三菱のSUVの中でよく比較される、アウトランダーとエクリプスクロス。
今回乗るのはエクリプスクロスのPHEVだ。
冒頭のまとめ
電気のアシストをしっかりと受けて、街乗りもスポーツ走行も必要充分に気持ちよく走れる。
旋回初期のフワフワ感は恐怖だが、一旦ロールを収束させてしまえば俊敏な走りが楽しめる。
外観はイケているが、内装には2015年ごろの雰囲気が残っており今新車で買うには辛い。
外観について
デイライトをアクセントとして上側に置き、前照灯は下側に隠すという最近流行りのデザイン。
この手のデザインはやけに違和感がある車種が多いが、エクリプスクロスは日本刀・手裏剣みたいでカッコ良い。
忍者っぽさがある。和風だけど先進的で好きなデザインだ。
メッキの入れ方もしつこくない。
吊り上がった目つきと八の字の踏ん張り。オンロードで俊敏に走りそうな要素とオフロードにも強そうなイメージの両立。
数が売れるゴテゴテ神殿のようなデザインと上品さの両方を実現。
前照灯のモジュールもアウト側のラインが下側で八の字のラインと繋がり、円弧を描くように配置される。
これがアウトランダーだとサクランボみたいにもっこりボッテリしてしまう。顔つきのカッコ良さではエクリプスクロスに軍配が上がるだろう。
時間が無かったので後ろ側はしっかりと撮っていないが、こちらも忍者のマキビシのような形状をしている。
尻上がりで疾走感のあるデザインが特徴だが、ナンバー灯がクリーム色なのが気になる。
エンジンルーム。ボンネットはやけに重かったので鋳鉄だと思われる。ダンパーは無し。
横置きのハイブリッドシステムが搭載されている。
内装について
エンジンを掛けるとピーーーという非常にやかましい警報音が鳴り響くのが鬱陶しい。
シートベルト未装着の警告音なのだろうが、Pレンジで鳴らさないように設定できないのか…
内装は少し世代の古い感じが目出つ。
この方のエクリプスクロスは2020年のものだが、内装の質感は2018年に登場した前期型と比べてもビッグマイナーチェンジ程度に留まっている印象を受ける。
2024年に新車で売るクルマとしてはナビ画面が小さすぎるし、エアコンの操作系だって2015~2017年頃のものだ。
日産リーフのような、外観は新しいけど内装の古さが隠せていない状態となっている。
いまコレを新車で買うのか?と思ってしまう…
珍しいことにパドルシフトはステアリングコラム側だ。
ステアリング左側のボタンを押すといつでもカメラを表示させられる。
右はクルーズコントロール関連。時間が無かったので今回はテストしていない。
パドルを引いても多段式ATモードにはならず、B0~B5の間で回生ブレーキの強度が変更されるだけ。
面白いのがヘッズアップディスプレイが電動格納式になっている点だ。
エンジンを始動するたびにウイーンと開いてきて時速のみを表示する。HUDボタンで開け閉めも可能。
センターコンソールはピアノブラック。世間の評判通りキズまみれになっており最悪だ。
またなぜかプリウスシフトを採用。しかもPボタンがシフトの裏にあって押しづらいためプリウスより使い勝手が悪化している。
シフトそのものもデカすぎて邪魔。どうしてこうなった…
シフトパターンの左右にEVモードとチャージ(バッテリー残量維持)モードの切り替えボタンが綺麗に並ぶレイアウトは良い。
リバースに入れるとバックビューモニターが起動するが、そもそもの画面サイズも小さいし、アラウンドビューモニターが端っこに追いやられているため非常に見づらいのが残念だ。
ドライブモードセレクタはシンプルかつ突起がブラインドでも操作しやすく、ブレーキホールド付きの電動パーキングも有難い。
2012~2015年ごろのスバルみたいなエアコン操作盤。
物理なのは有難いが、温度調整のツマミのプラスチック感がチープさを際立ててしまっている。使い勝手は良好。
USBポートとシガーソケットが並んでいるのも良い。
ドアパネルは随所にソフトパッド素材が使われているが、この感触も2015年ごろの雰囲気が強い。
カップホルダーは無難に使えるが、センターコンソールのピアノブラックの傷の酷さが目立ちまくっている。
カーナビは下側のショートカットボタンが完全に液晶になっており、現在地ボタンが変な位置にあったり画面サイズが小さすぎたりするため、2024年に新車で買えるクルマとしては使い勝手は正直良くない。
ただのナビ&オーディオではなく、車両システムと連携されている。
PHVシステムの動作や充電に関する設定が行える。
エネルギーフローの他に、パワーメーターを出すことが可能だ。
これがエネルギーメーターだが、ナビの案内が入ると勝手に画面が切り替えられてしまう。戻すにはもう一度本体設定から開き直す必要がある。ショートカットボタンなどの割り当て機能もない。なぜ・・・
グレード・価格について
車体番号を元にグレードを調べたところ、上位のPグレードであった。
なおエクリプスクロスのPHEVの新車価格は430~460万円ほど。
こっちはガソリンのほうのグレード一覧。270~350万円となっている。
これはもともと2015年ごろから300万円程度で売られていたクルマに、150万円足してPHVシステムを乗っけたクルマであることを念頭に置いておく必要がある。
主に内装の質感において古さやベース車の価格帯の要素が出てくるため、正直言ってコスパは悪いと思う。
運用コストを踏まえても、PHVではなく普通にガソリンを買ったほうが良いと思うぞ。
さて今回はPHVモデルの諸元を書いておこう
- 車体サイズは4545 x 1805 x 1685
- 車両重量は1920kg
- エンジンは2.4リッターの直4自然吸気
- エンジンの最大出力は128馬力/199Nm
- モーターの最大出力は前82PS/後95PS(足すと117PS)
- モーターの最大トルクは前137Nm/後195Nm(足すと332Nm)
- バッテリー容量は13.8kWh
- 最小旋回は5.4m
- ホイールベースは2670mm
- 最低地上高は185mm
- タイヤサイズは前後とも「225/55R18」
なおガソリンモデルの場合、車両重量1450~1550kgに対して1.5リッターの直4ターボが150馬力/240Nmを発する。
実走行インプレッション
取り回しについて
前後に4545mm、横幅は1805mmで視点は高いので、狭いところでは大柄に感じる場面があるが割とスッと馴染む。
ただですら小さい画面をさらに分割するので細部がほとんど見えないが、一応アラウンドビューカメラシステムも搭載されているので狭いところでの駐車も意外と何とかなる。
フォレスターとほぼ同じ、ちょうどいいデカすぎないサイズ感が良い。
パワートレイン
走り出しから全域でモーターアシストが入る。ので元気の良い走り。
ハイブリッドシステムのメーターも、EVモード用のゲージが伸びきったところにタコメーターが現れるものとなっている。
基本的に電気で走行し、最終的にエンジンが掛かって来るようなものとなっている。
ノーマルモード・エコモードからTARMACモードに変更するとハイブリッドシステムのメーターの初期位置が変更されるのが非常に面白い。
ノーマルモード・エコモードはモーター主体のエコな走り、TARMACモードはエンジン主体でガンガン加速していく気持ちの良い走り。
公式サイトによるとS-AWCというシステムが入っているようで、旋回中もアシストが得られるらしいが、運転していてよくわからなかった…
いつか凍結路を走ってみたいものだ。
ベタ踏みするとエンジンの出力ゆえ普通よりちょい速い程度の加速に収まる。
乗り心地
車体にほとんど衝撃が入ってこない良い乗り心地。
ダンパーのストロークとバンプラバーだけで揺れの大半を吸収し切っている。
ちょっとだけストロークさせた後のバンプラバーへの入れ方・バンプラバーの潰し方がすばらしく、ここで乗り心地の良さを作っている。
バンプラバー部分がしっかりとした厚みを持っており、この分でしっかりと吸収しきっているおかげでほとんど揺さぶられない。
ハンドリング
旋回初期がフワフワで、姿勢が安定するまで怖い。
一旦安定させてしまえば良好な旋回性を誇るが、どこまで行っても悪い意味でのSUVらしさが残ってしまう。
EVに慣れていると前後のバランスが微妙に合っていないのも気になる。
ペースアップしていくと、どの領域においても常に不安定感と共に走ることになる。
慣れれば普通に乗れるが、安定性の高いセダンタイプを知っていると満足は出来ない。
シート
座った瞬間にクッション性を感じる肉厚シート。
サイドサポートの部分はスポンジのように柔らかく、かなり珍しい厚みを持つ。横Gにもしっかり踏ん張れる。
静粛性とオーディオ
時間なかったので厳密にジャッジしていないが、そこそこな静かさで快適性は不満なし。
オーディオも頑張っている。
純正特有のショボさはあるが、低音のドンドンから高音の響かせ方、音量までよく頑張っている。不満や交換の必要性はそこまで高くない。
車中泊適正について
時間が無かったのでざっくりとしたレビューになるが、二列目を倒すと良い具合にフラットな空間が手に入る。
実車で検証できなかったので何とも言えないが、シートを倒した際の前後の長さが1540mmらしい。
二列目の足元のスペースも使う必要がありそうだ。