レールガンの仕組みと宇宙戦艦への搭載可能性について

「宇宙進出」を考える

仮想戦記での定番兵器にして、実戦配備の計画のもとに絶賛開発中のレールガン。

そんな最先端の兵器を、今回は基本的な物理法則から、宇宙戦艦に用いる兵装としての可能性まで探っていく。

なお、中盤以降に色々な計算を行うが、それらは間違っている可能性が極めて高い。

注意して読んで頂きたい。

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レールガンについて

「フレミングの左手の法則」について

レールガンの仕組みは単純だ。

フレミングの左手の法則を応用して弾丸を打ち出す。

実際に物体が動いているところを見るのが早いだろう。

【高校物理実験】フレミングの左手の法則 電流が受ける力の向き

電流を流した瞬間、左方向にコイルが押し出されているのが見て取れる。

もちろん電流の向きを逆向きにすれば、コイルが動く向きも逆となる。

このことを頭の中に入れてから、先に進むとしよう。

「磁石と棒」のみで作る超簡易レールガン

ここはあえて、単純を極めて考えてみよう。下の動画を見て欲しい。

木の棒の横に磁石を置いただけである。

もはや、リニアモーターカーとの区別が付かなくなってくる。

本当に磁石を並べただけなのに、凄まじい勢いで鉄球が移動していき…

そのままターゲットに激突。目で終えないような弾速だ。

ローレンツ力について

ここでもう一つ、ローレンツ力という概念を知っておこう。

ローレンツ力というのは、電気を帯びた小さな物体が地場の中を通過する際に受ける力のことである。

基本的にはフレミング左手の法則と似通った概念だ。

画質は荒いが、以下の図のような方式で、弾丸が加速されていく。

出典

電流と磁場について

もう少し周囲から攻めよう。

義務教育で習ったことを思い出して欲しい。

導線に電流を流すと、その周囲には磁場が発生する。

「右ねじの法則」というのを覚えているだろうか。

電流の向きと、発生する磁場の関係|出典

こうして発生する磁場が、弾丸を打ち出す力となっていくのだ。

レールガンの基本的なしくみは、中学生レベルの理科であることを覚えておこう。

レールガンの仕組み

そろそろ本題に入ろう。

かなり簡略化された図を見つけたので、東大入試.com様から引用させて頂く。

出典

さきほど、導線に電流を流すと磁場が発生すると言った。

上の図に磁場と、打ち出すべき弾丸を書き加えると以下のようになる。

出典

導線のことを「導体レール」と呼ぶ。

導体レールの間の空間は、「電機子」を用いて物理的に接続されて回路となる。

出典

あとは、この導体レールに大電流を流してやるだけで、弾丸が超高速で打ち出されるというわけ。

大層なものに見えたレールガンであるが、仕組みは実に単純である。

下の図では、フレミングの左手の法則が、どのような方向に作用して弾丸を打ち出す方向に向かうのか、とても分かりやすく記されている。

出典

どうやら導体レール部分は、外側に力が掛かっていたようだ。

私自身も左手を使って、「あれ?方向合わなくね?」と混乱してしまったところだ。疑問が解決できたぜ。

兵器としてのレールガンの性能

仕組みがわかったところで、気になるのは兵器としての性能だ。

しかし、軍事機密に関わる要素でもあるため、正確なところはわからないだろう。

一旦Wikipediaから、アメリカのズムウォルト級に搭載予定のレールガンに関する記述を参考にしよう。

“2010年12月10日には、約10.4kgの砲弾を音速の約8倍(約2.7km/s)、砲弾の運動エネルギーは約33MJでの発射に成功した

と書かれており、

重量15kgの砲弾を初速2.5km/sで発射、高度152kmまで打ち上げて370km以上先の攻撃目標に終速1.7km/s(マッハ5)で着弾させる、このためには砲口での砲弾運動エネルギーは64MJ(メガジュール入力する電力ではなく、砲弾のもつ運動エネルギーである)を必要としている

という記述もある。

ここで、「爆弾換算での破壊力」と「発射に必要な電力」と「連射性能」が気になったので調べてみる。

発射に必要な電力

産経新聞のとある記事に「25メガワットの電力が必要」と書かれている。

これは日本の家庭約7000世帯の年間使用電力に当たるらしい。

これは、EVのバッテリー容量に換算すると、テスラのモデル3が500台ぶんになる。

ちなみに、この表記には罠がある

別の記事に「レールガンの性能(160km以上離れた目標に毎分10発)を発揮させるためには25MWの電力供給が必要」と書いてある。

つまり、別に1発撃つのに必要な電力量だとは言ってないのだ。

しかも、「MW」であって、「MWh」ではない。

1時間あたりの電力消費量に関しては触れられていないのだ。

酷すぎる罠である。

ここで、『電 磁 砲 (レールガン) の 概 要』というwebページにて、気になる一文を見つけた。

“当初の計画では発射に必要な電力は600万A、射出エネルギーは64MJで、損失量を加味すると120MJを必要としていた”

まさかの単位が「J」となった。

一発撃つのに120MJ必要だと言うわけだ。

テスラ公式サイトに映っている上記のモデル3は、バッテリー容量が大きい上位グレードだ。今回の検証ではスタンダードモデルを用いている。

ちなみに、テスラのモデル3(RWDモデル)のバッテリー容量は54kWhだ。

kWh」を「MJ」に変換出来るサイトがあったので、テスラのモデル3が1台ぶんのバッテリー容量で、何MJになるのか確かめてみた。

54kWhは194.4MJになるらしい。

つまり、単純にバッテリー容量だけで考えるなら、一発撃っても余るわけだ。

逆に120MJは、33.3kWhとなる。

ちなみにこれは、だいたいホンダe(35.5kWh) 1台ぶんにあたる。

ちなみにhonda e の航続距離は、ギリギリ200kmに届かない程度だ。

雑な言い方で申し訳ないが、レールガンを一発撃つ電力で、EVが200km走行可能であると言えなくはないわけだ。

…余談になるが、テスラのスーパーチャージャーの充電はとても速い。
バッテリー残量や温度などの条件はあるが、10分~15分ほど充電しておけば、200kmぶんくらい余裕で充電出来る。


市販のEVですらこのレベルなのだから、専用の充電システムや発電機構に大容量バッテリーを合わせれば、大艦巨砲主義時代の戦艦のように連射できる可能性が高い。

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