【VWポロ】このスリルを”欠陥”と呼ぶのは勿体ない!1.1トンでドイツ車をやるとはこういうこと【試乗インプレション】#116台目

現代車の中で、「ホットハッチ」という言葉にベストマッチな車があるとするならフォルクスワーゲンのポロだろう。

冒頭のまとめ

身軽な車体をターボで鋭く加速させ、旋回もどこかフラフラでドイツ車相当の走りには常にスリルが伴う。

走行安定自体はドイツ車と呼ぶのに必要充分なものが持たされており、挙動の安定性も高い。

しかしスピードを上げると途端に怖くなる。

全体的な走りの詰めの甘さが独特なスリル、軽快感をもたらしており、危険を感じつつも気持ちよく駆け抜けていくような走りが楽しめるようになっている。

これはいつもの私の感覚では「安定性に欠ける」ということになるが、その一言で片付けるには惜しい領域を持っているのだ。

外観・デザイン

フォルクスワーゲンらしいスッキリとしたクリーンでスタイリッシュなデザイン。

コンパクトだが安っぽかったり頼りないことはない。

内装

フォルクスワーゲンらしい、高級感は希薄だが効果的に直線で構成された車内。

シンプルなストレート式シフト。マニュアルレンジとスポーツモードが付く。

サイドブレーキは手で引くタイプ。

二列目の居住性

いかにも小さそうな見かけに反して、意外にもスペースに不満はない。

しかしシートの角度が立っていて、あまり安らぐという感じではない。

またドアの開口部の前後が狭くて出る時につっかえる。

流石に前後長の短さの弊害が出ている。

近場で乗る程度なら「意外とスペースあるじゃん」となるが、長い時間座るとなるとしんどそうだ。

静粛性とオーディオ

100km/hも出せばロードノイズはそこそこ大きくなってくる。

タイヤハウスからも窓からも、ゴーと言う音が入ってくる。

オーディオは必要十分にいいが、音の鮮明さに少し濁りを感じる。

イコライザーを色々と調整しても、低音の叩き付けがクドくなる程度で音の鮮明さがあまり改善されなかった。

ハードウェアのスペックに限界があるのだろう。

とはいっても必要充分だと言いたいのだが、私の感覚だと常に「なんか足りねぇよなぁ」感を感じながら走ることになる。

フォルクスワーゲン車の中でもベーシック寄りのクルマなので致し方ないか。

実走行インプレッション

取り回し

車体が非常に小さいので特に苦労することはない。秒速で慣れる。

国産のコンパクトカーとも運転感覚が似ており、ドイツ車の中でも特に乗りやすい。

アクセルやブレーキがドカンと来ることもない。

アラウンドビューカメラはないが、車体が小さく小回り性能も良好なので問題はない。

パワートレイン

排気量自体は1リッターしかないが、必要充分な加速力を出してくれる。

120km/hあたりから上の伸びは非常に悪いが。

アイドリング時にはペダルにエンジンの振動がブルブルと伝わってくる。

高級車っぽい組みつけではない。

低速から出る最大トルクが長い時間に渡って持続し続けるタイプのドイツ車らしいターボ。

踏み込んだ先での出足がかなり速く、100馬力未満とは到底思えないほど鋭い加速をする。

しかしそれは100km/h程度まで。

踏み続け合うと所詮は1リッター。一気に伸び悩む。

直3の音は美しく、官能的なエンジンを奏でて元気よく加速していく。

市街地ではアクセルを踏み込んでも明らかに出足が遅れる。

そのままでは交通の流れに置いて行かれるので、これを防ぐためにもっと踏むこととなる。

キックダウンが入ってシフトダウンされ、ブースト圧も上がってしまう。

スロコンで強引に演出するエコでは加速力が足りないし、毎回加速の遅れを感じながら奥まで踏み込むのもかったるいので結局Sモードで乗るハメになる。

エコってなんだろう…

乗り心地

40km/h程度の街乗り領域でもドイツ車らしい乗り味を感じられる。

ある程度ストロークしつつもコトっと後揺れを消すサスペンションは街中でも快適。

ボディーのガッチリ感をしっかり乗り手に伝えてくるものだが、その入力にしんどさを感じることは無い。

スピードを上げていくとアシの上下だけで衝撃を打ち消す動きを見せてくれるが、それ以上にボディに入力が来た際の飛び上がりが酷い。

ハンドリング・ドライバビリティ

前が重いFFゆえ、ハンドルを切るとまずフロントのアウト側が押し付けられる。

この動きのまま切れ込んでいく。

さらにハンドルを切りましていくと足回りを捻るようにしながら安定させて、スピンなどの危険な挙動が生じないように安定させる。

ハンドルを切ってから姿勢が収束するまでの間の間を上手く使ってターンインすると、カーブの内側へと吹っ飛ぶように曲がっていく感覚を味わうことができ、これが結構スリリングかつ身軽で楽しい。

しかし段差で跳ねたり路面のうねりで揺さぶられたりする動きが大きく、ブレーキを踏んでもフロントのタイヤグリップに余裕がなく止まれる感が弱い。

首都高のカーブに飛ばした状態で突っ込んでいく場面でも、車重のわりにブレーキに余裕がない。

タイヤのグリップ限界があまり高くないようだ。

強めに加速して段差を超えた際も同じ動きが出る。

小ささと軽さが安定性においてデメリットとなっている。

それを「スリリングでたのしい」とエンジョイしていくか、「危なくて攻めれない」と取るか。

この乗り味で後者は少しもったいない。

一旦横方向に旋回するモードに入れば、フロントのアウト側のタイヤのグリップで強引に遠心力に抗って曲がっていく。

少しでも元気よく首都高を走っていればタイヤから悲鳴が聞こえてくるほど。

ハンドルを切ってから旋回姿勢が出来るまでの間に一呼吸あるため、減速を終えてから旋回姿勢を作ろう。

タイヤは減速と旋回、フェーズを分けて別々に使っていくのが良い。

高速安定性

そもそものパワーが100馬力ない。

加速力はたかが知れているためあまりバカみたいなスピードは出ないが、小柄な車体の割には風に吹かれる感じも段差で吹っ飛ばされるような酷い不安定感もない。

しかし段差を越えた後の抑え込みの過程で上に飛び上がるような動きはあり、「ボディの剛性をギッチギチに上げただけの低価格帯スポーツカー」感が否めない動きがでる。

諸元・グレード・価格など

時間が無かったのでグレードや年式については確認できなかったが、新車価格は230~260万円ほどだ。

95馬力しかない1リッターターボであること、車重が1.1トンしかないことがポイントである。

フォルクスワーゲン・ポロ TSI 主要諸元
型式3BA-AWDKL
全長×全幅×全高4,060mm × 1,750mm × 1,450mm
ホイールベース2,550mm
車両重量1,110kg
乗車定員5名
エンジン直列3気筒DOHCインタークーラー付ターボ(CHZ型)
総排気量999cc
最高出力95PS(70kW)/5,000~5,500rpm
最大トルク175Nm/2,000~3,500rpm
トランスミッション7速DSG(デュアルクラッチ)
駆動方式前輪駆動(FF)
燃料無鉛プレミアムガソリン
燃料消費率(WLTCモード)19.1km/L
使用タイヤサイズ185/65 R15
最小回転半径5.1m

グレード構成と価格帯

フォルクスワーゲン・ポロ(AW型)は、日本市場で主に「TSIトレンドライン」「TSIコンフォートライン」「TSIハイライン」の3つの基本グレードが展開されました。価格帯はおおよそ以下の通りです(発売当時の新車価格・税込):

  • TSIトレンドライン: 約218万円〜
  • TSIコンフォートライン: 約249万円〜
  • TSIハイライン: 約275万円〜

トレンドライン:必要最低限の実用装備

ベースグレードとなるTSIトレンドラインは、コストを抑えながらも基本的な安全装備(自動ブレーキ、クルーズコントロールなど)を標準搭載。ホイールは鉄製+樹脂キャップ、エアコンはマニュアル式、スマートキーやフォグランプも省略されています。価格重視の実用志向向けです。

コンフォートライン:装備と快適性のバランス型

TSIコンフォートラインは、日本での主力グレード。アルミホイール(15インチ)、オートエアコン、スマートキー、Composition Mediaインフォテインメントなどが装備され、日常使いで不足のない快適性を実現しています。コストと装備のバランスがよく、最も人気があります。

ハイライン:質感と装備を重視した上級仕様

最上級グレードのTSIハイラインは、内外装の質感と先進装備が大幅に向上します。LEDテールランプやクローム加飾、本革巻きステアリング、シートヒーター、16インチ専用アルミホイールなどが特徴です。より快適でプレミアムな小型車を求める層に適しています。

装備差のまとめ

トレンドラインは「基本だけ」、コンフォートラインは「普段使いにちょうど良い」、ハイラインは「ワンクラス上の質感」という住み分けになっており、走行性能自体は全グレードで大きな差はありません。選ぶポイントは装備と見た目です。

まとめ

どこかに感じる昔のホットハッチ感。

はっきりいうと危ないだけで別に優れているわけではないんだけど、そこにはスリリングに駆け抜けていく独特な楽しい世界がある。

それは現代では当たり前となった、快適性やアシのストローク、重厚感やそこそこな加速力を兼ね備える車たちでは味わえないもの。

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