XC40リチャージは長旅でも疲れない爆速SUV【インプレッション】

試乗インプレッション

何時間乗っても全く疲れない乗り心地で、少し窓を開けただけで気持ちよい風が入り、乗りやすいサイズで、静かなのに加速はハチャメチャに速くて積載性も良好。

ボルボのEV、実はスーパースポーツだった【C40 & XC40】【精密レポート】

約700万円のボルボのEVクロスオーバーであるXC40リチャージはそんなクルマだ。

C40リチャージとは明確にキャラクターが異なっている。

XC40はコンフォート重視の万能車、C40リチャージはSUV版電動GT-Rだ。

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内外装のあれこれ

内装はリサイクルした素材を多用して作られたらしい。新車価格が700万円だと考えるとすこし物足りない気がしないでもないが、個人的には上品だと思う。

エンジン始動ボタンが存在しない独特な使い勝手

このクルマは使い方にクセがある。始動・停止のプッシュスタートボタンが存在していないのだ。

ドアノブを引くと普通に開錠されるが、あとはブレーキペダルを踏みながらDに入れて、ブレーキを離すともう発進する

動き出したあとは、周囲確認でもしながらシートベルトを付けよう。スムーズに発進できる。

逆にエンジンを切って降りたいときは、Pのボタンを押したら降りて施錠するだけ

わざわざキーのボタンを押さずとも、離れれば勝手に施錠されるっぽい。なので極端な話、ドアを閉めたら歩き去るだけで良い。

慣れれば乗り込んだ瞬間に走り出せるので効率が良いが、人命を簡単に危険に晒せる自動車としては少々簡略化しすぎているのではないかと思ってしまう。

この手頃さはしっくりこないが、まぁ慣れの問題なんだろうなぁ…

むしろボタンを押すために身体を曲げたり目で見えないところに指を持っていったり。この動作のほうが非効率的でアホだとみなされる時代が来るのかもしれない。

道具が抱えるリスクは使い手の立ち回りでカバーするのだ。

スマホ連携前提のインフォテイメントシステム

センターモニターのインフォテイメントシステムは、スマホの使い勝手を延長したような構成となっている。

カーナビはグーグルマップ前提。カーオーディオもスマホ連携前提。

(まぁ私はスマホを接続してみてもなぜか音楽が鳴らなかったけど…)

空調システムは下から操作パネルを引っ張り出すような設計だが、その部分が小さすぎて非常に操作しづらい。何を開いていても常に最下部にエアコン関連の操作系は表示されているが、テスラのほうが遥かにマシだった。

なおメーター内に地図を表示する機能は神だ。

これから先のカーブの険しさや道路状況を一瞬で知ることが出来るので、ドライビングプランを立てやすくオーバースピードで突っ込んでいくようなリスクがほとんど無くなる。

これも事故を防ぐための安全機能なのだろう。

ボルボの交通事故検証チームはかなり真剣に事故現場の分析をしているらしいのだが、北欧の山奥で、知らぬ間にオーバースピードで事故って散っていったクルマたちがたくさん居たんだろうなぁ…

その他のあれこれ

嬉しいことにサンルーフ付きだ。実際に開く。

ウインカーは左。

ゴテゴテとしたスティックで、フォグランプのスイッチが上下に分かれている。

右がワイパー。先端はリアウィンドウのワイパーの操作だ。

ハザードが左端にあるのは左ハンドルの流用っぽいが、使い勝手は悪くない。

フロントのラゲッジスペースはそこそこの荷物が入りそうだ。

実走行レポート

サイズ感や取り回しについて

「横幅が1875mmもあるのにコンパクトを名乗るのか…」と思っていたが、乗ってみたら思っていた以上にスッと身体になじんだ。

横幅は大きさを感じない程度であり、前後には短めで視点も高い。

SUVはこれくらいのサイズに収まっている方が小柄で良い。30km/h制限の草木に浸食されたワインディングでも対向車を気にせず走れる。

乗り心地について

乗り心地はすこぶる良い。

なぜかほとんど揺れず、不快な衝撃や疲れに繋がりそうな振動とは無縁のライディングが楽しめる。

アシはそんなにストロークはしないのだが、揺れをしっかりと吸収してしまう。

そのためフレームにほとんど衝撃が来ず、「あれ、こんなに路面良かったっけ????」と誤認してしまう。

このクルマで道路工事後の走行評価を行えば、税金の中抜きが捗りそうだ。

カローラクロスとRAV4のいいとこ取り。

長距離でも疲れる気がしない。

このクルマで長旅に出られる人々がうらやましくてしょうがない。

ただシートの背面、特に首の後ろが当たる辺りがちょっと硬いので追加のクッションは欲しい。

二列目はちょっと簡素で寂しいがスペースは充分。前後の長さを控えめに抑えたSUVだと考えると特に問題はない。ただEVなのに二列目の足元の中央が盛り上がってるのが人によっては気になるかも。

速すぎてシートに叩きつけられるような加速性能

走り出しは穏やかで、ペダル操作に対して速くもなく遅くも無い感じなのだ。

しかし7~8割ほど踏んでいくと意味不明なくらいの加速力が出始める。

ランエボのXと数値上では同等の約400Nmの加速力が時速30km/h程度からドカンと炸裂するのだ。

これ法律で規制したほうが良いだろ… というレベルの加速力。

加速が速すぎる。よく考えずにベタ踏みするとバンッとシートに叩きつけられるハメになる。

120km/hあたりから鈍って来るが、低速域からの出足の早さはR35に並ぶほど。あの見た目や走りだしの穏やかさに対して、あまりにも加速性能が鋭すぎる。100km/h以下の加速感は400馬力級のスポーツカーに勝るレベルにあり、迂闊に踏み込んでしまった場合を考えると危険すぎるのだ。

安全だけ考えるならボルボは自主規制したほうが良かったろう。しかし、こんな状態で世に出たおかげで気持ちの良い走りを味わえる。

なおあまりにも加速が強すぎてフロントが浮き気味になっているようだ。

加速中は僅かに接地性が削がれ、ハンドルも異常にガタガタ震えるようになる。

これが素直に危なさすぎるのだ。

SUVであるが故の車高の高さとバネ下の重さに浮き気味なフロントショックと路面の段差が合わさることで起きる振動。

さっき路面が綺麗になったと錯覚するような乗り味だと言ったが急加速時は逆。パッと見はフラットでもハンドルがブレまくるので油断が出来ない。

なおモータートルクが大きいおかげで回生ブレーキも強い。

しっかりとグリップしてくれるフロントタイヤと高い安定性のおかげで、ダウンヒルも特に怖くない。

ハンドリングについて

フラットな姿勢ですぐにビシっと安定し、ちょうどよい応答性でスパッと走るので安心感があって気持ちいい。

旋回時間が長いコーナリング時も安心して穏やかにタイヤに負荷をかけられる。

タイヤのグリップ限界もしっかり高いため、慣れてくれば大胆なコーナリングを行っていける。

バネ下重量や腰高な動きが気になりそうな20インチのホイールでも、そこまで乗り心地やハンドリングが悪化してないことには驚く。

強い負荷が掛かる場面では車高の高さとホイールの重さがネックとなるような動きが覗くが、基本的に気づくことすら出来ないようなレベルに収まっている。安心してペースを上げていけるぞ。

また後輪駆動になっているため、旋回中に急加速を入れてもフロントタイヤのグリップが破綻しずらい。

後ろが沈みながら加速しようとしつつ、前のタイヤには余裕が残る。

そのまま強めの旋回を続けていると軽くドリフトしようとする。

その際の動き出しも自然。

どのような原理でテールスライドが起きるのか、前後の動き方やタイヤ負荷の変動をもって体験できる。

FRという駆動形式がよく分かり、もっと好きになれる乗り味。

加速性能も安定性も、タイヤのグリップ限界もすべてが高水準だから為せる技。

乗り物の動きがよくわかる。プロが乗っても楽しめそう。むしろ熟練者にほど味わって欲しい。

ただ急ブレーキは苦手。

しっかりと制動力こそ出てくるが、重たい車体をガッツリ止めるにはタイヤのブレーキシステムも全体的に能力が不足気味。

外から見たら頼もしいブレーキが入っているんだけどねぇ…

減速においては無理はしないようにしたい。特に雨の日や荒れた路面での制動距離の伸びは酷そうなので、ペース配分を工夫して最初から控えめな減速で済むようにしておこう。

このクルマをオススメしたいのはこんな人(C40との比較もあり)

SUVは買うんだが運動性能は犠牲にしたくない

運動性や安定性自体はC40リチャージのほうが上だ。

しかしXC40自体も全く悪くないぞ。

ゆったりクルーズもハードなドライビングもしっかり楽しみたい

XC40はコンフォートにパラメータを振っている。乗り心地も良いしサンルーフも開く。

ゆったりと流す速度域も快適に行きたい人にオススメ。

大人も荷物も快適に載せられる容量と、運転のしやすいサイズを両立したい

私はちょっとデカい気がしているが、運転フィールや世間での感覚的には乗りやすいサイズに収まっている。

また車内にも割としっかりと荷物が積めるし、大人を後ろに載せてもそこまで辛くないだろう。

長旅によく行く。長距離で疲れないクルマが良い

素晴らしい足回りを持っているため長旅でも全く疲れないだろう。

ドイツ車のようにゴツゴツせず、一部の日本車のようにダルッダルでもない。いい塩梅だ。

私が乗って来たクルマの中で、もっとも疲れなさそうだ。

「静かでもGT-R並みに加速が速いのは魅力的だ」と思う

世間の車好きは音がうるさいクルマを好むようだが、私はこの静かさと速さの両立を知るとこっちのほうが魅力的に感じる。

稀に見る極上の大当たりショックを持つクルマに乗りたい

乗り物の足回りは何km/hで走っていても体感することになるものだ。

いわゆる「当たり」のショックアブソーバーを持つクルマに日常的に乗ることに対して幸せを感じるなら、XC40で後悔することはない。

主張こそ控えめだが、しっかりと上質で高級に仕上がっているクルマが良い

新車価格で700万、中古で450万円ほど出せるならもっとイカつい高級車も買える。

でも自分はボルボのXC40を買う。

ガラスルーフではなく、実際に開くサンルーフが欲しい

C40リチャージはただのガラスルーフだが、XC40は実際に開いてくれる。

スワイプする必要があることと、窓を開けただけで必要充分な風が入ってくること、あんまり視覚的に屋根が目に入らないことは留意点だけど…

EVであるが故の諸問題が特に気にならない

充電環境や航続距離は、まだ充分とは言えないものだ。分かっている人が買おう。

不満点・SUVであるが故の弱点について

ぐわんぐわんと揺れるような動き(気づかない人もいるレベル)

SUVであるが故の運動性能のデメリットは消えていない。

要所要所でぐわんぐわんするような動きが出る。

おそらく偏った状態でショックが押し潰された際に、上としたが別々に動こうとしてしまってハンドルがブレる。

しかし20インチのホイールを履いておきながらこの程度に収まっている点は素晴らしい。

ちゃんとエンジン始動・停止は専用ボタンで欲しい

電動パーキングブレーキとブレーキホールド機能も専用ボタンで欲しい

パワーモードが欲しい。かなり踏み込まないとせっかくの加速力が立ち上がってこない

せっかくの加速力だが、そこそこ踏まないと立ち上がってこないのがもったいない。

バック駐車中にドアを開けると急停止させられる

これは電動パーキングブレーキ搭載車の中では珍しくない動作なのだが、バック駐車中にドアを開けるとワンテンポ置いてから急停止させられる。

110km/hあたりから上で加速が鈍る

高速道路には乗っていないので詳しい検証は出来なかったが、自前の加速力も110km/hを超えるあたりから鈍り始めていた。

次に乗る機会がもしあれば、高速道路でも乗ってみたいものだ…

試乗車の諸元・スペックやグレードについて

上位グレードのアルティメットシングルモーターだ。新車価格は719万円。

  • サイズは4440×1875×1650mm
  • 車両重量は2030kg
  • 最大トルクは418Nm
  • 最大出力は238馬力
  • 最小旋回半径は5.7m
  • フロントタイヤは「235/45R20」
  • リアタイヤは「255/45R20」

上位グレードは20インチ、通常グレードは19インチとなる。

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