが、制御出来ないところには飛んでいかない安心感があって、最高に楽しいフィーリングだ。
また、何よりも感動的であったのが、レーシングカーのようにダイレクトなステアリングフィールだ。
しっかりとした重さがあって、タイヤの接地感やロールとのバランスが完璧なのだ。
乗り物のロール方向の動き。その全てを感じ取りつつ、制御下において操っていける楽しさ。
安定性志向であるFFの特性をフルに活かし、一定の重さをダイレクト感と安定性に変えて、楽しく走っていく。私が所有するプリウスPHV GRに、唯一「勝っている」と言えてしまうレベルの楽しさだ。
時間やスケジュールの都合で、首都高に乗って数百メートルで降りる予定としていたが、後悔した。
「新型車だし適当に乗っておくか~」程度の気持ちで予約を取ったが、真価を見損なっていた。
これは真のドライビングプレジャーを持つ、生粋のスポーツカーだ。
この世に存在する全ての市販車のなかで、ここまでのステアフィール、加速感、低価格、快適性、その全てを併せ持っているような車種を、私は見つけ出せない。
もし存在するとしても、BMWの3シリーズの、ステーションワゴンのPHVくらいじゃなかろうか。それも、Mパフォーマンスでも持ってこないと、勝てないのではないかと思う。
まとめ
「もしeHEVがこの官能性を持ち合わせていたなら、環境性能と合わさって、世界一の市販車となるだろう。」
そう言いたくなる完成度だった。
ワインディングやサーキット、深夜の高速道路で思い切り走るなら、ガソリンで良い。マニュアルを選べばいいじゃないか。ただ、渋滞もあれば信号待ちもあるのが公道だ。
クルマというのは総合性能で評価するものだろう?
実はこの記事を執筆した日の夜、これから、eHEVに試乗する予約を取っている。
楽しみでならない。
開発者の方への称賛と共に、この記事を終わらせて頂く。
最後に、もう一度書くが、私はこのシビックを、dカーシェアで借りた。
読者さんも試してみて欲しい。
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