カーシェア試乗シリーズ、土日のうちに動画を出したいので、取り急ぎ、CX-30について書いていく。
なお、今回はタイムズカーシェアで借りた。
試乗メモ
さて、いつものメモの時間だ。今回はびっしりと書いてある。
短いストロークで、あまりダンパーは動かさずにコツコツと跳ねさせる。
段差が続くと乗り心地が良いわけでは無いが、不快感もなく乗れる。
低負荷コーナリングの際は、きり始めからロールはほとんどせずに、スッと旋回姿勢が定まる。
初期の揺さぶりは、ハンドルに重さこそ不足気味だが、路面を撫でるようにうごく。
ハンドルは軽く、クイックに動き、かなり大きいロールを起こしてしまうが、腰高感もなく、アンダー感もなく、挙動も落ち着いている。
攻め込んでいくと高重心と、減衰力不足によるフラつきが顔を出す。
エンジンは走り出しからトルクフルで、かなりの勢いで前に出る。
ハンドル内スイッチや各種ボタンには僅かなコストダウン要素あり。
エアコン操作ダイヤルの質感は悪く無い。
ウインカーの音が上品。
エアコンボタンは、上から押し下げるような操作感で好印象。
パワーウィンドウのスイッチの指の引っかかりまでこだわって作られている。
ソフトパットをセンターコンソールやダッシュボードに使用。
運転することを意識させる、マツダらしい作り。
音質はそこそこいい。
小さくて運転しやすいが、ヤリスクロスのような乗りやすさはない。
むしろ、車体が大柄に盛り上がっている分、主に左手前と後ろが、どこにタイヤがあるか分かりづらい。
ニュートラルに入れると静かで、遮音性もそこそこ高い。
ブレーキがちょっと弱い。
ステアリングレシオがもう少しクイックならいいのに。交差点の左折でたくさん切らなきゃ曲がっていかない。
グレードについて
グレードは複数あるが、内装の質感や、カーシェアには最廉価グレードが選ばれやすいという傾向から、2リッター直4の、e-SKYACTIV Gの20S(約239万円)の、2WDバージョンだと予想する。
例によって、諸元を書き出していく。
- 車体サイズは4395×1795×1540mm
- 車両重量は1400kg
- エンジンは2リッター直4のNA
- 最大出力は6000回転で156馬力
- 最大トルクは4000回転で199Nm
- タイヤサイズは前後とも「215/55R18」
- 最小旋回半径は5.3メートル
- FFの6AT
もちろんオートマモデルだが、マニュアルも選択肢に存在するのが魅力だ。
ただのガソリンエンジンではなく、マイルドハイブリッドシステムを搭載しているらしい。
また、1.8リッターのディーゼルも選べるらしく、そちらの場合1600~2600回転で、最大トルクの270Nmが出る。
外観のデザインについて
外観上のかなりの面積を占める、ホイールアーチのプラスチック。
車体サイズ自体も小さいため、外装のプラスチック感がやけに目立ってしまっている。
また、もっこりとした造形は車幅の掴みづらさを産み、運転のしづらさに繋がってしまっている。
万人向けとは言いづらい要素だ。
内装について
新車価格232万円ということで、別に高いクルマでは無いのだが、美しいデザインを持つ。
ただ、ステアリングや各部のスイッチの感触や質感、使用素材など、あまりカネが掛かっていないなあという印象だ。世間ではこれを「200万円代前半でマツダの芸術が味わえる」と評価するのだろうか。
だが、「マツダ車の車内空間」として素直に評価すると、普通に良い。
ドライバーを中心とした、外装とのバランスを取る美しいインテリアだし、「運転するクルマ」のコックピットとして作られている。エンジンフィールと合わせ、マツダ車はこの時代に、ガソリン車を、クルマとして運転できる。そういう作りをしているのだ。
…むしろ、新車価格250万円のSUVとして見れば、もっと言うと最廉価グレードとして見れば、普通に上出来だろう。もっと最廉価グレードが悲惨な車種、いくらでもあるし。
ステアリングにもっちり感が欲しい、内装にカネを掛けて欲しい。
そう思ったら、もっとカネを出して、上位車に乗れということだ。
ユーザーの予算不足をただコストダウンとして押し付けるのではなく、上へ上へと誘っていくような世界観の作り方は、BMWやメルセデス、レクサスにも無いような、マツダだけの世界だ。
スペックについて
この記事は動画化を前提に執筆しているため、諸元をまとめておく。
- エンジンは2リッター直4で、156馬力&199Nm
- 車重は約1.4トン
- 前後4395mm,横幅1795mm,全高1540mm
- 最小旋回半径は5.3メートル
- トランスミッションは6速AT
- モーターは約7馬力/49Nm
- 燃料タンク容量は51リッター
上位グレードなら180馬力まで向上することと、ディーゼルターボの最大トルクは270Nmであることは、ひとつの留意点だろう。
運転フィール
さて、ここからが本番だ。メモをもとに、動画化を前提として、運転してみて感じた目に見えない領域をレポートする。
運転のしづらさについて
ヤリスクロスやレクサスUXには明確にあった、視点の高さと前後方向への短さを活かした、「コンパクトSUVゆえの運転のしやすさ」が、この車種には無い。
むしろ、運転しづらいと感じた。
物理的には小さいのに、運転していて小さく感じない原因なんて、一つしか無いだろう。
外側のもっこりのせいだ。
あの外側へ向かって膨らんでいく形状と、高い位置にある運転席の双方が悪さをするせいで、特に左フロントのタイヤが、いまどの位置にあるのか掴みづらい。
これと、後述するステアリングレシオのせいで、交差点の直角左折では苦労するハメになる。
ただ物理的にはかなりコンパクトなので、慣れの問題なのかもしれない。基本的に小ささと軽さに勝るものはない。
せっかくのマツダ車だ。紳士的に、繊細に操ろうじゃないか。そのうち慣れる。
乗り心地について
不快ではないが、正直硬い。
硬さの方向性としては、短いストロークでコツコツと跳ねさせることで、安定性を図っている。
せっかくSUVとして持ち上げられているのに、そのぶんをストロークに変えていないような動きだ。
これではせっかく上げた車高が、高負荷域での不安定さのデメリットに、釣り合っていないように思う。
そのため、段差を越えたときの衝撃が断続的に入ってくるような区間では、身体がそこそこ揺さぶられてしまう。
スタビライザーが関係しているのか、片側だけ段差に乗り上げた際も、反対側のサスペンションまで引っ張られているかのような動き方をする。
不快と呼ぶほどではないし、空気圧を僅かに下げてやるか、気にしなければ普通に乗れる程度に収まってはいるが、長距離に連れ出すとなると、少し辛いかもしれない。
もう少しアシをストロークさせて欲しいところだ。
エンジンについて
エンジンを掛けると、レクサスには一歩及ばないが、組付け精度や遮音へのこだわりを感じさせる、静かでジェントルな唸り声が心地よく響く。
かなりのトルクだ。走り出しから軽さがあり、高回転域まで気持ちよく回る。
なによりも驚いたのが、マニュアルモードでレッドゾーンまで回した際に、自動でシフトアップしないことだ。
このことに気づかずにレブらせてしまい、クルマには悪いことをした。
「約1.4トンに約150馬力」ということで、特筆するほどのスペックではないのだが、加速力としては充分すぎる。
体感では、シャシーに対してのエンジンパワーは、20~30%ほど過剰だ。
パドルシフトは無いが、パワーも充分で、回していく楽しみもある。
後ほど言うが、SUVである割にはそこまで運動性能は悪くない(良いとも言わないが)。
重量とサイズが露骨に足を引っ張っていたCX5と比べても、乗りやすいガソリン車として楽しんでいけるんじゃないだろうか。
ステアフィールについて
総じて言うと、結構良い。
CX5のように重たくないこと、物理的にもデカくないこと、乗り心地よりは安定性に振ってあることで、トヨタ車ほどのドッシリ感は無いが、充分に安定した走りを楽しめる。
ステアリングは軽く、クイックに動く。
低負荷でハンドルを揺さぶると、路面を撫でるようにぐりぐりと動くし、あまり攻め込まずにコーナーに入れば、一瞬でロールが収束して、安定した姿勢のまま曲がっていける。
コンパクトカーやセダンではなく、腰高なSUVであることを考えると、普通に良いんじゃなかろうか。
ただし、弱点もある。
路面がうねっている区間を飛ばしていくと、減衰力不足によるものだろう。ふわふわとした不安定感が出てしまう。それと同時に、高重心であることが隠しきれなくなる。
また、急激にハンドルを揺さぶると、かなり大きなロールをしてしまう。
物理的に軽いことと、車体が小さいことに助けられているが、カローラクロスやクラウンクロスオーバー、ヤリスクロスのような、トヨタSUVの安定した動きを知っていると、どうしてもマイナス評価となってしまう。
また、ステアリングのレシオも、通常のコーナリングではなにも気にならないが、交差点の右左折でネックとなる場合がある。
的確に操作をしていても、徐行で曲がっていても、どういうわけか、クルマがアウト側に膨らんでいくのだ。これは、ハンドルを回す量に対して、実際にフロントタイヤが切れる角度が小さいからだ。
ハンドルの軽さを優先したのだろうが、たくさんハンドルを回さないといけなくなり、スパッと気持ちよく左折することが出来なくなる。
小径な社外製ステアリングがあるなら、それに交換することでなにか改善するのか、気になるところだ。
○追記:この切れ角の問題について、読者の方から以下の訂正を頂いた。
曲がるときは、少し手前で微妙にハンドル切って曲がるとうまく曲がりますよ。アシスト付き(GVC)なんで。慣れるまでは不快ですが
乗りこなすのに独自の操作を必要とする車種は、正しい評論をするのが難しいということだ。
例えばプリウスのシフトだって、「Pはボタン、Dは右下、Rは右上」の3つしか無い、操作ミスも起こらないシステムなのに、世間ではどういうわけか危ないモノ扱いされている。
私もそろそろ、モノのせいにする考え方を改めていかねばならない。
ついでに言うと、ブレーキのパワーも、加速力に対しては不足を感じる。
このクルマを買った方は、しっかり走りたいなら、せめてブレーキパッドくらい強化しよう。
その他のあれこれ
ここからは、わざわざ段落を作るほどではなかった、いろいろな特徴をレポートしていく。
まず、ウインカーの音がとても上品だ。ただの「カチカチ」ではなく、美しく響く。
ナビ内の設定メニューは異常なほど豪華だ。エンジンを切った後にライトが光り続ける時間や、オートワイパーなど、「セッティングできそうなことはセッティング出来るようにした」という、開発者さんからのありがたきプレゼントである。メーカー内流用の賜物だ。
ただし、アームレストとカーナビの操作ダイヤルが干渉気味で、手首の動きを邪魔する位置にアームレストが来ている点は残念だ。
エアコンのボタンは、高級感こそ弱いものの、上に指を置いて、押し下げるような、言うならばピアノみたいな操作が可能だ。走行中でも押しやすい親切設計である・
パワーウィンドウのスイッチがやけに操作しやすい。指の引っ掛かりやすさを強く意識して、細かく設計されているのが感じ取れる。
遮音性が価格帯の割に高い。窓を開けるとあからさまにうるさくなる感触がある。
ブレーキホールド付き。アイドリングストップからの再始動はかなり速く、二回目の点火でもう動き出す。
まとめ
「値段・サイズ・運転フィール・装備のどれを取ってもよくまとまった一台」だった。
「経済性と走行安定性ならヤリスクロス、官能性ならCX-30」といったところだろうか。
…でも、確かに悪い要素はないけど、デミオでよくね?
SUVの高重心な動きを良く思わない私には、こういう感想になってしまった。
リフトアップされている割に乗り心地は普通に硬く、攻め込むとSUVの悪いところが顔を出す。
CX-5に乗ったときと比べると、感触は良いと言えるものであったが、今回の試乗も、SUVへの懐疑論で終わることとなってしまった…
コメント
曲がるときは、少し手前で微妙にハンドル切って曲がるとうまく曲がりますよ。アシスト付き(GVC)なんで。慣れるまでは不快ですが。
なるほど、ハンドルの切り方にもコツがあったのですね。
時間を作って、これから本文に追記,訂正を行わせていただきます。