冒頭のまとめ
エコカーばっかり作っている「環境にやさしいメーカー」としてのイメージが強いトヨタが出すクルマとしてはかなりのイレギュラーだろう。
ゴジラのような特大サイズ、2.5トン越えの重量、前のスーパーカー並みのパワー。
普通車というより軍用トラックのようなサイズ感で視点も異様に高い。
エンジン排気量も大きく、デカくて重たいわりに加速力は驚異的である。
その乗り味はまさに大怪獣だ。
しかし意外なほどに乗り心地が良くて静粛性は高く、乗用車としての快適性に優れる。
またハンドリング性能も優秀でスポーツ走行を結構高いレベルで楽しむことができる。
サイズがデカすぎて使い物にならない場面が多いだろうが、陸の王者、ゴジラと呼ぶに相応しいその世界は唯一無二である。
これだけのクルマが新車価格が800万円で手に入るのならば、むしろ非常にお買い得に思える。
資産価値も下がらないだろう。
外観
まさに陸上の大戦艦。外から見てもデカイが、運転するともっとデカいぞ。



駐車枠に収まらないだろうと思いきや、丁寧に停めれば意外と何とかなる。
しかし駐車枠と道路の幅次第では、存在するだけで他者に迷惑をかけるぞ。

内装
約2メートルという幅と背の高さとゴテゴテ感、高級感を持たせる内装。

見たことないようなサイズ感のセンターコンソールパネルを持っている。

モードセレクターはアクセル系と地形選択をクリックして切り替える。

ローレンジとの切り替えやデフロックなども装着。

パドルシフトが無く、手動シフトのプラスマイナスが加速Gとは逆方向。

アラウンドビューカメラの画質は申し分ないが、画面が小さすぎて使い物にならない。障害物との距離感が分からないのだ。

二列目の居住性
車体がデカいだけに良い。シートのクッション性も良好だ。

こちらも見たこと無いようなサイズ感のセンターコンソールパネル。

音響と静粛性
トヨタ車は全体的に遮音とカーオーディオがショボい傾向にあるが、このランドクルーザーは格別だ。
中国・韓国EVと比較しても引けを取らないレベルの性能を持っている。
静粛性が高いためロードノイズも感じづらく、何よりもJBLのカーオーディオが優秀なのだ。
ただ「音量を上げても音割れ感が出ない」とか「クリアに鳴る」とかそんな次元ではない。
ありとあらゆる音楽の構成要素が臨場感を伴って合唱をする感じ。
曲が持っている譜面に乗っていないリズムが心に入ってくるような鳴り方をする。
弱点があるとすれば音量調整が回転ダイヤルではなくてボタンである上に、50段階くらいあること。
音量を上げた状態から窓を開けても問題ない程度に下げようと思うと、45連打くらいしないといけない。
実走行インプレッション
東京都内の地下駐車場にて対面。
改めて見るとデケぇ。
前の人が適当だったのか、駐車マスから右側にはみ出してナナメに停められている。
運転席も相当に高く、クルマというかトラックや戦闘機にでも乗り込んでいるような気分。
車内空間も相当なものだ。
エンジンを始動すると、大排気量エンジンならではの迫力ある音が広がる。
静かではないがうるさいと言うほどではない排気音が響き渡り、「大排気量のクルマに乗っているんだ」と思わされる。
取り回し
全長4950mm x 全幅1990mm x 全高1925mm というサイズ。

実際に運転席に座るとゴジラのように大きいが、数値化してみると意外とそうでもない。
最小旋回半径も5.9メートル。

パワートレイン
重たいわりに加速力が凄まじいのでストッピングパワーは不足しているが、415馬力/650Nmを発する3.5LV6ツインターボのおかげで2.5トンあるとは思えないほど軽やかで恐ろしく速い加速を魅せる。
その加速力たるやあまりにも乱暴なもので、慣れるまでは相当に怖い。
慣れてからも、十二分に集中していないと迂闊にベタ踏みはできない。

少し踏み込んで回転数が上がるとV6エンジンの気持ちの良い音が響いてくるため、乱暴に飛ばさなくてもエンジンを楽しめる。
軽いアクセル開度でも速度がグンと乗る。
さすが400馬力、余裕のトルクである。
しかし400馬力級の加速力と2.5トンの車重を受け止めるブレーキはキャパシティが足りていない。
踏み心地自体は悪くなくカッチリとしているが、奥の方でそこそこ止めてくれる程度の効きしかない。
この質量を安全に止めるには力不足。
万が一の緊急回避の際に、この制動力では盛大に突っ込む危険がある。
私はいつも車間を広く取るタイプなので特別気を遣うことは無かったが、そういう部分で安全マージンを広く確保していく立ち回りを勧める。
私だったらダストや耐久性ガン無視の制動力が強いブレーキパッドに変えてしまうだろう。
それにしても、湿っているわけでもない平地のフラット路面であれだけブレーキが遅れていくだなんて、凍結路の下り坂ではどうなってしまうのか考えたくもない。
エンジンブレーキも頼り切れるほど強くなく、モーターによる回生ブレーキもない。
この手のクロカンで雪道で車間距離を詰めるタイプの人間は、完全に低知能なヘタクソであると断言できる。
遅いクルマを白点線追い越しするほうがまだマシ。
乗り心地
「クロカン」と聞くと乗り心地は悪そうに感じるが、ランドクルーザーは逆である。
むしろ非常に快適だ。

圧倒的な車高と重量によって路面からの距離があり、よくできた足回りと合わせて地面のザラつきが入ってきづらくなっている。
重量と衝撃吸収に優れたショックで受け止めてくれる。
乗り心地においてタイヤの厚みやサスペンションストローク、重量がどれだけの恩恵をもたらしてくれるのか身をもって体感した。
路面の継ぎ目を超えた際も、少しコトンとストロークしただけで揺れを消してくれる。
後揺れも残さないため安定性が高く、快適にクルージングできてしまう。
ホイールが最近のクルマとしては比較的小ぶり。
ハンドリング
この手のクロカン車ではいつも、ステアリングレシオの遅れが気になっていた。
ハンドルを回していってもフロントタイヤが切れて行ってくれず、それが原因で旋回が遅れるのだ。
しかしこのランクル300は他の乗用車と同じラック&ピニオン式の電動パワーステアリングを採用。
可変ギヤレシオも付いており、この弱点がかなり改善されている。
またハンドリングも非常に安定している。
スタビライザーがしっかりと効いてくれるため、早い段階で車体をあまり傾けずにビシっと安定させる。
背が高い車体だがほとんどロールしないのだ。

しかしさらに切れ込んでいくとあからさまに旋回の動きに遅れが出る。
フロントが重たすぎて、前ががアウトに膨らんでいくというか、手元でハンドルだけ切ってもクルマが旋回に追いつかない感じだ。
もしかしたら中盤以降はステアリングレシオも少々遅れ気味なのかもしれない。
また短い周期でハンドルを揺さぶるような動かし方をすると、上下で周期がズレるような動きも出る。
しかし怖いだとか安定性が削がれるだとか、そういうものではない。
この手のクルマにおいてはかなり頑張っている。
ランドクルーザーのイメージと悪路走破性を保ったまま、ここまでのドライバビリティを実現したのは感動的だ。
重さや図体のデカさは隠しきれないが、400馬力級のエンジンを舗装路の上でもしっかりと楽しめる。
高負荷域・ドライバビリティ
急加速時に段差を越えるとハンドルが少し暴れるような動きが出るが、直進性への影響はあまりないため慣れれば首都高でもベタ踏みできる。
400馬力はあるのにこの加速Gで収まるのは、やはり重量の影響だろうか。
個人的に驚いたのがC1にある旋回途中に横にジャンプするコーナーだ。
一級品のスポーツカーでも段差でハンドルが暴れることが多いが、このランドクルーザーは何も起こらなかった。
本当に何も起きなかった。2週試したけど何も。
あまりにも車高が高くてサスペンションストロークが長いため、アシのストロークの部分で路面のうねりへの合わせ込みが済んでしまったのだろう。
陸の王者の前には首都高の路面のうねりも意味を為さないのか…
諸元・価格など
3.5LガソリンのGR SPORTだ。

