【レイバック】スバル社の集大成。「テンプレ化」が完了した自動車開発【インプレッション】

試乗インプレッション

レヴォーグのクロスオーバーモデルであるレイバック。

乗る前は「なぜレヴォーグの車高をわざわざ上げた???」と思っていたが、実物に乗ってみるとスバルブランドの集大成とも思える作品に仕上がっていた。

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冒頭のまとめ

乗り心地、ハンドリング、エンジン、全ての要素が初心者から何十年も乗ってきた熟練者まで満足できる完成度で仕上がっており、安心安全の高性能車だ。

他のスバル車と共通している要素が多く、「スバルブランドの集大成」のような一台となっている。

【レイバック】汎用化された「スバル味」の終着点は初心者から熟練者まで快適で乗りやすい万能さ

外観と内装

外観について

ネットで見た限りでは「ダサい」というコメントが多いし、私もデザインに違和感を覚えていた。

しかし実物のこのシルバーの個体を見て意見が変わった。

むちゃくちゃカッコ良いし芸術的だぞ。

彫刻のような佇まいで、グリル横の張り出しの形状が非常に上品だ。

フロントの左右を繋ぐ銀メッキは日本刀のようにシャープな印象を与えるし、バンパーのデザインは芸術品のように形作られている。

リアは駐車場で実物を見たとき「レヴォーグと間違えて予約したか?」と思ってしまった。特に暗いところで見ると、レヴォーグと比べた際の違和感もほとんど感じない。

WRX S4でもそうだったが、まだ実物も世に出ていないうちにYouTubeのコメント欄で「ダサいダサい」とか言っている自称車好きに対して腹が立ってくるレベルだ。

新車を買わないどころかメーカーの公式の投稿にもそういうコメントを書いてきてイメージを下げる。そんな人間がスバリストや車好きを自称するなと思う。

エンジンルームについて

ボンネットも開けてみた。スバル定番の中央上部にインタークーラーが鎮座する水平対向エンジン。私にとっては見飽きたレベルで定番となった景色が広がる。

よく見るとバルクヘッド側に遮音材が貼り付けてあるようだ。

左右のサスペンション取り付け部を繋ぐような強化パーツは付いていないが、元のボディ剛性や前後のロールバランス設定が優秀なので社外タワーバーの取り付けは要らないと思う。

燃費こそあんまり出ないが、フロントがグイグイ入っていくような旋回性やEVのような扱いやすい低中回転域のトルクの出方、気持ちよく伸びていく高回転域など、総合点が最高級に高い名エンジンである。

内装について

最近のスバルでは定番の、中央にデカいディスプレイが鎮座するスタイル。

特にクロストレックやWRXS4とは瓜二つで、スバル車の中では何に乗っても似たり寄ったりな印象が出てきた。

私はエアコンは物理ボタン派で、運転中にも数秒間の注視が要求される上にタップミスが頻発する液晶タイプが大嫌いだ。

しかしスバルの操作系だけはボタンたちが大きくて操作も分かりやすく、乗っていてストレスを感じることがほとんど無い。

温度調整は物理ボタンなので、オートエアコンと温度設定だけで空調を賄うことも出来る。

アイドリングストップやブレーキホールド、油温などの機能をホーム画面にショートカットできるようになっている点も嬉しい。1つだけ要望を言うならカーナビの現在地表示ボタンを物理で用意するか、角っこの最も押しやすい位置に配置して欲しかった。

AVHやアイドリングストップが並んでいるところの一番右のアバターマーク、それと地図に虫眼鏡が付いているアイコン、この2つの並びを左右で入れ替えてくれるだけで良いんだ…

カーナビのマップをぐわんぐわん動かすとラグるのが残念だった。

私は地図を目的地まで動かして行ってから目的地を選択したり、走行中に周辺確認のために指で地図を動かす機会が多い。

ここが遅れるとその都度イラっとするしクルマへの満足度が下がる。

バックビューモニターは舵角連動のアシストラインも出てくる。画面サイズを活かし切れていないことと相まって、ちょっと映像が歪んでいる印象はある。元のサイズがそんなにデカくないので駐車はラクだろう。正面から縁石や段差に突っ込んでも、結構な急勾配な駐車場でも、擦る心配が皆無なのもありがたい。

シフトは定番のストレートタイプ。スバルのシフトはギア同士が明確に離れていて操作ミスが少ない点が素晴らしい。

パドルシフトで多段式ATとして操作できるモード付き。坂道でエンジンブレーキを掛ける際は、いちいちシフトを触らずに左のパドルを数回引くのが良いだろう。

スッキリとしたセンターコンソール。スマホ用の置くだけ充電があれば有難かったんだけど…

カップホルダーは思っていたより車両後方側に配置されるが、走行中に飲んでいてもストレスを感じることは無かった。

メーターはフル液晶で、UIも洗練されていて見やすい。メタル基調な文字盤の背景もカッコ良い。どことなく初代のレクサスGSを思い出す。

ウインカーが従来型に戻ったのは神だ。行ったきり戻ってこない電子式ウインカーは操作が煩わしくて走行中に注意力を奪って来るため、周りに流されずに見送れたのは本当に素晴らしいことである。

実走行インプレッション

レヴォーグに比べて少しだけリフトアップされているぶんで乗った瞬間は少し大柄に感じるが、元のサイズもコンパクトで乗り味にクセもないのですぐ馴染む。

全体的にこのレイバック、初心者にも長年色々なクルマを乗ってきた人にもおすすめできる万能車であるぞ。

さっき言った通りナビに油温計が出せるので、走り出し直後は暖機運転の目安に、長距離走行時もエンジン負荷の指標に出来るので非常にありがたい。

ターボエンジンということもあり、暖まって来るのはそこそこ早いぞ。

パワートレイン

まずはノーマルモードで深夜の東京の市街地を走る。

踏んでからワンテンポ遅れ気味に走り出し、必要充分なトルクを出してくれる。

この間が絶妙で、ゆったりと操作できるので快適で安心感がある。

ベタ踏みするとかなり元気の良い加速をするのだが、ゆったり踏んでいれば大人しく走ってくれる。

免許を取りたての初心者にも安心してオススメできるし、色々乗ってきた熟練者もトルク特性や安心感に安らぎを覚えることが出来る。

トルク特性はEVのようで、街乗りでも高速道路でも、踏んだら踏んだ分だけしっかりと加速していってくれる。特に信号待ちからの発進は非常に気持ちよく、一切の不足なく速度を乗せていくことができるぞ。

踏んでいくと元気のいい音を出しながら、遅くはないけど怖いほどでもないちょうどいい塩梅で加速していく。

エンジン音は気持ちよく響き、気持ちの良い加速感が持続していく。

新東名の第三車線を120~160km/hくらいで走り続けるような場面では最高だろう。

燃費はあんまりよくないが、扱いやすくて万能な優等生エンジンだ。

スポーツモードとノーマルモードを切り替えることが出来る。

スポーツモードにすると僅かな踏力でもグングンと加速していくのを感じられるが、残念ながらズドンと踏んだ瞬間の出足の遅れは健在。

これはWRX S4でも感じたものであり、コーナー脱出時の加速がワンテンポ遅れてしまう。

トヨタ系のハイブリッドのパワーモードであれば、逆に踏み切る前からモーターがフルアシストを入れてズドンと加速してくれる。こっちに慣れているともどかしい。

ブレーキやタイヤグリップについて

ブレーキは踏み始めがフワフワとしているような印象を受けるが、踏み込んでいくとしっかりと止まってくれる。万人向けな優しい乗り味がここにも現れていていい感じだ。

フロントタイヤは雨にも負けずに踏ん張ってくれるため、ブレーキングの限界性能もしっかりと高い。

もちろんコーナリング中もしっかりと支えてくれるぞ。

私は普段トルク大きめのPHVに乗っているため、減速時にただ運動エネルギーを熱に変えて捨てることしかできないのがもどかしく感じてしまう。

またアクセルを離した際の減速感も強くは無いため、箱根や富士山の長い下り坂では意識してエンジンブレーキを使って行きたい。

乗り心地について

段差を超えた直後にちょっとだけ上下に動いてから抑え込む乗り心地。

二往復で揺れを消すような動きをしており、車高が上がった分を乗り心地の良さに転嫁できている数少ない名車だ。

フォレスターやXVと同じ系統の動きで、スバルの中で足回り設計のノウハウがしっかりと確立されのを感じる。

「車高こそ上がっているが安定性のためか乗り心地がゴツゴツと硬い」系のSUVが結構多いため、スバルのしなやかな乗り心地は光り輝いている。

雨が降る深夜の首都高を攻め込んでいても、不安感を感じることは一切なかった。

走行安定性と快適性を完璧に両立出来ていると言って構わないものだ。

ドイツ車は抑え込みが早すぎて、日本で乗るにはアシが硬すぎると思っていた私にはちょうどいい塩梅だ。

家族を乗せて新東名を160km/hオーバーで流しても、速度計さえ見せなければ気づかれないのではなかろうか。

車高を上げているのに高速域での安定性が下がらない。フォレスターの魔法の乗り味はレイバックにもしっかりと受け継がれている。

ハンドリング

動き出しがゆったりとしており、軽い力で操作できる。

それでいてクルマの動きとの一体感があり、路面の状況やタイヤのグリップ状況を感じながら制御をしていけるコントロール性も持つ。

前後のバランスも良好で、アンダーでもなくオーバーでもない自然な旋回フィール。軽快な身のこなしだ。

急ハンドルを切るとXVのようにその場でぐわっと曲がっていく。水平対向エンジンが効いており、フロントが踏ん張ったり足かせになることなくグイグイと入っていく。

ハンドリングには程よく間が持たされているが、不安定感に繋がるようなダルさもない。

瞬間的に車体が浮き上がるようなうねりまくった路面にハイペースで突っ込んでいっても綺麗にといなし、安定した姿勢を維持してくれる。

ほんの少しだけ不安定感を感じることはあるが、クロストレックと比べると無視できるほど小さいものになっている。

カーブの途中で何回も舵角を変える人も、入り口から出口まで横Gを変動させずにクリアする人も満足する万能さ。

初心者が乗っても安全だし、ガチ勢が乗っても楽しく走らせられる。

しかし、雨の日にハンドルを切っている最中に段差を越えると一瞬だけ滑る。

路面のミューが下がっている状況下では、悲鳴を上げるほど強い力でタイヤを押し潰しながら、段差をガタンと超えるような走りはあんまりやらないほうが良いと思う。

ここ数年のスバル車の共通スタイルについて

フォレスター、WRX S4、クロストレック、XV、インプレッサなどのここ数年のスバル車にたくさん乗ってきた中で感じていたことが、レイバックに乗った後に確信に変わった。

車高が上がった分をしっかりとストロークさせ、しなやかに動かしてから飛ばしても不安定にならない程度に抑えるショックアブソーバーの動き。

水平対向エンジンの重心が低いからか、重さを感じずにグイグイ曲がっていくフロント。

燃費こそ出ないけど低回転域からスムーズに加速して高回転域まで気持ちよく伸びるエンジン。

極端に頑丈なわけではないが、重すぎずにしっかりとした剛性を持ったフレーム。

雨の中でもしっかりと踏ん張ってくれるグリップ限界の高さを持つタイヤ。

これに加えてデザインや車内の設計(特に大型のナビ)。

目に見えるところの部品やデザインに限らず、目に見えないところのパーツや味付けなど構成要素が良い具合にメーカー内で汎用ツール化されたというか、技術伝承がしっかりと行われてノウハウが共有されたというか。

何に乗っても同じような完成度で、極端なハズレが無いような状態になってきたのを感じる。

電動化の波には盛大に乗り遅れているが、ガソリン車と悪路走破を長年やってきたメーカーとして1つの終着点に達したのかもしれない。

そんな姿がレイバックだ。乗ってみたくなるだろう?

諸元・価格・グレード

グレードは1.8L水平対向4気筒ターボのLimited EX のみ。新車価格は399万円スタートだ。

程よくオプションを足しながら見積もりを出してみたら、税込で460万円だった。

  • 車体サイズは4770×1820×1570mm
  • 車両重量は1600kg
  • エンジンは1.8L水平対向4気筒ターボ(CVT)
  • 最大出力は177ps/5200~5600rpm
  • 最大トルクは300Nm/1600~3600rpm
  • 最小旋回半径は5.4m
  • タイヤは前後とも「225/55R18」
  • ホイールベースは2670mm
  • トレッド幅は前1560/後1570mm

スバリストは新型車批判をやめろ

私は実は、特段とスバルが好きというわけではないつもりだったが、これだけの完成度で仕上がったクルマを何台も連発させられて心が揺るがないわけがない。

しかしWRX S4においてもレイバックにおいても、運転してみると世間のイメージからは想像も付かないくらい素晴らしいクルマに仕上がっているのを感じる。

かつてのインプレッサのような、軽いだけの貧弱なボディーにパワーだけあるエンジンを載せた、危なっかしいあの頃の姿はない。

すっかりと優等生になってしまった、スバルブランドの一つの終着点になる一台なのだ。

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