【CX-30】開発陣が作りたいものを作った結果

試乗インプレッション

マツダ社の開発陣はスポーツカーが大好きらしい。

CX-60においてもこのCX-30においても、ターゲットを無視して本格派スポーツカーに仕上げてきた。

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冒頭のまとめ

公式サイトには「都会派SUV」と書いてあるが、実態は本格派スポーツカーである。

燃費は伸び悩むが高回転域まで気持ちよくブン回る結構なパワー感のエンジン。

乗り心地こそゴツゴツ硬いが非常に高い走行安定性能。

アンダーっぽさやSUVゆえの腰高感が抑えられたニュートラルかつシャープなハンドリング。

どこか気になるポイントがあっても、それを打ち消してプラスに出来るほどのものがある

これが全ての要素において当てはまるような一台。

外観のイメージと実態の乖離は大きいが、それを受け入れて乗ると楽しめるぞ。

試乗車のスペックと価格

2023年式の20Sだ。新車価格は255万円である。内装の質感や走りを考えると驚愕のコストパフォーマンスを誇る。

  • 車体サイズは4395 x 1795 x 1540mm
  • 車両重量は1420kg(AWDは1500kg)
  • エンジンは2リッターの直4自然吸気
  • 最大パワーは156馬力/199Nm
  • モーターは6.9馬力/49Nm
  • フロントサスはマクファーソンストラット
  • リアサスはトーションビーム
  • ホイールベースは2655mm
  • 最小旋回半径は5.3m

なおディーゼルの場合は1.8リッターのターボの130馬力/270Nmとなる。

内外装関連

外装

タイムズカーシェアで割り当てられたのは青色の個体だったが、おそらくCX-30に最も似合わない色だ。

マツダ社特有の大きなグリルと、ボンネットの面から引っ込んだ位置にあるヘッドライト。

デザイナーが相当にこだわって仕上げたことが見て取れる。

リアエンドの上部はmazda3っぽい造形。

二列目後部の空間を犠牲にしたおかげで綺麗に絞り込まれた後ろ回りになっている。

分厚い樹脂フェンダーは車体を薄く見せることを狙ったらしい。

内装

アナログとディジタルが融合した美しいメーターを持っている。

淡い青色のレザーが一面に使われており、上品さに包まれるような車内空間だ。

エアコン吹き出し口からドアに向かって広がっていくようなデザインがそう見せているのだろう。

以前乗った際は見た目だけ高級感を出した安っぽさを感じたが、年次改良によって大きく質感が改善して高級感が出るようになった。

ステアリングのレザーの触り心地は欧州車に近づいた。

物理ボタンの使い勝手もシンプルで良好。

ダッシュボードもソフトパッド素材に覆われているのでぱっと見の質感が高い。

数千円~数万円で一帯に上質感を出せるのだからトヨタも真似すればいいのに。

物理のエアコン操作パネルは間違いようがない。

廉価グレードはシートヒーターが非搭載であり、それゆえのブランクボタンなのだろう。

センターコンソール側面までレザーが貼られているのは良いが、ピアノブラック調のパネルはキズだらけになっている。

カップホルダーのカバーは閉じることも可能。メルセデスのEQSより遥かに高級感のある開き方だ。

シフトはストレート式。上がシフトダウンになっている。スポーツモードへの切り変えもしやすい。

オーディオとナビの操作系も悪くない。

ナビがタッチ操作に非対応だが、そこまで大きなストレスは受けないぞ。

アームレストは前後にスライドできる。

デザインと引き換えに犠牲になった2列目

二列目のスペース自体は並みだが、シートの角度が立ち過ぎている。

乗っていてあきらかにおかしいと思うレベルで立っている。

デザインを優先してルーフエンドを寝かせたせいでスペースがカツカツになってしまったのだろうか。

またヘッドレストがやけに硬い。

上位グレードのシートがどうなるか分からないが、もう少しクッション性を持たせてくれればいいのに…

以上の理由とアシの硬さから、私はこのcx-30を送迎に使いたくはない。

日常的に二列目に大人を乗せたり、その状態で数十分走るような用事が多いなら私は別のクルマを選ぶ。

オーディオと静粛性

どちらも300万円強で買えてしまうクルマとしては非常に高水準。

オーディオはフロント側がやけに強く鳴っている印象があったが、バランスフェーダーをリア寄りに設定することで改善。

音量や鮮明度も充分。

よっぽど音質にこだわりがあるか、マニアでない限りはオーディオ・静粛性関連で何か手を加える必要はないだろう。

どちらかというとカーナビの案内が入る度にフロントのスピーカーの音量が大幅カットされる割に案内音声が小さすぎて何も聞こえないという問題の方が気になる。

本体設定からナビ音量を探してみたが、既に最大になっていた。でも何も聞こえない。

一時停止や踏切の前でも警告してくれるため、曲がるタイミングでもないのにオーディオが聞こえなくなったら「周囲に何かあるぞ」と警戒度を高めることになる。

カーシェアで数時間借りただけなので、隅から隅まで漁ったわけではないけど…

車中泊適正

前後に4395mmしかないのでそこまで期待していなかった。

実際足を延ばして寝転んでみると頭は二列目足元にあるのだが、フロントシートの間のセンターコンソールのアームレストが逆に良い枕になった。

実走行インプレッション

始動するとメーター内でアニメーションが入る。

気温が15℃の中でコールドスタートを行ったところアイドルアップで始動音がうるさかった。

深夜帯によくクルマを出す私には選べないレベルでうるさい。

ハチロク並みに刺激的なエンジンなのは良いが、もう少し静かにならないものか…

取り回し

小さいの車体サイズと最小旋回半径のおかげで取り回しは非常に良い。Uターンも車庫入れも楽勝。

以前乗った際はハンドルを回した量に対してフロントタイヤが切れて行かない印象があったが、年次改良で標準的なレシオになった。

アラウンドビューモニターは下位グレードには装着されていない。

バックギアに入れるとクリアランスソナーの画面が視界の4割を占拠するため、バックカメラが小さくなってしまっている。

パワートレイン

本格派スポーツカーと同等レベルのエンジン。

少し強く踏んだだけで充分すぎる加速感と元気の良い音を響かせる。

恐ろしいほどの加速力で、オービスなんてあっという間に光らせてしまうような速度が出る。

次に同じことをやったらタイムズから追放されてブラックリスト入りしそうなレベルだ。

ベタ踏みしてやるとバルブタイミングが高回転大出力モードに切り替わるのを明確に感じられる。

恐ろしいほどの加速感とハチロク・ロードスター顔負けの音でブン回っていく。

音ばっかりうるさくて全く加速していかないNDロードスターの1.5リッターエンジンよりよほどスポーツしている。

変速ショックやギアチェンジのもたつきがかなり改善されており、無段階変速機に乗り慣れている身にも実用上ほとんど気になることが無くなった。

初期モデルの中古が安く拾えるのを承知でも、あえて新車を買いに行きたくなるような熟成度だ。

CX-60もこれくらい良くなってくれることに期待しよう。

ハンドリング

切り始めからニュートラル。急ハンドルを切ると恐ろしいほどグワっとインに吸い込まれていく。

前後への短さを活かした旋回性であり、スバルの水平対向っぽいニュートラル加減。

ここまで仕上がってくれていれば、マツダ車によく見られたハンドリングの弱点は無くなったと言える。

しかし荒れた路面でベタ踏み加速をしていると、段差を越えたタイミングでハンドルがガタガタと揺さぶられてしまって怖い。

一般の人がまずやらないような高負荷走行時にちょっとだけ出てくるような動きなので気にするものではないが。

またブレーキについても絶対的な制動力は高く、街乗りマシンとしては特に問題はない。

しかし持ち前の加速力に対して、ブレーキ踏力に対する制動力の立ち上がりが少しだけ緩め。

飛ばして走ろうと思うには少し効きづらくて怖いが、これはパッド交換で解決してしまえばいい。

前回乗った際はSUVゆえの腰高感を隠し切れていなかったが、年次改良で一気にスポーティーになった。

乗り心地

正直言って硬い。ドイツ車やスポーツカーと同じレベルの硬さ。

なおドイツ車並みに足回りが良いのかというと、BMWの118iMスポーツやフォルクスワーゲンのゴルフのようなしなやかさな足回りとは少し系統が違う。こっちはただゴツゴツ硬いだけだ。

段差を越えてもアシはほとんどストロークしてくれず、ゴツゴツと来てしまう。

しかし不快だとか許容できないというわけではない。

慣れてしまえばまぁこんなモンかと思うレベルには何とか収まっているので、CX-30に惹かれた人なら気にせず買えば良い。

ただ一般人に対してはスピードレンジが高すぎるように思う。

オービスが光るようなスピードで高速道路を走ってみたが、全く不安定感が出なかった。明らかに設定速度が高過ぎである。

自分みたいに飛ばす人にはこれでいいが、ターゲット設定的にどうなのだろうかと思ってしまうレベル。

他の人を乗せるような場面ではあまり選びたくない一台だ。一人乗り用だろう。

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