カッコいいデザインで満を持して登場したクラウンスポーツ。
東京で深夜に2時間ほど空きができたため、クリスマスの聖の6時間中に三井のカーシェアーズで借りて試乗してきた。
首都高の流れが悪かったが、普段なら一晩に2~3台詰め込むところでクラウン1台だったためじっくり味わえた。
冒頭のまとめ
上品でカッコよく力強さを感じる美しいデザイン。
内装の質感はクロスオーバーと比べると極端に悪いわけではない。
しかしピアノブラックや無理ない範囲でのソフトパッド素材で間に合わせたようなコストダウン体質の拭えない要素はある。
多段式ATモードもパドルシフトもないCVTだが、気持ちよく高速域まで伸びる。
しかし段差を超えた後にハンドルが暴れたり、揺れが残りすぎたりする乗り心地からはクラウンの上質感を感じない。先代のセダンのほうが良かったレベル。
首都高の段差はジャンプ台だと思え。
ある程度ロールしてから姿勢を整えて鋭く曲がっていく味付けとなっているため、微妙な負荷のコーナリングでは逆に不安定になってしまう。
コーナリング性能自体はスバルの水平対向並みに高いが、日本の公道とロール方向への特性が合っていない。
総合的に言って、外観は素晴らしいがトヨタのSUVとしては限界領域の足回りの詰めが一歩甘い印象を受けた。
外観
クラウンスポーツの最大の魅力はこのデザインだろう。
(これはトヨタのSUVとしては、私の感覚ではあまり誉め言葉にならないけれど)
近未来感とエイリアンのようなカッコいい目つきに、前後の八の字に踏ん張るような造形。
地味ながら結構な注目点となるのがサイドからリアにかけての絞り込みだ。
市販車のSUVとしては、フェラーリやアストンマーティン並みに造形に凝っているのが感じられる。
リアも同様に八の字に踏ん張るような造形となっており、SUVらしい力強さが感じられる。
クラウンスポーツの外観は2024年に出たクルマの中でもトップ5に入れそうなくらい素晴らしい。
みんなも自分で借りて、空いている駐車場にでも停めてゆっくりと眺めてみて欲しいものだ。
さてボンネットダンパーは無し。現代車で開ける機会なんてほとんど無いが、むかし「いつかはクラウン」とか言われていたクルマでコレは萎える。
2.4リッターという排気量の割にはエンジンは非常にコンパクト。
加速力の割には燃費も良い。優秀なハイブリッドシステムが入っているぞ。
静粛性対策なのか、バルクヘッド側にゴムのシーリング材が入る。
内装
クラウンクロスオーバーでは散々安っぽいと言われた内装だが、クラウンスポーツにおいては大きく改善された。
新車価格600万円のクルマとして、これ単体では特段と不満を感じないレベルになっている。
決して悪いわけではないのだが、クロスオーバーやトヨタ全般の「安っぽい内装」というイメージに大きく足を引っ張られている。
目に見えないところにコストを掛けて、内装をケチるのはそろそろやめて欲しいんだけど…
ソフトパッド素材やピアノブラックによって随所の質感が高められている。
ちなみに上位グレードになると、鮮やかな赤が一面を覆う。
ちょっと窮屈なエアコン操作パネルだが、全て物理ボタンで扱いやすい。
指紋でベトベトになりづらい素材を採用している点や、シートベンチレーションが付いている点が嬉しい。
ナビ画面下に音量調整ダイヤルがあるのは嬉しいが、一度でも操作してしまうと傾いた位置になってしまうため見栄えが悪くなる。
ピアノブラックのセンターコンソール。質感は悪くないが、使っているうちに傷だらけになりそうではある。
カップホルダーの上側には仕切りがある。
仕切りを付ければ上側の空間がキャップや小物置き場になり、取り去ればスペースが大きくなる。良い設計だ。
シフトノブの裏側にアラウンドビューカメラのスイッチがある。
目視では完全に見えない位置だが、ブラインドでも普通に押せる。
大不評のプリウスシフト。
私は50プリウスに乗っているが、それと比べると配置が悪い。手の角度がイマイチ合わず、駐車中にさサッと操作する際も引っかかる。
ちょっと大柄だが、アラウンドビューカメラやバックカメラの品質は高め。丁寧に乗ればそこまで問題にはならない。
ステアリング内にもゴールドのラインが入ったりピアノブラックで加飾されたスイッチが入る。
高級感に繋がっているかと聞かれれば迷ってしまうけど…
光沢が抑えられており視認性は良好なメーターだが、クラウンの高級感はあまり感じられない。
ナビをメーター内に出す機能もあるが、競合他社にはまだ劣っている。
実はメーターの質感については改善が可能だ。
メーターのデザインを後からアップグレードするサービスがトヨタから提供されているぞ。
ドアミラー関連のスイッチ類もピアノブラックだ。
クラウンクロスオーバーの内装への不評を受けて、ローコストに質感を改善できるピアノブラックを多めに採用した印象を受ける。
二列目の足元にはセンターコンソールの段差が握りこぶし1~2個分ほどあるが、あまり気にならない。
二列目中央への居住性はあまり期待しないほうがいい。
4.7メートル程度の前後長は狭いところでの取り回しにおいてはプラスだが、二列目の前後方向への乗り降りスペースが犠牲になる。
隣にクルマが居ればドアは大きく開けられない点をしっかり考慮するべきだ。
音響について
そこそこ綺麗に良い音を出してくれるモノが付いているが、純正スピーカーの安物ペラペラ感は拭いきれていない。
超高音質なスピーカーで音量を上げて鮮明な音を味わう楽しみを知っている私には満足できないが、先代クラウンの純正スピーカーよりは音質は上がっている。
音にこだわるならスピーカーは交換必須だろうが…
価格・スペック・グレード
クラウンスポーツにはハイブリッドとプラグインハイブリッドの2つのグレードしか存在しない。
私が乗ったのは新車価格590万円のSPORT Zである。
- サイズは4720x1880x1570mm
- 車両重量は1810kg(PHVは2030kg)
- エンジンは2.5リッター直4自然吸気
- 最大出力は186馬力/221Nm(PHVは177馬力/219Nm)
- フロントモーターは120馬力/202Nm(PHVは182馬力/270Nm)
- リアモーターは54馬力/121Nm(PHVと共通)
- システム合計出力は234馬力(PHVは306馬力)
- 燃料はレギュラーガソリン
- 最小旋回半径は5.4m
https://toyota.jp/pages/contents/crownsport/001_p_001/pdf/crownsport_spec_202411.pdf
PHVごとの違い
同じ型番・排気量のエンジンであるのに、馬力は少し異なっている。
前後にモーターを搭載する点は両者とも同じだが、PHVモデルはフロントモーターがより高出力である。
なおPHVモデルにおいては、14.85Kwhの一充電消費電池容量を持つ。
↑公式サイトの諸元表がこのような表記になっている理由は、大抵のPHV車はバッテリーの中の10%~85%あたりをEVモードとして使うためである。
実際に搭載しているバッテリー容量は51Ah=約18.1kwh程度である。
7km/kwhの電費が出せれば、電気だけで約103km走れることになる。
ちなみに除電スタビライジングプラスシートなるものが存在するのだが、この手の除電素材の効果は基本的に体感できない…
実走行インプレッション
取り回し
少しだけ大柄だが、慣れれば何とかなる程度のサイズ感。
アラウンドビューモニターやソナーなどがあることと、前後の長さと最小旋回半径自体はそこまで大きくないこと、視点が高く視界性能にも変なクセがないことから、1880mmという横幅でも割となんとかなる。
この手の大型のSUVとしては、比較的乗りやすい方であると言える。
パワートレイン
アクセル開度の開き方に対する加速力の上がり方に段付きがあり、パワーモードで強めに踏んでいるとガタンと突然前後に揺さぶられるような動きも出る。
加速力自体は特に悪くなく、速くはないが気持ちよく伸びていく。
深夜の首都高をアクセル開度多めで走っていれば、周りのクルマを置き去りに出来る程度の俊足は持ち合わせている。
CVTでパドルシフトも多段式モードもないのが残念だが、エンジン音の気持ち良さはある。
ベタ踏み時は特定の回転数をキープし続けるわけではなく、徐々に回転数が上がるような制御となっているため超ワイドレシオではあるがエンジンが回っていく感じは悪くない。
モーターのみで走っている際は滑らかで最高の運転フィーリングだが、エンジンが掛かった瞬間に台無しになる。
踏んでいった先の領域で気持ちよく響くエンジン音を優先したといえば聞こえはいいが、静粛性的にはイマイチだ。
どうせ買うならPHVの方が良さそうである。
乗り心地
私の感覚だと上下方向に動きすぎ。
段差を超えた際の入力はしっかりとアシをストロークさせていなしてくれるし、バンプラバーも快適。
しかしある程度の速度域で段差を超えた後の上下方向への揺れの収まりが少々悪く、ひょこひょこと車体が動き続けてしまう印象。
先代のクラウンのストロークや衝撃吸収量の大きさ、安定性のバランスなどは市販車最高水準にあった。
これと比較すると明確に劣ってしまっている。改善に期待したいところ。
ハンドリング
スポーツと名前に付いてはいるが、切り始めはあまり曲がっていかない。
ある程度大きくロールした後にシャキッと構えて大きくイン側へと切れ込んでいく。
この状態だと俊敏さを発揮する。
しかし公道を走る上でもっとも多く遭遇する、そこそこのペースで走っていく領域でロール方向への動きが定まらない。
具体的にはビシッとロールを抑えることが難しく、旋回姿勢が定まりきらない状態でのコーナリングを余儀なくされる。
サーキットやジムカーナ、条件のいい峠では理想的だろうが、特性が公道に合っていない。
また旋回中に段差を超えた際にハンドルが暴れる点も怖い。
飛ばしたまま行けてしまうのだが、このクルマだけは首都高の段差はジャンプ台と思え。
四輪のショックアブソーバーの縮み方やクルマの移動方向を適切に制御しながらタイミングを合わせて段差を越える必要がある。
私の見つけた乗り方がある。思い切ってシャシーに強い負荷を与えながら走るべし。。
コーナリングの際はタイヤとシャシーをガッツリ沈み込ませるのだ。
その先でタイヤグリップが踏ん張ってくれることだろう。
なおブレーキ踏力に対する制動力の立ち上がりも悪く、重さに負けている感が否めない。
私だったら初期からカッチリと効いてくれるパッドに交換したい。