「キャンバストップ」という、2024年ではフィアットの500のみが採用している珍しいオープンカーであるDS3カブリオ。
ロードスターのオープンカー要素と、ハチロクのスポーツカー要素、スイスポやデミオの実用性を併せ持ったような一台だ。
キャンバストップって何?普通のDS3との違い
オープンカーなのだが、屋根が布地になっているため画像のように開けることが可能だ。
私はNCロードスターを持っているが、比べても遜色ない解放感をいつでもどこでもスイッチ1つで得ることが出来る。
キャンバストップのメリット
キャンバストップには、ただのオープンカーにはないメリットが多数ある。
最も良い点はいつでも閉められることだろう。
外気温が40℃に迫る猛暑の中で2時間ほど走ったが、涼しくなってきたら開けて風を楽しんで、太陽光線に焼かれそうになったら閉めて涼むということが出来る。
トンネルが近づいてきたら閉めることで耳の鼓膜を守ることも出来る。
また開ける場所を考えないと「恥ずかしい」となりがちなオープンカーと違って、どこで開け放っていても周りの人にオープンだと気づかれない。
全方位への解放感では流石にオープンカーに一歩譲るが、NCロードスター乗りの私は全く不満に感じなかった。
それどころか幌屋根のNCロードスターは快適性が色々と終わっているため、しっかりとした実用性と走行安定性を持つDS3カブリオはロードスターの完全上位互換にも見えた。たぶん乗り換えると思う。
余談だが、レクサスのLC500のような内側で何重にも反射するタイプのテールランプを持っている。
リアはこれだけ美しいのに、フロントライトは内側が結露している。
まぁ古くなってきたクルマではよくあるものだけど。
カブリオの方のDS3を選ぶデメリット
メカニカルリスク
ヤフオクで1台だけ、屋根が動かないだけのDS3カブリオが捨て値で売られていたのを見た。
屋根はモーター駆動だが、当然故障のリスクがある。もちろん雨漏りだって普通の屋根よりはリスクがあるだろう。
私は気にせず買うつもりだけどね。
高い&タマ数が少ない
普通のDS3は捨て値で売っているが、DS3カブリオのほうは全体的に高くて数が少ない。
荷室と二列目の使い勝手が悪化
2ドアなのはDS3と同じだが、屋根が付くせいでトランクの開口部が非常に狭くなって二列目荷室の使い勝手が終わる。
ただ個人的には、運転席のシートを倒して寝られるようになるだけのスペースができたこと、やろうと思えば二列目にも人を載せられるようになることでオープンカーとしては大幅にプラス。
失礼ながらこんなクルマの二列目なんか終わってるだろと思っていたが、座ってみると意外にもスペースがちゃんと用意されていた。
トランクルームの広さ自体はロードスターに負けてそうだが、乗り物としての使い勝手ではDS3カブリオが完全勝利している。
運転していて感じた不満
あまりにも暑かったら快適に乗れない
エアコンの効き方にかなりムラがあるので、気温が35℃を超えて太陽光線が注ぐ状況下ではエアコンの風の音だけうるさくて全く涼しくならない。
窓を開けたところで熱風しか入ってこないし、屋根を開けても太陽光線に焼かれるだけで全く涼しくならない。
真夏日の日中は諦めよう。
エアコンの風量設定が離れすぎ
全部で8段階の風量調整が可能なのだが、単純に最小~MAXを8等分したものではないのだ。
例えば6段階目ではあっついので7段階目にすると、急に風量がうるさくなる。
実質風量調整は4段だ。大型トラックのトランスミッションのように、4段にハイとローが付いているような風量調整。
四つ葉のクローバーの葉っぱに見立てたデザインは面白いが、30℃を超える暑さでは風の音がうるさくなりすぎて不便だった。
カップホルダーが無い
このDS3、なぜかカップホルダーが無いのだ。欠陥である。
実はセンターコンソール後方の2列目用の足元にあるのだが、すぐ倒れて使い物にならない。
ペットボトル飲料をこうやってぶっ刺しておくしかない。
私だったらビス留めで強引に増設しようとすると思う。
カーナビが付かないが、純正オーディオが中途半端に車両と連携してるせいで外しづらい
エアコン操作パネルの上側に小さな液晶、下側に操作パネルが付く。
これが上下で分かれていなかったり、車載システムとの連携が無ければ強引にぶった切って社外性のカーナビを裏側に放り込むことも出来た。
こんな状態ではカーナビが欲しかったらスマホホルダーを使うほかない。
カップホルダーとカーナビ関連はクソ。
ついでに言うと純正オーディオ、Bluetooth連携が出来るのは良いが、エンジンをかけるたびに「source」ボタンを2度押ししてBluetoothを設定する必要があるのも不便だった。
屋根が最後まで自動で閉まらない
ボタンを長押しすると自動で屋根が動いていくが、閉めるときは直前で止まってしまうのだ。
ちょうどサンルーフと同じくらい開く。
左ハンドル仕様を流用したトランスミッション
これを見て「左右が逆や!」と思ったはずだ。
メルセデスベンツが最も安全なシフトを目指して開発し、期限が切れてからみんなが真似しだしたコレ。
左ハンドル用をそのまま使うと事故誘発シフトパターンになりかねないのである。
すぐ慣れたので特に気にしてないけど。
ステアリング周りのスティックが隠れてるせいで使いづらい
正面から見えないのが美徳とされているのか、ウインカー、ワイパー、クルコン、オーディオのスティックがすべて奥側に配置されていて見えづらい。
特にクルコンの操作。上下に動かすのではなく、裏からボタンを押すのだ。
慣れれば大したことないが、なぜこんな面倒なことをするんだ..
多段式トランスミッションのガッタガタな動作
低回転,クリーピング領域での動作がギクシャクする。
不満ならマニュアルに乗るしかない。
キックダウンの動作のラグ
ちょっと踏むと気持ちの良いトルクで進んでいくが、強い加速が欲しい時は厄介だ。
かなり踏み込んでから、じわーっと加速力が勢いをつけて立ち上がって来る。ムラもラグがあるので普通に乗りづらい。
これも嫌ならマニュアルで乗るしかない。
というかもともとMT限定の車種だったし・・・
エンジンルームで火災が起きそう
これを見て欲しい。
まだ1万キロ台なのに、エンジンルームの吸音材のようなものがボロボロと剥がれている。
なんかの拍子で火災のキッカケになりそうで怖いものだ。
エンジンルームがむちゃくちゃ熱くなる
排気量自体は小さいが、ターボ車の宿命としてそんなに回してないのにエンジンルームがむっちゃくっちゃ熱くなるのだ。
不安になるレベルの灼熱。毎回ボンネットを開けて冷やすか、自分で穴を開けてダクトでも作ろうか迷うレベルで熱い。
熱すぎてボンネットを開けるだけでもヤケドしそうになる。
なおボンネットを開けるためのラッチは助手席足元だ。左ハンドル要素がここにもある。
ちなみにシトロエンとプジョーのマークが並んでいる。
DS3カブリオは途中でシトロエンから「DSオートモービル」というブランドに移行したので、カーセンサーで探す際に面倒くさいという地味な話がある。
ちなみにアンダーカバーは装着されていない。
ちょっと世代遅れ感がある。
150km/hあたりから上の加速が遅すぎる
パワフルな加速をしてくれるターボエンジンではあるが、140km/hあたりからプリウス以上に加速しなくなる。
踏んでも踏んでも速度が伸びて行かない。
せっかく優秀なシャシーを持っているが、エンジンが小さくなったマイチェン後では絶対的な高速域での加速性能が弱くなっているようだ。
実用域では普通にグイグイと走ってくれるので不満はないが、せっかくの優秀なシャシーを活かし切れないのは残念だ。
上はメーターの画像だが、二階建てのリアスポイラーのように穴が開いている。
また針は腕時計のように動くのでカッコイイが、少し小さくて見づらい。
実走行インプレッション
遅くなったがこれまで通りのインプレッションレポートも書き残す。
一部内容が被るが、こっちはこっちでまとめていく。
全体的な印象
オシャレで優雅な見かけに反して、ハチロクのような本格派スポーツカーの乗り味だ。
ゆったり流していても、スポーツカーのようなダイレクトな乗り味やグイグイと来るトルク感を味わうことが出来る。
スポーツカーとして買って乗るなら走る楽しみに快適性や実用性が付いてくるので最高だが、ゆったり快適に流せるクルマを求めているなら注意した方が良い。
エンジン
ターボが低回転域からしっかりとトルクのアシストをしてくれているので、ちょっとした場面でもグイグイと加速していき非常に気持ちいい。
一旦加速モードに入ると、ジェットエンジンでも付いているかのように押し出されていくぞ。
スポーツカーのような元気の良い音もする。
高回転域ではモッサリしがちだが、トルクに振ったエンジンだと考えれば全く不満は無い。
強いて言うなら140km/hあたりから上の加速性能がちょっと弱いかな。
トランスミッション
DS3カブリオは元々マニュアルトランスミッションしか売っていなかった。
マイナーチェンジでオートマが追加されたのだ。
アイシンの6速ATなので信頼は出来るが、EV時代に乗るには動作に違和感が残る。
低速域はギクシャクするし、キックダウン→強い加速までラグがあるし…
オートマを追加してくれただけでも感謝しよう。
こういうのをいちいち気にする人はMTを買うと思う。
私はラクして優雅に流したいのでオートマを買うだろうが、基本的にDS3はMTで乗るのが良い。
ハンドリング
こちらもスポーティー。
基本的には男女問わず乗りやすい身軽なハンドリングだが、早い段階でロールが収束してブレずに追従していく。
運転する楽しみのあるハンドリングだ。
驚かされるのが旋回時間の長いコーナリングの中盤以降の動きだ。
「これミッドシップか?」と思うほどインがグイグイと入っていくような旋回特性を持っている。
軽量コンパクトで全長が短いぶん、しっかりとした回頭性を持っていて楽しい。
乗り心地・足回り
スポーツカーだと思って乗るべき。
基本的には硬めだが、ある程度はアシをしっかりと動かして路面に追従させている。
耐えられないような領域には行かない程度に動かしつつ、高い走行安定性を実現しているぞ。
ドイツ車ほどガッチガチに抑えないが、そのぶんスピードレンジを下げて、普段乗りや長旅での快適性も犠牲にしていない。
総じていうと良いとは言えないが全く不快だったりダメということはないといった評価。
ちなみに↑はフロントサスペンション。フロントはストラット、リアはトーションビームで、特別な機構こそないが快適性と安定性をスポーツ寄りに両立した良いセッティングだ。
リアの左右を繋ぐビームが見える。
総合評価
「こういう走りをするクルマを作りたい」というコンセプトが明確なので、不快って程じゃないけど硬派なスポーツカーが欲しい人にはうってつけ!
マニュアルもあるし。
オシャレな見かけに反して本格派な走りはみんなのイメージを裏切る。
私はこのDS3カブリオ、秋あたりに乗り換えようと思っている。