左ドアの色があからさまに違う。全てのホイールが傷だらけ。段差を越えてもガッタガタにハンドルがブレまくる。
なんなら先週に予約していたが、「車両にトラブルが発生した」という理由で一方的に予約をキャンセルされていた。
そんなヤバいカーシェアながら、現状の三井のカーシェアーズで唯一存在するZ34。無くなる前に借りてきた。
冒頭のまとめ
おそらく事故りまくりであったこと+雨+よくわからないタイヤのせいで、このクルマの本当のパフォーマンスを引き出せなかった。
低すぎる着座位置はGT-Rを上回るスポーツ感を提供する。
大排気量エンジンは恐ろしいほどのトルクを持っており、迂闊にベタ踏みに出来ない。
ハンドリングは乗り物の素場を活かしつつアウト側の駆動輪に荷重が掛かるよう設定されており、乗り心地は硬めだが段差の揺れにある程度追従してくれるおかげで快適性が少し担保される。
総合的に趣深い本格派スポーツカーである。私はGT-RよりZ34をオススメする。
試乗車のスペック
時間が無かったので車検証の画像を撮っておらず、詳細な年式やグレードは不明だ。
公式サイトの諸元表よりいつも通り書き出す。
- 車体サイズは4250mm x 1845mm x1315
- 最小旋回半径は5.0m
- 車両重量は1490~1520kg
- エンジンは3.7LのV6自然吸気
- 最大出力は336馬力
- 最大トルクは365Nm
- フロントサスは独立懸架のダブルウィッシュボーン
- リアサスは独立懸架のマルチリンク
- タイヤサイズは前「225/50R18」後「245/45R18」
- ホイールベースは2550mm
- カタログ燃費は9.4~9.8km/L
- 加速騒音規制値は76dB
諸元表にはエンジンの性能曲線も乗っている。
回転数が上がれば上がるほど馬力も大きくなっていく。
2000回転も回せば300Nm近いトルクが出るのも魅力。
大排気量を活かした下から上までグイグイに加速してくれるエンジンだ。雨で乗るには怖いけど。
なお新車化価格は360~450万円ほどだ。
外観
町では全く見かけないけど、クルマ好きにとってはお馴染みのデザイン。
肥大化が進んだ現代車の中ではコンパクトカーの部類に入る。
なんか左ドアの色が違うんだけど…
こうしてみるとバンパーも色味が違う気が…
デザインバランスの良いホイールだが、絶句するほどえぐれまくっている。
前後にも短くて小回りも効くクルマなのに、なぜこんなにもぶつけまくるのか。
これは左リア。
これは右フロント
これは右リア。
ボンネットにはちゃんと大排気量のV6エンジンが入っている。
雨で回し切れなかったからか、走行後にあけてもあんまり熱くなっていない。
ゴツい補強バーがガッツリとボルト留めされている。もちろんフロントミッド。
エンジンルームは窮屈で整備性は悪そうである。
個人的なお気に入りポイントはドアハンドル。
引いた際に指に掛かりやすい局面になっている。
ドアを閉める際もこのシルバー部分を触れて閉められるので、ドアのエッジが指紋まみれになることもない。
内装
実はフェアレディZの内装はGT-Rよりもスポーティーだ。
スポーツカー好きにはたまらない車内空間である。
シルバー基調の古典的な三連メーターがカッコイイ。
シンプルながら見やすく、最高のコックピットが演出されている。
メーターの左右の端っこには輝度調整やトリップメーターが入る。
キーはGT-Rなどと同じタマゴ型のもの。
三連メーターは時計、バッテリー電圧、油温だ。
Z34はカーナビが古すぎる。画面は小さいしタッチには非対応。
2008年から売られ始め、最後は2021年までこの内装で売っていたようだ。
設定メニューでは色々と変えられるようだけど…
CDを入れる穴が見えるところにある。これも2000年代の設計。
その下がエアコン。オーディオとデザインを揃えており操作系も非常にシンプル。排気量がデカいからかエアコンの効きも結構いい。
シフトの右上にハザード。左上はスノーモード。
シフトはストレート式で、マニュアルレンジは上がシフトアップ。
ステアリング左側にはオーディオ関連の操作系。
センターコンソールボックスは全高があまりない。シガーソケットの他にオーディオ系の端子が見える。
車内で寝れる?
この手の2シーターで問題になるのが、長距離ドライブで休むときはどうすんの??という話である。
4人乗りなら運転席を倒せば後ろに空間が生まれてシートを思い切り倒せるし、トランクルームまで繋がるなら車種によっては寝そべることが出来る。
しかしスープラやZ34、ロードスターのようなスポーツ車はこの点が地獄だ。
シートを前に出すと倒すための空間を確保できるように思うが、それよりも先にシートの可倒域に引っかかるためこのような状態がMAXのリラックスポジション。
これではほとんど身体を休められない。
ネットカフェでも使って寝転びつつ、空いてるうちに稼げるだけ距離を稼いでまた別のネカフェに入る。そんな長距離ドライブになりそうだ。
疲労で事故らないために、運転しない時間の管理も求められそうである。
実走行インプレッション
先ほど紹介した通り、この個体は色々と状態が異常だ。
何回も事故っており、そのたびにローコストで修理されているのだろう。
正当な評価ができないことを念頭においてほしい
取り回しについて
低い運転席+長いフロントノーズのせいで、上り坂の頂点のカーブでは全然見えない。もう勘で行くしか無いレベル。
車体サイズ自体はそこまで大きくないため、一旦走り出してしまえば乗りやすい。
独特な形状なので駐車は苦痛かと思いきや、実は結構ラクなのである。
運転席からちょっと身を乗り出すとこの視界。車内空間を犠牲にしたおかげで右リアタイヤが目と鼻の先にある。
乗り心地
かなり硬めなセットだが、段差を超えた後に車体もふわっと持ち上がって追従するような動きを持たせている。
足回りの動きは抑えつつも快適性との両立を目指している。
しかしボディ剛性や足回りには2015年ごろの世代の乗り味が残っており、最新型を知っていると気になってしまう。
ハンドリング
着座位置が低いため車の重心と人間の近さを感じる。
特にクセがなく、最初のうちはただ切った分だけ曲がって行く。
ある程度の負荷を掛けてやるとロールが収束し、アウト側のリアタイヤを押し付けながら曲がって行くような姿勢になる。
スポーツカーだからとグワっと曲がって行くような演出を入れるようなことはなく、あくまで素性を活かす味付け。
個体差やタイヤによるものかもしれないが、前回中に段差を超えた際に一瞬滑ってハンドルが持っていかれる。
雨の中で乗るには最悪であるが、車両のバランスに対してタイヤのグリップ感がショボすぎるためタイヤの問題もあるのかもしれない。
パワートレイン
少し踏むだけでドカンと前に出るため繊細なアクセル操作が要求される。
回転数が上がれば上がるほど加速力も増えて行くため、軽い開度で音を楽しむつもりがホイールスピンすることも。
3速で慎重に踏んでいったところ、トップエンドでトラクションコントロールを作動させてしまった。
そんなにブン回していなかったつもりなのだが、微妙に路面が湿っていたのが良くなかったようだ。
恐ろしいほどの加速でドカンの伸び続けるし、高回転域まで使わなくてもどんどん速度が乗り続ける。
もう充分だと思ってもまだ6000回転。
残念なのはロードノイズや低音などの雑味に官能的な高音がかき消されていること。
せっかくの美しいV6エンジンの音が、高回転域まで回さないと響いてこない。
遮音性が非常に残念なことになっているようだが、ドアやフェンダー、装着タイヤなどの遮音強化は行いたいところ。
AT車はキックダウンも入ってくるため、与えたアクセル開度に対する加速の出方に常に気を払いつつ、30%でキープ。50%で一旦止める。といった踏み方をしていくことが重要だ。
慣れればアクセル等力に対する加速の出方をコントロールできるようになるが、やはりラフな操作は厳禁。
踏みすぎるとあっという間に事故る車であることを常に意識して繊細に乗る必要がある。
ブレーキはクイッと止められる物で、踏み始めの穏やかとコントロール性、絶対的な制動力を両立。