世間でよく見られるビジネスとしての起業ではなく、適当に開いた物件に人を集めて黒字化していく「ショボい起業」の実体験や考え方を教えてくれる一冊。
起業の目的・ハードルを「大金を稼ぐこと」から「ダメ人間でも食いっぱぐれない」ことまで徹底的に下げてくれる。
この本はこんな人にオススメ
起業や独立を考えているが、ハードルが高いなと考えている人
普通の社会人としての生活にハードルが高いと思っている人
お金稼ぎのためのハードルを地面と同じくらいの高さまで下げたい人
「起業家」の定義の中の、最も端っこのほうを知りたい人
読書メモ
例によって書評より読書を優先するため、簡易的なメモに留める。
本の内容が気になったら手に取ってみよう。
「あなたが埼玉から東京まで電車で移動するとしよう。その最中にリュック一杯に野菜を詰めて移動して東京で売れば、それは商売とそのための輸送となる。」(38ページ付近)
↑いつもやっている行為をお金に換えるという発想
「料理をあえて10人分以上ドサっと作り、余った分は売ってしまえばいい。」
↑こういう発想も出てきた。売れ残ったなら冷凍することも出来るため、これがもし商売になるなら赤字はあり得ないはずだ。
著者はリサイクルショップを経営していたが、良い家電や雑貨が入ってきたら商品にせずに自分用に貰っていた。
↑「在庫スペースが無いので一時的に自宅兼事務所に置いていた」だとか「品質テスト」みたいな言い訳もできるし、よりよい品が入ってきたら置き換えることも出来る。自営業のメリットが炸裂している。
“生活の中で自分のやれること・日常やっていることを事業化するというのは必須”(45ページ)
サラリーマン社会で「年収はいくら?」という指標が当たり前になっているが、何でもかんでも現金換算して考える必要はないのである。
池袋駅から徒歩圏内の豊島区の物件は、家賃8万円/月程度で借りることが出来るらしい。開店費用は50万円もあれば充分だと著者は言う。(51ページ)
自宅では無く店舗に住んでいれば、ほぼ儲けが無くても住居用の家賃を払うだけなので大した赤字にはならない
”店を借りて営業しているとお金が集まって来るので設備が整えられて、必要な許可をとらざるを得なくなる”(60ページ)
ノープランで開店した後に保健所からの指摘が入ったが、著者は「いま申請しているところなんです」とウソを付いてその場を乗り切り、後から許可を取った。
缶飲料やペットボトルの手渡し、客が自分で作るカップラーメンに食品衛生責任者は要らないのである。
“事業はアイデアから入るというより、人とのつながりや置かれている環境などの条件から、自分ができそうなことを発見して事業化していくものなのだ”(p61)
世の中には「滅多に客など来ないが、たまに来た客への応対のためにスタッフを常駐させる必要がある店舗」というものが結構ある。
深夜帯のガソリンスタンドやマニアックな店舗、一部の高級店などが当てはまるらしい。
「既に事業を始めているけれど、コレをやるための資金が足りない」なら出資を受けやすい。
よくある「良いアイデアがあるから投資して」では厳しい。
あのDHCは、大学翻訳センターの略称である。
洋書の翻訳を請け負っていただけの会社が、翻訳の過程で得た知識を元に化粧品・健康食品を開発して大当たりしたという経緯がある。
著者は「値段を付けて売るには忍びないが、ゴミとして捨てるほど使えないわけではないような微妙なモノ」を店先の無料コーナーに置いておくことにした。
朝起きることができず、就活に取り組む事もできず、仕事もしたくない。そんな人間がたちが集まって過ごせる場所を作りたい。
彼らが写真家・画家・音楽家などの夢を叶えるために使える空間として、しょぼい喫茶店を作った人がいる。「えもいてんちょう」と名乗ったらしい。