ズムウォルト級を用いて検証
連射性能
一発撃つだけならいいが、基本的には連射することになるだろう。
バッテリーに貯めておいてから盛大に使っていくことになるが、発電量やバッテリー容量との兼ね合いで、継続的に発射し続けるのは厳しいことなんて容易に想像がつく。
ここで検証用に登場するのが、ズムウォルト級である。
計画通りに開発が進まず、今では珍兵器だの失敗作だの言われているズムウォルト級であるが、実は機関の容量的にはレールガンの運用に耐えられるはずなのだ。
ズムウォルト級の機関は、統合電気推進式となっている。
これは雑な言い方をすると、ノートe-Powerの船舶版である。
上の図のように、エンジンとプロペラが、物理的には繋がっていないのだ。
一旦バッテリーに貯めてから、その電力でモーターを回しつつ、艦内の電装系も賄う仕組みとなっている。
ズムウォルト級はエンジンの発電量があまりにもバカデカいので、レールガン発射にも耐えられると言われている。
威力について
ネットで少し調べれば、発射実験の動画が多数投稿されている。
この動画では、何枚もの鋼鉄の板を貫通する様子が描かれているが、私が知りたいのは「爆薬換算では何キロになるのか」という意味での威力だ。
弾丸の重量と初速ベースで計算
さきほど、”2010年12月10日には、約10.4kgの砲弾を音速の約8倍(約2.7km/s)、砲弾の運動エネルギーは約33MJでの発射に成功した” という文面を引用した。
まず、秒速2700メートルというのは、時速9720kmである。
つまり、10kgの物体が時速約1万kmで移動しているのだ。
今回は、WikipediaのTNT換算を参考に、まずこれが何Jであるか求めていく。
どうやらレールガンの初速の運動エネルギーは36450000Jとなるらしい。
なお、計算が面倒になるため距離減衰は考慮していない。
3.645×10^7[J]がどのくらいのエネルギーになるか、Wikipediaに書いてある。
私の計算が正しければ、ガソリン1kgを燃焼させた時に放出されるエネルギーよりも低いことになる。
ちなみに、4.2×10^6[J]が、TNT換算1kgとなるようだ。
つまり、TNT換算約10kgに満たない程度の威力らしい。弾丸の重量自体は10kgなので、こんなモノなのか…
J(ジュール)をTNT換算
“1TNT換算トン = 4.184×109 J” とWikipediaに書いてある。
バカみたいだが、10の階乗を取って、4184000000Jと置いておく。
(レールガンのTNT換算量) x 4184000000[J] = 36450000[J] であるはずだ。
なにか致命的な間違いを犯している気がする。
0.008キロトンであるらしい。
ちなみにこれは、TNT8kg相当である。
2つのアプローチで求めた結果、レールガンの威力をTNT換算すると約8kgである という結論に至った。
ちなみに、ドイツの「アハトアハト」として有名な8.8cm高射砲も、弾丸の重量は約10kgであるらしい。
試しに「レールガン 口径」と検索してみたところ、アメリカの試作機が出てきた。こっちは90ミリだ。
現実の話ばかりで疲れたので、そろそろ夢物語に移りたい。
宇宙戦艦への搭載可能性
大気圏外で動作可能か
先ほどの仕組みを見ただろう?
宇宙空間で発射するにあたって、なにも問題がない。
それどころか、スペースデブリや隕石破壊への転用が検討されている。
…これは小話になるが、先ほどの表を思い出して欲しい。
同じ10^7[J]の欄に「質量1kgの物体が地球の引力圏から脱出するために必要な運動エネルギー」と書いてあるのだ。
つまり、1kg程度なら、理論上は現在の技術でも大気圏外までモノを持っていけるということである。
これはWikipediaに「マスドライバー」と書いてあったもので、どうやらガンダムにも出てくるらしい。
ちょっと調べていると、動画が掲載されているツイートも見つかった。(おそらく著作権状はアウトである。)
トレンド入りする度に
— ノリ (@o5kjH8uG8NGe2xK) May 13, 2022
言っているけどガンダムSEEDは
また回想シーンかよ!
またバスターはバンクかよ!
またニコルの殉職シーンかよ!
また総集編かよ!
と文句言いながらも
たまに名シーンがあるから
嫌いになれないので
オレにとってSEEDは
ずるいガンダム。 pic.twitter.com/JlT7a9hln2
理論上はすでに実現可能であると考えると、夢のある話だ。
機関について
こちらも考えることは単純明快で、大電力が用意できれば良いのだ。
これについては、宇宙空間での推進方法についてまとめた記事の傍らで考えようと思う。
ここでは一旦現実に帰ってきて、またズムウォルト級で考えてみよう。
さきほど “当初の計画では発射に必要な電力は600万A、射出エネルギーは64MJで、損失量を加味すると120MJを必要としていた” と書いた。
そしてズムウォルト級には “主発電機としては出力35メガワット (47,000 hp)のロールス・ロイス マリン トレントMT30が2基、補助発電機としては出力3.8メガワット (5,100 hp)のRR450が2基、搭載されている[7]” とWikipediaに書かれている。
35メガワットが2基に、3.8メガワットが2基なので、合わせて最大77.6メガワットである。
この発電量を何時間も出し続けられるか不明であるが、一旦77.6MWhと仮定しよう。
「1Whは3,600J」である。
また変換サイトの登場であるが、120MJは、0.033MWhであるらしい。
計算上は余裕で足りるように見える。
ここで、雑な割り算をしてみたところ、計算上は1時間に約2000発打てることになった。さすがにウソくさいが。
60で割れば、1分あたり何発打てるか求められる。
さすがに分間38発はウソだろ。
こんな計算はぜったい間違っている。
まとめ
中学生でも理解できるレベルの基礎から始まったのは良いが、最終的に意味不明な計算を何度も繰り出してしまった。間違いがあったら本当に申し訳ないし、なにか間違っている前提でこの記事を読んで欲しい。
しかし本来の目的の「レールガンの仕組みを理解した上で、宇宙戦艦への搭載可能性を探る」という目的は果たせたので、個人的には満足だ。
1万文字に迫る文字数となってしまい、この記事を書くのに丸1日費やしてしまったが、たいへん面白い経験が出来た。