カーオブザイヤーを受賞し、雑誌などの各メディアでも高評価が目立つヒョンデのインスター。
確かに魅力のあるクルマだ、補助金込みでは230~300万円ほどの価格に入るのも良い。
しかし色々乗り比べている私としては思うところがあった。

冒頭のまとめ

この手の車としては特に悪いところはないのだが、素材感や走行性能にはどうしても安かろう悪かろう感が否めない。
加速力は必要充分を越えるレベルであり、旋回は安定性最重視ながらコンパクトで頑丈な車体を活かしたもの。乗り心地も良い。
デザインも新鮮で車内のデザインも良く、二列目もリクライニング付きでゆったりと過ごせる。
しかしINIQ5やコナの完成度を知っている私には、どうしても格や質感が下であることをが気になってしまった。
外観・デザイン
かわいらしさや近未来感がある日本ではかなり異質なデザインが目を惹く。


スマホ画面でみた雰囲気そのままだが、見慣れないこの形は画面で見る以上に実物は目立つ。


内装
ヒュンダイらしい近未来感ある車内空間だが、コナやIONIQ5を知っているとプラスチック系素材の多さや内装のコストが気になる。



エアコンは全て物理ボタンで使いやすい。


ドリンクホルダーは座面と同じ高さにある。アームレストと干渉気味。
万が一こぼすとズボンに液体が掛かりそうである。

また軽自動車でありがちな横Gに踏ん張る気のないシートだ。

ウインカーとシフターの位置が近く、特に右ウインカーを出すと当たる。
実走行インプレッション
取り回し
見た目と表記通りのサイズ感で取り回し抜群!!
と言いたいところだが、個人的に気になったのが最小旋回半径である。
5.3メートルの旋回半径と3845mmの全長で悪いわけはないのだが、いざ狭いところでハンドルをフルロックして回ろうとしても、思っているほど車体が曲がって行かない。
アバルト595に乗ったときのことを少し思い出した。
それ以外は車体サイズと装備と視界性に恵まれ弱点が無い。
運転に関する取り回し性能としては、ウインカースティックとシフトスティックの衝突と、操縦席というより前後するだけのアームレスト付きシートである運転席が気になる程度。
パワートレイン
このセグメントのコンパクトカーに加速力は期待できないのが世の常である。
期待値がたいへん低い中で踏んでみたが、実物には驚かされた。
市街地ではちょっと怖いくらいの加速性能を披露してくれる。
EVではあれどスポーツ車ではない。
このことを踏まえた上で考えると充分すぎるだけの加速力。
当然ながらちょっとした鬼畜合流も楽勝でこなせるし、レーンチェンジの際の速度調整もスパッと決まる。
パドル操作だけでニュートラルから完全停止まで行くワンペダルドライブを切り替えられる点も嬉しい。
ハンドリング
ちょっと強めに旋回方向の負荷を与えてみた。
そのパッと見の印象はこのクラスのコンパクトFFによく見られるもの。
具体的にはフロントのスタビライザーの効きを相対的に強め、前を突っ張らせることで危険性のある姿勢変化を防ぎにいくアンダーステア傾向の動きだ。
しかしそこから追い込んでいくと一味違った世界を見せてくれる。
あくまで姿勢はアンダー寄りに抑えつつも、頑丈なボディと安定した姿勢の中でグリップ限界の高いタイヤをしっかりと使う。
ハンドルを切ったら切った分だけ曲がって行くような旋回性を魅せてくれる。
あんまり曲がらなさそう&加速も速くなさそうなイメージがあり当初の期待値は高くなかったが、走行性能は満足させてくれるものだった。
乗り心地
日本仕様では少しアシを柔くしたそうだが、その調整が見事なまでにビシっとハマっている。
足周りをコトッと動かし、ほどよく揺らして抑え込みに行ってくれる。
すぐビシッと抑え込むのではなく、2周期くらいは揺らしてくれているようだ。
1回の入力で終わるんじゃなく、ある程度は上下に揺らしてくれているわけだが、だからといってもダルいわけではないのが絶妙。
追い越し車線ペースで高速道路を走っていても、適正な抑え込みとアシのストロークで乗り味は快適である。
空気圧を確認する暇がなかったが、市街地での乗り心地には不快だとは感じない程度のゴツゴツ感を感じるところがあった。