NDロードスターでは軽すぎて不安定であるし、加速力も全くない。
そんな弱点を克服し、恐ろしいほど刺激的な加速感と高いスピードレンジでも安定した走りを魅せてくれるのがアバルト124スパイダーだ。
新車価格と共にあらゆる質感が向上した一台である。
外観
スッキリしつつもスタイリッシュな非常に良いスタイリングをしている。
ロードスター系統の親しみやすさは残っているが、程よい鋭さのある顔つきがカッコいい。
真っ白なボディーカラーと赤いアクセント、ドギツくなりすぎない黒色の入れ方などのセンスが良い。
後ろ姿もシンプルでクセがない。トランクの上面に乗っかるアバルトのエンブレムは近くで見ると結構大きい。
4本出しのマフラーも目立つ要素はあまりないのにしっかりと主張している。
内装
信じて貰えないだろうが、2017年式GT-Rのプレミアムエディションと同じ匂いがした。
水温計付きのメーター。赤色のタコメーターがカッコイイが、レッドゾーンは識別しづらい。
嬉しいことにクルコン付きである。
全体的な質感は非常に高く、ところどころNDロードスターだが価格に対する不満は全くない。
むしろ程よいイタリアンテイストがオシャレで、非常に気持ちの良い車内空間である。
マツダ車でお馴染みのダイヤル。音量調整ツマミは下側にある。
スポーツモードへの切り替えは長押し。
丸が3つ並んだ単純明快なオートエアコン。
曇り取りを使いたい際にガバっと右に回す必要があるのがちょっと面倒くさい。
ナビ画面はかなり小さめ。2016年登場のモデルなので多少は仕方ない。
ABARTHと描かれた赤と黒のシートがカッコ良く美しいのだ。
屋根を開ければ間違いなくこの赤色が映えるし、座り心地も良好。シートヒーターも熱いほどに温めてくれる。
アースカーのアバルト124スパイダーのETCユニットはどこ?
このクルマは「アースカー」というサービスで借りたカーシェア車なのだが、ETCユニットがどれだけ探し回っても見つからなかった。
結論から言うと助手席の背面ボックスの下である。
ロードスターの背面に小物入れがあるのはご存じだろうが、その下。
厄介なことにカバーされているため見つけづらさに拍車が掛かっている。
パカッと開けるとETCユニットが出てくるぞ。読み取りでエラーが起きることもあるので注意が必要だ。
価格・年式・諸元など
おそらく2016年式のベースグレードだ。新車価格は388万円。
2016~2020年頃まで売られており、限定車も販売されていた。
ちなみにエンジンはNDロードスターとは全くの別物である。「NDロードスターのエンジンにターボを付けた」は誤りである。
- 車体サイズは4060×1740×1240mm
- 車両重量は1130kg
- エンジンは1.4リッターターボ
- 最大出力は170馬力/5500rpm
- 最大トルクは250Nm/2500rpm
- フロントサスはダブルウィッシュボーン
- リアサスはマルチリンク
- タイヤサイズは「205/45R17」
グーネットカタログより引用した。
NDロードスターとの比較
2015年式のNDロードスターのSのMTモデルと比較していこう。
NDロードスター | アバルト124 | |
新車価格 | 249万円 | 388万円 (+139万円) |
車体サイズ | 3915×1735×1235mm | 4060×1740×1240mm |
車両重量 | 990kg | 1130kg (+140kg) |
エンジン | 1.5リッターNA | 1.4リッターターボ |
最大出力 | 131馬力/7000rpm | 170馬力/5500rpm (+39馬力) |
最大トルク | 150Nm/4800rpm | 250Nm/2500rpm |
最小旋回半径 | 4.7m | 公式情報無し |
カタログ燃費(双方ハイオク) | 17.2km/L | 13.8km/L |
14%の車両重量増加と引き換えに、22%のパワーアップを得ている。
大して速いわけではないが軽さでフラフラと舞っていたNDロードスターと、怖いほどのパワー感で駆け抜けられるアバルト124スパイダー。
両者のキャラクターは明確に違うが、ハンドリング特性は実は似通っている。詳細は後述。
実走行インプレッション
騒音
ハッキリ言おう。エンジン音がうるさすぎる。
おそらくオプションのこの時点で評価に値しない。
特に始動時が激烈にうるさい。こんなクルマを特に夜間に乗り回していたら、近隣住民に〇害されても同情の声は上がらないだろう。
このクルマを動かせるのは日中か、よっぽどの田舎限定だと考えるべきだ。
アバルトの人たちはこんな騒音をまき散らす音響兵器を量産していて罪の意識を感じないのだろうか?
マニュアルトランスミッション関連
エンストについて
半クラッチの感覚が分かりやすいため基本的には乗りやすいが、比較的エンストしやすいので要注意。
特に半クラッチ中に500回転以下まで落ちた際にストンとエンジンが切れやすい印象がある。
エンジン音があり得ないレベルでうるさいのでアクセルを踏むのを躊躇ってしまうが、クラッチペダルだけで発進させようとすると一気にエンストしやすくなるぞ。
回転数を極力落とさないように半クラッチ操作をしたり、意識してアクセルを入れてやるのが良いだろう。
その他の乗り味関連
リバースは押し込んで1速に入れる方式。
明確に高低差を感じられるため入れ間違うことは全くないだろう。
しかしシフトノブの配置に少しだけ違和感がある。
手首を少々捻らないと操作できない位置+車両前方の遠いところにシフトノブがあるような印象で、慣れるまでは身体に合わない感じがする。
ギアの動きは明確であるため、シフトミスの心配はほぼ無い。
市街地をゆったり流す程度なら1500回転程度でも問題なく行けるが、円滑にカーブの多い道を走りたいなら速度に合わせたシフトダウンは必須。
状況に応じて最適なギアを選んで走っていくことになるだろう。MT車なら高回転型の特性でも特に問題ない。
ハンドリング
曲がり始めのかなり速い段階から旋回姿勢を作ってしまって、あとはハンドルを切ったぶんだけグイグイと曲がっていく。
オーバーステア寄りの味付けとなっており、自発的にどこまでもインへ曲がっていこうとするので追い込めば追い込むほどスリルが増していく。
ロードスターと比べると曲がり始めの過激な動きは抑えられているが、どこまでもインへ切れ込んでいこうとするようなオーバーステア寄りの動きは共通である。
カーブに入る前に前後方向へのタイヤグリップ消費とシフトダウンは完璧に終わらせておいて、旋回中は横方向への動きのみで走るようにすると良いだろう。
ブレーキパッドの特性が加速力に見合っていないため、かなり手前から意識してブレーキを踏んでやる必要がある点には要注意。
乗り心地
この車が気になってる人にとって問題になるようなものではないし、悪いというほど悪いものではない。
適切なストロークや伸びも感じられる、
しかし「あれ?」と思うことがあるサスペンションだ。
適正でない路面
硬いというか、常にビリビリと上下方向に微振動が起き続けている。
バンプラバーもゴムを圧し潰すというよりゴトゴトと金属を潰すような振動が来るような感触で、もはや純正ショックというより車高調みたいな一面がある。
適切&相性のいい路面
少しのストロークの後にバンプラバーに当たるが、良い塩梅で衝撃が吸収されて固くない。
安定性も損なわずに旋回性を程よく優先している。
スピードをかなり上げていくとちょうどいい塩梅になる。
路面と足回りの相性で評価は大きく変わる。
アシの「伸び」について
このクルマの足回りは、ショックアブソーバーの「伸び」を感じられるものとなっている。
特に旋回中に何度も飛び上がるようなカーブにおいて、段差でジャンプした際もあまりハンドルが揺さぶられずに安定した姿勢が維持できる。
これはおそらく足回りが適切に伸びることで路面追従性を担保してくれているからだろう。
旋回中に伸びることになるイン側の足回り・タイヤもしっかりと路面を掴んでくれるような感触がある。
「伸び」を感じる足回りは非常に珍しい。
パワートレイン
常識のない排気音をしているだけあって、エンジンの音を身近に感じながら走れる。
早すぎないが恐怖を感じるような加速性能であり、軽さが効いているのか170馬力とは思えないほど速い。
正直言って怖いくらいだ。
一応ターボではあるが、個人的には回転数上昇と加速Gの変動に極端なクセはない、自然に盛り上がっていくような回転フィールだと感じた。