【GRカローラ後期MT】人間の操縦と機械の制御の最適解 #177台目【試乗インプレッション】

臓器がえぐれるほどの走行ペースの中で人間に寄りそった乗りやすさを魅せるGRカローラ。

後期型では4WDシステムが1つの完成形を迎えている。

前期で不満だった多くの弱点が消滅した。

冒頭のまとめ

前期型で不満に感じていた諸々の弱点がほぼ全て消えた最高のスポーツカーとなった。

人間が操る部分が曖昧になりがちな4WD+ターボだが、最強のパフォーマンスと安定性の中に人間が操る楽しみを同居させるという芸当をやってのけている。

強烈な速さと乗りやすさが共存している。

4WD信者スターターセットである。

外観・デザイン

後期型になってアグレッシブさが増したというか、レーシングカーのような見た目となった。

実際サーキットにおける冷却性能を高めるために空気の取り入れ面積を増やした格好だ。

内装

前期と比べても大きくは変わっていない。

GRカローラの本質とは最も外れたところでもあるため、

ちなみにロードノイズについてはスタッドレスタイヤ装着車なので確実にマイナスになるはずなのだが、タイヤが非常に優秀なのかそこまでうるさくはなかった。

実走行インプレッション

パワートレイン系

クラッチ

前期型のGRカローラで大きなクセとなっていたのが、繋がり出した当たりで突然反力が強くなって弾き返してくるクラッチだった。

これが滑らかな発進や変速操作の邪魔をしており、運転の難易度を爆増させていたのである。

バネの力でグイっと跳ね返されるわけだが、後期ではこの動きが非常にマイルドになった。

以前は油断していると1速→2速への変速でひどいショックを起こす原因にもなっていたが、走行中の変速でこの跳ね返りが気になることが大幅に減った。

回転数差のある変速の際は、クラッチを繋ぐ前後の回転数差に意識を向けるとショックを減らせるだろう。

シフトアップでもシフトダウンでも半クラッチで回転差を吸収させるのは他より難しめ。

発進時もだいぶマイルドになったが、半クラッチ中に気を抜いているとバネの力で跳ね返されて乱暴な発進となってしまう。

だいぶクセが減って気にならなくなってきた程度であり、油断していると反力を喰らうことは覚えておこう。

i-MTのアシストによって半クラッチ中に自動でアクセルが入れられるためエンストは起こしづらいが、半クラッチ中に強いバネの力で押し返され続けるということを頭に入れておこう。

マニュアルトランスミッション

非常に気持ちが良いスコスコ入る明快なシフトフィールを持っており変速が楽しい。

望んだギアに簡単に入れることが可能。

機械を操っている実感があり、MTをお勧めしたい理由にもなるシフトフィールが魅力。

VABのWRX STIやシビックタイプR、NDロードスターに並ぶレベルの最高のシフトフィールとなった。

2速に入りづらいという現象は頻発するが、シフトノブを動かしているだけで飽きない。

エンジン性能

GRヤリスと同等の直3エンジンは相変わらず素晴らしい加速力を発揮する。

音も良く加速力も良い。

リッター10kmを越えられるくらいの燃費性能も一応ある。

強烈な加速であることは確かなのだが、非常に高い安定性で支えることができるため恐怖感が一切ない。

むしろ穏やかに乗れてしまうのだ。

MTは手動でシフトアップするため、レブらせないようにすることに注意を払う必要があるが、もはやそれくらいしか懸念点がない。

私のお勧めはMTだが、気持ちよく踏み続けられるATのほうが乗り物の性能を味わい尽くせると言えるかもしれない。

個人的にはもっとパワーアップとエンジンのフィーリング強化を行っていいのではないかと感じた。

あえて言い換えると、このシャシーにこのエンジンパワー・加速力では物足りないということだ。

高回転域へ向かって吹き飛んでいくような強烈的な刺激がもう一声欲しい。

充分速いのだが、安定性が高いので慣れてしまえばすまし顔でベタ踏みできてしまうのだ。

コンピューターやタービン、カムシャフトやらを色々組み替えたバージョンに期待してしまう。

トルク型エンジンに高回転域の伸びを求めるのはおかしな話だが、シビックタイプRでは実現していた。

というか、このGRカローラにシビックタイプRのエンジンを載せれば完璧なクルマになりそうである。

(シビックタイプRにGRカローラの4WDシステムを載せても良い。)

私だったらいきなりコンピューターチューンを試してしまうかもしれない。

4WDシステム

300馬力オーバーというのはホイールスピンを起こしたりどこに吹っ飛んでいくのか分からなくなったりするようなパワーだが、GRカローラにおいてそういう恐怖を感じることは無い。

メーターを見ていると瞬間的に空転を起こすことはあるようだが、4WDシステムが瞬時にトルクを分配する。

そのた急加速+急旋回の攻めた走りをしている最中であっても、トラコンオフで雪道を走っているときのような「いま滑ったな」を感じることは難しい。

直進安定性

4WDらしく素晴らしい。

スピードメーターの数値が意味を為さないような安定性を持っている。

しかし路面がうねりがちな日本の高速道路における直進安定感を考えると少し別のコメントが出る。

前期型ほど露骨ではないが、路面のうねりに流されて吹っ飛ばされるような動きを喰らいやすい。

硬さ、ダルさの無さゆえのノータイムの反動を喰らうというか、路面の状況に対する反応の速さが、ゆったり流したい状況ではネガとなって感じることもある。

車の方向性としてはこれくらいのダイレクト感優先で良い。

前期ではスポーツモードが重すぎて高速道路内のレーンキープでさえ苦しいという話をしたが、後期では常時スポーツモードでも特に気になることは無い。

乗り心地・足回り

前期型では「強すぎる減衰による乗り心地のハードさ」が特徴となっており、これは電子制御サスペンションで快適な乗り心地を実現していたシビックタイプRと比較された際、売り上げを失う原因になりかねないレベルであった。

それが後期型になって非常にマイルドになり、ほぼ乗り心地において弱点と呼ぶほどのものは無くなったと言えるようになった。

相変わらず強い減衰に起因する動きは出ているが、気にしなければ気にならない程度のレベルに収まってくれている。

前期ほどの強烈な個性は無くなり、無難に乗れるようになった。

こういう場所ではコメントに迷ってしまうほど。

ただ硬く突っ張るのではなく適切な伸びと粘りがあるのも魅力。

急加速中に段差で飛び跳ねた際も足回りが伸びてくれる。

これによって路面への接地が維持されるので吹っ飛んでハンドルが暴れたりはしない。

駆動力もロスりづらい。

しかし人間の感覚としては他の乗用車と比べての飛び上がり感は強く、バンプヒットの叩きつけもある。

このあたりのハードさも前期と比べるとマイルドではあり、車の限界性能の高さを踏まえるとむしろ「これは快適なのではないか」と思えてくるほどである。

ハイパフォーマンスカー相手にも乗り心地を容赦なく酷評する私でさえ、32km/hで市街地のマンホールやら段差に落ちてその感想を抱けるのだから、後期のGRカローラの乗り心地は本当にマイルドになった。

まあさすがに路面がドカドカと荒れているようなところだと大きくゆすられたり叩きつけられたりするが、こちらについてもだいぶマシになっている。

ちなみに断続的にうねり続けている路面をゆったり走っていくような場面では私が繰り返し言う「減衰のキツさ」があまり出て来ない。

おそらくピストンスピードが遅い領域は減衰を緩めてくれているのだろう。

路面のうねりにあわせて足回りが動いてくれて、当然ダルくはないがキッツキツでハードでもないという塩梅で動いてくれる。

「本物なんだから割り切って耐えろ。」ではなくて、ちゃんと快適性と懐の深さを体感させてくれるようになった。

商品性の訴求的にはハードなほうが良いだろうが、人間が乗る車としてはぜったいコンフォートなほうが良い。

前期だったら「あのGRの開発陣が作り上げたパーツを変えるのか」という批判を受け止めつつ「減衰キツすぎるから緩められる車高調に交換かなぁ…」という気持ちだったのが、これなら存分に味わい尽くせる。

デートカーやコンフォートGTカーとして扱うのは相変わらず苦しいが。

ハンドリング

後期型になってステアリングにも手が入ったが、その恩恵は32km/h以下で街中を走っていても感じ取れる。

ハンドルを少しでも動かせば前がノータイムで応答する。

少しの間があった前期とは大違いであり、GRカローラに相応しい舵を手に入れたと言える。

基本的にボディロールは生じない。

ハンドルを動かせばノータイムで曲がって行くという構成。

カーブの途中で切り足しても切り足しても、ひたすらにグイグイと入っていく。

コンパクトながら戦車のように強靭でガッチリしたボディと、四輪の強いタイヤグリップ。

そして臓器が潰れそうな旋回Gの中でも強烈に加速し続ける車体。

動き自体は常時落ち着いていて非常に乗りやすいのだが、許容される走行ペースは控えめに言ってイカレている。

そんなペースで走り回っても、乗り物の安定性が高すぎるので運転手にとっては危険運転にならないのがGRカローラの凄さである。

GRカローラで事故るのは無理なのではないだろうか。

コーナリングにおける4WDシステム

この項目こそがこの試乗メモの本質である。

外からは全く見えず、「2速でベタ踏みしながら峠道のカーブを攻めながら立ち上がっていく」というリスクテイクをしなければ公道では感じ取ることもできない4WDシステムだが、発売から時間が経ったことによって最適解に近づいているようだ。

前期では3つのモードのキャラクター性はハッキリと体感出来るレベルで分かれていた。

「安定性は高いがFFっぽさがネガとなるノーマルモード」「後輪駆動っぽいスリルが楽しいグラベルモード」「車が上手いこと曲げてくれるのでラクで速いトラックモード」といった具合だ。

しかし後期ではその差が非常に小さくなった。

NORMAL モード(60:40)

まず前に振るモードだが、これはカーブからの立ち上がりでフロントタイヤが過負荷気味である。

私の借りた個体はスタッドレスを履いていたためか前で瞬間的にホイールスピンを起こし、ほんの一瞬だが過剰負荷でフロントのアウトがコーナリングラインから外れた。

しかし瞬時に駆動力が別のタイヤに分配されたのか、何事もなかったかのように復帰する。

FF車で雪道のカーブを走っている際に乱暴にアクセルを踏むと全く同じことが起こるが、ハッキリとアウトに膨らんでいったり、トラコンがアクセルを抜いて加速が途切れたり、車の姿勢が乱れたりするものだ。

しかしGRカローラは「ん?いま一瞬、フロントのタイヤがズルっと滑ったよね?」という感覚と、トラコン作動ランプのオレンジ点滅があるのみ。

該当区間の走行動画を確認したところ、トラコンの作動ランプは確かに点滅していた。

スリップがあったことは事実なのだが、乗り物が全く乗りたいラインを外れないのである。

ちなみに前が滑らない限り、フッツーにカーブを乗りたいラインでクリアしていってしまう。

前期では「FF感」「前がアウトに流れていく感」が明らかにあったため、「雨の日や雪道で直進性が欲しいとき以外に出番はない」みたいな感想を述べたが、後期ではそういう曲がりづらさもあまり出て来ない。

NORMALモードの時点で優秀すぎる。

わざわざ変えたいという気持ちがあまり出て来ないのだ。

GRAVELモード(50:50)

前後に50:50で振るのがグラベルモード。右側にツイストする。

「50:50で駆動力を振る」と聞くと、タイヤグリップを目いっぱいヨコ方向に使っている旋回中にアクセルをドカンと踏むと、そのままアウトに吹っ飛んでいきそうだ。

だが実物は全く違う。

タイヤ的には苦しい旋回状態から、さらにアクセルを踏み込んで加速力を与えても、一切膨らんだり遠心力に引っ張られたりするような動きがない。

むしろハンドルを切れ込めばさらにインへと向かっていく。

どこにそんな余裕があるんだ…

履かされているのはスタッドレスタイヤであり、前に6割振るモードでさっきホイールスピンを起こしたばかり。

それくらいの負荷で走っているはずなのに、破綻する兆候がない。

どこまでもグイグイと曲がって行ってしまう。

その様はまさにニュートラル。

人間からの入力をどこまでも受け入れるような雰囲気がある。

ノーマルモードもそうだが、おそらくGRカローラの性能を見るには負荷が不十分だった。

久しぶりにコーナリングのGで内臓がえぐれるような気持ちを味わいながら峠道を往復したが、それでも足りなかったっぽい。

サーキットのような条件の良い路面で試すべきであるし、極限領域で一瞬だけ生じる兆候を見抜くような作業になるため、何年も何年も飽きずに続けられる探究活動となりそうだ。

TRUCKモード(可変制御:60:40 ⇄ 30:70)

ボタンを押すと入るのがトラックモード。

駆動力を状況に応じて変えるため動作に再現性が無いが、私が感じたことは書き残しておく。

それは一言でいうと「後輪駆動の旋回フィールと押し出され感で曲がって行くが、滑りそうにならないところに4WDらしさが出ている。」といった感じの体験であった。

ヒルクライムのカーブをトラックモードに入れて全開で加速しながら曲がって行く。

その時の動きは後輪駆動的。

後ろが沈み込み、地面にタイヤをめりこませながら強い力でグイグイと押し出されているのを感じる。

しかし相対的に前は軽めで、なんなら浮き上がり気味なのではないかと感じるほどである。

そんな具合の旋回姿勢で急カーブを曲がって立ち上がって行った。

しかし立ち上がって直線に向かうにつれて 後ろ下がり前上がり感が薄れ、前後のタイヤグリップをしっかり使って加速するようになっていく。

ベタ踏み加速をするとどっちみち50:50のような配分で加速して行くため、前期ほどモードごとの違いは分からない。

まるでフロントタイヤがどのくらいのキャパシティを旋回に使っているのかシステムが常に把握しており、カーブを立ち上がって余裕ができ次第、加速にも割り振るという制御をリアルタイムで行っているかのようである。

タイヤの負荷率そのものをセンサーで計測したり取得したりすることは基本的に不可能なので、何かのセンサーの数値を参照しているはずだが、どうやっているのだろうか。

これによりスープラのような軽量大パワーFRっぽい身軽な旋回フィールと、四輪駆動のどっしりとした安定感の両方が味わえる。

性能としても旋回・加速の両方にスキがない。

須藤京一が言った「ハイパワーターボプラス4WD。この条件にあらずんばクルマにあらずだ」というセリフを思い出す。

私は他の車を否定しないが、このGRカローラの素晴らしき旋回フィールを味わってしまうと他のシステムでは満足できなくなってしまう。

世界には数え切れないほどの自動車が存在するが、ここまで楽しさと走行性能を両立させる4WDシステムも珍しいだろう。

+走行モード(エコ,スポーツ,ノーマル,カスタム)について

この項目で述べてきた4WDシステムの他に、通常の走行モードも3つ+カスタムモードが存在する。

しかしどのモードもあまり大きな変化はない印象。

エコモードでも少し踏めば普通にブースト圧を上げて強い加速をするので不満が無い。

逆にノーマルモード以下でドカンとベタ踏みを入れると、加速力=ブースト圧の立ち上がりが少し遅いと感じた。

スポーツモード常用で問題ないレベル。

ハンドルについてもスポーツモードに入れると少しは重くなるが、あまり気に掛けるほどではない。

ATモデルにおいては、スポーツモードは変速中にブースト圧が下がらないようにする制御を入れているらしい。

マルバツ評価

〇:人間が操る喜びと機械が制御する速さという矛盾を両立

×:加速力はもう一段階あって良い。(外観がアグレッシブすぎる)

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