【V37スカイライン】快適なのに爆速でV6を楽しみつくせるFRのコーナリングマシンで空を飛ぶより速い俊足を楽しみ尽くそう#136台目【試乗インプレッション 3LV6ツインターボ GT Type SP】

圧倒的なパフォーマンスと官能性を誇るV6エンジンとFRらしさに溢れるスポーティーなハンドリング、快適な乗り心地などの素晴らしい運転フィーリングを持つが、GT-Rに名前を切り離され、セダン自体が不人気で、クルマ好きはフェアレディZに流れ、フルモデルチェンジなどのテコ入れも遅れている。

そもそも日産社自体の調子が悪い。

そんな何かと不遇な立ち位置にある日産のスカイライン。

冒頭のまとめ

450馬力くらいあるのではないかと感じるほどの圧倒的な加速力と美しくも迫力ある官能的な音を奏でるV6エンジン。

少し切るだけで軽い力でグイグイ曲がって行くが、しっかりとしたコントロール性も併せ持つハンドリング。

しっかりとしたストロークで高い快適性をもたらし、高速域では減衰を締めて安定性を確保してくれる優秀な足回り。

世代の古さこそ隠せないが、現代装備を取り込んで最低限の要望は満たせる車内。

重量としては1.7トンほどあるのになぜか動きが軽い。

この手のハイパフォーマンスカーはボディの頑丈さをフルに活かして走りの根幹を作ることがあるが、スカイラインは軽さの中に圧倒的な安定感とコントロール性、そして旋回性能を持たせている。

その総合性能はFRスポーツ車のなかでも最高峰である。

古典的なイメージは強いが、それゆえ昔ながらのエンジン・走りの良さと、現代水準の安全装備を併せ持つ。

デカすぎないサイズが取り回しにも身軽な走りにも繋がっている。

ここまで楽しくて速いクルマだとは全く思っていなかった。

日産車の中でもかなり特異的なクルマであり、他の日産の車とは完全に別の軸で見ることになるクルマだ。

外観

内装

ドアを開けた瞬間に「良いクルマ感」が漂って来る内装だ。

スポーティー感や高級感は並みといったところだが、なかなか良い車内空間である。

ただスマホホルダーをどこに設置するんだ問題が出てきそうだ。

右側のエアコン吹き出し口か?

その場合は充電ケーブルがステアリングに干渉しないよう、丁寧に配線する必要がある。

特にヨコに倒して設置したい場合。

日産お得意のステアアシスト系は付いてこない。レーンをはみ出したら警告してくれる程度。

これが個人的に感じた最大の不満かもしれない。

ナビは上下ともにタッチ対応。

レスポンスや操作性などは良好。

シンプルなストレート式シフト。

ギアを動かすたびに重厚感を感じる。良い操作フィールだ。

パドルシフトがあるのでマニュアルレンジはMTモード指定にしか使わない。

下側には手動でナビの縮尺や「戻る」機能、カメラ表示などを行えるボタンが付くため非常に便利。

特に走行中に「ちょっと先の道がどうなってるか見たい」と思ったとき、このダイヤルをクルクルするだけで済むので素晴らしい。ちょっとラグいけど。

その下は走行モードの切り替えボタン。こちらも操作性良好。

クルコン作動中にスポーツモードに入れても勝手にシフトダウンするようなことはないため、「巡行中に減衰力を締めたいなぁ」という場面でも燃費やエンジン騒音に影響を与えずに調整が可能。

このナイスな機能には助けられた。

エンジン音を楽しみながら走りたい場合、マニュアルモードを使うことになる。

サンルーフも搭載。気持ちよく風が吹き込んでくる。

100km/h以上出していても、サイドウィンドウを全閉めしてサンルーフだけ開けておけば気持ちいい風が吹くぞ。

静粛性とオーディオ

走りのクルマは静粛性を省かれるのが世の常だが、このスカイラインは必要充分なものを持つ。

トンネルに飛び込むと屋根からも音が入ってくるのを感じるが、個人的には問題は無いと思っている。

日産といえばBOSEのサウンドシステムが素晴らしい。

車体番号を公式サイトの検索ページに入れたところ、このスカイラインにも「Performance BOSE サウンドシステム」が搭載されているらしい。

本当か????

オーディオについては「まぁこんなモンか」というレベルで、悪いわけではないが良いというわけでもない。

音量を上げると不鮮明さが顔を出すが、音楽を聞くだけなら特段と大きな不満はないという程度でしかないのだ。

実走行インプレッション

走り出してすぐに感じるのは「基本に忠実なFRのハンドリングマシン」として作ってあることだ。

ハンドルを少しでも揺さぶると、軽い力でクルマが左右にヒラリヒラリと動く。

取り回し

コンパクトなサイズにアラウンドビューカメラまで付くためかなり乗りやすい方である。

なにも言うことは無い。

パワートレイン

このV37スカイラインには2L直4ターボ、3LV6ツインターボ、3.5LV6ハイブリッドの3つのパワートレインがある。

私が乗ったのは305馬力の3リッターV6ツインターボだが、これが素晴らしい官能性と出力を持ち合わせている。

コールドスタートも静か。あれだけの加速力を持ち合わせながら、深夜帯に住宅地を出る際になにも心配が要らないのが素晴らしい。

市街地の走り出しも滑らかで、エンジンが唸らずに気持ちよく速度が乗っていく。

とんでもない加速力と快音である。

しかしノーマルモードでアクセルを少し強めに踏み込んでから加速力が立ち上がって来るまでの間に多少のラグがある。

キックダウンなのかブースト圧の立ち上がりなのか…

EVなら少し踏むだけでドンと来るところでこの遅れは不満だ。

燃費なんて気にする価値も必要もないエンジンなので、常時スポーツモードで良かったかも…

さて低回転・低負荷域では静かに回るエンジンだが、4000回転を越えたあたりから綺麗な音を響かせる。

下から響く低音と官能的な高音が合わさった非常に気持ちの良い音。

数値で見ると305馬力に400Nmだが、実際の加速力は相当なものである。

「305馬力」と聞いて想像するものの遥か上を行く加速力で、車重なんて無いかの如く吹き飛んでいく。

450馬力くらいあるのではないかというほどの加速。

この加速中に段差を越えるとリアタイヤが一瞬滑りそうになる。

しかし軽さのおかげかタイヤを酷使しているような印象がなく、スリルを味わいながらも容赦なくベタ踏みできてしまう。

ベタ踏み中の安心感は相当なものだ。

軽さのある動きで、ボディーもガッチガチ感が出ているわけでもないのになぜだろうか。

ガチガチすぎないボディーが軽やかな走り心地をもたらしている。

車重は1.7トン程度と軽いわけでもないのに。

ハンドリング

FRらしく前がグイグイと入っていくタイプ。

ロードスターやスイスポのように乗り物が自発的に曲がっていこうとする動きがかなり強いが、人間がコントロールできる領域が残されている。

この塩梅が絶妙。

乗り物の旋回力が強すぎると、道に沿ってハンドルを切っているだけのドライブとなり楽しみがない。

ハンドルを重ために設定するスポーツ車も居る中で、スカイラインはあえてハンドルを軽くしている。

そして僅かな舵角でも前がグイグイと切れ込むように設定する。

これによって軽い操作で乗り物がスイスイと曲がって行ってくれるぞ。

自分で走る、車に走らせる。その両方の特性がケンカしない。

車重のわりにグイグイ曲がるからか、走行ペースを上げていくとタイヤが思っているより早い段階で悲鳴を上げ始める。

そのタイヤが限界に近づく領域も分かりやすく、コントロール性も充分に高い。

加速が速ければ旋回も軽やかで、FRらしいコントロール性と微かに感じるスリルが両立する。

高い走行ペースの中で安心して速さを楽しめる。

「人に翼を」というコンセプトが残っているのを感じる。

ただ速いだけで取り回しに困るロケット加速と、どうしようもなく悪い乗り心地が足を引っ張るR35のGT-Rよりも楽しくて快適で優秀である。

(ぜったいこっち買った方が良い)

旋回途中にジャンプするようなコーナリングも、足回りの上下方向へのストロークでしっかり吸収してくれる。

曲がり始めるとクイックだが、センター付近には充分な遊びが持たされているため直線を巡行する際も過激すぎない。

乗り心地

スポーツセダンであるが、意外なことに乗り心地は非常に良い。

段差に対しては足回りがしっかりとストロークしてくれる上に、抑え込みも適切なので後揺れも残らない。

フェアレディZと肩を並べられるスペックのV6エンジンを搭載しておきながら、これだけの快適性が出せるものかと驚かされた。

もはや見た目以外でZやGT-Rを買う理由が無いレベル。

乗り物の総合性能を考えると素晴らしい乗り心地だが、弱点や気になる動きは存在する。

まず80km/h制限の山間部の高速道路を110km/h程度で流す場面においては、ノーマルモードでは路面のうねりや段差を越えた後の抑え込みが少々ダルめでフワつきがち。

不安感や不快な後揺れというレベルではないが、気になるならスポーツモード、スポーツ+モードを適宜選択する必要がある。

スポーツ+モードはこの手の電子式サスペンションではお馴染みの減衰マックス締め。

安定性のためにゴツゴツ抑え込むような乗り心地となり快適性のメリットは薄れる。

それでも充分に良いが。

また段差で飛び上がった後の墜落するような着地ではドンという叩きつけもある。

そこまで不快な硬さではないが、コンフォートを追求したクルマには一歩譲ることになる。

いつも思うのだが、なぜ電子式サスペンションの減衰力をユーザーが細かく調整できないのだろうか。

大体の車種が3段階程度の調整幅しかなく、足回り単体で硬さを任意に切り替えられる車種は多くない。微妙にかゆいところに手が届かないのだ。

総じていえば、スポーツ性を優先したZ34と同じクラスのエンジンを積んだクルマだと考えると、感動するほど乗り心地は良い。

諸元・価格・グレードなど

21年式のGT Type SPである。

新車価格は約500万円。

オプションとして、標準仕様1 /スポーティパッケージ /電動ガラスサンルーフ /Performance BOSE サウンドシステム+アンビエントライトシステム /標準仕様5などを持っている。

公式サイトの諸元表ページはこちら↓

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