私が人生で乗ってきた中で、特に良いと思ったクルマは3台ある。
その中でも特に、性能やイメージなどの総合点が高かったのが、テスラのモデル3だ。
ちなみに、今回はとあるレンタカー屋で借りたが、テスラのモデル3は、Anycaというカーシェアサービスで借りることが可能だ。
実走インプレッション
私は自分の役割を「目に見えない、実際に運転しないと分からない、ステアフィールや乗り心地のレポート」だと思っているので、今回からは、走行フィールから先に紹介していく。
自動運転の操作感について
まず、シフトポジションは右のウインカースティックで変更する。
下に倒すとDレンジ、上に上げるとリバース、先端のボタンを押し込むとP。
単純明快だ。
走り出した後、右のスティックは自動運転のコントロールになる。
一回下げるとクルーズコントロールで、二連続で下げると、実質自動運転のオートパイロットだ。また、自動走行中にリバース側に操作すると、その瞬間に解除が可能だ。
ブレーキを踏んだり、ハンドルを切るのは、周囲に余計なアクションを与えることになるため、スティックで任意に解除するのが良いだろう。
また自動運転機能の作動中は、当たり前のことではあるのだが、自分が走りたい車線内の走行位置と、機械が選択する走行位置が、左右方向にズレることが多々ある。
イレギュラーの無い有料道路上であっても、「なんか左に寄ってるんじゃないか」「この先の左カーブ、ちょっと急だが曲がれるんだろうか」と、いちいち気がかりで、操作されている感にも慣れず、私はストレスが溜まった。
ロングホイールベースであることが効いてか、車両自体の直進安定性もかなり高い。
画面を操作するときや、飲み食いするとき、渋滞中以外は、クルーズコントロールのみの使用に留めて、自分でハンドルを操作するのが良いと感じた。
乗り心地について
硬めではあるが、そこそこ良い。
安定性重視で、コツコツとした足の動きだ。
短いストロークで揺れを吸収し、フレームにあまり衝撃が入ってこない。
そんな、高剛性高級車にありがちな動きだ。
空気圧を少し下げるか、18インチモデルを選んだうえで、クッションでも敷いておくとと、長距離も快適にこなせる乗り心地になるだろう。
なお私の場合は、自動運転システムの不安感が気疲れに直結してしまった。
自動運転に頼るのではなく、基本的にハンドルは、ぜんぶ自分が操作する。
それくらいの気持ちでいるのが良いのかもしれない。
ハンドリングについて
意外だと思うが、トヨタのGR系のスポーツマシンと、同じくトヨタのクラウンを、かけ合わせたような、素性の良い動きをする。
動き出しからロール収束まで、一瞬の間があってから、ピシっと姿勢が安定する。
前後重量配分と重心に優れるEVだから、スポーツセダンとして楽しめるのだ。
かなり激しく攻め込んでいった先で、自然とフロント側がアウトへ逃げていくような動きだ。
加速性能について
テスラらしく、かなりの加速力を誇る。
視界が開けた、見通しの良いワインディングなら、ウエット路面であろうと、80~90km/hで巡航していける。
加速力もかなりあるので、白点線追い越しも余裕だ。
ただベタ踏みすると、どうしても遅く感じる。
上にロングレンジ・パフォーマンスとある中での最廉価グレードだから、これは仕方ない。
グレード・スペックについて
私が乗ったのは、マイナーチェンジを挟んだ2021年製の、スタンダードレンジプラスだった。
時期によってかなり激しく価格が変動するため、新車がいくらだったか定かではないが、現在は約530万円で売っているグレードだ。
いつもの通り、主要なスペックを箇条書きでまとめる。
- 全長4690mm,全幅1850mm,全高1440mm
- 車重は1.6~1.7トン
- 最小旋回半径5.4~5.7だと予想
- 0-100加速は5.6秒
- バッテリー容量は54kWh
- EPA航続距離は423km
実は、モータートルクや最小旋回半径など、未公開の情報が多く、年式によっても数値にかなりバラつきがあるため、厳密さを欠いた数値であることはご了承を。
外観について
個人的には実物は、かなりカッコいいと感じた。
特にフロント周りの膨らみや、ヘッドライトの内部形状がかっこいい。
個人的にはホイールは、黒いウーバータービンが好きだ。
また、モデルYが出てきたそうだが、個人的にはモデル3でも、充分すぎるくらい背は高いように思う。
デザインの理想的には、もう少しヘッドルームを削りたいだろう。
リアエンドも特徴的だ。スポイラーを付けて引き締めたいところ。
UIと自動運転システムについて
テスラの最大の特徴とも言えるのが、この大きなタッチスクリーンだ。
正直、普通に使いづらい。
なんで物理ボタンにしないんだ?
と聞けば、「コストダウンのため」というのが答えだ。
物理ボタンを製造すると、設計コストや部品点数が増えるから、すべてをコンピューターに集約させて、効率的に制御しようという話。
特にひどいのが、ステアリングとミラーの調整だ。
メニュー内で2回ほどタップしてから、ステアリング内のぐりぐりボタンで調整する。
なぜステアリングコラムに、操作ボタンを付けないのだ??
とっても不便でストレスが溜まる。
ユーザー登録により、メモリー機能を使えるので大した問題にはならないだろうが、コストダウンを優先しすぎて普通に不便だ。
「一箇所に集約されていて、機能を見つけやすい」という、テスラオーナーだか信者のコメントをネットで見ることはあるが、普通に使いづらい。
エアコンの操作系統についても、当然ながら物理ボタンではない。
下側ツールバーから温度だけは変更可能なので、そこで制御しろということなのだろうが、私のようにこまめに風量を調整したいユーザーには、繰り返しになるが不便でしかない。
また、シートヒーターとの相性もよろしくなく、オート設定にしていると、車内の気温としては普通に寒いのに、シートヒーターだけ熱すぎるという事象が発生する。
どうせエアコンが航続距離に与える影響なんて数パーセントなんだから、その分の充電時間は、早めに出発する形で確保しておいて、ラフに使うのが良いだろう。
また、ワイパーについてもひどい。
オートワイパー付きだが微妙に反応が遅く、それが不満である場合、ナビ画面内から「1,2,3,4」の小さい数字を選んでタップする必要が生じる。
近年稀に見るイライラ仕様だ。いちおう、左スティックの先端を押し込むとワイパーが一回だけ作動するため、これをメインで使うことになるだろう。
スーパーチャージャーネットワーク・充電の弱点について
テスラの最大の魅力がスーパーチャージャーネットワークであることは言うまでもない。
15~20分も繋げば300km近い距離をチャージ可能で、一箇所に集中設置されているため、充電待ちのリスクがない。
….と言われているのだが、ここに穴がある。
詳細については上記の動画を参照して欲しいのだが、旧バージョンのスーパーチャージャーであった場合、同じ充電ストールを2台で使うと、出力が66kwに制限されてしまうのだ。
瞬間的に250kwを出せる車種もあるなかで、だ。
しかも、いちばん移動の需要が高い、新東名ルート沿いには、実質的には浜松スーパーチャージャーしか、使い物になる充電ステーションがない。
特に最近はテスラも増えたため、混雑する時期の移動がメインとなる場合、狙ったとおりに充電が出来ない可能性が高くなっている。
しかもだ、高速道路を一旦降りないと、スーパーチャージャーは利用できない。
いくら充電が安くても、高速道路代が割高にならざるを得ない。
また、インターの近くにあると言ったって、片道10分以上かかることもしばしば。
渋滞に巻き込まれるリスクも考えると、どこまでスーパーチャージャーのメリットが活かせているのか迷うところだ。
そこでこう考えるだろう。
「チャデモアダプタを使えばいいじゃん」と。
だめなのだ。チャデモアダプタにも弱点がある。
50kwしか出ないのだ。また、そもそも大半の充電器は、20kw程度の出力しかない。
かりに40kw出たとしても、30分で回復できるのは、せいぜい150km程度。
1~2時間走っては30分休む。こういうことを繰り返さねばならない。
しかもチャデモアダプタ、地味に重く、いちいち持ち出して接続するのも面倒臭い。
当たり前ながら先客のリスクだってあるし、駐車マスに停めるのも場所によっては狭くて苦労するし…
とまあ、懸念事項はそこそこ多いが、そのぶん自動運転と車内空間を活かし、ゆったり行けば良いのだ。私はそう思う。
これだけの不便があることを承知で、私はテスラが欲しい。
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