はじめに:テスラが「避けられるブランド」?
最近、世界で「テスラを避けたい」という声が大きくなっています。
きっかけは、Global EV Alliance(GEVA) が発表した、世界30カ国・約27,000人のEVドライバー調査。
この調査では、自由回答形式の「政治的理由で避けたいブランド/国・地域は?」という項目で、
テスラがトップに挙がった と報告されました。

しかし、この結果だけを見て
「イーロン・マスクのせいでテスラが終わった」
と結論づけるのは早計です。
本記事では、
- GEVA調査の中身
- イーロン・マスクの言動の影響
- テスラの売上低迷との関係
- 世間の“手のひら返し”現象
を整理し、公平で冷静な視点で分析します。
GEVA調査とは?その信頼性と限界
GEVA(Global EV Alliance)は、世界70以上のEV協会が加盟するネットワークで、
世界のEVオーナーの声を集める活動を行っています。
今回の調査は
- 30カ国以上
- 約27,000人のEVオーナー
- オンラインフォームによる回答
という規模で実施。
● 信頼できる点
- 回答者数が多く、国際的なデータである
- EVを実際に所有する人の声が反映されている
- 多言語での回答受付、各国協会からの配布
● ただし、限界もある
- オンライン自発回答なので「積極的な層」に偏りやすい
- 国や地域ごとのサンプル数が非公開
- 社会的・政治的議論の影響を受けやすい
- 完全な世論調査ではない
つまり、
“傾向を知る”には有用だが、“絶対値として断定”するのは危険
というタイプのデータです。
「政治的理由で避けたいブランド」の1位がテスラという事実
GEVA調査の自由回答には、
“What brands and/or countries/regions would you avoid for political reasons?”
という項目があります。
ここで最も多く挙がったブランドが Tesla。
政治的理由とはつまり、
CEOであるイーロン・マスクの言動によってブランド評価が左右されている
ということです。
イーロン・マスクは何をしてきたのか?その“強烈さ”と“問題点”
ここで重要なのは、イーロン・マスクという人物の“二面性”です。
● 驚異的な功績
- EVを世界の主流に押し上げた
- SpaceXでロケット再利用を実現し宇宙産業を塗り替えた
- Starlinkで衛星通信の革新
- PayPalの創業者の1人
- 巨大資金を動かすカリスマ性
現代の産業構造を10年単位で動かした天才といえます。
● 一方で、問題視される行動
- SNSでの過激な政治的発言
- 個人攻撃、挑発的な投稿
- 特定政党への露骨な支持
- X(旧Twitter)買収後の混乱
- 自動運転・FSD関連の誤解を招く発言
- 批判に対する強気すぎる態度
こうした発言は世界で“好悪が分かれる”大きな原因になっており、
ブランドイメージにも跳ね返っています。
テスラの売上低迷とマスクの因果関係はあるのか?
実はここが最も重要なポイントです。
✔ 結論:因果関係は証明できない。
テスラの売上が鈍化しているのは事実ですが、主因は…
- 世界的なEV需要の鈍化
- 金利上昇
- ライバル企業(特に中国EV)の急成長
- モデル3/Yのモデルサイクル長期化
- 値下げ競争による利益率悪化
…など、市場側の理由の方が大きいと考えられます。
マスクの発言が売上に影響している “可能性はある” が
“証明はできない”。
むしろ逆?売上が落ちたから“イーロンのせい”と言われ始めた説
ここで見落とされがちな仮説があります。
**▶ 売上が落ちているタイミングで調査結果が出たから、
マスクがスケープゴートにされただけ説。**
人は調子の良い時は褒め、
悪くなった瞬間に批判を始める。
これはすべての業界・企業にある「手のひら返し現象」です。
テスラも今まさにそのフェーズに入っている可能性があります。
イーロンのおかげで得た売上 vs 失いつつある売上
歴史全体で考えると、
イーロンのおかげで得た売上は圧倒的に巨大。
- カリスマ性
- 話題性
- 宣伝効果(広告費ほぼゼロ)
- 投資家の信用
- 世界的ファンベース
しかし最近は…
- その同じ“個人性”が
- ブランドの勢いにブレーキをかける懸念
として語られるようになっている。
まとめ:テスラは本当に“嫌われはじめた”のか?
現時点で言えるのは、
● テスラを避ける人が増えているというデータは存在する
● しかしイーロンのせいで売上が下がったとは言い切れない
● 手のひら返し現象で批判が増えている可能性も高い
ということ。
テスラはまだ終わっていません。
ただ、イーロンの言動が“ブランドリスク”として大きくなりつつあるのは確かです。
今後のテスラとイーロンの動きは、
自動車産業だけでなく世界の技術の未来を左右する存在として、
さらに注目されるでしょう。