新型のアルファードが早速カーシェアの「カレコ」に導入されたので乗って来た。
旧型との比較について
先代のアルファードは別記事にて詳しく紹介している。
「空飛ぶ絨毯のようなサスペンション」と「レクサス仕様のエンジン」に加えて、「少し世代遅れ感のある各種操作系」が最大の相違点となりそうだ。
外観について
「メッキゴテゴテ」感が嫌われがちであった先代からあからさまにカッコよく高級感を放つようになった。
先代のアルファードのデザインを好まなかった人でも、新型は「お!」となるはず。
それでいて鋭い目つき・顔つきの商品性は維持。素晴らしい進化だ。
内装について
500~800万円の新車価格も納得するレベル。
大衆車のTOYOTAのイメージは完全に感じられず、感動する高級な世界がそこには広がっている。
造形も美しく、サクっと見て触れられる範囲の全てが上質。
二列目のシートがこれまた最高で、シートだけ買って家に置いておきたいレベルで良い。
空間が圧倒的に広くて座り心地も良く、電動リクライニングも完備。二列目の快適性がしっかりと先代から受け継がれている。
ガソリンモデルはこのタイプのシフトノブが装着されるが、手に触れるところがプラスチック製なのが残念でしかたなかった。ここも本革だったら大きく質感を高められただろうに。
おそらく「新車のうちの7割がハイブリッドだから、マイナーなガソリン車専用のパーツに無理にコストを割かない」みたいな、TOYOTAでよくあるコスト思考が現れたのだろう。
グレードと諸元について
今回乗ったのはガソリンのZグレードだ。新車価格は540万円。
大体の諸元をまとめておく
- 車体サイズは4995×1850×1935mm
- 車両重量は2060kg
- エンジンは2.5L直4NAで182馬力(6000回転)
- FFのCVT(多段式モードあり。)
- タイヤサイズは前後とも「225/60R18」
- フロントサスはマクファーソン・ストラット式コイルスプリング。リアサスはダブルウィッシュボーン式コイルスプリング
個人的な比較のために先代の諸元も軽く書かせてくれ。
- 先代の車体サイズは4950×1850×1935mm
- 先代の車両重量は1970kg
- 先代のエンジンは2.5L直4で182馬力(6000回転)
- 先代のタイヤサイズは前後とも「215/65R16」
車体サイズは5ミリしか長くなっていないことと、エンジンと車重は同等であったことを確認したかった。
運転フィール
むっちゃくっちゃにデカい。
数値的には横幅は同一で前後長も5ミリしか伸びていないのだが、先代よりも二回りくらいデカくなった気がする。
後輪の位置を正確に把握して、身体をこのサイズに慣れさせて、それでも乗りこなせる気がしないデカさ。
首都高の中での追い越しもスレスレ。
車庫入れは初心者にはアラウンドビューカメラとソナー無しでは絶望レベル。
カーシェア車が置かれていた駐車マスが前後に余裕がなく、
エンジン
高級車というよりスポーツカーらしくなった。
始動した瞬間からあからさまに静かだった先代からは異なり、エンジン音は乗用車として聞こえてくる。
レクサスクオリティだったのが「トヨタの静かな方」みたいな感じになってしまったかも。
具体的にはレクサスUXと新型ヴォクシーくらいの変化となった。(両車は同じ型番のエンジンを積む。)
しかし「排気量・重量から予測されるレベルより遥かに良い加速をする」という特徴は引き継ぐ。
パワーモードも無い中ではもたつき気味だが、スポーツカーにも負けないような気持ちのいい爽快な加速が可能だ。
深夜の東京で流れに乗るには、アクセルの入力に対する応答が微妙でワンテンポ遅れ気味だったけど。
絶対的な加速性能が悪くないだけに、スロットルへの反応のせいでダルく感じてしまうのは残念でならない。「そういうクルマではない」の一言で片づけるには勿体ない…
白点線での追い越しや急加速が必要な場面での合流も安全にこなせるレベルの、市販車・一般に買われるファミリーカーの中では上位の加速性能を有しているだけに。
私の確認不足で、実はナビの中からパワーモードが選べたのかな。
乗り心地
私の感覚としては「先代にはあった物理法則を吹き飛ばすレベルの良さ」は無くなってしまったように感じている。
足回りが少し動いてからゴツんとバンプラバーに当たるような動き。
フレームにはあまり強い衝撃が入って来ず、車体も揺さぶられないので乗り心地は良好。
でも「魔法の空飛ぶじゅうたん」から「ちょっとアシの動きがしなやかな箱型車」に成り下がってしまった感じがして残念。
市販車の中でも数少ない「物理法則超越要素」だったのに…
しかし、ちゃんと動いてくれるる上にデカい衝撃をフレームに入れない中で、不安定な揺れはしっかりと抑制してくれる減衰力に設定されている。普通に優秀な足回りだぞ。
あくまで「物理的に理解できないレベルの変態超次元技術」が「当たりの足回りを持つクルマの動き」になったレベルだから。
ハンドリング
イメージの割に応答が鋭いシャープな印象があり、重くてデカいけど頑丈な箱型ボディーが意外なほどシャープに旋回していた先代からは異なり、私たちにとっての「クルマらしい」動きになった。
ロールが早い段階で収まるためボディーが大きく傾かない。
車重のせいかタイヤ負荷はかなり高いようで、いつもの感覚では中くらいのペースのコーナリングでもタイヤから「キーーーッ!!!!」という音が鳴った。
いくら加速性能が優秀でも物理的には2トンあるので無理は禁物。
私のように振り回して乗るには、車重の割にタイヤグリップが足りていないように感じた。
旋回においてもブレーキングにおいても。
足回りは前後が別々に動いているというか、イマイチ調律が取れていないような違和感があった。
年次改良の過程でさらに挙動は改善されるかもしれないので、今買おうか悩んでいるユーザーも覚えておいて欲しい。
操舵支援の切り忘れだったかもしれない…
(道中で渋滞に巻き込まれたせいで本当に時間が無かったのだ…)
ブレーキは重さの割にしっかり効くので必要十分。でもタイヤから「キーーーーー!!」というとんでもなく大きな音を出すので、迂闊にブレーキテストをしたら悪い注目の的になりかねない。
重い車だからといって効かないという感じはしない。
まとめ
「二列目の人を快適に移動させる専用送迎車」として作った割に「一般層がちょっと奮発して買いまくったファミリーカー」として使われることになった先代の商品性を反映させてか、全体的に「自分で運転しても楽しめるファミリーカー」としての側面を強化したように思う。
そのため異次元の快適性は乗用車レベルに落ち着いたが、運転手含めて、ファミリー全員で満足できるようになったろう。
つまり乗り心地を求める送迎用途なら、まだ先代の中古の方が良いかも。
また3.5リッターのV6エンジンはラインナップから外れてしまったので、深夜の東京をかっ飛ばすタクシー的な運用をするなら先代のほうが良いかも。