dカーシェア内の「カレコ」というサービスにて、しれっと新型ヴォクシーがカーシェアに出されていた
名古屋市内にも一台あったことと、車中泊ベースとしての可能性や、アルファードの比較を行いたかったため、借りて乗ってきたので紹介させていただく。
試乗車のスペックについて
純ガソリンバージョンだった。
新車価格309万円の「S-Gの2WD(8人乗り)」だと予想する。
- サイズは4695x1730x1895mm
- 最小旋回半径は5.5m
- 車両重量は1610kg
- エンジンは2リッター直4自然吸気
- 最大出力は6600回転で170馬力
- 最大トルクは4900回転で202Nm
- 燃料はレギュラー
- WLTCモード燃費は15.0km/L(ハイブリッドは23.0km/L)
- トランスミッションはCVT
ここから19万円ほどプラスすると4WDモデルが、ここから30万円ほどプラスすると上位のS-Zグレードが。さらに、ここから35万円ほどプラスすると、ハイブリッドモデルが購入可能だ。
いまの時代便利なもので、2グレードを並べて比較している動画もある。
主な違いは、レザーシートやシートヒーター、ホイールなどに現れるようだ。
搭載エンジンと、レクサスとの違いについて
面白いのが、ハイブリッドバージョンに搭載されるエンジンは、プリウスでお馴染みの「2ZR-FXE」であることだろう。98馬力しか出ないが、フロント185Nm、4WDならリアの84Nmのモーターによるアシストが入る。
また、純ガソリン版に搭載される「M20A-FKS」は、レクサスUXにも積まれているものらしい。
私は以前、レクサスUXにも試乗したことがあるが、あからさまに静かなエンジン始動とスムーズな回転フィール、高回転域で滑らかに出て来るパワーに驚かされた。
あちらを100とするなら、ヴォクシーは85くらいだろうか。レクサスブランドのクルマ達は、エンジンの組付け精度のケタがトヨタより厳しく、専用ラインで組まれるらしい。
運転していても、同じ型式のエンジンであっても、ハッキリと分かる違いを感じ取ることが出来た。
遮音や基本設計によるところが、元々静かなエンジンをさらに静かに見せていることはあるだろうが。
ちなみに、同じくアルファードを100とするなら、ヴォクシーは80くらいの領域にある。走り出しから滑らかで高回転域も元気よく回る良いエンジンだ。
外観について
明るいところで撮れなかったため、2枚だけ、公式サイトのギャラリーページから引用する。
最初に見た時は「グリルがデカすぎるのではないか」と思ったが、実物は細目がキリっと効いて、なかなかにカッコ良いと感じた。
前照灯をブラックアウトしてグリル内に映し、デイライトやウインカーのみが内装された細いラインを、デザイン上のアクセントとして、「目」のように用いてスタイリッシュに見せる、現代的なフロントフェイスだ。
リアまわりは、元々のボディーサイズと、ガラスの面積の大きさを感じざるを得ない。
流行りの一文字ラインが効いて、フロントとのデザインバランスは取れているだろう。
見た最初のうちは違和感を感じたが、主張しすぎない程度に、爆売れのイカつい系フェイスに寄せてきた。
私自身メッキを貼っただけのオラオラ系デザインはあまり好まないのだが、ヴォクシーくらいなら「カッコいいな」と思えるレベルにバランスよく収まっているように思う。
上の価格帯に「アルファード」という絶大なる存在がいる中でも、負けていない存在感を持っているように感じた。
内装について
トヨタブランドも熟成が進んでいるのを感じる。
上質感があり、新車価格に見合った「アルファードへの羨ましさ」は全く感じないレベルだ。
なにより車内が意味不明なくらいに広いのだ。
室内高は1405ミリあるらしい。3階立てベットを車内に作れるくらい、頭上空間にゆとりがある。バイクも大型な荷物も、余裕で積めるだろう。
ハイブリッド化に伴ってタコメーターが撤廃される車種が多く、寂しく思っていたため、伝統のアナログ二眼メーターは嬉しいものだ。ヴォクシーというキャラクターも感じさせる要素である。
ステアリングボタンもいい具合にゴテゴテしていて充実感がある。左側では、中段にてメーター中央のインフォディスプレイの表示変更が可能だ。
右側はクルーズコントロール。中段左の「メーター下にMODEと書いてあるボタン」を押せば、前車に車速・車間をあわせる追従式と、一定速度キープを切り替えられる。
この切り替え機能が便利に働く場面は明確に存在する。例えば、交通量が少ない深夜に高速道路を走る際、左車線を走るトラックに追いつく場面だ。追従式のままでは、遠くから追い越し車線に入らないと、勝手に減速を始めてしまって面倒なのだ。
特に速度差がある場合は、道路が空いてるのに急ブレーキを掛けられることがある。
そこで一定速度キープに設定しておけば、任意のタイミングで追い越しに移っていくことが可能となる。
さて、シフトノブまわりはシンプルだ。
ギアポジション連動の電動パーキングブレーキは、ブレーキホールドも付属する。
エコモードとノーマルモードしか存在しないのは寂しいが、CVTを多段式として動作させるマニュアルシフトモードがついているのは嬉しいポイントだ。
エアコン操作は嬉しいことに物理。
温度と風量の切り替えが、上下方向への操作ではなく、別々のボタンによって行うことになっている。
間違えて上下に動かしてしまいそうになるため、慣れるのに時間が掛かるだろう。「REAR」の項目があるのがミニバンらしい。
地の果てに拡大縮小ボタンがあり、たいへん使いづらいことで定評のあるトヨタの新世代カーナビ。
幸いにもナビ画面がヨコ方向にそこまで長くないため、拡大縮小の操作性は、「悪い」程度に収まる。
助手席側の造形が凝っていて、カップホルダーと小物入れを、ゴテゴテデザインと共にいい具合にまとめている。
実は上側にも、小物入れのスペースがあるのだ。
足元にも、カップホルダーと収納スペース。
「ラクに後列に移動できる」というメリットと引き換えに、センターコンソールが無い。
そのため、カップホルダーや小物入れが無い点は寂しい。
廉価グレードということもあってか、ブランクボタンが目立つ。
アイドリングストップも、それを停止するボタンも搭載されていないことに気付いただろうか。
さすがの車体サイズで、二列目の居住性も抜群だ。
ただ、廉価グレードは右側スライドドアが電動ではないのだが、大きさと相まって、ドアがかなり重い。特に、重力に逆らって開けなければならない下り坂では、本当にドアが重い。子供では開けられないレベル。両側パワードアだけは、オプションで選んでおいたほうが良いだろう。
また、ちょっとしたトレイとカップホルダーも付属する。パソコン仕事など到底出来ないが、快適な移動を手助けしてくれそうだ。
テールゲートを真後ろから開けると、足にぶち当たる。
3列目の快適性は微妙であるが、トランク自体はかなりの広さだ。
一応脇にはカップホルダーと小物入れがあるようだが、日常的に人を乗せたい三列目だとはあまり思えない。
また、三列目のシートは、横に跳ね上げて収納する方式であるようだ。
オマケになるが、ルームランプが操作しづらい。
「OFF」「DOOR」「ON」の3つならラクなのに、どれを押せばどこを消せるのか分からない…
使って行って覚えるしかないのだろうか
実走行開始
エンジンは静かだし、動き出しも滑らかだ。
上位にはアルファードが居るが、先ほど「アルファードを100とするなら、ヴォクシーは80くらいの領域にある」と申し上げた通り、粗のないしっとりとしたフィーリングで走り出していく。
車体サイズの大きさについて
乗ってみて真っ先に感じるのが「車体のデカさ」だ。
途中、トイレ休憩のために公園脇に一時的に路駐した。
道路幅は充分で、左側に安全マージンギリギリまで寄せたつもりであったが…
右リア側のこの圧迫感である。
明らかにデカいのだ。上下にも左右にも。
ただ、箱型のボディーと1730ミリの車体幅ゆえ、前後にこそ長いものの駐車は行いやすい。
窓を下げて右後ろを振り返れば、この視界があるのだ。
また、「左リアタイヤが危ない」というのも大きな注意点だ。
もともとのサイズゆえ、前は良くても基本的に左リアが危なくなる。
乗車する前にキチンと、左のリアタイヤがどの位置にあるのか把握しておくこと。
私自身、この一手間を怠ったために、交差点の左折で左を寄せきることが出来なかった。
パワートレインについて
静かなのは良いことだが、走り出しから感じることがある。
「あんまり加速力がない」というものだ。
特にエコモードに入れてしまうと、悲惨なほど伸びなくなる。
「車重1.6トンに対して170馬力ある」と聞けば充分なスペックを有しているように思うが、4900回転まで回さないと最大トルクの202Nmが出てこないのだ。
街乗り領域でじわーっと踏み込んでいっても、あんまり加速力がついてこない。トルクの余裕を感じない。
どことなく、スロットル制御で反応をダルくしている感があるが、そのせいで遅く感じてしまうのだ。
「せめてパワーモードの1つくらい付けておいてくれよ...」と思ってしまった。
だが、中回転以上でブン回すと、かなり元気の良い加速をしてくれる。
車格としてはミニバンだが、エンジン音は立派なスポーツカーだ。
私がGR86の動画を投稿したとき、「始動音がヴォクシーと同じ」というコメントを頂いたが、実物に乗った今なら、その気持ちがよく分かる。
アイドリング中のエンジン音を聞いていても分かる。ただ静かなだけではなく、心地良い低音が響いてくるのだ。
ノアと比較しての「ヴォクシー」というクルマを、後述するハンドリングと合わせて感じ取ることが出来た。
ただし加速性能の割に、ブレーキの効きが少し弱い。
元々が万人向けファミリーカーであることは忘れないようにしよう。
ある程度攻め込んだ走りをするつもりなら、最低でもブレーキパッドくらいは交換しておくべきだ。
乗り心地について
さすがにアルファードには及ばないが、「なかなかに良い」のだ。
元のボディー剛性の高さをしっかり活かしている。
段差を超えた際、タイヤはある程度ガタンと上下に動く。
その後、バンプラバーと言うのだろうか、ウレタンゴムなのだろうか、そういう部分に当たるのだが、そのバンプラバー部分の沈み込みによって、入力の角が完全に取り除かれる。
そのおかげで激しく揺さぶられたり叩かれたりすることが無いため、快適に乗ることが可能だ。
背が高くても、ヨコ方向にあまりブレないことも魅力だろう。
ハンドリングについて
かなりスポーティーなハンドリングだったため、心底驚かされた。
特にターンインの際は、高重心&大柄ボディーの鈍重さが出るかと思いきや、真逆の挙動を示した。
怖いほどの勢いで持って、吸い込まれるようにターンインしていく。
オーバーステアか? と思ってしまったほどの回頭性だ。
元の背の高さもあり、ロール量自体は大きめである。身体が持っていかれるため、バイク感覚で姿勢を変えて、踏ん張ってやる必要がある。
しかし、旋回姿勢はビシっと安定し、アンダーステアっぽさも無く切れ込んでいく。
交差点の左折でも、ビシっと曲げていくことが可能で本当に気持ち良い。
トロくさいミニバンなんてものは存在しない。
正真正銘、軽快なハンドリングを楽しめるスポーツマシンだ。
その他
私が借りた「カレコ・カーシェアリングクラブ リパーク名古屋市立大学田辺通キャンバス駐車場」というステーション、駐車券だか定期チケットが見つからなかったのだ。
いつもならサンバイザーにカード入れがあるのだが、このヴォクシーには無かった。
結論から言うと、ドアパネル内の緑色のファイルの中に入っていたのだが、あちこち探すハメになった。
次に借りる人が手間取ることが無いよう、乗り込んですぐ、目に入るような位置に置いて返却しておいた。
まとめ
アルファード瀑売れの流れに良い影響を受けつつ、走りの楽しさと利便性、人を運ぶクルマとしての快適性を両立させた一台だった。
車中泊ベースや、バイクを載せてのトランポにも最適だろう。
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