冒頭のまとめ
重さが存在しないかのように吹っ飛んでいく圧倒的な気持ちのいい加速、水平対向ならではの身軽なコーナリング特性、硬めだけどギリギリ許容範囲に保たれる乗り心地、MTで操る楽しみと乗りやすさなどの魅力を持つ万能ハイパースポーツマシン。
外観
巷ではキモヲタブルーと言われている色であるが、そんなものどうでも良くなるレベルのカッコよさだ。
クルマ好きの心を掴んで離さないカッコよさがある。
個人的には赤いラインを入れる風潮は大嫌いなのだが…
専用のホイールは非常にカッコ良い。ブレンボの良いキャリパーが入っている。
さてド派手なスポイラーの他に、各部には無数の空力パーツが付けられている。
フェンダーやバンパーにちゃんと穴が開けられている。
しっかりと機能させることを意識して作られているようだ。
内装について
今回の試乗は時間が無かったのであまりハッキリとは撮れていない。
2024年に見ると世代の古さは少し感じるが、値段に対する質感も全く問題ないカッコ良い車内空間だ。
スピードメーターは260km/hオーバーまで刻まれている。踏み続ければそれくらい出そうな加速感はある。
センターのインフォディスプレイの操作はステアリングではなくハザード下のボタンで行う。
少し手を伸ばす格好になるため、個人的にはココはステアリング内に埋め込んで欲しかった。
まぁ今は大きなセンターモニターに置き換わって行っているが。
マニュアルトランスミッション。
モードとデフの動作を切り替える操作盤。
押すとノーマル、左に回すとスポーツ、右に回すとスポーツシャープだ。ブラインドでも操作しやすい。
シンプルで非常に使いやすいエアコン操作系。
私は液晶に慣れてしまったが、物理ボタンはやはり使いやすい。
この個体にはクルーズコントロールが付いていなかった。
試乗車のスペック・グレード・価格について
新車価格約411万円で2014年~2020年頃まで売られていた「STI type S」だ。
約380万円のベースグレードからtype Sになると、ビルシュタイン製のショックアブソーバーや19インチの専用ホイール、電動のレカロシートなどが装備される。
(調べたところ、オプションでサンルーフを付けることも出来るようだ。)
車検証を確認できなかったので年式は不明。
- 車体サイズは4595×1795×1475mm
- 車両重量は1490kg
- エンジンは2Lの水平対向4気筒ターボ
- 最大出力は308馬力/6400rpm
- 最大トルクは422Nm/4400rpm
- フロントサスはストラット式独立懸架
- リアサスはダブルウィッシュボーン式独立懸架
- タイヤサイズは前後とも「245/35R19」
- 最小旋回半径は5.9m
実走行インプレッション
マニュアルトランスミッション
私が乗った個体は6MT。
乗りやすさの中で圧倒的なエンジンのトルクを感じられる、街乗りからサーキットまで全領域をカバーしたものとなっていた。
半クラッチも分かりやすく、しっかりとトルクで発進していく。
シフト操作もしやすく、コンパクトセダンとして乗れるのでとても運転しやすい。
坂道発進の際もクラッチが繋がればエンジントルクがサイドブレーキを引きずってクルマを進ませるので、非常にやりやすいぞ。
しっかりとトルクで押されるので高速道路を6速で巡行しても問題ないが、そこそこのペースで走りたいなら3000~4000回転に保てるよう適切なシフトダウンは不可欠である。
ギアの動きは明確で、一箇所一箇所をギコギコギコと経由していく感触がしっかりと伝わってくる。
個体差にもよるだろうが、4速から5速へ入りづらい印象があるので慎重に操作したい。
私も一回シフトミスをしかけた。
乗り心地
200km/hオーバーのスピードレンジが想定されているショックアブソーバーが入っているためかなり硬め。
しかし実は気にしなければ市街地も普通に乗れてしまう範囲に収まる。
許容できるレベルを超えそうな硬さの乗り味なのに、感情的にイヤじゃないのだ。
そんな硬めのアシだが、スピードを約100km/hまであげると途端にいい具合になる。
段差を超えた際にちゃんとダンパーがストロークして衝撃を吸収してくれるようになるし、無駄な動きも抑えられて動きに上質感が出てくる。
スピードを出していった先である程度はストロークしつつもシャキッと引き締める。
ビルシュタインの硬めには感じるが味わい深い足回りを堪能することができた。
ハンドリング
まずハンドルが非常に重い。
駐車場から出る際に「パワーステアリングが不調なのでは?」と一瞬疑ったレベルの重さ。
力の無い人にはしんどいレベルなんじゃないだろうか。
さて直前に乗ったbrzと比べると流石にターンインは重ためだが、それはあくまで比べた際の話。
フロントがあからさまに軽く、スッと旋回していく。
安定しつつもニュートラル寄りな姿勢で、万人が楽しめるコーナリング。
しかし段差を超えたタイミングでハンドルがかなり大きく揺さぶられるので危ない。
ブレーキ
踏み始めでもガツンとはこないが、加速力に対して制動力の立ち上がりが悪い。
そのためかなり手前から、イメージの2倍くらいは奥まで踏み込まないと安全に止まれない。
街乗り領域での扱いやすさはあるが、加速力に対して止める力の立ち上がりが弱すぎると思ってしまった。乗り心地があれだけ硬いのに、ブレーキを優しくする理由があるのだろうか…
パッド交換推奨。
パワートレイン
3つの走行モードで性格が変わる。
街乗りなどのダラダラ走行はIモード、そこそこのペースはSモード、事故る覚悟が出来た場合のみS#を使うのが良いだろう。
3000回転あたりが1つの境界線となっており、その上でアクセルを踏むとこのクルマの本性が現れる。
一旦ブーストがかかるとシューと言い出し、恐ろしいほどの加速力で吹き飛ばされていくぞ。
3速と4速でのベタ踏みを試したが、その加速力は置いていかれるほどではない範囲にギリギリ留まる。
しかし重さが存在しないかのように吹っ飛んでいく。
308馬力ってこんなに速いのかと思わされる。
どこから踏んでもモリモリと加速したような現行型のWRX S4と比較すると、回せば回すほどパワーが出てくるタイプのエンジンであると言えるだろう。
MTで操る上では回転数を一定以上に保つ楽しみがあるので、こっちのほうが楽しいと言える。
ちなみに街乗りと高速巡航、スポーツ性能を織り交ぜた本試乗における燃費はリッター9~10km程度だった。
瞬間燃費系の数値を見ていた限り、エコに徹すれば15km/Lオーバーも狙えそうではあった。この辺の数値はオーナーのコメントのほうが正確だろう。
現行型のWRX S4との比較
STIとS4という違いはあるが、一応軽くコメントを。
スポーツに振り切った乗り味なのが本車であり、上質なセダンとしての大人しさを纏ったのが現行S4であった。
ブン回して吹っ飛んでいくのが本車であり、踏めば踏むほどトルクで恐ろしいほどの加速をするのがS4。
基本的にスポーツ全振りな足回りなのが本車であり、しっかりと快適性を担保したのがS4であった。
おまけ:ランエボXとの比較
ランエボのXとの乗り比べが実現したので一言でコメントしよう。
軽さで吹っ飛んでいくのがWRX stiであり、重厚感と安定感の中でロケット加速をするのがランエボX。
水平対向エンジンの重量バランスで身軽に曲がるのがWRX stiであり、足回りのセッティングと電子制御でグイグイ曲げるのがランエボX。
スリルと恐怖が欲しいならWRX sti、安定,安全の範囲で爆速で飛ばしたいならランエボX。
といったところだろうか。
両方とも味わい深い名車であり、どちらとも吹っ飛んでいくような速さと身軽なコーナリングを持つ。
「どっちの方が速いのか?」という疑問が出そうだが、公道で乗り比べている限りどっちも速すぎて簡単にガードレールに突っ込むため、加速性能を比較する意味は無いと思う。好きな方を買おう。