豊田市から北東に1時間ほど山道を走ると、道の駅「おばあちゃん市・山岡」というスポットにたどり着く。
この道の駅は、日本一大きな水車があるのが特徴である。
ここには何回か来ており、上記の画像は私が怖い体験をしたのとは別の日に撮ったものだ。
唯一写真フォルダに残っていた。
さて、実はこの道の駅、ダムと隣接しており、そこには吊り橋が架かっている。
見て分かる通りダムの上、山の上なのだ。
実はこの道の駅、かなり高いところにあり、登ってくるためにはあの上側の橋を渡る必要がある。
それだけ標高が高い山奥に、深夜に来たらどうなるか。
もちろん、一面真っ暗闇なのだ。
そんな深夜帯に来た私は、散策のついでに、明かりが全くないこの吊り橋を渡ることにしたのだ。
暗いうちに撮った画像が無いのが残念であるが、どうせiPhoneのカメラならなにも映らなかったことだろう。
さて、Google Mapでは「ふれあい橋」なんて書いてあるが、夜間の暗闇の中では対岸はおろか橋の中央すら見えないのだ。
あの世に向かって架けられているようにも感じる。
実はこの日、少々風が強かった。トンネルを出たタイミングで、直進安定性の塊みたいなプリウスでも、流されるのを感じるくらいの風が吹くような夜だった。
しかも、降っては居なかったが、雨で路面は濡れていた。
いつも通り、盛大に雨男を発揮していたのだ。
普通の神経をしていれば、そんな状況下で、深夜の丑三つ時の、無人の真っ暗闇なダムに架かる橋を渡らないだろう。
でも私は、そういうのを気にせずに突き進んで来たタイプだ。
人生序盤の暗雲と比べたら、空間がちょっと暗いことなんて何の障害にもならない。
「足元滑りそうだなあ..」なんて思いながら歩む。なにも見えないのでスマホのライトだけが頼りだ。
橋のちょうど真ん中に差し掛かかったとき、寒気が走ったのだ。
「奥になにか居る….!!!!!」
「見られている!!!」
目を凝らしても、真っ暗闇で何も見えないが、何かが居るのを感じた。
…まぁそういうのはよくあることだ。
行ったところで戻らなければならないし、どうせ暗闇が広がるのみである。
面倒事になる前に、引き返すことにした。
よく来るとは言っても、人生であと何回この橋を渡るだろうか。
そう思ってみた私は、真っ暗闇のダムの底を見下ろしてみた。
当然ながらなにも見えない。
「スマホを落としそう」という恐怖のほうが、心霊の類よりも遥かに強い。
そのとき…
「落ちる!!!」
突然強い風が吹いた。
ただ風が吹いたのではない。なにものかの「ビュビャ…!!!」という声が、冷たい感触が背中を覆ったように感じた。
足元が雨で滑ったのか、手すりを掴み残ったのか、何者かに押されたのか、橋が揺らされたのか。
今となっては分からないが、「ただの突風」では片付けられないような体験であった。