私のYouTubeチャンネルでは「ヤバそうな格安カーシェア乗ってみた」シリーズが好評だ。
2000年代前半、つまり約20年前の見るからにボロそうな初代ポルテを見つけたため思い切って借りてみたぞ。
4時間で1000円であった。
整備状態にも期待できない15万kmオーバーのご老体だが、当時のトヨタの万人向け低価格大衆普通車はどんな走りを魅せるのだろうか。
深夜の猿投グリーンロードに持ち込んで思い切りテストしていく。
冒頭のまとめ
見るからに走行性能がショボそうだが、運転してみるとこのイメージは良い意味で裏切られることとなった。
ファーストコンタクトは「やべぇなこのクルマ」である。
異臭のする車内。布シートの座面はシミ汚れでドス黒く、アクセルはガバガバでシートベルトはねじれ、内気循環・外気循環のフラップはさび付いて動きが悪く、外観もクリア剥がれが致命的だ。

エンジン自体はスッと始動してくれたし、20年前の15万kmオーバーでも割とフッツーに走ってくれる日本車の耐久は感動ものであった。

↑こんな状態のエンジンを積んだクルマが元気よく走るんだから日本車の耐久性は折り紙付きである。
さてさて、走行性能については意外とガッチリ感を感じられるボディーやしっかりと止まれるブレーキ、ドッシリと構えて安定した姿勢で曲がって行けるコーナリング特性など、意外にも頼もしい。
バカみたいに飛ばそうとするとバインバイン跳ねるが、ちょっとスピードを上げるくらいなら全然怖くない。新東名を130km/hくらいで走っても何も問題ないだろう。
コーナーの手前から少し早めにハンドルを切ってロールを収束させ、旋回姿勢を作ってしまえばタイヤを鳴らしながら穏やかにコーナリングできる。
車体が小さいため狭い峠道でも長い旋回時間を取ることができて、1.3リッターのまったく加速しないエンジンでもヒルクライムで地元民を振り切ることが可能だ。
また車内の使い勝手や運転性についても抜群で、極限まで追求された便利さは触れていて感動した。
イメージしていたほど走行性能も劣っておらず、日本車の素晴らしさが凝縮されている一台だった。
外観・デザイン
かわいくてクセがない、男女問わず受け入れられる俊逸なデザイン。
優しさや乗りやすさも感じる。

古い図書館に『売るためのデザインブック』という本があったなら載っていそうなデザインだ。
窓の上下方向への高さが結構あり、これが抜群の周辺視界を産んでいる。

右側は運転席のドアが1つのみ、左側は電動スライドドアが1つのみ。
少し変わったレイアウトだが使い勝手は抜群。

右後ろのスペースにはドアを廃したおかげかちょっとした台所収納のような空間がある。感動モノだ。

赤色は劣化しやすいようで、クリアが全体的に剥がれてきている。

内装
意外と安っぽさを感じない、親しみやすさと使いやすさに溢れた車内。
※コラムシフトを除く

テスラ並みにダッシュボードが低く、視点も高くて広々としている。

ゴミ箱にもできるボックス付き。

カップホルダーは引っ張り出して開くタイプだが、コンビニコーヒーを何も問題なくホールドしてくれた。

リアの曇り取り用のヒーターやハザードをオンにした際の電圧降下で車内のルームランプが一瞬だけ明らかに暗くなる。

マニュアルエアコンの外気導入と内気循環の切り替えフラップは明らかに重い。錆びついてる。

PWR DOORのボタンは長押しすると左側のスライドドアを開け閉めすることができる。

撮影日は雨は降っていなかったはずなのだが、なぜかトランク下が塗れていた。
そしてジメっとした生暖かい水が手に付着した。マフラーの排熱で暖められたんだろうけど…

コラムシフトについて
今となってはほぼ絶滅したコラムシフトが採用されているが、これは個人的には大嫌いだ。
ギコギコと下の方へと押し下げて行ってギアを選ぶのだが、動き方が意味不明で相当ガチャガチャやらないと望むギアに入らない。
しょっちゅう入れ間違えるので、いまどのギアに入ったのか確認して、間違っていたら丁寧に操作して入れ直して…という無駄な手間が生じる。
慣れれば問題ないんだろうけど…
ちなみに先端にはオーバードライブのオフボタンがある。
4速ATなのでO/Dオフボタンを押すと3速に入るのだ。
Dから下げると2速と1速が選択できるためすべてのギアを手動で選べるのだが、このコラムシフトではそうポンポン2速には落とせない。
トランスミッションオイルの劣化が激しいのか、2速に落とした際にかなり大きいシフトショックが生じる。ドンッと叩きつけられるようだ。
二列目の居住性

広々としておりアルファードにも引けを取らないんじゃないかと感じるほど空間が広い。
重役気分でふんぞり返ることもできるぞ。
静粛性とオーディオ
窓の面積が大きいが、意外と窓自体からは風切り音が入ってこない印象。
フロアの遮音はガバガバであり、床下からロードノイズやザラザラとした振動などが入り放題となっている。
うるさくはない程度。
価格相応の最低限である。
ゆったり走る系の車なので充分。
カーオーディオについては意外にも音量が必要十分で低音もドンドン鳴る。
だが高音域の鮮明感は足りず、あくまで音がよく聞けるという程度。
価格やセグメントを踏まえれば上出来である。
実走行インプレッション
取り回し
車体サイズが小さく、周辺視界が広く、視点も高いため運転はむちゃくちゃラクだ。
テスラのようにダッシュボードが低く、見かけ以上に車が大きく見える。
バックカメラが無いこととコラムシフトであることが難点である。
パワートレイン
1速でアクセルを踏み込むとクウォ~~ン↑↑という音を立てながら3000回転くらいまで登ってからようやく2速にシフトアップされる。
4速ATならではの古典的で懐かしい動作だ。
強めに踏み込んでエンジンをうならせると、情動的な音が響く。
しかし加速は遅い。
上り坂では全く速度が乗って行かない。

スピードを出していっても意外にも風に振られないため、新東名でも130km/hくらいはフッツーに流せそうである。
背の高い軽自動車と比べてボディーも足回りも段違いに強靭であり、安定性・安心感のメリットがしっかりと得られる。
乗り心地
段差を超えるとバタバタと言う。
型落ちオープンカーのようなボディーがきしむ音がしてくる。
ボディ剛性自体は悪くないと思うのだが、軽さと年代の古さゆえ金属が弱っている感じがする。
しっかりとダンパーをストロークさせるため、意外にも乗り心地は乗用車的で良い。
15万キロ+約15年の劣化があるはずなのだが、足回りの調子も良いのだ。

しかし一定以上の衝撃が来た際に強い振動を車体と体に受けてしまう。
ある程度スピードを出すと足のストロークだけで段差の衝撃を打ち消するような動きまでやってくれる。
全体的な乗り心地は価格や車を考えると、むしろ良好であるとさえ言えてしまうほど。
しかし路面が荒れているところではダンダンと飛び跳ねてしまって全く安定しない。
ドイツ車に乗り慣れていると天と地の差を感じてしまう。
ハンドリング・ドライバビリティ
ハンドル自体は軽くてゆったりとしているが、感触がないわけではない。
軽さ優先なのかハンドルの要求回転量は気持ち多め。すぐ慣れる。
さて旋回初期からロールを抑え込んでくれるため、意外と旋回における安定性は高い。

カーブの手前の方からハンドルを切ってロールを収束させ、小柄な車体を活かして車線幅の端から端まで使い、見かけよりも長い時間をかけてカーブを曲がって行くようにすると高いスピードを維持したまま安定して曲がって行ける。
感覚的にはバイクのコーナリングに近い。
段差を越えてもハンドルは少しだけブレる程度であり、意外にも高負荷コーナリングにおける安定性も高いぞ。
足回りもバタつかず、むしろ四輪の足回りをしっかりと動かして能動的に路面を捉えながら曲がって行く印象だ。
ちゃんと作られていると感じる。
旋回中の動きとしてはフロントのスタビライザーを強くして突っ張らせる定番のアンダーステアである。
フロントのアウト側のタイヤがねじれて旋回を拒否するような安定性優先の挙動が出るが、持ち前の軽さのおかげでコーナリングの懐は深い。
視点の高さとハンドルの軽さゆえに高重心のフラフラ感を感じがちだが、その特性を踏まえつつ穏やかに動かすと、身をゆだねていける懐の深さを感じる。
このスリルと安定性の両立はジェットコースターにでも乗っているようなアトラクション気分をもたらしてくれる。
これをただの「つまらない車」と決めつけて唾棄するにはあまりにももったいない。
ブレーキについても意外としっかりとしており、軽さも活かしてしっかりと車体を止めてくれる。
また4速ATゆえオーバードライブオフが3速への強制シフトダウンとなるため、ちょっとしたシフトダウンとエンジンブレーキに便利だ。
価格・グレード・諸元など
どうやらこのポルテは最終型の1つ前であったようだ。

2009年式の「130i HIDセレクション」。
新車価格は142万円。
一応は特別仕様車らしい。
87馬力、1040kgしかないこと、4速ATであることなどが注目点だ。
また1690mmという幅の細さも乗りやすさに貢献している。
1.5リッターエンジンを選べば105馬力まで上がる。
| トヨタ ポルテ 1.3 130i(2004年式)諸元表 | |
|---|---|
| 型式 | CBA-NNP10 |
| 駆動方式 | FF(前輪駆動) |
| ドア数 | 3ドア(助手席側スライドドア) |
| 定員 | 5名 |
| 全長×全幅×全高 | 3990mm × 1690mm × 1720mm |
| ホイールベース | 2600mm |
| 車両重量 | 1040kg |
| エンジン型式 | 2NZ-FE |
| 排気量 | 1298cc |
| 最高出力 | 87ps(64kW)/6000rpm |
| 最大トルク | 12.3kg・m(121Nm)/4400rpm |
| トランスミッション | 4速AT |
| 燃費(10・15モード) | 18.0km/L |
| 使用燃料 | レギュラーガソリン |
| タンク容量 | 45L |
| 新車価格 | 1,365,000円(当時) |
特別仕様車「HID セレクション」って何?
「130i HIDセレクション」は、初代トヨタ・ポルテ(NNP10型)に設定された特別仕様車で、ベースモデル「130i(1.3L FF)」に快適装備や人気装備を加えたお買い得モデルです。
以下に、主な「特別仕様」の内容をまとめます。
✅ ポルテ 130i HIDセレクションの特別装備内容(主な違い)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| HIDヘッドランプ | 通常のハロゲンからディスチャージ(HID)ヘッドランプにグレードアップ。夜間の視認性向上と高級感が特徴。 |
| UVカット・プライバシーガラス(リヤ) | 後席サイド・リアウィンドウにスモーク+UVカット機能付きガラスを採用。日差し対策・プライバシー性向上。 |
| 電動格納式リモコンドアミラー | 手動式から電動格納&リモコン操作対応のミラーへ。狭い駐車場や洗車時に便利。 |
| キーレスエントリー(標準化) | ベースグレードではオプションのことが多いが、標準装備に。日常の使い勝手向上。 |
| 内装色・シート地の特別仕様 | 一部の「HIDセレクション」では、内装の色味やシート地がベースモデルと異なる仕様も存在(年式や仕様による)。 |
🔧 ベース車との違いまとめ
| 装備項目 | 130i(ベース) | 130i HIDセレクション |
|---|---|---|
| ヘッドライト | ハロゲン | HID(ディスチャージ) |
| リヤガラス | 通常 | UVカット+プライバシー |
| ドアミラー | 手動格納 | 電動格納+リモコン操作 |
| キーレスエントリー | オプション | 標準装備 |
| 内装カラー | 標準内装 | 特別仕様(年式依存) |
まとめ
猿投グリーンロードと周辺の峠道は険しい。
どんな怖い思いをするんだろうと思っていたら、むちゃくちゃ楽しかった。
入り口から早めに旋回姿勢を作って、タイヤをヨコ方向に使う時間を長く取ると曲がりやすい。
余談であるが、右足がひどい筋肉痛になった。
おそらくエンジンの振動を直に喰らい続けたからだ。
コラムシフトは信号待ち中にニュートラルに入れるのが簡単ではなく、停止中もエンジンの振動が足に直に入る。
クルコンもブレーキホールドもない。
また車中泊的な使い方をするには前後方向への長さが足りない。
やはりご年配の方がゆったり便利に乗るクルマなのだ。

↑帰り道で食べた松屋の牛焼肉定食。数か月間ずーっと食べてみたかった。
イメージ以上に焼肉しており、焼かれた肉の香ばしさが口内に広がる。
24時間いつでもちょっとした一人焼肉が1000円で楽しめると考えるとお得だ。