ジャッキアップして下から眺める動画で「作りが安っぽい」と言われていたATTO3だが、実物を運転してみて驚かされることとなる。
BYDの日本初導入モデルであるATTO3、スタイリッシュなデザインにサンルーフや最強のオーディオを持ち、乗り心地やハンドリング性能まで良い。
冒頭のまとめ
「車体の裏側の作り込みが安っぽい」ことを指摘するYouTube動画を見た後の試乗。
どんな走りをするのか気になっていたが予想を完全に裏切ってきた。
シャシー性能は一級品であり、スムーズで身軽なハンドリングと100km/h以下の加速に振ったモーターによる自由自在で俊敏な走りを楽しむことができる。
遠くでコトっと動くだけの足回りによって快適性も抜群。
BYDらしくカーオーディオも市販車最高峰であり、価格に対するすべての質感がズバ抜けている。
乗り心地や運転性能で本車に太刀打ちできそうなクルマは、私が知る限りではカローラクロスとフォレスターしかいない。
しかし静粛性や加速性能、内装の質感などなど、BYDのほうが勝っているポイントも多数ある。
いまの社会情勢が憎たらしい。
デザイン・内装
シンプルかつスタイリッッシュな俊逸なデザインをしている。
素直にカッコいいし、随所に遊び心があって先進性や芸術性も持つ。


サイズ的にはCX-5

テールランプ内部が凝っており美しく光る。

空力を意識した造形のホイールやサメ肌の装飾が斬新。


BYDの遊び心を感じるが、”Burn Your Dream”なんて言う人も居る。
ちょっとした不満として、充電ポートのフタが窮屈でハメづらい。

内装の質感はシールには劣るがドルフィンには勝る。
デザインは優秀だが、触ってみると硬いプラスチックである場所がある。総合的な質感は中の上といったところ。

シートベンチレーションも装備される。

テスラのようにセンターディスプレイ一個で完結させるのではなく、ちゃんと運転手の前にモニターを付けてくれる。しかし思っている以上に実物の画面サイズは小さい。
一番よく目につくところで一番安っぽい印象を受けるので、ここはケチらないで欲しかった。
ちなみにウインカーは右。諸外国メーカーとは異なり、わざわざ右ハンドル用の部品を用意していることになる。

画面の使い勝手はBYD内でほとんど共通。意外とナビが優秀だぞ。
画面を回転させる機能があるが、タテにする意味は分からない。

Pボタンとスタートボタンが近いため、慣れるまでは間違えて電源を落としがち。
ハザードも溶け込み気味で、もう少し分かりやすい位置に置いてほしかった。すぐ慣れるけど。

右側でエアコンのオンオフや曇り取りが出来たり、左側でブレーキホールドやパーキングセンサーの操作ができる。テスラとは異なり、ちゃんと物理ボタンを残してくれているのだ。

一番下の列は右から走行モード、トラコンオフ、回生ブレーキの強さ選択だ。
ドライバーディスプレイのカスタマイズ項目は少ない。kWを馬力に変えることもできないし、電費計の単位を変えることもできない。

エアコンの操作は基本的にセンターディスプレイで行うが、そこまで複雑ではないため慣れるのに時間は掛からないと思う… (人による)

温度の調整は常時右下に出ているわけではなくて、都度呼び出さないといけないのが不便。
この手のエアコン操作系は「基本的にAUTOエアコンで、家庭のエアコンのように設定温度だけ変える」という使い方をするのが一般的だが、それすらも面倒くさい。

静粛性とオーディオ
音については市販車最強格だ。
カーオーディオは音量も鮮明さもトップクラス。
高音がただ鮮明に鳴るだけではなくて、魂まで響いてくるほど大きな音量で響き渡る。
あまりにも気持ちよくて極限まで音量を上げてしまう。
低音も調子よくドスドス鳴る。
静粛性も文句なしに高い。
実走行インプレッション
取り回し
車体サイズがちょうどいいので秒速で慣れる。なんのクセもない。

アラウンドビューモニターのアシストが非常に強力で運転していて苦労することはない。

パワートレイン
100km/h以下での加速に振っているのだろう。
必要充分すぎる気持ちの良い加速をしていくが、速度に比例して伸びがなくなっていく。
スピードを出すような人が乗る車ではないと思うので問題ない。

乗り心地
意外なほどに上質な乗り心地だ。
遠くのほうでコトンと足回りを動かすだけで衝撃をほとんど入れてこない。
ある程度のストロークの後に抑え込むのだが、わずかな縮みの中で揺れを打ち消してしまう。
その後もフワフワさせない。
ドイツ車のバスっとした安定性と、日本の高級車の快適性を両立したような乗り心地。

ハンドリング
衝撃の運動性能を誇る。自由自在で意のまま。
急ハンドルを切っても全くグラつかない。

入り口から滑らかでスムーズなのだが、旋回モードに入るとすぐにグッとインに入っていく。
人間の操作に対して全く違和感がなく、少しハンドルを揺さぶるだけでも乗り物の動きがハッキリと分かる。
何の危険もなく、安心して安全に振り回すこともできる。
ブレーキもしっかり効いてくれる。
ネットでなんといわれていようが、国と会社がどんな評判であろうが、このクルマの運動性能と乗り心地は同格でもトップと言える世界にある。
個人的にこのセグメントではカローラクロスが強いと思っていたが、加速力や内外装の質感、静粛性とオーディオでATTO3が大きく突き放している。
新車価格も400万円程度なのだからドイツ車でも敵わない。
事実BMWのX1は急ハンドルを切るとグラっと来るし、段差を越えると跳ねてハンドルが暴れるからね。
700万円級のクルマとも互角の勝負をしている。
価格・諸元・グレードなど
グレードは1つのみ。新車価格は約410万円だ。
EVは基本的に割高であることを踏まえると破格のコストパフォーマンスである。
バッテリー容量は58.6kWhであり、急速充電の最大スピードは約88 kWである。
| メーカー希望小売価格 | 4,180,000円(税込)〜 |
|---|---|
| 寸法(全長×全幅×全高) | 4,455mm × 1,875mm × 1,615mm |
| ホイールベース | 2,720mm |
| 車両重量 | 1,750kg |
| 乗車定員 | 5名 |
| 駆動方式 | FF(前輪駆動) |
| モーター | 交流同期電動機 |
| 最高出力(ネット値) | 150kW(204PS)/5,000–8,000rpm |
| 最大トルク(ネット値) | 310N·m/0–4,433rpm |
| 使用バッテリー | Blade リン酸鉄リチウムバッテリー |
| バッテリー容量(正味) | 約58.6kWh |
| 航続距離(WLTCモード) | 約470km |
| 交流充電(最大) | 7kW(オプション11kW) |
| 直流急速充電(最大) | 88kW(30→80% 約29分) |
| 最小回転半径 | 5.3m |
| 乗車定員 | 5名 |
| WLTC消費率 | 139Wh/km |
出典:BYD公式サイト、日本仕様カタログなど
まとめ
サンルーフと窓を開ければ気持ちよく風が吹き込んでくるし、アンビエントライティングが幻想的に車内を照らしてくれる。
ドライブが本当に気持ちよくて、人生が一瞬でバラ色になった気分だった。
こんなによく走る車だとは思っていなかった。