ペンギンのような顔つきをしていた頃のテスラのモデルSに乗ってみる。
大柄な車体からは想像も付かない軽やかな走りであった。
冒頭のまとめ
サイズこそデカいが運動性能はホンモノ。
自由自在に舞える楽しさとコントロール性は市販車の中でも類を見ないほど良い。
外観・デザイン
モデルSは空力に優れた形状をしており、スピードを上げてもあまり電費が下がらないのが魅力であるとされる。
その空力のためか曲面基調なボディが、大柄な車体の見切り性能を悪化させるため狭所での取り回しは悪い。

この世代のモデルSはペンギンのような顔つき。

誰に聞いても現行型の方がカッコ良いというだろうが、実物と対面してみると意外と落ち着いていて悪くない。


内装
モデルX・Sは共に2つのディスプレイを持つ。
センターモニターではなく乗用車のようなフルディスプレイメーターとなるため、最小限の視線移動で済む。
ハザードが押しづらいが物理スティックも多く全体的な使い勝手は比較的悪くない。

運転席のメーターは設定項目こそ多くないが、左側にマップを出せたり右側でサンルーフなどを切り替えられたり。走行中でも見やすく、明らかにモデル3・Yより扱いやすいぞ。

センターコンソールまわりは容量こそ大きいものの全体的にもう一声欲しいと思う。
スマホを放り込んで置けるようなスペースは加速Gで必ず落ちて来るし、フタの開閉機構の隙間にモノが落ちるし…

センターコンソールのピアノブラックは傷だらけであり、カップホルダーは配置があまりにも悪くドリンクを取りづらい。

サンルーフについて
この世代のモデルSだけがサンルーフを装着していた。
ちょっとしたキャンバストップ並みに開口部が広く、サイドウィンドウを程よく下げればオープンカーに負けないくらい気持ちの良い風が吹く。
アメリカ西海岸を駆け抜けたくなる。
ただし故障リスクが増すという意味でもある。
個人的には背負ったリスクとコストに見合うリターンがあるパーツだとは思うが、サンルーフ要らねぇ派にはデカい懸念点となる。
静粛性とオーディオ
静粛性については他の車と比べると上からも下からも騒音のエネルギーがしっかりカットされてる感じがある。
だがBYDシールのような格段の静けさに感動できるほどではない。期待しなければ悪いとも思わないだろう。
オーディオについては、綺麗に音を楽しむことこそできるが、ブランド印字のない純正のカーオーディオの域をギリギリでないレベル。
ロングレンジ以上のモデル3、モデルYや、競合他社のことを考えると性能不足だと言わざるを得ない。
イコライザー調整で多少は良くなるが、爆音で鮮明な音を楽しみたいなら不満。
そこそこの音量でそこそこ綺麗な音を楽しめれば良いならこれで良い。
実走行インプレッション
取り回し
モデル3でもそこそこ大柄に感じることはあったが、さすがにモデルSはデカい。
全長4970mm、幅は1964mmもある。
セダンはスパッと馴染むほど良い運転感覚を持つものが大きいが、モデルSはそのサイズや曲面主体のボディゆえ狭いところにおける見切りの性能が悪い。
アラウンドビューカメラもなく、ディスプレイのソナーもアテにならない。
価格帯的には世界各国のフラッグシップセダンと同格だが、アラウンドビューカメラなどのアシストシステムは競合の中でも最低クラスだろう。
一旦公道に出てしまえばそんなに気にならないが、窮屈なところでの扱いづらさはモデルXに並んで酷いものである。
パワートレイン
グレードによってピンキリだが、私の借りた個体は365馬力/440Nmあった。
このクラスのEVの中では数値としては平凡だが、実物はスイスイヒュンヒュンといった感じで軽やかで素晴らしい。
踏み込めば全く重さを感じずに軽やかに車が吹っ飛んでいく。
速すぎて怖いということは全くないのだが、周りのすべてを置き去りにしそうな速さが病みつきになりそうである。
しかも少し踏むだけでガンガンにトルクで押し出されるためスムーズさがハンパない。
他の車とは数ランク上の世界で加速して行くことができ、ただひたすらにラクで快適だ。
コントロール性、懐の深さを合わせれば、点と点を繋ぐ瞬間移動のようなドライビング体験が味わえる。
後輪駆動ゆえのスリルがあるのも個人的には好印象。
乗り心地
既に14万kmに達しているような個体なので確実に経年劣化があるという前提は持っていていただきたい。
一言で言えばサスペンション周りはパタパタするが車体はフワフアする感じ。そして強い衝撃を受けるとドタドタしてしまう。…が安定性は悪くない。
もう少し具体的な話もしておこう。
全体的にスピードレンジは高めとなっているようで、穴ぼこが多い市街地を40km/h程度で走っている場面ではドタドタと叩きつけを喰らうことが多め。
また都市高速を巡行していると周期的に継ぎ目を越えることが多いが、段差を越えた際にアシをパタパタと動かすようにして合わせて行ってくれるのは良い。
しかし、その後に車体がフワフワしてしまうようなところがある。
直進安定性が悪いわけではない。
むしろ走行負荷を上げるとシャキっとスパッと収まってくれる。
しかし巡行中はゆったり感が目立つ。
「快適性を犠牲にしないまま、最高峰のドライビングプレジャーを提供するハイパフォーマンススポーツセダン」だと考えると良い落としどころだと思う。
ゆったり快適に走りたい派も、ガチりたい派も、どっちも両立していて欲しい派も、すべての要望を満たしていると言えるから。
路面のうねりに持って行かれる感じもあるが、四輪のサスペンションが独立して動いている様子を感じ取ることもできる。
ただ前ストラット+後マルチリンクでも素晴らしい乗り心地を発揮するクルマは居るので、値段に対する走り心地はあんまり良くはないかな…
超スポーツセダンだと考えると快適で良好だとも言えるし、別に悪いというほど酷いものでは全くないのだが、1000万円越えのクルマだと考えるとうーん…といったところだろう。
ハンドリング
ハンドリングこそモデルSの真骨頂。
モデルXの時点で自由自在で素晴らしかったが、モデルSのハンドリングはもう一つ上を行く。
その自由自在でニュートラルに舞い放題なハンドリングは翼を手に入れたかのような素晴らしさであり、どんなクルマにも負けないと感じるほどである。
事実、171台に達した乗り比べ企画の中で最もハンドリングが自由自在だったのはトヨタのMIRAIであったが、モデルSはその上を行く。
もう少し具体的な話をしよう。
全長約5メートルという巨体と2トン越えの重量こそあれどさすがのEV。
重量のバランスと重心には非の打ち所がない。
そのハンドリング特性は完璧なるフラット&ニュートラルであり、切ったら切っただけスイスイヒラヒラと動いて行ってくれる。
ロール自体はそこそこするのだが、ハンドルを切っていく動きに対してのロールや、収束後のインへの飛び込みがとにかく自然。
料金所の広くなったところで急ハンドル+急加速を入れた結果、パワーオーバーを起こしてしまったのだが、動きがあまりにも自然すぎて何の危険もなく立て直してしまった。
EVとしての性能について
テスラへの期待値を余裕で下回る急速充電の遅さ
このモデルSへの最大の不満。それは充電性能の低さだ。
50%地点で50kW程度しか出ない。
貸し出しステーションに充電設備がなく、50%を越えたあたりから話にならないレベルで充電が遅くなるためか、貸し出された時点で50%程度しかバッテリー残量が無かった。
もともと航続距離が長くないため、この時点で出発前の充電を強いられて予定が狂った。
21:08~21:18 ごろまで10分だけだが充電。この時間はナビの設定などに充てていたが出鼻をいきなり挫かれた格好だ。

22:24~22:38ごろまで14分程度だがまたスーパーチャージャーで充電。本来ならこの充電も要らなかった。
また充電ステーションに行くための寄り道で15分以上ロスっている。
この時点で予定から40分遅れである。
6時間しかないのに。

和歌山から帰ってきて同じ泉南イオンにて1:01~1:13ごろまで12分ほど充電。
33%→49%まで。こうしてみると電気の入りは速いように思うが、例によってこのステーションに寄るためのタイムロスもデカい。
いちいちスタンド看板をどかしたり駐車したり回り道したり。これを毎回繰り返しているため面倒でもある。
最後に2:11~2:43ごろまで30分以上充電。35%から70%近くまで増やして返却したが、わちゃわちゃしていたため間に合わずに延長料金を取られた。
次の人のために残量を増やして返却しようとしたのに、とんでもない損をしてしまった。
本来下道を織り交ぜたルートで節約しながら行く予定だった時間が充電で潰れた。
その後の予定も押しまくったので、金銭的には5000円以上失ったかもしれない。
もともと90分早く帰ってくる予定だったのに…
充電ステーションを経由するための遠回りを含めると合計90分ほど充電に充てていた計算となる。
本来ならば満タン出発+返却後普通充電で、道中の充電は要らないくらいの予定であったのに。
マルバツ評価
〇:自由自在に舞い放題!完璧なニュートラルステアを実現したハンドリング + ヒュンヒュン軽やかな加速
×:急速充電スピードが遅い。そして内外装の世代遅れ感が拭えない