最初にフォルクスワーゲン・イオスを見た時「なんだこのクルマは?」と思った。
電動ハードトップに加えてサンルーフを持ち、V6エンジンも選べる。
外車ではあるが新車価格も400万円台に収まっていた。

存在すらも知らないクルマだったが、調べていくうちに好奇心に負けたので借りてみることにした。
「ただV6エンジンが選べる程度のVWのオープンカーだろう」「珍しいクルマだからYouTubeのネタになるな」程度にしか思っていなかったが、稀に見る運転フィールの良さに度肝を抜かれることになった。
フォルクスワーゲン・イオスってどんなクルマ?
「ゴルフ」や「パサート」といった実用車で知られるフォルクスワーゲンが、2000年代中盤に送り出した野心的なハードトップ・オープンカー、それが「イオス(Eos)」です。
車名の由来は、ギリシャ神話に登場する「暁の女神」。その名の通り、新しい時代の幕開けを感じさせるような、当時のVWの技術の粋を集めた一台でした。
1. 世界初!「サンルーフ付き」のハードトップ
イオス最大の特徴は、なんといってもその屋根の構造です。 一般的なオープンカーは「屋根を開けるか、閉めるか」の2択ですが、イオスは電動ハードトップの中に巨大なガラスサンルーフを内蔵しています。
- 晴れた日はフルオープンで開放感を。
- ちょっと肌寒い日はサンルーフだけを開けて換気を。
- 雨の日はガラス越しに空を眺める。 この「3ウェイ」の楽しみ方ができるのは、世界でもイオスくらいのものでした。
2. 優雅だけど、走りは「ゴルフGTI」譲り
見た目はエレガントで大人っぽい雰囲気ですが、中身はかなり刺激的。 多くのモデルで、スポーツハッチの代名詞**「ゴルフGTI」と同じ2.0Lターボエンジン(TSI)と、素早い変速を可能にする「DSG」**を搭載しています。 ゆったり流すだけでなく、いざとなればスポーツカー顔負けの力強い走りを見せてくれる。そんな「羊の皮を被った狼」的な一面も魅力のひとつです。
冒頭のまとめ
誰にも知られていないが、近年稀に見る当たり車である。
エンジンは官能的で気持ちよく、乗り心地や運転性にも優れる。
ありきたりな自動車での移動を極上の体験に変えてくれる魔法のようなクルマ。
外観・デザイン
サンルーフ付き電動ハードトップという最大の特徴がある。
つまり通常の屋根オープンの他に、メタルトップクローズ+サンルーフオープンがあるのだ。

実際にオープンカーに乗っていると気軽に開け放てない場面というのが結構あるため、この屋根クローズ+サンルーフオープンには非常に助けられる。
サイドウィンドウを開けるだけでも相当な風と解放感を得られるぞ。

停止状態で屋根を開けるとトランク部分が結構後ろに飛び出す点に注意。
狭いところだとぶつける危険がある。

ちなみに開閉途中の状態でも車を動かすことはできた。


屋根を閉じていればパッと見は普通の2ドアクーペに見える。
ボディカラーが派手なのでかなり目立つが、黒あたりを選んでおけば溶け込みやすいだろう。

内装

木目と金属調のシルバー加飾、ブラウンの組み合わせが高級感を産んでいる。

価格帯を跳び越す質感が実現される。

エアコンのダイヤルはプラスチックでガバ感があるが、風量表示は一個一個わざわざLEDライトになっている。
風向や内気循環の配置が一癖あるが慣れれば扱いやすい。シートヒーターも地味に5段階ある。

メーター内のインフォディスプレイはドット絵で燃費や距離を出すだけ。

パワーウィンドウスイッチにはグローバルクローズボタンがある。
全てのサイドウィンドウを1つのスイッチで操作できるという素晴らしいもの。

謎過ぎるのがクルーズコントロール。
付いているだけいいが、左のウインカースティックに統合されている。

ストック上部のレバーがON,キャンセル,OFFとなっている。
ここを右に指先で倒すかブレーキを踏むと一時キャンセルになる。
スティックの先端のボタンでオン。
待機状態でのみ上と下の区別があり、片方は現在の速度にセット、もう片方はキャンセル前のスピードに復帰。
ステアリングの一等地にボタンが無いことでクリーンな見た目は実現されているが、ここまで使い勝手を犠牲にしてでコストダウンするか…
ワイパーはフォルクスワーゲン&アウディで定番のもの。

ストレート式シフトだがギアポジション配置が変則的。

Dの左がマニュアルモードである。しかも上がアップ。
そしてDの下がSレンジ。なぜ…
パドルシフトもある。
ちなみにマニュアルレンジの上下方向への操作感がグニャグニャしているのが不満だが、基本的に変速はパドルを使うことになる。手動変速固定のための意味合いのほうが強いかも。
実走行インプレッション
取り回し
意外と視点が高くて車体も小柄なため、かなり乗りやすいクルマであると言える。
オープンカーでは犠牲になりがちなナナメ後方の視界も広く確保され、小回り性能も良い。
私が借りたのはバックカメラが無い個体だったがあまり苦労しなかった。
Dに入れたつもりがSレンジに入っていること、低速からの発進がドカンと出やすいこと。
またバックギアに入れてから少しだけ待たないと変速&クラッチ繋ぎが正常に行われないことなど、色々とクセはあるので身体を慣らしながら乗ると良い。
パワートレイン
横置きでV6エンジンを搭載。
空ぶかしした際に回転方向ではなく前後方向にクランクシャフトの慣性力を感じることになる。

自分が借りたV6エンジンは250馬力程度だが、スカイライン系に並ぶほど気持ちが良い最高峰のエンジンである。
燃費は頑張ってもリッター10km出るか出ないか程度であり、もう諦めるしかない。ここだけが弱点。
それ以外は最高以外の何物でもない。
火入れの瞬間だけ、ドゥンとV6エンジンらしい音を少し響かせるが、すぐに静かになる。
発進の瞬間のみ、じわーっとゆったりと動き出すようにしないとショックが起きる。
(ある程度距離の行っている個体だったので、トランスミッションオイルあたりを交換するとこの動きは改善するかもしれない…)
さて低負荷で流している限りエンジンは脇役に徹している。
あまり燃費に反映されてはいないが、常に低回転域に抑えつつ、燃料や駆動を必要なタイミングでカットしたり、ショックが起きないようにシフトチェンジしながら快適に走る。
このあたりは「高級車」と呼べる動作。
素晴らしいのはアクセルを踏み足した場面。
DレンジでもSレンジでも、少し踏み足しただけでスパッと気持ちよくシフトダウンを決め、官能的なエンジン音を響かせながらスイスイと加速していく。
2000回転程度でも音は良いが、レッドゾーンに向かって官能性と加速感が踏めば踏むほど高鳴っていく。
250馬力というパワーが素晴らしい。
車重は1.6トンと軽くはないが、スイスイと非常に気持ちの良い加速だ。
人によっては怖いと評するだろう。
300馬力オーバーに乗り慣れている人にとっても不満がない。
というか雨の中で適当に踏んでいるとホイールスピンを起こしそうなほど。
スカイラインを思い浮かべるほどの想像の遥か上を行く官能性でエンジンが響き、ヒュインと気持ちよく吹き飛んでいく加速感があまりにも気持ちいい。
終わっている燃費性能のことを忘れてしまう。
大事なことだが、ただエンジンが良いだけではない。
トランスミッションの変速が的確なのである。
アクセル開度に対して完璧なギアを選び、瞬時にスパッと落とす。
このトランスミッションのおかげで気持ちの良い走りが実現する。
トランスミッションの変速プログラムとギア比配分がポンコツだったmazda2に乗ったばかりだったので尚更素晴らしく感じる。
こちらも6速ATなのだが全体的なギア比はローギヤード寄りで加速感が気持ちいいのだが、回転数自体は1000回転前半で抑える。
またアイドリングは500回転という低さ。
乗り心地
オープンボディゆえの剛性の弱さは隠しきれないが、
この車に乗っていてサスペンションまわりが意識に入ってくることはあまりないが、とんでもなく良い仕事をしてくれている。
10km/h以下で歩道を越えたり交差点内の段差を越えた時だけ「ギシッ」とボディが軋むのを感じるが、それ以外の乗り心地関連の特性はかなり良い。
ダンパーが縮むという動きだけで大半の衝撃を無効化する。
ボーと乗っていたら何も認識できないくらいの乗り心地を持つ。
安定性を優先した減衰が強く感じるような動きを感じることや、荒れた路面をスピードを出して越えた際に来るドカドカとした衝撃などはあるが、弱点や悪いところと呼べるようなものではない。
ハンドリング
FFではあるがどアンダーでもなく、過激なクイックでもないちょうどいい塩梅。
このイオスは全体的にクルマ作りが神がかっており、「こういう動きをするクルマが作りたい」という当初の目標通りの動きをするクルマに仕立て上げられている。
マルバツ評価
〇:最高クラスのシャシーと内装がもたらす格別のドライビング体験
×:燃費が悪い。クルコン・ワイパー類のスティックが機能詰め込み過ぎ。オーディオ&ナビが古い。
試乗車の諸元など
レクサス・ISコンバーチブルとの比較
VWイオスが圧倒的に優れているのがトランスミッションである。
2速でベタ踏みすると120km/hになってしまい、エンジンを楽しみきれな
また乗り心地やボディ剛性とのバランスもイオスのほうが上だ。
屋根を閉じた状態でもサンルーフを開けられるという特性もイオスにしかない。