【フリード e:HEV】元気の良い爽快ミニバンだが意外と粗が目立つ?#129台目

ミニバンとは思えないほど激しくブン回ってVTECを感じさせるエンジンに軽快なハンドリングと高い走行性能、広大な車内空間と乗りやすいサイズ、経済性などを非常に高い次元で両立するフリード。

その最新型に乗ってきた。

冒頭のまとめ

これまでのフリードの魅力を基本的には受け継いでいる。

現代水準の装備と優秀なハイブリッドシステムを手に入れ、リッター20kmくらいの実燃費が難なくポンポン出る。

モーター主体の加速は軽快で、激烈なエンジンが10速AT感覚でスパスパ変速するように動くのが気持ちいい。

しかし影を出す乗り心地や腰高感のあるハンドリング、静粛性や能力不足なスピーカーなどなど、ところどころ不満を感じてしまった。

シエンタとの徹底比較はこちら↓

内外装

超注意:選んだシートでスペース効率が格段に変わる

フリードは二列目のシート選びによって荷室空間の使い勝手が大きく変わる点に注意だ。

二列目がアルファードのように広々としたキャプテンシート仕様より、横に3人乗るタイプの6:4分割タンブルシートのほうが圧倒的に荷室が使いやすい点に留意だ。

キャプテンシート仕様だと、車中泊や荷物の積み込みには不便だ。

しかし二列目が3人乗りベンチシートであれば、フルフラットな座面を作って車内空間を最大化できる。

これは本当に注意だ。

新車を買う際も中古で選ぶ際も、実際にシートを動かしてみて確かめるべきだろう。

静粛性とオーディオ

市街地での静粛性や仮眠しながら音楽を流す際の音響については特に問題がないが、スピードや音量を上げると途端に不満が出て来る。

特に80km/hを越えたあたりで窓ガラスから風切り音がヒューと吹き込んできて車内が一気に騒がしくなる。

フロアの遮音については良好だが、このせいで走行音がうるさい。

「これで新東名を120km/h+αで走り続けるのはちょっとなぁ…」と思う。

またスピーカーについても明らかに能力不足。軽自動車レベルだ。

音量を中くらいまで上げるともう鮮明さが失われる。

フリードのおすすめイコライザー設定の一例。ボーカル音域の音割れ感が低減できるぞ。エフェクトのDSP機能はオフのままで良いかも。

イコライザー設定でだいぶ改善できるが、同じ価格帯のBYDドルフィンとは雲泥の差である。

ホンダの開発陣、中国EVに乗ったことないだろ…

「エフェクト」のDSP機能を使うとコンサートホールのように反響させることができるが、そんなシステム考えるくらいならスピーカーそのもののグレードを上げて欲しかった。

実走行インプレッション

取り回し

フリードはコンパクトなイメージがあるクルマであり、サイズ的にも実際そうである。

しかしいざ運転してみると意外と大きく感じてしまった。おそらく私がシートの座面を下げたためだろう。

バックカメラは独特で、アラウンドビューカメラもどきが実装されている。

おそらく地面の画像を保存・加工して画面に投影するもの。バックして進んでいくと無いカメラが補われる。

車幅が1695mmしかない上にダッシュボードが低くて視界が広いため、狭い道での取り回しも抜群。

ただでさえ狭い道路幅が左右から植生に侵食される田舎の山道でもラクに走れる。

ちなみに深夜の真っ暗な山道を運転していて感じた不満がハイビームの暗さだ。

特にヨコ方向への照射範囲が狭く、カーブの先が全然見えない。

パワートレイン

基本的には電気自動車として走り、電池が減ってきたらエンジンを回して発電する点がトヨタとは異なる。

踏み込んでもモーターの滑らかな加速が維持されるためスムーズ。

発電用エンジンは始動するが、一部のトヨタ系ハイブリッドのように「もわあああん↑↑」と唸ったりはしないため静かに走っていく。

上は暴力的にブン回るが、下は滑らか&静か&必要充分なトルクだ。

二律背反にも見えるような2つの要素を両立している優秀なエンジン。

CR-Zのマニュアルを1週間借りて乗ったころを思い出した。

車内で休憩している際も始動時にブルっと来る程度でエンジン音は非常に静か。

排ガスもアイドリング時間も大幅に抑えられるため夏場の車中泊には効きそうだ。

(冬場は流石に厳しいだろうが、電気毛布を用意すれば充分に耐えられる。オプションのコンセントかモバイル電源を使おう。)

エンジンはさすがホンダのVTEC。

激烈な刺激でド派手にブン回るフィーリングが楽しい。イマドキはスポーツカーでも出せないような演出である。

ステップシフトアップ制御によってスパスパとシフトアップされるので多段式ATのスポーツカーのように回る。

モーター出力は123馬力/253Nm。

追い越し車線へ移ってアクセルを踏む場面や合流においては、刺激的なエンジン音と共に軽やかに速度が乗るためたいへん気持ちいい。

250馬力級の軽やかさでスピードを乗せていってくれるため運転していてもラク。

発電用エンジンの出力は106馬力/127Nmであり、モーターの方が加速が速いわけだ。

これによって発生するのが電池切れ。

峠道を気持ちよくブン回していると、そのうち加速制限が掛かる。

上り坂では明らかに加速が遅くなる。特に70km/hあたりから上が明らかに伸びなくなる。

加速性能は電池の残量制限付きで良いわけだが、ブレーキの効きもかなり良い。

結構な制動力でクイっとい止まってくれる。

またBレンジに入れるだけでエンジンブレーキを掛けてくれるため、ちょっとしたワンペダルのような運転も可能。

パドルシフトで回生の強さを変えたり、自動停止まで行ったり、ブレーキペダルを一切踏まずに運転したりできるレベルではないが充分に快適。

乗り心地

状況によって評価が上がったり下がったりする変速的な評価の足回りだ。

市街地でスピードをほどほどに上げると、少しのストロークでバスっと安定させながら走って行ってくれる。

段差などで飛び上がった際は優雅に持ち上げて、足のストローク・伸びの長さで遠くの地面をキャッチしに行く動きはなかなか良い。

しかし減衰がダルいのか、路面がうねっているところでスピードを出すと上下方向の動きの抑え込みが弱くフワついてしまう。

また段差の継ぎ目を周期的に超えていく状況でも上下への動きが大きめ。

継ぎ目の部分で少し飛び上がって落ちるのだが、落ちた瞬間に底付きした感じになってしまう。

その後にも大きく持ち上げられてしまうような動きが出る。

着地へ向かってアシを伸ばしていくところ自体は良くても、乗り手としては車が飛び上がった印象になるのでこれはあんまり良いとは言えない。

アシをコトンと動かすだけで車体になんの衝撃も入れずにクリアする車種も居るレベルの段差なのに、これでは少々動き過ぎているかもしれない。

また路面がバンピーで跳ねまくるような状況だと、身体が跳ねてしまうのではないかというレベルで振動が入ってくることも。

上下方向のみならず、傾き方向にも車体が揺れる。

多人数乗車or荷物満載を想定した足回りに一人で乗っている弊害もあるのだろうか…

あくまで変なこだわりのある人がちょっと気になるなぁと感じた程度。

購入を検討している人が見送らないといけないレベルの酷い乗り心地ではない。

ハンドリング・ドライバビリティ・高速安定性

基本的に優秀な運動性能を発揮するのがフリードというクルマだが、私が乗った限りでは「腰高感」と「微妙に遅れるステアリングレシオ」が気になってしまった。

まず腰高感についてだが、クルマの下側に大きな空間が開いている印象を受ける動きだ。

物理的な最低地上高は135mmと一般的な数値である。

ロールセンターが高いのだろうか、ロール収束までの時間が長いのだろうか…

  

ハンドルを揺さぶると地を這うように曲がるのではなく、少し腰高感のあるフラ付き方をするような動きを感じてしまった。

クルマの下側に大きく空間が開いており、ハンドルを切ると地面とはちょっと離れたところで車体が傾くのでフワ付くといったところだろうか?

悪路走破性を優先したリフトアップモデルなら許容できるが、あのフリードの通常モデルでこの安定感は個人的には不満だ。

ハンドルを切ってからロールが収束するまでの間をもう少し短くすると改善できるだろうが、そもそものクルマの重心が高いような印象もある。

さらに気になるのがステアリングレシオである。

峠道の180°ターンでハンドルを切ると、微妙にフロントタイヤの舵角が不足気味になる。

一回の操作でバスっと回せる範囲で舵角自体は足りるのだが、いっぱいいっぱいという感じ。

スポーツカーというよりトラックのようなハンドルの回し方となってしまい、ハンドリングの軽快感を削いでいる。

直進安定性については必要充分である。

フロントウィンドウが寝ているおかげで風にもほとんど煽られない。

しかし先述した腰高感が高速道路でハンドルを切っても出てきてしまうため、イマイチ安心感がない印象だ。

実は試乗の最後にイヤな欠陥を発見してしまった。

旋回中に段差を越えるとイン側がコトンと滑り、ハンドルが少し持って行かれてしまうのだ。

中くらいの負荷に抑えても、明らかにイン側がズルっと行っている。本当は負荷を上げてテストしたかったが、借り物で追い込むには怖くてできなかった。

クルーズコントロールシステムの2つの不満

この車には前車追従+ステアリングアシスト付きのクルーズコントロールが付いているが、両者ともその動作には不満と不安がある。

まず前車追従だが、前の車を検知したりロストするたびにビーっと喚いて警告音を発してくる。

これが非常に耳障りで、蓄積すると耐え難いほどのストレスとなる。

設定で切れるのだろか。

またステアリングアシストもフラッフラで、わざとハンドルを揺さぶっているようだ。

真っ暗な夜では遠くのほうが見えていないのだろうか。

そのうち壁に突っ込んで自滅するのではないかと思うほど揺れる。

逆に変なストレスが溜まるので、結局ステアアシストは切っていた。

元の直進感が良好なので問題は無いが、現代車を新車で300~400万円で買うのにこれかぁ..

ステアアシストは少なくとも夜の見通しの悪いところでは使い物にならない。

追従クルコンもビービーうるさくて不快。

同じホンダでもシビックのe:HEVは完璧に動作していたのに、なんでこんなに落差があるのだ…

まとめ

個人的には追従クルコンが前車を検知したり、ロストしたりするたぶに「ビー」っと喚くのが非常に鬱陶しいと感じた。設定で切れたのだろうか…

また物価高時代ゆえ致し方ないが、目に見えない部分の手抜きも気になってしまった。

乗れば乗るほど地味に気になってくる小さな不満点が積み重なって、私にとっては最終的に無視できないレベルとなった。

これなら安く手に入るN-boxか、より車内が広大なステップワゴンかオデッセイに移ってしまいそうだ。

「現行型フリードが気になっているんだ」と聞かれたら、「n-boxで充分じゃない?」と答えるかもしれない…

少なくとも購入前に試乗することをオススメする。

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