近年、EV(電気自動車)の航続距離不足を補う手段として注目されている「レンジエクステンダー」。
この発電用エンジンに単気筒(直1)エンジンを使ったらどうなるのか――今回は、その可能性を考えてみます。
単気筒エンジンとは
単気筒エンジンは、文字通り1つのシリンダーだけを持つエンジンです。
バイクや農機、小型発電機ではおなじみですが、現代の自動車にはほとんど採用されていません。

なぜ自動車には単気筒が使われないのか
自動車で単気筒がほぼ絶滅した理由は大きく3つあります。
- 振動が大きい
爆発の間隔が長く、アイドリングや低回転時に不快な揺れが発生します。 - 出力が途切れる
爆発と爆発の間にトルクが落ち込み、加速や巡航がスムーズに行えません。 - 排ガス・燃費面の不利
燃焼の安定性が複数気筒に劣り、最新の規制や燃費基準をクリアしにくくなります。

レンジエクステンダーなら採用の可能性あり
レンジエクステンダーは車輪を直接駆動せず、発電専用で一定回転数を保つため、単気筒の弱点がかなり軽減されます。
- 振動:モーター側で吸収できる
- トルク波:発電用なので大きな問題にならない
- 構造のシンプルさ:部品点数が少なく、軽量・低コスト
この条件なら、単気筒はむしろコンパクトで安価な発電ユニットとして魅力があります。

軽トラや軽乗用車に載せたらどうなる?
想定するのは、アルトやムーヴ、軽トラのような軽自動車サイズのEVに、直1レンジエクステンダーを搭載するケースです。

- エンジン:300〜500cc 水冷直1、定格出力15kW前後
- バッテリー:15〜20kWh(EV航続 約100〜130km)
- レンジ延長時燃費:25〜30km/L相当(高速80km/h巡航)
- 車重:850〜950kg程度
- 価格感:現行軽EV(例:日産サクラ)の約5%安、240〜250万円前後が目安
※バッテリー容量削減によるコストダウン分(約7.5〜10万円)と、発電機ユニット追加コスト(約15〜25万円)が拮抗するため、大幅値下げは難しい。

メリットとデメリット
メリット
- 小型・軽量で車体設計の自由度が高い
- 部品共通化でコスト削減が可能
- インフラが乏しい地域でも運用しやすい
デメリット
- 振動・騒音対策は依然必要
- 大排気量化が難しく、発電能力に限界がある
- 既存の複数気筒エンジンに比べ耐久性や快適性で不利な場合も

実現可能性まとめ
直1レンジエクステンダーは、完全に不可能ではないどころか、条件次第では有力な選択肢になり得ます。
特に軽商用EVや地方向けモデルでは、航続距離を確保しつつ低価格化を目指す武器になるかもしれません。
