2020年、世界が新型コロナウイルスによって混乱していたその最中、アメリカでは交通量の激減を逆手に取った”ある男たち”が、前代未聞の記録を打ち立てました。
彼らが挑戦したのは、非公式のアメリカ横断レース “Cannonball Run(キャノンボール・ラン)”。これは、ニューヨークからロサンゼルスまでの約4,500kmを、どれだけ短時間で走破できるかを競う、過激な公道レースです。
そしてその記録を更新したのが、なんとパトカーに偽装した一台のアウディS6だったのです。
〇実車の紹介動画
〇私が約30秒に凝縮したショート動画
使用車両:2016年式 Audi S6(C7)
今回の挑戦で使われた車は、2016年型のAudi S6。ベースは4.0L V8ツインターボを搭載する高性能セダンで、Audiらしいクワトロ(4WD)システムが採用されています。

しかし、このS6はもはや”普通のS6″ではありません。
エクステリア改造(偽パトカー仕様)
- ボディカラー:白ベースに黒のライン。アメリカの黒白パトカー風にラッピング
- エンブレム:Audiのロゴを外し、Ford風ロゴに差し替え
- グリル:下半分を白いビニールで覆い、Taurus風に
- ホイール:19インチOZホイール(センターはプラスティディップでドッグディッシュ風)
- リア周り:テールライトにビニール加工、反射材のシェブロン(警告パターン)追加、偽ユニットナンバーを装着
- アンテナ:ルーフに複数設置し、本物の警察車両に見せかけ
その姿は、遠目から見ればほとんど本物のアメリカ警察車両。一般車両はもちろん、警察ですら見間違うほどの完成度でした。

エンジン&パフォーマンスチューニング
- RS7タービン:大型化されたターボで高出力化
- Alpha Performance製 ダウンパイプ&ヒートエクスチェンジャー:
- 排気抵抗を低減し、ターボレスポンスと高回転域の出力向上
- インタークーラーの水冷効率を強化し、長時間の高速走行にも耐える
- DS1チューン(Dyno Spectrum):
- クルーズコントロールレバーで燃料マップを切替可能
- 前半(東部)は93オクタン、後半(西部)は91オクタン燃料に対応
推定出力は約600馬力。AMG E63には及ばないまでも、常識外れの速さを実現しています。

内装・電子装備も”キャノンボール仕様”

- ナビ/センサー類:
- 複数のGPSデバイス(Garmin、iPad、スマホ)
- Wazeナビアプリを常時使用
- レーダー探知機:Passport MAX360
- レーザー対策:ALPディフューザーを装備
- 燃料システム:
- Mercedes E63から移植した巨大な燃料セル+移送システム
- トランクに設置され、車内から残量確認が可能
- 通信・制御系:
- キャノンボール用コルベットから流用した電源モジュール(CB無線、インバーター、ブレーカー類)
- 後部座席裏に搭載し、車内統制を一元管理

伝説のラン:4,500kmを26時間38分
このアウディS6が叩き出した記録は、ニューヨーク〜ロサンゼルス間 約4,500kmを26時間38分で走破。
平均時速はなんと約169km/h。これは一般道を使った移動としては異常なスピードです。
この驚異的な記録を支えたのは、
- 偽装による周囲の警戒回避
- 長距離ノンストップ走行を可能にする燃料容量
- 複数ナビと探知装置による”情報の目”
- 実走データに基づく緻密な戦略 でした。

最後に
この出来事は、まさに”パンデミックの混乱が生んだアウトローの伝説”。違法であることは間違いありませんが、その執念・工夫・テクノロジーの粋を尽くした挑戦には、どこかロマンを感じてしまいます。
現代のキャノンボールは、法の枠を越えたリアルなレースドラマ。その中心には、パトカーに擬態した一台のアウディS6がいたのです。