テスラ・モデル3
ハンドリングや総合フィールのすべてが最高峰の一台であった。
その運転フィールは従来型クラウンに近く、EVだからこそ実現できる理想的な前後重量配分で、ターンインの際にアクセルを緩めるだけでスッとノーズが入る。
また、圧倒的なモーターのトルクで加速していくため立ち上がりが非常に気持ちいい。
ある程度ロールしていった先で、相対的にフロントのスタビを強く設定することで緩やかなアンダーステアになるよう設定されている。
そのため、圧倒的な安定感の中で遠心力とタイヤグリップを強く感じながら走れる。
理想的な前後重量配分による回頭性の良さと、ロングホイールベースによる安定性、これにモータートルクによる圧倒的な加速性能が決め手となって1位を獲得した。
ホンダ・新型シビック(ガソリンモデル)
ガソリンモデルのほうの、新型シビックを挙げさせて頂く。
なおタイプRには乗ったことがないためノーマルモデルではあるが、なにも不満が出ない実力だったので自信を持ってオススメする。
このシビックの最大の魅力は、完璧なハンドルの「重さ」にあった。
フロントタイヤが路面を撫でる感触や抵抗感、シャシーの動きとのマッチングが完璧に表現された、絶妙な重さがあるのだ。
昨今のEVほどの劇的な加速力はないが、VTECの元気の良い高回転域のサウンドと共にこのダイレクトなハンドリングを味わえる。最高に楽しいに決まっている。
タイヤグリップをしっかり使いに行っても、安定感ある旋回フィールが持続する。
FFであることのメリットをフルに活かした、「重さを伴った一体感」。
この「重さ」の要素において、唯一愛車のプリウスPHVGRを上回ったと感じた一台であった。
トヨタ・クラウン
覆面パトカーでお馴染み、ひと世代前の、セダンだった頃のクラウンである。
このクルマは世界観の演出が素晴らしい。
内外装はシンプルにせずにしっかりと作り込み、価格帯を飛び越した上質感が味わえる。
乗りやすいサイズ・手が届く価格帯での高級スポーツセダンとして、非常に満足感が高い一台である。
特にテスラのモデル3は、内装があまりにもシンプルで個人的に寂しさを感じてしまった。このことによって、同等の運転フィールを持つクラウンの評価が押し上げられている。
さて、実はこのクラウンと、テスラのモデル3と、次に紹介するMIRAIは、非常に似通ったステアフィールを持っている。
このクラウンも同じく、ターンインの際にアクセルを緩めてやるだけで、スッとノーズが入っていく気持ちよさがある。
少し突き上げは硬いが走りに重厚感があり、高速道路の追い越し車線もスイスイ走っていける。
なお、私が乗ったのは直4のハイブリッドモデルであったが、高速域での加速性能の無さが絶望的で、これが残念で残念でならなかった。
この加速性能の無さは、テスラのモデル3と比べて明確に「劣っている」要素であった。
もしこのクラウンのパワートレインだけEV化して大トルクのモーターを積んだら、そのままテスラのモデル3に並べるような出来の一台であった。
SUV化もモデルチェンジも良いが、せっかくのシャシーを活かせば良かったのに・・・
直6の大排気量モデルなら大幅な改善が見込めるが、乗ったことがないのでなんとも言えない。
そもそもこのハンドリングは理想的な前後重量配分によって実現しているものである。
フロントが重くなってしまうことがハンドリングにどこまで影響を与えるか、確かめてみたいものである。
トヨタ・MIRAI
このクルマは、乗って数分でタイヤを鳴らすことができたレベルで素直なスポーツマシンである。
さらに面白い特徴として、水素を動力源としていることと、レクサスLSのシャシーがベースではあるが、運転フィールはクラウンと瓜二つであることが挙げられる。
というか、目を瞑って乗ったら区別できないレベル。
ステアリングの触り心地やセダンとしてのサイズ感はほぼ同じレベルである。
段差を越えたときの硬めな乗り味もそっくり。
外から見ていると大きく感じた車体サイズも、クラウンと運転していて違いを感じなかった。
さて、クラウンと比べて僅かに大柄であることが効いたのだろうか、どこまでも追い込めるような頼もしい運転フィールを持つ。
特にコーナーへの侵入時、その頼もしさのお陰で、乗って数分でタイヤが鳴るくらいの領域まで飛び込んで行けるのだ。この異次元の頼もしさは、GT-Rやスープラに乗っていても感じることは出来なかった。
物理的な限界もそうであるが、なによりも「限界域まで追い込んでもすべて制御できる感」がズバ抜けていた。
しかし、モータートルクが無いという致命的な弱点も抱えている。
ベタ踏みしていっても、明らかに加速が滞るのだ。
遅くはないが、テスラのモデル3の鋭い加速感を知っていると、これが残念で残念でならない。
加速力さえなんとかなっていれば、クラウンと一緒にモデル3に勝てたかもしれないのに・・・
トヨタ・プリウスPHV GR
自分のクルマを紹介するのはあまり気が乗らないが、実際に最高のハンドリングを有している一台なので僭越ながら軽く紹介させて頂く。
基本的な操舵フィールはシビックと似ている。
重さを伴い、クルマの動きのすべてを感じられるハンドリングが最大の魅力だ。
加速力こそ控えめだが、TNGAプラットフォームと万人向けFFセッティングのお陰で、異常に直進安定性が高い。
ある程度はアシを動かして快適性を担保してくれるGRチューンのショックアブソーバーが、最高で164km/h程度の速度域でもゆったり巡航できる安定性も同時に産んでいる。
この快適性と安定性の完璧すぎる両立は、たかだか400万円程度のクルマが出せるフィーリングではない。
高いクッションに課金すれば、20時間近く走り続けるようなドライブにも耐えられる快適性と、乗り物の性能のすべてを使い切れる楽しさと安定感。
これに乗っかってくるエコカーとしての低燃費。
マイナー車ではあるが、この記事で紹介したクルマたちに並べる要素を持っていたので紹介させて頂いた。