「コンパクトカーなんてこんなモンだよね」という意識が我々の根底にはあった。
コンパクトカーの中にはBMWの1シリーズやフォルクスワーゲンのゴルフのような、一級のシャシー性能を持つ車種がある。
ドルフィンに1シリーズやAクラスのような高級感はないが、無意識のうちに心の中で作っていた価値観をブチ壊すような世界がそこにはある。
冒頭のまとめ
コンパクトカーの常識を根底から覆す一台だ。
内外装の質感のみならず、乗り心地にハンドリング、加速性能のすべてが高水準。
ATTO3やシールと比べると車格が下であることを感じるが、それでも価格からは想像も付かない質感の高さを持つ。
これが300万円程度で買えてしまうなんて、日産リーフの存在はなんだった・・・
外観・内装
ヘッドライト部分を横長のプレートとして置くようなデザインは珍しい。


内装はシールやATTO3と比べると明らかに質感が下がる。

私が借りた個体は全体的にピンクで彩られており、エアコン吹き出し口付近の塗装されたパネルはマネキュアのようだ。

車に乗って「化粧品みたいだな」と思うときが来るとは思っていなかった。
センターコンソールのボタン類は「押す」というより「上か下に動かす」ような操作感となっており、押したのに反応しないことが多い。

飛行機のコックピットの上側に付いているスイッチのようなものかもしれないが、実物の感触はグニャグニャ。咄嗟にハザードを出そうとしても失敗する。

静粛性とオーディオ
シールとATTO3には譲るが、それでも300万円のクルマとしては最高峰のものを持っている。
静粛性はコンパクトとしては高めで、床下側のゴーと言うノイズがあんまり入ってこない。
特に素晴らしいのがオーディオ。
この手の大衆コンパクトカーでは良くも悪くもない程度のものが多いがBYDは格別だ。
シールには遠く及ばずATTO3に劣るというのはあくまで比べてという話。
BYD特有の高音を超高解像度で魂まで響かせてくるような最高峰のオーディオシステムを持つ。
実走行インプレッション
取り回し
乗りやすいコンパクトサイズに超高水準なアラウンドビューカメラまで付いてくるため非の打ち所がない。

私はこれまで「初心者でも乗りやすいクルマランキング」にスバルのレイバックとダイハツのタントを入れていたが、BYDドルフィンも追加させて貰おう。
パワートレイン
シールやATTO3と比べるとさすがに個性を感じづらいが、それでも必要充分に気持ちの良い加速をしてくれる。
数値上は100馬力もないが実際の加速感はかなりのもの。
100km/h以下の速度域で不足を感じることはない。

乗り心地
他のBYDモデルの優秀さと比べると多少の荒さは感じてしまう。

しかし頑丈なボディーに守られている感触を味わいながら走ることができるぞ。
乗り心地としてはスポーツセダンに近い。
高剛性なボディを活かしながら、アシを少しストロークさせて角を取った入力をバスっと入れるイメージ。
最後の突き上げの部分で綺麗に角を取ってもらえるため不快な硬さも無いし、フワフワとすることもない。
ハンドリング
気持ちの良い強力なコーナリングが可能だが、意図的に刺激を取って高負荷域を安定させているような印象を受ける。

基本的な乗り物の動きとしてはクセがなくて素直。
EVらしくスムーズに曲がって行ってくれる。
旋回の動きはビシっと収まり、頑丈なボディに支えられながらタイヤグリップをしっかりと使い切って安心してコーナリングすることが可能。
EVといえばニュートラルステアを想像するだろうが、ドルフィンはあえて前後で別々のバランスとしている印象がある。
急ハンドル時や雪道や段差を越えた際にスピンしづらくするためだろうか、旋回初期に足回りをねじって、安全な姿勢を強引に作っているようだ。
フロントのアウト側のタイヤをねじり、安全なアンダーステアでタイヤを路面に押し付けて遠心力に抗って曲がって行くような旋回姿勢となる。
ちゃんと四輪をビシっと接地させているけどね。
諸元・グレード・価格など
ドルフィンには44.9kWhのベースモデルと58.58kWhのロングレンジモデルの2つのグレードが存在する。
私が乗ったのはベースグレード。必要充分な質感と加速力を持つ。
| メーカー希望小売価格 | 2,992,000円(税込) |
|---|---|
| 寸法(全長×全幅×全高) | 4,290 mm × 1,770 mm × 1,550 mm |
| ホイールベース | 2,700 mm |
| 車両重量 | 1,520 kg |
| 乗車定員 | 5名 |
| 駆動方式 | FF(前輪駆動) |
| モーター | 永久磁石同期モータ |
| 最高出力 | 70 kW(95 PS) |
| 最大トルク | 180 N·m |
| バッテリー容量 | 44.9 kWh(Bladeバッテリー) |
| 一充電航続距離(WLTCモード) | 約400 km |
| 消費率(WLTC) | 約129 Wh/km |
| 普通充電 最大受入 | 6 kW |
| 急速充電 最大受入 | 65 kW |
| 最小回転半径 | 5.2 m |
| タイヤサイズ | 205/55 R16 |
出典:BYD公式サイト