SUVに「手本」があるならフォレスターのことだろう【試乗インプレッション】

試乗インプレッション

悪路走破性・モーターの力をフルに活かした加速力・乗りやすいサイズ・ニュートラルかつフラットで非常に安定した旋回性能・バランスの良い価格設定など、模範となる要素が多く存在するのがフォレスターだ。

どちらかと言えば目に見えないところにコストが掛かった一台。その実力を確かめに行こう。

フォレスターは「SUVの手本」。旋回と制動は説明が付かない領域【インプレッション 試乗】
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試乗車のスペックについて

2021年に初年度登録がなされた、新車価格約330万円の「アドバンス」というグレードだ。

e-Boxer付きの2.0Lの水平対向4気筒エンジンを搭載している。4WDオンリーだ。

上位グレードでは1.8Lのターボエンジンや電子制御ダンパーも搭載する。

  • 車体サイズは4640×1815×1715mm
  • エンジン最大出力は145馬力(6000rpm)
  • エンジン最大トルクは188Nm(4000rpm)
  • モーターの最大出力は10kW(13.6PS
  • モーターの最大トルクは65Nm
  • 車両重量は1640kg
  • 最小旋回半径は5.4m
  • トランスミッションはCVT
  • フロントサスは「ストラット式独立懸架」
  • リアサスは「ダブルウィッシュボーン式独立懸架」
  • 最低地上高は220mm

諸元については例によってグーネットカタログを参照した。

フォレスター(スバル)の歴代モデル・グレード別カタログ情報|中古車なら【グーネット】
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またモーターの特性についてはスバル社の公式サイトで確認した。

詳細 : グレード・価格 | フォレスター | SUBARU
Touring、X-BREAK、Advance、SPORT、STI Sportから選べる、フォレスターのグレード、価格、3Dビューアー、基本スペック、主な装備等をご紹介します。

内外装について

外観

日本刀のようなスタイリッシュなライトまわりが特徴的。

リアバンパー下部は右側にだけマフラーの穴が開けられている。

こうなるくらいならいっそのこと2本出しにするか、隠してしまっても良かったのでは…

と思うがSTIスポーツでは2本出しになっている。

このフォレスターはブレーキが素晴らしい。

外観に特段と目立つような要素はないが、感覚的には日産GT-Rに匹敵するような制動力特性を持っている詳細は後述。

今日は3.5時間ほど借りてきた。名古屋の中心部から瀬戸の峠、山奥のオフロードを巡っていく。

フォレスターを名古屋の中心部の大通り沿いに路駐。クルマは「三井のカーシェアーズ(カレコ)」で借りた。

内装について

新車価格300~400万円という激戦区。

特筆するような高級・上質な素材こそあまりないものの、目に見えないところに掛かったコストを考えれば300万円台として充分な質感を持つ。

メモリー機能付きの電動シートが装備されている。非常にありがたい。

調整幅も広く、座面の高さだけでなく傾きまで変えられるようだ。

全体的なスイッチ類の質感も高い。パワーウィンドウのスイッチはしっかりとした重さを持ってコチッと操作できる。実はウインカースティックにも程よい重さがあり、バチッと操作していける。

内装のスイッチ類の質感は乗ってみないと分からないものだ。

運転席右側にはプッシュスタートボタンとアシストシステム系のスイッチが用意される。

「SRH」というのはステアリング連動ヘッドランプのことだったようだ。

モード切り替えボタンが大きく用意される。左、右、押し込みの3つだ。

XMODEをオンにすると画面は傾斜計に変わる。

その左にはお気持ち程度のコインホルダー的なものと、左フロントを映すカメラボタンがある。

フォレスター自体そこまで大きなクルマではない。このカメラシステムの出番はあまりなさそうだ。

ブレーキホールド付きの電動パーキングブレーキ。

変なクセがなく扱いやすいが、Nレンジ+電動パーキングONの状態でドアを開けると警告音が鳴り響く仕様になっている。ちょっとクルマから降りて何かしたい場面で鬱陶しく感じることがある。

ステアリングの右下にはステアリングヒーターが装備される。すぐに暖かくなってくれる上に熱くなりすぎることがない絶妙なバランスだ。

ステアリングそのものの肌触りも非常に良い。肌触りはすべすべで、握り込むともっちりとする。

一段一段が明確に分かれたストレート式シフト

ストレート式のシフトノブとなっているが、ギアの1つ1つが明確に離れており、変なガタもないので操作はやりやすい。

エアコン操作盤とハザード

ハザードは中央の押しやすく見やすい場所に配置される。(カーナビの下側に付いているが、私は慣れるまではナビの上側に手を伸ばしてしまった。)

エアコンの操作は物理。変にゴチャゴチャとしておらず、初見でも見やすさ・扱いやすさを感じられる。

温度調整ダイヤルは回した際の質感が非常に高い。重さを伴って内部が動いていく。

ワンタッチで二列目が倒れる便利設計

トランクルームの側面にはスイッチのようなものがあり、これを引っ張ると二列目がバタンと秒速で倒れる。

身体を大きく伸ばしたり、いちいち二列目の左右のドアを開ける必要もない素晴らしい装備だ。

試乗インプレッション

取り回しの良さについて

一見するとハリアーやCX5と同じサイズに思えるが、フォレスターのほうがあからさまにコンパクトで乗りやすい

道路幅が非常に狭い瀬戸の市街地でも電柱や対向車におびえることなく走ることができるし、40km/h制限のワインディングでも走行ラインを左右に自由に描いて走っていくことができる。

駐車においては少しだけ大柄に感じる瞬間があるが、全体的に「コンパクト」と言える範囲に収まっておりやりやすい。

静粛性について

静粛性が非常に高くて驚いた。特に60km/h以下の街乗り領域において、あからさまに「なんかこのクルマ静かだな」と感じられる。

街乗り領域では非常に静か。

なお高速道路などでスピードを上げて行ってしまうと風切り音が大きくなっていく。

エンジンとハイブリッドシステム(e-Boxer)について

このフォレスターにはe-Boxerというハイブリッドシステムが搭載される。

(注意:私が乗ったグレードのエンジンは2.0Lの自然吸気だが、上位グレードには1.8Lのターボエンジンが搭載される。)

公式サイトの諸元を見ると、モーターの出力は13.6PSに65Nmである。

しかしこのモーターのアシストを非常に力強く感じられるパワートレインとなっている。

アクセルを強く踏み込むと中央のゲージが緑色に光ってアシストを入れたことを知らせてくれる。

2リッターという排気量の割にやけに加速力が高く、あんまり回さずともグイグイと加速していく。

しかし高速域からさらに踏み込もうとすると微妙に失速感が出る。その領域で初めて、逆説的にモーターアシストの力強さを理解することになる。

スバルのハイブリッドの中では、モーターが大きな役割を担っているのが特徴となっている。

数値にするとたったの13馬力程度だが、60Nmはある加速力とそこそこあるバッテリー容量を持つ。

アクセルを極限まで絞って40km/h程度でゆったり走れば、モーターだけで瞬間的にリッター30を出せる。実用上は22あたりが一つの上限となりそうだけど…

回生力も充分にあり、早い段階からエンジンを切って空走させることが可能。アイドリングストップに毛が生えた程度の機能だったクロストレックに対して、フォレスターのほうのハイブリッドは普通に使えるものとなっている。

気になることとして、モーターのみで発進した後にエンジンが作動したタイミングでそこそこ大きな振動が来てしまう。

XVと比べると大幅に改善しているが気になる人は気になるかもしれない。

また独特な空走感が気になってしまった。

具体的にはワインディングのコーナー出口などで強い加速を入れた後、アクセルを抜いてもまだ加速が続くような感触があった。

エンジンというよりモーターが加速をさせ続けているようにも感じるような違和感。

アクセルを抜いてからブレーキに踏み替えて、車速が削れ始まるまでのコンマ数秒無いような一瞬の出来事ではあるが、勝手にクルマが進んでいくような恐怖に襲われる。

微妙な前後方向への荷重移動にもこだわって運転する際の注意点となりそうだ。

ハンドリングについて

ハンドルそのものは軽めだが、切り始めから一体感がある。

安定したままグイグイと曲がっていき、姿勢そのものはフラットだが切ったら切った分だけ曲がっていくのだ。

オンザレール」という言葉が似あうフィーリング。

ターンイン時も全くノーズの重さを感じず、フラットな姿勢のまま車体サイズ・車重からは想像も付かないほど高い限界性能で曲がっていく。

重たい分さすがにXVほどのコーナリング限界はないが、水平対向エンジン無しでは説明が付かないほどの安定性・運動性能だった。

スタビライザーの前後バランスにもクセがなく、アンダーやオーバーを感じづらいニュートラルな旋回フィール。ワインディングも高速道路も楽しめる。

東名インター出口の左コーナリングでも追い込んでみたが、重さ・腰高感・車体のデカさなどはあまり気にならない。

高速域での安定性について

深夜の高速道路を走ってみたが、非常に高い安定性で安心してスピードを出すことが出来た。

SUVであることをギリギリ忘れられない程度ではある。ハンドルはセンター付近で微妙にフラフラする。

またモーターのアシストが追い付かないのか、80km/h以下でのフィーリングと比べてあからさまに加速力が下がってしまう。

しかし追い越し車線の前が開けたタイミングでベタ踏みすると、モーターアシストがフルに入って気持ちよく加速していく。

乗り心地について

フレームの剛性がかなり高いようだ。

残念なことに常に揺れている感じはあるものの、ストロークさせてから抑えにいくところのバランスが絶妙なので快適なアシだと評価できるものとなっている。

光り輝いているのはうねっているような路面を高速で乗り越えた際の動きだ。

段差で跳ねてもふわっと持ち上げて優雅に着地させる。クラウンクロスオーバー並みの最高級品質な乗り心地には感動さえ覚えた。

ブレーキについて

踏み始めから強いが、丁寧に踏めばズドンとならない絶妙なところで抑えられている。

ペダルレイアウト的に左足で踏むのもラクで、ブレーキホールドやクルコンと合わせれば足の疲れを大きく低減できるだろう。

また制動時もあまりノーズダイブしない。

非常に驚かされたのがGT-R並みに高いブレーキの限界性能である。

乾燥路+純正タイヤに純正ブレーキパッドという構成ではあったが、どこまで踏んでいっても全くフロントタイヤがロックしない

信じられないほど強い減速Gが出たのに、タイヤグリップが一切負けないで踏ん張る。

17年式のR35以来の制動力だ。ブリジストンの225幅で、調べたところ「DUELER H/P SPORT」と言うらしい。SUVを買うことがあったら履かせたいと思う。

気持ちいい応答性を持つパドルシフト

マニュアルモードでアクセルを踏むと、自動でシフトアップされる。

その際にCVTなのにシフトショックを意図的に作っているため、多段式ATのガソリン車と全く同じ感覚でスポーツ走行が楽しめる。

まだダウンシフトでパドルを連打した際も、ギクシャクすることなく俊敏に応答して5速から2速まで落としていくことが出来る。

クラッチを切り離すような工程が無いため、滑らかに制動力が立ち上がっていくぞ。

R35のDCTでは減速時にパドルを連打しても無視されるような挙動があったため、CVTであることの大きなメリットを感じた。

…まぁ市街地でちょっと踏んだ程度では200~3000回転程度に張り付いてしまうのだが。

オフロードについて

最低地上高は220ミリらしいが、フォレスターの名前に恥じない悪路走破性を持つ。

普通のクルマならバンパーがバッキバキになりそうな地面の溝に正面から落ちても、まだ10cmほど地面までのクリアランスに余裕があった。

XMODEは2つある。

左に倒した方は空転を抑えるようにゆったりと走らせ、右に倒した方はガンガンに加速させながら多少の空転を許容しそうな制御になっていた。

どちらのXMODEを選んでもヒルディセントコントロールが使える。ハンドルを切りながら作動させるとガクガクガクという音が鳴る。

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