タイトルで「デミオ」と書いたが、今回乗っていくのはマツダの「2」だ。
私は個人的に「マツダ車で一番良いの、デミオ説」をずーっと持っていたため、ゴールデンウィークの早朝を利用して、自分で検証する。
なお、今回の試乗車は、タイムズカーシェアで借りた。
試乗車のスペックについて
例によってカーシェアでは、最廉価グレードが選ばれがちだ。今回のグレードは「15S」だと予想する。以下の諸元ページから、いくつかピックアップして紹介する。
- 新車価格は154万円
- サイズは4065×1695×1500mm
- 車重は1060kg
- エンジンは1.5リッター直4自然吸気
- 最大出力は6000回転で110馬力
- 最大トルクは4000回転で141Nm
- FFの6速AT
- タイヤサイズは前後とも「185/65R15」
- 最小旋回半径は4.7メートル
ちなみに、グレードごとの詳細な違いが知りたい方は、以下の記事を参照して欲しい。
どうやら、上位の1.5リッターのディーゼルターボを選ぶと、最大トルクが250Nmまで向上するらしい。
元の軽さが効いているため、街乗り程度の速度域では最廉価グレードでも不満はないが、知っておいても損はないだろう。
外観について
「2」という呼びづらい名称に変わってから、主に顔つきが代わり、メッキの加飾が入るようになった。
「安く乗れる経済的なコンパクトカー」であったデミオを、高級感あふれるマツダブランドに溶け込ませるため、「とりあえずメッキ貼り付けて高級感出しとけ感」があるように感じて、個人的にはこのデザイン、あまり馴染めない…
リアから見れば、誰もが慣れ親しんだデミオだ。
偉大なる日本のコンパクトカー試乗を、昔から担っているデミオの後ろ姿だ。
ちなみに、細かい話にはなるが、空力を意識しているのだろうか、給油中に、リアガラス脇に謎のカバーを見つけた。
こういう自動車メーカーの細部のこだわり、わたしは好きだ。
内装について
新車価格が150万円であること、最廉価グレードであることを考えると、褒め称えたいレベルで良い。
「高級感」という言葉は少し似合わない気がするが、安いクルマらしく潔いほどのコストカットを行いつつも、その形や造形には、マツダ車のブランドを残す。
相変わらず開発陣の、コスパに対する努力を感じられる。
運転席に座ってみよう。大きな感動は無いが、良い車内空間だ。
「これで良いじゃないか」と思ってしまう。
各部の簡素さや装備の不充分さこそあれど、安くアシが欲しいなら、コレを買っておけば不満はあまり出ないだろう。
ここから先は、内容に関する細かい話をしてみよう。
まず、パワーウィンドウと、ミラーの調整部分には、カーボン柄の装飾が入る。
アシスト装備系は、運転中に押そうとすると、ハンドルがジャマで危ない。
自動ブレーキやブラインドスポットの警告、車線逸脱警報など、一通りの装備はついているようだ。
最廉価グレードらしく、エアコンはマニュアル。
CDを入れる口もあるのが驚きだ。地方在住の、年配の方にも買ってもらおうとしているのだろうか。
センタコンソールは簡素だ。
ブレーキホールドが無いのが残念なところだが、Dレンジからシフトノブを右に倒せば、マニュアルシフトが可能になる。坂下りで重宝する機能だ。
シフトノブの下は、スポーツモードとノーマルモードの切り替え。
メーターは簡素で、タコメーターすら無い。左側の「MAZDA 2」は、走行中も「MAZDA 2」だ。
潔いほどのブランク。エコアクセルメーターもないが、廉価グレードのメーターなんて、こんなものだろう。
エアコン吹き出し口は、車格に見合わぬ高級感を持つ。
全方位に動かせることに加え、中央のノブを回転して、奥を閉じることも可能だ。
カーナビの画面は、2017年発売の車種として見ても、さすがに小さい。必要充分ではあるが。
忘れる前に書き加えておくと、カーオーディオの音質はいい感じであった。
これがカギである。後ろ側から物理キーを引っ張り出すことも可能だ。
なんかGT-Rとそっくりだな笑
またまた忘れる前に書いておくと、リアのワイパー用のウォッシャー液は、ハイマウントストップランプ右側の、小さい口から元気よく噴射される。
形状的にリアガラスは風が当たらず、汚れが溜まりやすそうなので、頼もしい機能だ。
試乗インプレッション
さあエンジンを掛け、出発していこう。
乗り心地について
意外にも硬く、結構コツコツとしている。
段差を越えたときも、ダンパーはわずかにストロークしてくれるが、車重の軽さと合わさって大きく身体が揺さぶられてしまう。
あまり快適とは言えないが、許容範囲内だと言える硬さだ。
アシが硬められ、動きが抑えられることによって、走行安定性は高まり、しっかりとした走りが手に入っているため、良いトレードオフなのではないだろうか。
ステアフィールについて
意外にもゆったりとしている。
ハンドルを揺さぶっても、ワンテンポ遅れてから追従する。
それゆえ、急激にはロールしないので、負荷を掛けていっても、安心感がある。
年配の方向けというか、急ハンドルを行っても、急旋回はしないようなステアフィールだ。
ハンドル自体は軽く、センター付近もクイックだ。
軽さゆえ、フロントタイヤとの接続感や、クルマ全体の挙動の一体感はあまり無い。
だが、スポーツブランドではなくて、普通のコンパクトカーなんだから、これで充分だろう。
パワートレインについて
元がエコを優先した小排気量エンジンであるため、走り出しからそこそこ元気よく回る。
「トヨタとレクサスの中間」といったレベルで緻密に組まれ、静かに回るエンジンが多いマツダ車のなかでも、ひときわ元気に、荒々しく唸るエンジンだ。
製造過程での緻密さを削って、安さを実限しているのだろうが、中回転域に、マツダ車特有の声のようなものを感じる。
この元気の良さ、むしろガソリン車に乗っている感が出るので、個人的には好印象だ。
ただ、CVTではなく、多段式ATであるため、頻繁に生じるシフトショックがどうしても気になってしまう。前後に揺さぶられる不快さと、多段式ATであることよる優位性は、釣り合っていないように思う。
タコメーターがついていないので、どこまで回すことが出来たか分からなかったが、加速は結構速い。
エンジンの音の乱暴さと合わさって、迂闊に踏み込めない。
この手のコンパクト車あるあるの「絶対的な加速力が無さ過ぎて、円滑な走行や安全な合流に師匠をきたす」といったことは全く無い。燃費性能も良好で、出力や官能性も併せ持つ。
たいへん良いエンジンだ。
その他
ステアリングの素材は、レザーなのだろうか?
プラスチックだと判定するには、握り込むと凹んでいくような感触があるため違う。でも本革らしくはない。謎の素材だ笑
アイドリングストップは、一定速度以下でどんな状況だろうと作動するのではなく、停止後に、ブレーキを奥まで踏み込むことで、始めて作動する。道路状況に応じた判断ができるため、すべての車種がこういう制御をしてくれればいいのに…
運転するにあたって、なんの困難も、苦労も無かった。本当に普通に乗れてしまう。視認性や操作系統の配置、車体サイズなど、良く作られているのだろう。
まとめ
経済性・走行性能・官能性、すべてが最高だ。
いまグランツーリスモをプレイして、「フィット・ヴィッツ・デミオ」の中から1台だけ選ぶなら、私はデミオを最初の相棒にするだろう。
マツダ車が好きで、地方住みで、とりあえず安くクルマを買いたいなら、選択肢はひとつだ。
新車価格だって100万円前半なので、買おうと思えば、これだけ良く作られたクルマが誰にでも買える。
「マツダブランドは顔つきだけ」なんていうことは決して無い。この価格の中で、やれることをやって完成させてある。
面白い体験だった。
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