【S22クラウン】3.5リッターV6ハイブリッドはタイムマシンのような加速で優雅に伸びる【試乗インプレッション】 #103台目

試乗インプレッション

生産終了となった今でも高い評価を受ける15台目のS22型クラウン。

今回乗っていくのは3.5リッターのV6自然吸気にハイブリッドを搭載したモデルだ。

以前に直4ハイブリッドにも試乗しているため、乗り心地やハンドリング性能などの詳細な比較も行っていくぞ。

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冒頭のまとめ

3500ccという大排気量の恩恵は大きい。

少し踏むだけでワープするかのように車体が前に進む。踏めば6気筒エンジンの美しいサウンドも響く。

ハイブリットシステムの恩恵により、燃費走行に徹すれば排気量を忘れられるほど優れた経済性も得られる。

しかしハイブリットシステムとの噛み合いが悪く、アクセルを踏み込んでいくと突然ドカンと急加速するため危ない。

乗り心地としては全体的に抑え込みと突き上げが硬めである割にフレームの上下動は大きめ。

ハンドリングには直6エンジンの重さが出ているが、その重量を使って前を押さえつけながらスムーズに曲がっていってくれる。

余談であるが、覆面パトカーと同車種であるためゆったり走っていれば周りのクルマに車間を詰められたり威圧されるような不快な運転を食らう頻度があからさまに減る

他人に車間を詰められたり、割り込まれたり。日常的に不快な思いをしている人は、クラウンに乗り換えると見違えるほど平和な世界を楽しめると思うぞ。

なお覆面パトカーの象徴ともいえる丸目4灯のテールランプは先代のアスリートに装備されているものだ。

外観

高級車としての風格を感じる神殿のようなグリルに、左右・リアへと広がっていくようなボディライン。

以前乗った2.5リッターの直4モデルと比較しても、違いと言えるようなものが全くない。

3.5リッターV6専用のマフラーやエンブレムなども見受けられない。

200万円ほど多くお金を払って買ったユーザーはこれで満足するのだろうか…

それとも、見栄や外観のアピールを求めるようなオラついた層を排除することで客層や品格、車種のイメージを保とうとしたのか。

エンジンルームは一面がカバーされている。エンジンカバーにもV6の文字も装飾もない。

搭載位置はフロントミッド。ハンドリング性能も良好である。

内装

時間が無かったので動画・写真を撮り忘れたが、こちらも2.5リッターの直4モデルと比べて違いが見つからなかった。

タップミスを誘発していた液晶が、後期モデルで物理ボタンへと変更されている点は注目点である。

静粛性とオーディオ

双方とも高水準。

オービスが光るような速度域ではさすがに風切り音が大きくなるが、信号待ちの最中や市街地の巡行時などはワンランク静かな車内空間を味わえる。

オーディオの音はトヨタの純正としてはかなり良く、鮮明な音をクリアに楽しめる。

よほどのオーディオマニアでもない限り音響まわりに手を加える必要はなさそうである。

その割にはエンジン音がちゃんと響いてくる点もありがたい。

(静かすぎてエンジン音が感じ取れないクルマがたまにあるのだ…)

グレード・価格・スペックなど

新車価格約710万円3.5LV6ハイブリッドRS Advance である。

エンジンだけで299馬力。

システム最高出力は359馬力である。

現行型では幅が1890mm、全長は5030mmとなっていることを踏まえると、取り回しの良いサイズ感の最後のクラウンだったと言えるだろう。

クラウンハイブリッドの価格帯は約500~750と幅広い。私が借りた3.5リッターのRSアドバンスは歳以上位クラスだ。

グーネットカタログより引用

レクサスの各種セダンとの価格差について…

V6のS22クラウンも現行クラウンも、新車価格はどちらも700万円オーバー。

レクサスのES・GSとほぼ同価格なのだ。

レクサスと先代クラウン(S22系)のセダンモデル別価格帯一覧 ※chatGPTが作成
モデル名新車時参考価格帯 (万円)備考
IS約550〜750万円コンパクトFRスポーツセダン
ES約640〜740万円FFベースの高級セダン(カムリ兄弟車)
GS約630〜1300万円FRプレミアムセダン。2020年で販売終了
LS約1050〜1800万円フラッグシップ大型セダン
HS約390〜480万円ハイブリッド専用FFセダン。2018年で販売終了
クラウン(S22系)約490〜740万円先代モデル(2018〜2022)、FRまたは4WD

同じセダンでもレクサス版を買えばディーラーの接客とエレガントな内外装、ステータス性が手に入る。

これに加えて緻密に組まれた純正バランスチューン済みエンジンまで付いてきてしまう。

購入検討者の多くが頭を悩ませる問題だろう。

実走行インプレッション

パワートレイン

エンジン自体が素で3500ccもあるため排気量の正義を感じられる。

少し踏むだけでエンジンが全く唸らずに滑らかに速度が乗る。

合流も一時停止からの加速も非常にスムーズかつ静かで、自然吸気の大排気量がモリモリと車体を押し出す。

EVでも出せないような加速力の出方で、少しアクセルを踏み込むだけでワープしていくように前に出る

ベタ踏み加速を続けても、300馬力以上ある割には恐ろしいほど速いというほどではない。

同じ300馬力級でも、WRX STIやランエボX・レクサスRZ達のほうが加速感は鋭かった。

しかし公道を走るクルマとして爆速であることに変わりはない上に、むしろ心得のない者が乱暴にベタ踏みしてもリアタイヤのキャパを超えるほどの加速はしないという点で事故りづらいとも言える。

回転数を上げると美しい直6の音が響いてくる。

しっかりとエンジン音とCVTのメカニカルノイズを響かせてくれる。

スバルの先代のWRX S4と同じような機械音も響いてくる。300馬力級のCVTである点で両者は共通。

しかしタコメーターが装備されておらず、左側のパワーメーターとエンジン音との動きがバラバラなのは不満。

なお排気量の大きさゆえ再始動が大変なのか、エンジンがキックインするタイミングで2.5では生じない振動が入る。

しかしハイブリットシステムの制御自体に問題はなく、モーターにもバッテリーにも充分な容量が用意されているためエコドライブに徹すれば3.5リッターであることを忘れられるレベルの燃費性能も出せる

しかし加速力自体はあってもアクセル開度に対する加速力の出方には大きな大きな段付きがあり、突然ガタンと打ち出されるように急加速しだすので制御が難しく怖い。

テールスライドのリスクも出てくるパワーである。

リアタイヤに掛けるトルクを緻密に制御する必要も出てくる。

それなのにこんなにドカンと加速してしまっては、段差の激しい山道や雨、雪道などが単純に危ない。

たぶんクラウンが単独で事故ってたらこの制御のせいだ。

CVTの多段式の動作としても、マニュアルモードで勝手にシフトアップされてしまったり、ギアが9段もあるため加速時はちょっと踏んだだけでシフトアップとなって官能性を味わいづらく、減速にもパドル連打を要求されたりする。

マニュアルモードとパドルシフトがあるのはありがたいが、もう少し運転性とのバランスを取って欲しい。

乗り心地

2.5と比べて相対的に硬く感じる。

コンフォートモードでは船のように上下に車体を揺さぶって段差に追従させていく。

揺れが収まるまでに上下する幅も回数も多めで、アシはスポーツモードが一番バランスが良い。

アシをしっかり動かして快適性を出してくれるが、全体的にゴツゴツ感があり車体の安定感は控えめ。

スポーツプラスは常に上下にビシビシとした振動が残り続けるような乗り味になるため、本当に高いスピード域のみ推奨。

たっぷりと持たされたストロークと巧みな抑え込みによって快適性と安定性が完璧に両立されていた2.5リッターモデルとは異なり、硬さや上下方向への揺れが目立つ乗り味となっている。

ハンドリング

切り始めから切った分だけ前が入っていく気持ちいいハンドリング。

2.5と比べると頭の入りに重さを感じる。

しかしその重さを安定性に変え、フロントをしっかり沈ませて押し付けながら安定してスムーズに旋回していく。

ハンドル操作に対する応答性は非常に良好で、少しハンドルを切るだけで気持ちよく車体が追従する。

高速道路でも前をエンジンの重さで押し付けてくれるため、路面のうねり・段差を越えても挙動が乱れづらい。

全体的に身軽さを削って加速力と安定性に回したような印象である。

高速道路の超高速域

エンジンの底力でガンガンに引っ張るため、中央道の登りの追い越し車線でアクセルを踏み込んでも瞬間ワープするように加速する。

目的地までの距離が異様に近く感じる。時間が加速されるような気分だ。

旋回性重視なセットアップゆえ、乗り物の直進性自体は担保されているがドッシリとした安心感は感じづらい。

スピードを出した先でもドッシリと構えて落ち着いて流したい人にはクラウンは向かない。

高速域での安定性を重視するならレクサスのESを選ぶとよさそうだ。

むしろニュートラルなハンドリングとスポーティーな乗り味を味わいたい人向けのセットアップであると言える。

ワインディングの乗り味

コンパクトなサイズ感とギリギリ気にならない程度の重たさのフロント、分かりやすい旋回特性によりカーブを気持ちよく抜けていくことができる。

しかしカーブを立ち上がっている途中でアクセルを踏み込むと、どんな急加速をし出すか分からない。

旋回が終わって車の動きを前後に安定させた後でないと、安心してベタ踏みできない。

これがハイブリットやCVTではなく、ただの純ガソリンのオートマだったらリアタイヤのグリップと相談しつつアクセルをじわじわと開けていくこともできただろう。

このあたりの制御が年次改良で改善しているのかは注目点である。

2.5リッターハイブリットとの違い

パワートレイン

エンジン自体がシンプルに3500ccもあるため、一時停止からの加速やレーンチェンジついでの加速、上り坂で踏み込んだ際の車体の進み方が2.5リッターとはまるっきり違う。

2.5リッターのほうも必要充分な加速力で滑らかに走るが、3.5と比べると明らかにエンジンが唸る。

ハイブリットシステムの動作が俊逸なので、3.5でも燃費走行に徹すればそこまで燃費が落ちる印象はない。

乗り心地

実は乗り心地は2.5リッター直4のほうが良い

コンフォートモードは少々上下に動きすぎ、スポーツモードは振動吸収が速すぎてゴツゴツしすぎであった3.5リッターと比べると、アシのストロークと揺れの抑え込みのバランスは2.5リッターのほうが良いと言える。

ハンドリング

2.5リッターのほうは完璧なるニュートラルステアが実現されている。

しかし3.5リッターはエンジンが大型化したぶん頭が重く、重たいエンジンを使って前を沈み込ませ、安定した姿勢で押し付けたまま曲がっていく。

こちらも切り始めからハンドル操作に対して気持ちよく追従してくれるが、身軽さでは直4に譲る。

直線の加速やスピードではなく、アクセルを緩めるだけでスッとノーズが入っていくようなニュートラルなハンドリングを楽しみたいユーザーには2.5を勧める。

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