【ルーミー】「ゴーミー」呼ばわりするほどゴミじゃない。でも追越車線は命がけ【試乗インプレッション】#106台目

試乗インプレッション
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冒頭のまとめ

ネットで「ゴーミー」と言う人がおり、走行性能に関する不評を聞いていたためずっと実車が気になっていたルーミー。

やっと乗ってみたところ、軽自動車以上トヨタ車以下の手ごろに乗れる使い勝手の良いクルマだった。

しかし安全に関わる致命的な弱点も持っており、手放しで人に勧めたり粗暴に乗ったりすることは出来ない。

例えばスピードを出すと風に振られる割にハンドルの感触が希薄であったり、ステアリングレシオが遅めで急カーブへの対応が遅れそうになったり。

全体的な乗り味がどこかジムニーっぽい。これは悪い意味である。

しかしNAモデルでも軽NA以上軽ターボ未満の実用上充分な加速力を持ち、ボディーやシャシー性能は普通に走るぶんには充分。二列目も意外と広い。

車のパフォーマンスが良くわかってない人が「コスパ良い」と言って選ぶ系の分類。

トヨタ社のクルマ商売の上手さが見て取れる。

外観

世間一般のクルマ好きはこの手のクルマを評価しようとしないが、私はそういうことは考えない。

じっくりとデザインを鑑賞していると、数を売るためのトヨタ社の工夫や自動車造りの上手さが見えてくるのだ。

まず顔つきだが、可愛いけれどキリッとしている。

女性向けなイメージがあるが、男の人も普通に乗れるデザインである。

ヘッドライトの下端のラインは波打ちながら両脇で下にクイッと曲がる。

流れるような曲面がありきたりな箱型車の顔つきを変化のあるものとしているようだ。

バンパーの端っこは八の字に踏ん張っている。

これはSUVでよく見るアプローチだ。

この踏ん張りに加えてグリル自体も大きくすることで、頼もしさや広々としたサイズ感、ゴージャス感などを出そうとしているのだろうか。

リアにおいても車内の広さや豪華さ演出しようとしている。

テールランプを両脇の上部に配置することで、開口部を多くとりつつ車体を大きく見せる。

両端の上に灯火類を置くことで、大きく見せたり威圧感を出したりするのだ。

少し話は逸れるが、ポルシェのカイエンも同じアプローチをとっている。

これによりオラオラしたい層を取り込みつつ、デザイン自体はシンプルで上品にまとめている。

テールライトを側面に巻き込みつつ三角形の切り欠きを入れてやることで、単調になりがちな造形に変化も持たせている。

こりゃ数が売れるわけだと思わされるデザインだ。使い勝手も抜群に良い。

エンジンルーム

さすが自然吸気の1000ccだ。スッカスカで整備性抜群。

余計なものが付いていないので壊れづらくもあるだろう。

アンダーカバーやバルクヘッドの遮音材なども確認できる。

ルーミーのエンジンルームで最も謎であるポイントがボンネット内のダクトである。

ヘッドライトの間を繋ぐグリルの中に、ダイレクトに外気を取り込んでくるダクトを設けている。

しかしこのダクト、どこにも繋がっていないのだ。

新車製造時に工程を簡略化するため、より冷却の厳しいターボモデル用のボンネットを自然吸気モデルにもつけているのだろう。

自然吸気モデルのエンジン内部に入る空気の取り込み口はボンと置かれている。

メッキ部を触ってみたところむちゃくちゃ感触が軽かった。おそらくプラスチックを塗装している。

カーマニアとしては、こういうコストダウン用の謎技術・謎仕様を見つけるとテンションが上がる。

クルマには低価格帯のボリュームゾーンだからこそ面白いポイントが存在するのだ。

足回り

リアは典型的なトーションビーム。

フロントもThe・TOYOTAといった感じだ。

黒いロアアームやナナメに繋ぐ金属製の補強バーのようなもの、私の50プリウスにも付いている。

内装・車内

最も安いグレードであることもあり、内装は一面の樹脂。

公式サイトのwebカタログより最上位グレードの内装の画像を取ってきた。

随分と違う。お金があるなら最上位グレードを買うべきだ。

廉価グレードはマニュアルエアコン。使い勝手は単純明快で、寒い夜でも暖房は熱いほど効く。

ストレート式シフト。ギア選びの正確性がちょっと怪しいため私は嫌いだ。

加速が欲しくてSレンジに落とす意味はない。

戻す際に行きすぎてNに行ったり、操作するだけで気が散ったりする割に加速力が大きく変わらない。

そして悪名高きダイハツウインカー。

半クラッチの位置を一旦見つければ何とかなるが…

ついでに言うとオートライト義務化後の年式の場合、デフォルトではオートハイビームだ。

倒した瞬間にハイビームを光らせたい場合はオートではなく常時オンの位置にスイッチを持って行こう。

なお運転席左側にはセンターコンソールの1つもない。

コストダウンのために何もないと取るか、ウォークスルーができると取るか。

謎のプラスチックステッチ

このクルマの内装で最も謎である部分が、プラスチックに掘られたプラスチックのステッチだ。

意味が分からないだろう?

触ってみても明らかに糸ではない。というかメーターフードもプラスチックだ。

ドアパネル上部にも同様の装飾が入っている。

コレのおかげでぱっと見がレザーなのかプラスチックなのかわからないし、ただのシボ加工よりももう一段階質感が上がって見える。

マジでなんなんだこれ・・・

世間のルーミーオーナーたちはこのステッチをカラフルに塗っているようだ。

これだけでも随分と質感や雰囲気は変わることだろう。

二列目の居住性・荷室の使い勝手

二列目に座ってみて驚いた。

広々としていてむちゃくちゃ居住性が良いのだ。

前方にも頭上にもたっぷりとスペースがあり視界も広々。

ちょっとしたミニバン並みに快適な車内だ。軽自動車から大きくなった分の恩恵をフルに受けられる。

最廉価グレードは左側のスライドドアのみ電動。

ドア自体が重くないので右側のスライドドアも問題なく使える。

二列目を倒してフラットな空間を作ることができるようだ。

クルマの全長ゆえ車中泊には使えなさそうだが、大きな荷物を運ぶ際はロー&フラットなクセのない箱型の車内空間が活きるだろう。

静粛性とオーディオ

トヨタの純正ナビが入っており、安かろう悪かろうな内装に反してその動作は意外とまともだ。

指のピンチによる拡大縮小には対応しておらず、縮尺変更を行うたびに左下のボタンを押す必要はある。

また縮尺を変更した直後はカクつく。

しかし地図をスワイプすると一切のラグなくスイスイ動く。500万円オーバーの価格帯でも地図を動かすとラグる車種は存在する。素晴らしいポイントだ。

右上に並ぶ物理ボタンも使い勝手が良い。

スマホともbluetoothで簡単に連携できる。

複雑なこと考えずに欲しい機能が充分に使える。

当然ながらステアリングリモコンで音量や選曲も可能。

安さだけでクルマを選ぶと付いてこないこともある装備なのだ。

静粛性については、市街地でゆったり乗ってる領域では意外と車内が静かで驚かされる。

安っぽいイメージの車体からは想像も付かないくらいの静粛性が担保 される。

しかし高速道路でスピードを上げるとヤバい。

特に120km/hに迫るあたりから明らかに「いまヤバいことやってるぞ感」を感じるレベルの風切り音が車内に響く。

何かミスったら生きて帰れないのではないか」と感じるほどの風切り音。

100台以上を色々なスピード域で乗り比べて来たが、このレベルの風切り音は今のところ未体験だった。

そんな速度域で聞くオーディオについては史上最低を更新した。

音量を上げるとすぐにガビガビ。

笑ってしまうほど酷い。

歌を流す際はイコライザー設定で強引に高音域を強調できるが、スピーカーが酷すぎて無理。

フードコートでラーメンができたときにピーピーなるあのリモコン、あのレベルの音だ。

しかし市街地では音量や低音の響き方などに問題はない。

あくまで高速道路でスピードを上げると酷いことになるだけ。

新東名をよく走ったり、高速道路での長旅を想定する人はせめて上位グレードを選ぼう。

スペック・価格など

最も廉価であるXグレードだ。新車価格は174万円

上記の装備比較表が分かりやすいが、グレードが上位になるとホイールやライト類、メーターやステアリグ、各部の加飾が変更される。

オートエアコンや両側スライドドア、ターボなども追加されていく。

グレードごとの価格表はグーネットカタログより
ルーミー(自然吸気モデル)主要諸元表
エンジン型式1KR-FE型
種類直列3気筒 DOHC
総排気量996cc
最高出力51kW(69PS)/ 6,000rpm
最大トルク92N・m(9.4kgf・m)/ 4,400rpm
燃料供給装置EFI(電子制御式燃料噴射装置)
使用燃料無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量36L(2WD) / 38L(4WD)
駆動方式前輪駆動(2WD)または四輪駆動(4WD)
トランスミッションCVT(無段変速機)
サスペンション(前 / 後)マクファーソンストラット式 / トーションビーム式(2WD)
トレーリングリンク車軸式(4WD)
ブレーキ(前 / 後)ベンチレーテッドディスク / ドラム(リーディングトレーリング)
タイヤサイズ165/65R14
最小回転半径4.6m
全長 × 全幅 × 全高3,700mm × 1,670mm × 1,735mm
ホイールベース2,490mm
車両重量1,070kg(2WD) / 1,130kg(4WD)
燃費(WLTCモード)18.4km/L(2WD) / 16.8km/L(4WD)

詳細はトヨタ公式サイトより

実走行インプレッション

取り回し

元が小さな箱型ボディーなので何も苦労することはない。

タントなどの箱型軽自動車と同じ感覚でスイスイ乗れる。

小回りも効くし前後にも短い。

アクセルを踏んだ直後にズドンと出やすい点と、例の悪名高きダイハツウインカーである点は少し気になる。

パワートレイン

踏み始めでドンと前に出るため、慣れるまでは出足でガタつきがち。

ネットでは遅い遅いと言われていたが、いざ乗ってみると「意外となんとかなるやん」と思った。

軽の自然吸気以上軽ターボ未満といったところ。

例えるなら125ccの原付二種バイクだ。

速くはないが、しっかりとアクセルを開けていけば交通の流れに遅れたり、合流で危険を伴うほど遅くはない。

高速道路の登りの合流でも、意識して踏み込んでいくと問題なく合流できるくらいの速度は乗せられる。

踏み込んでいくとダイハツ系の直3っぽい音が出る。

そこそこ持たされている安定性と合わせ、知らぬ間に110~130km/h出ていることもあるレベル。

風に煽られずに下り坂の力を借りれば結構なスピードが出る。

※その速度に耐えられるだけの安全や安定性については保証しない。

踏み始めからエンジン余力の大半を使う定番のCVTセットだが、ダイハツの軽の自然吸気CVTほどいっぱいいっぱいではない。

乗り心地

程よくストロークしながらボディーの箱を上下に動かす、アルファード系にも高い動きを目指している。

価格や性能を考えれば充分にがんばっていると思う。

しかし段差を超えて強めの衝撃が入るとあちこちに吹っ飛ばされてしまう。

良いじゃん頑張ってるじゃんと思うときもあれば、ダメじゃんと思わされる場面もある。

必要充分な剛性はあるんだけど、風や足回りのしっかり感ゆえ安定感がない乗り味。

無難だが、TNGAプラットフォームのトヨタ車とは比べ物にならない。

ハンドリング・ドライバビリティ・高速安定性

安全に関わる問題ごととして、まずセンター付近がスッカスカなのである。

車というのはただの直線を平凡なペースで走っていても、路面のうねりや風に流されて完全に真っ直ぐ走ることはないものだ。

だから運転手は、ブレ始めの動きを無意識のうちに感じ取りながら修正しつつクルマをレーンに収めている。

この車はそのフロントタイヤが逸れ始める領域がわからないのだ。

ハンドルはただ軽いだけで、そういう領域のインフォメーションを渡してくれない。

ただクルマの動きにハンドルを切りながら合わせに行くしかない。

これならフィードバック機能の充実したハンコンでレースゲームをやる方がまだリアリティがありそうである。

この特性が最も悪さするのは高速道路だ。

投影面積が大きく空力特性ガン無視の箱型ボディーに軽さなどの要素が合わさり、高速域ではすぐにフラッフラになってしまう。

特に風が強く吹いて路面のうねりに流されて、道路状況に急かされるような状態では大変だ。

追越車線に移ったタイミングで問題がなくても、ちょうど下り坂の山道となったタイミングで前が開けて後続車に急かされたら…

こんなにもスカスカでフラつくボディーで知らず知らずのうちに130km/h近いスピードが出てしまっては命に関わる。

それだけ感触がないハンドルだ。

100km/hあたりで満足し、追越車線も追い越し後に戻るレーンもクリアなのを確認した時だけ抜くような平凡なペースで行くのがいいだろう。

一部の小型車のように80km/h以下で走るほどではない。

旋回性能的な意味でのハンドリング性能は実は悪くない。

ハンドル自体は軽くてスカスカだが、イメージに反して応答性はシャキッとしている。

ハンドルの操作に対してスムーズに追従し、ロールが収まれば動きは比較的安定。

フロントのアウト側をしっかりと押し潰し、安定した接地性の中で曲がっていってくれる。

軽さが効いて旋回の限界は高いが、ステアリングレシオが遅めなので舵角が足りなくなる危険がある。

急ハンドルを切るとバッタンと倒れて危険だが、ステアリングレシオや乗り物の特性と相まって無理なペースで飛び込んでいくことは稀だろう。

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