2トンを超える巨体。
豪華なキャプテンシート。
静粛性と快適性を追求した高級ミニバン。
そんなクルマで、本気の走りを楽しむことはできるのか?
新型エルグランドの走行性能を確かめるべく、V6 3.5Lエンジンを搭載した30系アルファードとの比較を行うことになった。
加速性能ではアルファードが圧倒する。
しかし、コーナリングではどうだろうか。
そして、ミニバンというカテゴリーの常識を覆すような走行性能を見せることはできるのか。
これは、クルマの性能を限界まで追い求める者の物語である。
〇エルグランドの試乗インプレッション
〇アルファードの試乗インプレッション
小説版ダークオドメーター
1話:ライバルとの出会い
エルグランドの現行を借りて関東を抜け、田舎のサービスエリアで休んでいた。
出発直後にいきなりスーパー銭湯で朝風呂を嗜んだため、濡れたタオルの乾燥が必要だ。
そのためだけに豪華な二列目のシートベンチレーションを全開にして、タオルを隙間に差し込んで固定し終わったころ、彼は現れた。
だだっ広い駐車スペースに、一マスだけ開けて、30アルファードがやってきた。
そしてマサシは降りてきた。
何を隠そう、エルグランドと勝負させるために呼びつけた、V6の30アルファード乗りである。
「おうケン、良い車乗ってんねぇ」
(私の名前はケンジ。ケンと呼ばれている。)
「新型エルグランド、見かけ以上だぜ。よければ見てみろよ。」
「ほぅ、こっちのエグゼプティブラウンジにどこまで敵うか、しっかり確かめるとしよう」
豪勢なキャプテンシートをタオル乾燥機として使っていることを揶揄われつつ、私がマサシに軽く車を紹介する。
「すげぇな、エグゼクティブラウンジにもほとんど負けてないぜ」
「価格もな。ただ加速性能は微妙なところだ」
「前後モーターを出せば300馬力越えだろ?3.5のNAよりは良い加速すんじゃねぇのか?」
「いや、加速勝負ならアルファードのV6の圧勝だろう。かなり狭い峠をバトルコースに加えさせてくれ」
マサシはライオンたちを従えてビジネスを器用に回しており、普段はこのアルファードの2列目で移動している。
そして走りたくなれば自分でハンドルを握っている。
タイヤが悲鳴を上げ、スタビリティコントロールが作動するくらいのペースでアルファードを振り回す実力者だ。
アルファードの代表ドライバーにはうってつけである。
2話:フラットアウト
「市街地を抜けるまで少しある。とっとと出発して通話しながら続きをやろうか」
「おう!最初は後ろについてくれ、合流加速で比較しよう」
2人ともせっかち。無意味な会話を嫌う実利タイプということで、会話もほどほどに出発。
2台並んで合流レーンへ。
ベタ踏みテストになるため、徐行しながら車の切れ目を狙う。
私はしれっとチャージモードに入れてバッテリーを充電。
エルグランドのイーパワーは電池切れになると致命傷だ。電気は賢く使わないと。
周りに車がいないのを確認してから一旦スローダウン。
10km/h台まで落とす。
「行くぞ」「おう」
フラットアウト。
エルグランドのシステム出力は公開されていないが、諸元表には前後それぞれのモーター出力はかかれている。
それを足し合わせると余裕の300馬力オーバー。
さぞ鋭い加速を見せてくれるのだろうと思いきや、そこそこ素早い程度に収まってしまう。
踏んでからの出足も緩慢であり、踏み続けて一呼吸置いてから、ウイーンと本来のマックスパワーがで始める。
純粋なる高回転型の自然吸気エンジンのような加速感だ。
私はこの味付けに納得していない。
バッテリーから取り出せる電気の量が少ないのか、ニスモを出すために抑えているのか。
なぜ踏んだ瞬間にドカンと出さないのだ?
120km/hくらいまで加速してから合流。
当然アルファードは離れない。
「おいおいそんなモンか?もっと離れると思ったぜ」
「言ったろ、意外と加速は速くねぇ」
アルファードの3.5LのV6エンジンは、実はミニバン界屈指の名機である。
出力や官能性は芸術の域にある。
100km/h台をスイスイと気持ちよく伸び続ける余裕の大出力に加え、レッドゾーン手前の1500回転でさらにもう一段階伸びる。
120km/hあたりで加速に陰りが見え始め、140あたりから上はマイルドになってしまうエルグランドに対し、アルファードはリミッターまで気持ちよく伸び続けるのだ。
3話:のんびり追い越し車線クルーズ
順当に交通ルールが消滅したこの乱世、危険性の無い法定速度違反なんて私は気にしないが、そこらへんの一般人とは違って車間を詰めたり煽るような運転はしないと決めている。
のんびり追い越し車線が開くのを待ってはフラットアウト。
肩慣らしで140km/hくらいまでフル加速するのを繰り返す。
どのセッションにおいても、アルファードはリアに貼り付いて離れなかった。
「そういえばブレーキは大丈夫か?こっちはそんなに強くないぞ」
「こっちだって2.4トンあるが、回生ブレーキもあるから同等以上かもしれんな。追突には気を付けてくれ」
以前SクラスでRX-8に挑んで負けた際もそうだが、車重というのは走行ペースを上げていくと致命的に足を引っ張る要素である。
1.3トン台なら無敵、1.7トン以下でも車両のバランスやタイヤグリップ次第では良好な走りが実現するが、2トン級のミニバンとあれば車重だけはどうにもならない。
世の中にはテスラのモデルXのような車重を克服している動きを見せる車が居る。
載ったことは無いが、現行のBMWのM5も「2.4トンのライトウェイトスポーツ」と評されているのを雑誌で見た。
エルグランドも旋回に限ればその部類だろう。
しかし、ブレーキにおいてはそうはいかない。
当たり前だが車重とスピードが増えれば、それに応じて運動エネルギーも増していく。
車速とイコールである運動エネルギーの借金は、当然ながら減速や旋回の際には返済しなければならない。
運動エネルギーは速度の二乗に比例する。
前の車に割り込まれたりカーブに突っ込む際は、出したスピードと持ち前の車重と同じだけ、運動エネルギーを捨てなければならないのだ。
エルグランドは2.4トンのデカブツだが、回生ブレーキも相応に強力に効く。
前後の強力モーターの作用により、リアを積極的に使って減速を行っていくため、ノーズダイブが低減される。
前2輪でズドンと沈み、なんならリアは持ち上がってショックアブソーバーが伸び、実質フロントの二輪のABSのみで減速せねばならない車種というのがたまに存在する。
自分が確認した限りではタイムズカーシェアで借りた先代のスイフトがそうであったが、幸いエルグランドは、タイヤの前後バランスや減速姿勢には余裕がある。
モーターの力で物理法則の限界を克服しているのはアウトランダーやエクストレイル譲りだと言えるだろう。
それに対してアルファードは、ブレーキに弱点を抱えている。
加速だけは3.5のエンジンでモリモリ行くが、少なくとも純正のブレーキではキャパシティ不足である。
奥まで踏み込んでもあまり力強い制動フィールは得られず、車重がもたらす慣性を受け止めきれない一面がある。
アルファードのようなデカブツでマックスブレーキを強いられるような走行ペースに飛び込むこと自体が間違いなのだ。
4話:ジャンクションのカーブでコーナリングバトル
田舎へ向かって快調に進行中。
高速道路のたまのお楽しみである、ジャンクションアタックだ。
オールクリアな天空の幅広カーブは絶好の全開ゾーン。
エンジンもタイヤもマックスまで使い切れる。
C43AMGでガチった際は、車が速すぎて呼吸を忘れ、心臓が破裂するかと思うほど痛んだ。
そういう内蔵破壊ゾーンにまで車を突入させることができる。
今回は穏やかな登り勾配のあと、頂上付近でユルいの右カーブに入りつつ、ゆったり下る。
そして結構な負荷を掛けられる左カーブののちに、本線に合流する。
幸いにも左に降りたタイミングでオールクリアを確認した。
「精一杯逃げてくれよ」
「直線では遅れを取ったが旋回では負けないぞ」
道路状況や天候は抜群に良いが、多少霧が掛かっている。
私は後続への配慮のため、特に諸条件が万全でないときは本線退出の左ウインカーは丁寧に出すようにしている。
車体の後端が完全に本線から離脱し終えるまで、左ウインカー出しっぱなし。
本線と離脱車線の境界を識別するストレスを下げることを狙う。
さて、一呼吸ののちにフラットアウト。
ちょっと充電する時間をおいての90km/hからの加速なので、多少の鋭い加速Gが出る。
しかし、140km/hから上の空気抵抗に加えて登り勾配まで合わさり一気に緩慢となる。
当然微妙に離れていたアルファードがモリモリと強烈な勢いで迫って来る。
お互いに安全のため、常識からかけ離れたペースで走行する際は昼間点灯をするよう取り決めている。
当然フォグも付ける。
光り輝く特大の神殿が猛烈に迫って来る。
「加速勝負はボロ負けだな。やっぱアルファードの3.5は本物だ」
「そっちだって遅いわけではねぇよ、さあ本気で突っ込め」
いよいよ穏やかな右カーブ。
常識+αくらいのペース感まで減速。
山のうねりの頂上にピンポイントで継ぎ目がある。
そこは穏やかに安全にクリアして、そこから本格的にベタ踏みしていく。
数秒で本能が「まずいんじゃないのか?」と言い出すペース感へ。
しかしデカブツエルグランドは地面に貼り付いている。
ハンドルを切れば軽い力でニュートラルステアとして切れ込んでいく。
強いコーナリングGがかかり、フワフワと前が浮きそうな路面状況であるのを感じる。
ビシっと安定しながら加速し続ける。
運転席メーターに出しておいた四輪駆動システムモニタが、イン側にブレーキを掛けていることを告げる。
抜群な安定性を誇るエルグランドだが、さすがに高速コーナーでは私の方が攻めきれない。
750万円の貴重な新型車、安全な範囲で抑えて走るのだ。
重さを活かして路面をとらえつつ立ち上がり、下り坂の重力ブーストを受け一気に加速。
この手のふわつく高速コーナーはアルファードのほうが辛い。
エンジンやボディは頑丈だが、サスペンションはコンフォートを優先したゆったりとした味付け。
減衰を締める機能は最上位グレードにもラインナップされない。
ハンドルは充分なクイックさで舵角を提供してくれるが、やはり重量が辛い。
タイヤグリップも純正状態ではスポーツを想定しておらず、同程度の重量のドイツ陣営のパフォーマンスカーのようには曲がれない。
山の頂上でフワっと離陸しがちになったり、手元でハンドル舵角だけ切れても車体とタイヤが付いてこなかったり。
調子に乗って攻めすぎればスタビリティコントロールの介入を許し、フロントのアウト側のタイヤにブレーキを掛けられてしまう。
実際にカーブの出口では多少アルファードを引き離す。
つぎの左カーブのある谷底へ向かって、下り坂での全力ダッシュ。
加速性能の違いは両者の距離をイマイチ変動させない。
まだイーパワーの回生ブレーキの動作に慣れておらず、安全マージンを取って手前でアクセルを抜く。
回生ブレーキの効きは強く、ブレーキペダルをまた踏んでいないが、半分以上ブレーキを踏んだかのような減速Gが出る。
当然ぜんぶ回生ブレーキ。
一気に左旋回。
ちょうどカーブの途中で底を打つように登り勾配へ転じ始める。
グッと上下方向への強いGが瞬間的に掛かるが、スポーツモードのサスペンションが優雅にふわっと抑え込む。
重さと減衰はゆったり気味に動くサスペンションをしっかり安定させてくれる。
ブレーキを抜いて旋回に本格的に移ろというタイミングで、エルグランドのツインモーターが光る。
フロントのモーターにのみ強回生を効かせることで、前がグッとインに吸い込まれるようなタックインの姿勢を作るのだ。
狙って荷重コントロールをしないとまずできないような前下がりな姿勢が、ちょっとブレーキを抜くだけで出来上がる。
そのまま一気に左にハンドルを切る。
そしてタイヤに余裕があるのでグッとアクセルを踏む。
せっかくのツインモーターはここでも活きる。
加速時はリアに優先して電力を割り振るので、前輪駆動車で起きがちな「前がアウトに逃げる」という動きは起こらないのだ。
後ろに振ってるからといって、FR車のような「前はタイヤのキャパシティに余裕があって人間がイン側へハンドルを切っている限りイン側へ行こうとするが、後ろは加速に徹してリアから車体を前方向に押し、遠心力で車体をアウト側に盛って行こうとする」ような前後不釣り合いな動きは起きない。
パワーも控えめなので、四輪駆動でたまにある「アクセルを開けた途端、タイヤグリップがパンクしてアウト側に直線で吹っ飛ぶ」みたいな事態にもならない。
ただただ奥深いタイヤグリップが2.4トンの車重に負けず、四駆システムはイン側のブレーキをつまみながら、重さを一切感じさせずにニュートラルでオンザレール、切ったら切った分だけ曲がるような意のままの旋回を実現するのだ。
ただの展示車ツアーで「内装のサツマイモレザーが美しい」とか、青空鑑賞会で「グラデーショングリルが美しい」だとか、ただの街乗りで「静粛性が理解不能なほど高い」とか、そういうことを体験するのは誰にでも出来る。
しかしこの2.4トンの車重がもたらす圧倒的な慣性力を、無かったことにするようなコーナリング性能は驚きだ。
一般的なクルマにおける、タイヤグリップの限界ペースくらいで走り抜けないと体感できないものだ。
アウトランダーではまだオンザレール感が強かったが、エルグランドでは旋回を自分で操っているような気持ちよさまで出ている。
図体のデカさとは割り切って向き合うのが当たり前なミニバン界において、険しいカーブはエルグランドの独壇場だ。これから飛び込む狭い峠ではもう意のままに舞うことだろう。
さっきまで後ろに貼り付くようなアルファードだったが、左カーブでは一気に遅れを取る結果となった。
ただですら余裕がないブレーキという不安を抱えている中で、下り坂の重力ブーストを喰らいながら3.5LのV6をベタ踏みにしたのだ。
しかも、そこそこの旋回負荷の左カーブに向かって突っ込まねばならない。
さっき語ったブレーキの懸念が一気に現実のものとなる。
エルグランドだって別に限界のツッコミをしていたわけではないが、アルファード側はかなり手前から慎重にブレーキを掛けていく格好になる。
お互いに公道で自動車を運転している。
何かあれば2トンの巨体が棺桶になるのだ。
本体価格だって700万越え。
頭文字Dみたいなツッコミ勝負は起こらない。
手前からしっかり減速し、タイヤの負荷率を慎重にモニタリングしながら曲がっていくことになる。
ステアリングレスポンスだけは悪くないので、ハンドル「さえ」切ればフロントタイヤは切れる。
しかしその切った舵角ぶんの旋回に、タイヤグリップが付いて来れるかどうかは別問題である。
当然下り坂の旋回の最中にも重力ブーストは掛かる。
勢いはしっかり付けてカーブに飛び込むが、負荷を上げていくと早い段階からタイヤがキーッと悲鳴を上げ始める。
この手のカーブの途中には金属の横溝だってある。
乗り越えて着地したタイミングでタイヤを滑らせれば、一気にバランスが崩壊するリスクもある。
ほどほどのペース感に抑えていれば気持ちいいが、エンジンパワーに見合う全開走行をするには、アルファードの車体はデカすぎるのである。
エンジンパワーが活かせない状況でのアルファードは、いくら良いエンジンを積んでいようが、ただの2トン相当のエコカー&エコタイヤに過剰パワーのバカデカエンジンを載せただけという感じのバランス感だ。
旋回のペースが上がらず、なんとかカーブをクリアしている間にエルグランドが前へ抜ける。
登り坂をお互いにベタ踏みして合流。
ちょうど大型トラックが来ていた。
しっかり加速してきたので本線のトラックには減速してもらわずともスッと合流できる状況だったが、ガラ空きの道路で気を効かせてくれたようで右レーンに移ってくれた。
このまま加速して意識の外まで振り切ろうと思ったが、アルファードが微妙に離れている。
このまま加速を選択した場合、第一レーンに戻ろうとするトラックと、ベタ踏み加速で第一レーンを抜けようとするトラックが被りそうである。
「いったんクールダウンだ、このトラックには先に行ってもらおう」
「おうよ、それにしてもカーブ二個で一気に離れちまったな」
さすがに東京人は合流も冷静沈着で正確だ。
スッと車速を第2車線のトラックに合わせる。
私も本線に移る前あたりでアクセルを抜いていたため、トラックにゆっくり抜かされる形になる。
5話:レーンキープ関連の話
「カーブ2個もあれば、実はバックミラーから消すのは簡単なんだぜ?」
「どんな物理法則で走ってるんだよ、俺より400kgも重いとかウソだろ」
「タイヤグリップと、三菱譲りの四駆制御の賜物だな」
日産と三菱は提携関係にあり、例えばアウトランダーとエクストレイルは兄弟車である。
「イン側にブレーキを掛けて旋回をアシストし、タイヤグリップやスタビライザーのみでは実現不可能なコーナリングを実現する」という、アウトランダーのS-AWCのような旋回。
このときは日産のe-4ORCEと三菱のAWCの違いをよくわかっていなかったため、三菱譲りという言葉を使っている。
ランエボなんて2000年前後から同じ発想の電子制御をしている。
「しばらく進んだら谷底へ向かう超長い直線がある。オールクリアが取れそうならそこで最高速アタックをしよう。それまでちょっと充電させてくれ」
「いいぞ、こっちもエンジンのクールダウンをしておきたい」
ただクルマの限界だけ引き出す運転をするのも良いが、実際のところ人生はリソース配分ゲームである。
後のことを考えずに車に無理な負荷を与え続ければ、本来の寿命よりも早く壊れてしまうかもしれない。
エンジンやブレーキの冷却を考えつつ、しばらくは穏やかに走る。
クルコンは74km/hにセット。
さっきからアルファードは一定の車間をキープしているため、おそらく追従クルコンを使っている。
トラックは前に戻る。
「そういえばそっちのレーンキープはどうだ?」
「+10km/h以下で高速道路ならハンズオフモードが使える。こうなると完全自動運転だ」
「いいねぇ、こっちはこの世代だとはみ出したら警告する程度だぜ」
アルファードも現行世代では優秀なレーンキープをゲットしているが、クルコン・レーンキープ関連ではさすがに日産の勝ちである。
特にハンズオフモードは格別。
設定速度は法定速度の+10km/h以内、高速道路などの特定の条件のみ、などの制約はあるが、一旦オンになれば、文字通り手を離してゆったり過ごすことができる。
私はここに来るまでの間、呑気にコーヒータイムにしていた。
実際にオープンするサンルーフを開けて風を感じながら、東北地方の自然に思いを馳せながら幽閉サテライトの華鳥風月を流す。最高のリラックスタイムである。
狂気的なスピードで走っても安定しており、ゆったり走っても極上の快適性。
一般的には走行安定性と快適性は片方を求めると片方が失われる二律背反だが、エルグランドはその両方を獲得している素晴らしいクルマだ。
ちなみに、乗り心地がクソ悪い上に走行安定性も悪いという、逆の二律背反が実現してしまっている悪魔の乗り物も存在するため注意しよう。
燃費と加速性能にも同じことが言える。
EV(深夜料金で自宅充電)や現行プリウスなどはエコと速さを両立するが、最廉価クラスのドイツ車では、加速が遅い上に燃費が悪いという大外れを引かされることがある。
トルク型ターボのトルクでも補えないレベルの悲惨な世界である。安さに釣られないよう気を付けよう。
逆にエルグランドには、加速性能を大幅強化する上位版が欲しいものだ。
日産のニスモはあまり加速性能を上げてくれないものが多い。
さあ条件の良い郊外の直線主体ゾーンに入ってきた。
そろそろ最高速アタックの時間だ。
いきなり踏んでも良いが、私は安全のため、合流がありそうなエリアでのフルスピードアタックはしない。
第一レーンにクルマが居る時も同様だ。いきなり目の前に入られても危険が無いようなペースまで落とす。
そんな周囲への気遣いが必要だからこそ、私の試乗は時間と場所をかなり厳しく選ぶのだ。
「次のインターチェンジの合流の後、最高速アタックと行こうか。ヘッドライトを付けたらアタック開始だ」
「おう、加速ではこっちの圧勝だろうが、安定性では違いが出るかもな」
もちろんである。超高速域での走行安定性は、実はクラスが違う。
高速走行に備えて車線逸脱警報を切っておく。
これはクルコンのレーンキープとは別の常時作動している機能で、1890mmの横幅では結構な頻度で警告音が鳴ったりハンドルに振動を入れてきたりする。
レーンキープのハンズオフ機能も、市街地で使っていれば突然道を見失って蛇行した直後に一瞬で解除されたりしてストレスフルだが、この車線逸脱警報も同じく。
どちらもナビ内の設定メニューからいちいちクリックしてオンオフせねばならないのが煩わしい。
BMWなら昔はハザード脇のボタンから、今はナビ内のお気に入り機能からパッと切れるのに…
せめてレーンキープのステアアシストくらい、他車種みたいにステアリングボタンで瞬時にオンオフできるようにしておいてくれよ..
たしかアルファードには30,40共にそのボタンはハンドルに付いていたということで、ここにおいてはアルファードの勝ち。
6話:最高速バトル
さてインターチェンジにやってきたが、幸いにも木で視界が邪魔されることもなくオールクリア。
パッと右レーンに移りながらヘッドライトを付け、またフラットアウト。
エルグランドはモーター駆動ということで、他のe-powerと同じく、踏んだ瞬間からドカンと加速してくれると思うだろう?
実は違うのだ。
踏んだ直後は緩慢で、時間が経つとフルパワーが穏やかに出てくるような、高回転型自然吸気エンジンのような加速感なのだ。
個人的にこの制御は意味が分らない。
パワーモードで踏んでも出足は緩慢。加速性能もそこまでの刺激は無い。
1.5リッターターボの発電エンジンを積むらしいが、140馬力の発電能力しかない。
またモーターパワーも数値ほどのパンチが無い。
フロントモーターは205馬力に330N・m。
リアモーターは136馬力に195N・m。
足せば341馬力/525Nmとなるが、そんなパンチは感じない。
220~240馬力くらいの加速感である。
車重を踏まえても、マックス260馬力くらいしか出ていないような…
少なくともオーバー300馬力の刺激は皆無であり、日産がシステム合計出力を明かしていないのも「遅い」と叩かれてイメージダウンになるからなのだろう。
新世代のe-poerらしいが、実際に必要だったのはエンジンと電池のサイズアップなのである。
まぁ今の時点で2.4トンもあるので、それも見込めないかもしれないが。
バッテリー容量はEVモードで流している限り、2~3kWhくらいの、e-powerとしてはちょい大きめの容量はありそうだ。
しかし瞬間的な大電力をドカンとモーターに流し込むにはサイズが足りないのだろうか?
ノート/オーラクラスの車重と馬力なら充分なパンチの強い加速ができても、エルグランドのサイズの巨体を引っ張るには色々と足りないのだろうか…
踏んでいればすぐ電池切れになるし、走行シーンの大半はバッテリー容量50%以下で運用することになる。
電池というのは残量が多ければ多いほどより大電力を取り出しやすく、逆に残量が少なければ少ないほど、充電において大出力を受け入れやすいもの。
加速感が全体的に不足しているのは、日産のe-powerとしてたいへん残念である。
ちなみにエルグランドのバッテリー容量においても同様に公開されていない。
さて、そんな具合に緩慢な加速だが、一旦マイルドな加速については脇に置いておこう。
140km/hから上の走行安定性については素晴らしい。
ハッキリ言うと1世代前のアウディのA4と同等である。
あちらについても200km/hで走ったことがあるが、たいへん静かでドシっと安定しており、速度計の数値は意味を為していなかった。
200km/hという数値も私が感覚的に巡行スピードとしただけの通過点に過ぎず、車のシャシーに必死さは無かった。
エルグランドもそうだ。
まず当然のように静粛性が高く、出しているスピードを忘れる。
例えば2000年代のランエボやインプでも、なんならそこらへんのコンパクトカーでも、踏んでいれば簡単にこういうスピード域には入るが、風切り音は勇ましい。
「スゲぇ事をしている感」というのが常時拭えないが、その点においてエルグランドは驚異的に静かである。
風の音が遠くの方で聞こえるかなぁ程度である。
箱型なんだから横風に煽られそうにも思うが、しっかりとフロントが寝かせられているのか、リアに向かって流れるような形状のおかげか、サイズと重量で張り付かせるのか、ビシッと安定している。
先代のエルグランドでは全体的に腰高感が拭えなかった。
ただの直線でちょっとハンドルを振っただけでグラっと来る印象があったのだ。
別に直進安定性が悪いわけではなく、世代の時点で、オービスなんて余裕で光るようなスピードで巡行できるクルマだった。
しかしこのエルグランドは走行性能のレベルが別次元になっている。
EVと見分けが付かないような低重心感でビシっと安定する。
おまけに快適。
ちょっと踏んで160を超えるが、特にコメントすることが無い。
優雅に動きながらもフワつかない足回りも、ビシッと静かで快適で高い直進性も。
さらに踏み続けるが、本当にコメントすることが無いのだ。
なんて言ってたら左レーンに移ったアルファードが並んできた。
そう。この領域での加速性能バトルでは勝ち目が無いのだ。
しかし幸いにも下り坂に転じた。重力ブーストを受けてエルグランドの加速は改善。
そして山間部の高速道路ということで路面がうねりだす。
どちらともコンフォート優先の足回りだが、こういう条件ではアルファードが不利である。
アルファードだって空力やボディはしっかりしている方だが、オーバー160ゾーンではさすがに余裕がなくなって来る。
まず風の影響を受けやすい。車体形状はしっかりフロントが寝ているし、ボディ自体も堅牢なほうだが、足回りがよろしくない。
コンフォート優先のサスペンションは路面の衝撃の影響を強く受け、その衝撃が不安定感をもたらす。
横風にも流石に流されてしまう。投影面積がデカくて受け止めきれないのだ。
また締めることのできないフワ付き気味な味付けのサスペンションや、ブレーキの弱さだって懸念事項だ。
加速性能だけは抜群で音も気持ちいいが、他の部分は明らかに追いついていない。
どう考えても加速性能過剰なのが30アルファードのV6である。
世の中にはこの手のクルマの加速動画に「速い車の方がブレーキが良くて安全」とか書いてる奴がいるが、思い切り誤りだ。
確かに良いブレーキを積んでいるクルマは多いが、一部の車種はエンジンだけ無駄にでっかくて加速性能が過剰に突出しており車両のバランスが崩壊している。
車速が170に達する頃、先行を許していたアルファードの独走が止まる。
道路条件自体は理想そのものだ。谷底に向かって地の果てまで続く直線。
当然第一レーンにもトラフィックカーは無し。
しかし路面は結構うねっている。このスピードでは平坦に見える路面もドカドカ飛び跳ねまくるし、空気の影響もデカい。
僅かなカーブでさえも侮ることはできない。
80km/hから160km/hは数値だけなら2倍だが、体感的には8倍速である。
アウトバーンの速度無制限ゾーンですらも、「疲れるから」という理由で160km/h程度に抑えて走るドライバーが居るくらいだ。
BMWの5シリーズのような、優秀な走行性能を持つクルマで。
アルファードはシャシー側の余力で、こっちは人間側の安全マージンや加速性能で、
お互いにだいたい横並びで170km/hくらいで走り続ける。
向こうはかなり余裕がないだろうが、こっちはゆったりコンフォートクルーズだ。
マサシ「こっちはそろそろ限界だ。そっちはどうだ?」
ケン「アウディみたいに快適だな。バッチリ静かでコメントすることがない」
マサシ「すげぇな、こっちはフワつくしフラつくし、さすがにオーバー170ゾーンは狂気の沙汰だぜ」
ケン「エルグランドは加速こそ緩慢だがシャシー側も良い。パワーさえあればラクラク200km/h巡行できそうだ」
マサシ「加速性能では絶対に負けないが、シャシー側ではエルグランドの勝ちだな。圧勝かもしれん。」
ケン「アルファードはエンジンこそ良いが基本設計もちょっと古いコンフォート送迎車だからな。こっちはドイツ車相当の走行性能がある」
もう最高速テストはひと段落ついた。
このまま無駄に走り続けていてもリスクが高いだけである。
この後は下道のワインディングアタックがある。
一旦スピードの感覚をリセットしてクールダウンを入れるために停戦を申し入れた
ケン「もう充分だろう、俺が減速して後ろに入るから、一旦80km/hくらいまで落とそう」
回生ブレーキで車速を削りながら減速。
当然ブレーキペダルは一回も踏まないが、結構な強さで減速される。
クルコンは135km/hまでしか対応していないようだ。
ちょっとペダルオフ時の回生が強すぎるということで、メーター内のパーソナルモード設定を開いて回生ブレーキレベルを2段階目に設定しておく。
最小だとニュートラルギアのように空走されてブレーキで抑えない限り減速されないため、ほどよいエンジンブレーキのように動作する2段階目が私の好みだ。
パーソナルモードでは回生ブレーキの効き方も変えられるのである。
また足の硬さも当然3つから選べるため、「コンフォートモードでは減衰がダルすぎる」というときに「コンフォートモードの減衰だけちょい締めノーマルモード」が作れるぞ。
私の場合は「回生ブレーキだけマイルドにしたスポーツモード」をパーソナルモードに割り当てておいた。
それとは別にセンターコンソールにはe-pedalボタンが存在する。
ちょっと試したところ完全停止まで行けないという残念仕様だったが、強回生が欲しければそれを使えば良いだろう。
私はアクセル開度に対する減速Gの出方がグワングワン変動するのはストレスにしかならず、常にアクセルをただ加速のために踏むのではなく、バネに逆らうような絶妙な力加減でペダル操作をせねばならないのが嫌いなので基本的にワンペダル機能は使わない。
長距離が多い私にとっては右足の疲労のマネジメントが大事であるし、高負荷走行時は僅かな前後Gの変動だってリスクと多大なストレスになる。
パドルシフトで回生がコントロールできる機能は神そのものだが、ただのワンペダルの恩恵は私には理解できなかった。
6.5話:燃費対決
ゆったり減速して80km/hくらいでクルーズ。
「さすがに100km/hくらいまで上げていいか?」
「いいぞ」
アルファードの3.5のV6は燃費がクソ悪いというイメージが強いが、実は抑えていれば言うほど悪くない。
80km/h巡航をしていれば、その区間はリッター16~17kmの燃費を出すことだってできるのだ。
ただアルファードのV6に乗るような年収の人なら、ガソリン代は払ってしまって、エンジンを楽しみながらスパッと目的地に向かってしまうほうが良いのだろう。
逆にハイブリッドの場合は、ペースを抑えて走れば走るほど旨味が増すことになる。
加速ではアシスト、減速では回生回収ができるわけだが、スピードを上げるとハイブリッドシステムは基本的に重りにしかならない。
80km/h以下なら低負荷時にエンジンを切ってモーターだけで流すこともできるが、100km/hゾーンでは山間部の下り坂や追い越し車線が詰まった際などの長時間のアクセルオフがないとエンジンを切れない。
さてエルグランドの燃費性能についてだが、2.4トンもある割にはエルグランドは、80km/h以下ならば悪くない。
リッター15kmのような燃費も出す。しかもレギュラーガソリン。
市街地と常識ペースの巡行では旨味があるだろう。
しかし一旦電気に変えるしかないe-power、その過程の変換ロスが燃費をしっかり下げる。
特に追い越し車線ペースでの走行になればその効率性は一気に低下する。
全区間燃費でリッター10kmくらいしか出なくなる。
e-powerではあるが、エコカーなのかと問われると私は返答に迷う。
現行エルグランドに載っているe-powerは、従来のe-power車ほどの燃費や加速性能の優位性を持たない。
古典的なガソリン車のフィーリングが好きなら、あえて先代の3.5のV6を選ぶのもアリだろう。
7話:電池切れの登坂車線
さて、私の中ではエルグランドが最も光り輝くのは窮屈な峠道である。
ここまではぜんぶ、私にとっては前座に過ぎない。
だって高速道路走行なんて、180km/hで走ろうが何も起きないだけなのだから。
高速道路を降りる。
料金所ゲートへの左カーブも立派なアタックポイントだが、さっきの左コーナリングで本気を出してしまったため注意力を温存するために適当に流す。
料金所ダッシュだって、高速道路に乗る側ならまだしも降りる側だ。すぐ分岐があり隣からは車も来る。
しばらくはバトルはお預け。
山の近くのインターだがしばらくはザ・下道という区間。
お互い常識的に流す。
すぐに住宅地を抜け、森の中の上り坂になった。
登坂車線が登場。ここからは数キロ単位の超長い上り坂がジワーっと続く。
マサシ「ここは先行させてくれ。ついて来れるか」
ケン「加速力も発電量も電池容量も足りん。無理かもな」
サクッと登坂車線に移りアクセルオン。
チャージモードは切っていたため、メーター上の表記では58%くらいしか電池が残っていない。
幸いなのがメーター中央のハイブリッドシステムモニタを開いていなくても、左側のパワーモニタの下側にバッテリー残量が表示されることだ。
さて程々に加速はしていくが、こういう40~160km/hのゾーンはV6アルファードの独壇場だ。
メッキでゴッテゴテに装飾された威圧感ある巨大な物体が驚異的なペースで迫って来る。
こっちだって本気では踏んでいないが、だとしてもV6エンジンの加速性能はすさまじい。
グランツーリスモの7に収録されているV6アルファードだが、実際に乗っていれば分かる。
200馬力無いようなクラスの相手になら、直線主体のコースならまず負けない。それだけエンジンが強いのだ。
結構な上り坂の二車線、穏やかなカーブ。
もちろん路面もうねっているが、デカぶつを安全に限界領域まで追い込むことに慣れた二人。
何のことはなく100km/h級のコーナリングを繰り返して登っていく。
カーブの出口で向こうはマジモンのフラットアウトをしているのだろう。毎回離れていく。
旋回とブレーキングで追い込めば多少追いつけるが、それをやるにはカーブがユルい。
せめて二車線をまたぎたいところだが、1850mmの車体を丁寧に収めながら走っている相手にそれをやるのは一種の敗北宣言だ。見栄えも悪い。
そんな具合にベタ踏みを続けていると、あからさまに加速がトロくなった。
電池切れである。
さっき言った通り発電エンジンの出力は140馬力。
前後モーターは出力を足せば300馬力オーバー、加速の実測値を控えめに見繕っても230馬力位はある。
そんな北朝鮮のような電力不足を前に、ついに限界を迎えたのだ。
ある程度離れれば加速を緩めて待ってくれていたアルファードとの差が、もう一段階開き始める。
向こうはカーブの前でそこそこブレーキランプを光らせているが、こっちは姿勢調整程度のチョン踏み。
そんな具合に登っていたが、ついに同じキツさと勾配のカーブが、アクセルを多少緩める程度で曲がれる程度になってしまった。
ケン「電池切れだ。ここからは140馬力の発電ぶんしか使えない」
マサシ「全然ダメじゃねぇか」
ケン「このエルグランドはここだけは明確にダメだな。発電量もモーターに送る電力量も足りていない。そのクセ2.4トンだ」
マサシ「バッテリーもエンジンも力不足なのに2.4トンもあるって、お前なにを積んでるんだ??」
ケン「こっちが聞きてぇよ。電欠のままヒルクライム勝負は苦しい。この先の道の駅で充電休憩を少し貰おう」
マサシ「こっちだって本調子じゃない相手と勝負してもしょうがないからな。エンジンも冷やしたいし休むとしよう」
ベタ踏み加速の出足ではモーター駆動とは思えぬ緩慢な出足。
いざフルパワーが出れば、前後足せば300馬力越えているとは思えない加速性能。
登り坂で踏み続ければ、数キロと立たずに電池は尽きてさらに失速。
100km/hを越えればハイブリッドであることを疑問に思わせる実燃費。
エルグランドの唯一の弱点と言える、微妙にパワー不足なe-powerが辛い。
その時、ミラーにチラっとバイクが映る。
トンデモナイ速さでバイクが追い上げてきた。
二車線をフルに使っておりコーナリングスピードが常軌を逸している。
おそらく1000cc級スーパースポーツ。それも法定速度ガン無視の全開アタック。
ケン「とんでもなく速いのが来たぞ、左車線に移れ」
マサシ「平均速度100km/hオーバーのヒルクライムに追いついてくるとは、アイツも本物だな」
ブルーのスーパースポーツ。おそらくスズキのGSX-R1000だろう。
自動車換算で余裕で550馬力あるだろうという加速感でカーブとカーブの間を瞬間移動して追い上げてきた。
あっという間に二台を抜かして消えていく。
バイクが視界に入った瞬間に左車線に移ったのを見てか、追い抜き際に左手で「譲ってくれてありがとう」のサインまで出していった。
その加速中に2回のシフトアップ。1速から3速まで使っていたなら、200km/h近いスピードが出ていてもおかしくない。
レースにでも出ていそうな本格的なスーツに加え、リアシートの部分にはバッグの一つも乗っていない。
チタン色のマフラーエンドから美しい爆音が綺麗に響いている。
ケン「久しぶりに本物を見たぜ」
マサシ「こっちのミニバン2台も相当だと思うが、本物と比べたらガキの遊びだな」
道の駅つちゆに到着。
山の頂上にあるコンパクトな道の駅で、天気が良ければ一面の東北グリーンの山並みが見れられる。
マサシ「随分登って来たな」
ケン「文明から離れれば離れるほど俺たちにとっては都合が良いぜ。磐梯吾妻スカイラインはすぐそこだ。」
マサシ「そういえば充電はどうするのか」
ケン「ここまでの走行中と、ここを出てからの数キロでチャージモードを使えば事足りる。」
8話:磐梯吾妻の本命ワインディングアタック
エルグランド先行で道の駅を出る。
穏やかな山間の直線を抜け、長いトンネルを抜けて左折。
センターラインの無い狭い峠道。
すれ違いに苦戦するような窮屈な登りがしばし続く。
30アルファードの車幅は1850m、エルグランドは1890mmだ。
明らかにエルグランドのほうがすれ違いで不利かと思いきや、異様に良い視界性能のおかげで一切苦労することがない。
対向車をお互いスムーズにパスしながらスイスイ登っていく。
すぐにちょっとした広場のような交差点に出る。
ここを左折すればいよいよ磐梯吾妻スカイラインの始まりである。
ケン「よし、本気出していくぞ」
マサシ「死に物狂いで逃げて見ろ」
またフラットアウト。遠くの方で静かに直3エンジンが唸りを上げる。
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