【ムーブキャンバス】見た目と価格の割に過剰装備!だが走りはスカスカか…【試乗インプレッション】#118台目

かわいらしい見た目が魅力のムーブキャンバス。

そんな見た目全振り系軽自動車はどんな乗り味なのか確かめたところ、値段に対して過剰な装備に驚かされた。

肝心の走りについては思うところがあり…

冒頭のまとめ

価格のわりに過剰なサービスを誇る、かわいい顔した優秀なシティコミューターだ。

感覚的にはテスラ並みに大きく感じるディスプレイオーディオや各種便利装備、電熱カップホルダーなど200万円以下とは思えないおもてなしに溢れている。

しかし走行性能については「どうせ出しても80km/hちょい程度で流す程度だからこれで問題ないや」という程度。

意外とガッチリとしたボディーやほどほどにストロークして衝撃を吸収するダンパー、ターボによる必要充分な加速力など良好な走行性能を持つが無理ができない。

しかし少しでも負荷をかけると加速力も衝撃吸収もハンドリングにも甘いところが出てくる。

緊急回避や凍結路のコーナリングでも、抑えて走れば事故る危険は特にないよというレベル。

あくまでほどほどに流すのが大前提。

ガチって飛ばそうとはせず、かわいい見た目と過剰な装備を楽しもう。

外観・デザイン

かわいい。

上位グレードに付くLEDヘッドライトは100万円台の軽自動車であることを忘れさせる先進性を与えてくれる。見た目としても性能としても軽自動車の中では最高水準である。

後ろ姿もかわいい。

内装・車内装備

身分不相応だと感じるほどの過剰サービスに驚くばかりだ。

大きな大きなディスプレイに電動パーキング、オートエアコンにシートヒーターにゴミ箱用スペース、保温機能付きカップホルダーまで付いてくる。

DNGAプラットフォームの恩恵を受けてボディーも意外にガッチリしており、ドアを閉めた際の重厚感あるサウンドも頼もしい。

(だからといって走行性能が高いわけではないのだが…)

ターボの方の最上位グレードにはクルコンが標準装備されるようだ。

静粛性とオーディオ

値段のわりに異様に装備が良いと言ったが、静粛性とスピーカー性能については例外だ。

どちらも私の感覚だと不満である。

勘違いしないで欲しいのは、画面が大きなディスプレイオーディオ、これに不満はない。

問題なのはハードウェア。スピーカーの能力と遮音材の面積だ。

まず静粛性についてだが、走行中はフロアは常に振動している感じがある。

遮音はあくまでほどほどというレベルで、街乗り領域ではある程度の静かさは感じられる。

しかし全体的に音が入ってきがちで価格相応だ。悪いって言うほどではないけど。

スピーカーについては音量も鮮明さも不足している。

そもそも音量が足りない。

70km/hくらいでトンネルに入って音量を上げても、欲しいところの半分くらいの音量レベルで既にマックス。

風切り音にかき消されて、音楽はそこそこ聞けるというレベルにとどまる。

音量を上げても鮮明さが足りず、常にぼやけたような音楽となってしまう。

イコライザーやバランスフェーダーなどのセッティングはやけに豪華だが、肝心のスピーカーがショボいのだ。

つまり、スピーカー交換と適切なデッドニングを行えば大きく環境を改善できる可能性がある。

その手のカスタムを楽しみたいユーザーは買った後の楽しみが深くなるぞ。

中途半端によく聞けるものではなくて、常にぼやけるようなレベルなんだから交換しても全く惜しくないし。

二列目の居住性

思っている以上にスペースが広く、クッション性のある布シートと合わせて驚きの座り心地。

価格やサイズから全く期待していなかったため、度肝を抜かれた気分だった。

可能な限り薄くした側面パネルやテールゲートに当たるスレスレまで下げて配置したリアシートが大きな車内空間をもたらしているようだ。

二列目にはリクライニングまで付く。

実走行インプレッション

取り回し

元々の優秀なサイズ感や広い視界に合わせて、大柄なディスプレイオーディオにはアラウンドビューモニターまで付いてくる。

ステアリングのボタンを押せば走行中でも両方のタイヤの足元を照らすカメラに瞬時に切り替わるため、ただですら細いボディーがすれ違いをさらに簡単にさせる。

もはや過剰装備である。

小回り性能も抜群であり、街中の乗りやすさに特化している。

パワートレイン

私が乗ったモデルは自然吸気だったが、ターボだと思っていた。

それだけ出足はスイスイなのだ。

軽さのおかげか。

少し踏み込むだけで必要充分な加速力が供給される。

街乗りや流す程度の走りでは力不足を感じることはほとんどない。

しかし急な上り坂で踏み込んでも速度が増えていかない。

ただエンジン回転がレッドゾーンに張り付くばかりで全く加速がついてこない。

車速が増えていかない。

山間部の高速道路の上り坂では追い越し車線に行っても抜けないんじゃないかというレベル。

パワーモードで踏むと元気の良いエンジンとともに勢いよく加速していくが、思っている以上に遅い。

合流は何とか危険なくこなせるという程度。 

パワーモードでは少し踏んだだけでグイグイ前に出るため、ちょっとした巡航程度では遅さを感じづらく気持ちが良い。

しかし踏み込むと全く速度が増えないのだ。

ブレーキについては電動車時代に乗るには怖いレベルだ。

結構奥の方まで踏まないと制動力が立ち上がって来ない。

日産のe-powerや他社EVなどがワンペダルドライブすら取り入れている中でのこのスカスカ感はもはや恐怖である。

乗り心地

乗り心地は乗用車的で、ダンパーを動かしながらしっかりと揺れを吸収しに行ってくれる動きがある。

全体的に軽いのかバタバタとしがちだが、乗り心地はそこまで悪くない。

街乗りのちょっとした段差くらいならダンパーがほどほどに吸収してくれるため無難に乗れるぞ。

しかし一定以上の衝撃に対しての吸収性はよろしくなく、強めの段差が来るたびに体やボディーが持っていかれる感じがある。

走行安定性・ドライバビリティ

ハンドリングは軽さ最優先で街中ではスカスカ感が強い。

しかしダメかと言うとそういうわけではなく、直進性やコントロール性は犠牲にしていない感じがする。

ハンドルを回していく操作に対して乗り物の動きは遅れ気味だが、ジムニーほどの遅れはなく、少しゆったりしているかなと感じる程度。

タントほど高くない全高やDNGAプラットフォームのガッチリ感から高速安定性に多少の期待をしていたが、悪い方向で裏切られた。

法定速度のプラス20km/hでも出したくないようなレベルの安定性だ。

新東名を除けば、走行スピードはせいぜい85m/hくらいだろう。

というわけで高速域については今回はノーコメント。

斜めに段差を飛び越えるような場面では、小さいタイヤの影響か、見かけに反して高い重心のせいなのか、グッと車体の上側が持っていかれてしまう。

その際の動きは完全に高重心なハイトワゴンであり、軽さも安定性を悪化させている。

またスッカスカなハンドルが段差を越えるたびに暴れがちで、路面が荒れたワインディングではどこにフッ飛んでいくか分からない感が70km/h台から出る。

この乗り味で飛ばすのは無理だ。

ハンドルの回し心地は軽く、ゆったりと回っていく。

このクルマのハンドリング特性は非常に珍しい。

同じようにハンドルを回しても状況によってクルマの動き方が違うのだ。

あるときはハンドルを回しても全くクルマが旋回に移行せず、またある時は急激に真横に吹っ飛んでいく。

フロントタイヤがキーと悲鳴を上げるばかりで、乗り物の挙動として旋回に移っていかないような動きをすることがある。

これはどういうことか自分なりに分析した結果、ほんの少しでも前後方向への荷重があると旋回特性が急激に変化するという結論に達した。

前後方向への荷重やタイヤ負荷がゼロの状態であれば、急ハンドルを切ると身軽に吹っ飛んでいくぞ。

このクルマのコーナリング特性としては、フロントのスタビライザーを強めに効かせてロールを抑え込み、とりあえずボディーは傾かせない。

クルマが曲がって行きたがらないように感じるレベルでアンダーにして、前の二輪のタイヤグリップだけで遠心力に抗って曲がって行く。

軽さと全長の短さがあるため、逆に完全にフリーの状態でヨコ方向への入力を与えれば身軽に曲がって行く。

その際の動きには著しい遅れは感じられない。

私の感覚では一癖あると感じたが、万人向けのクルマとして危険というわけではない。

左からシカや歩行者が飛び出してきた際の緊急回避の急ハンドルを切っても、凍結路で急にスピンしそうになっても、事故るような挙動は出ないだろう。

飛ばすような人が買うクルマではないが、そういうペースで走っても付いてきてくれるようなタイプのクルマではない。

まとめ

むかし走り屋が何回転も転がるような事故を起こし、私も冬の時期に一回スピンし、シカが1往復に2回は道路に出てくるような悪魔の区間でこのクルマをテストしたが、かなりクセのあるハンドリング特性だと感じた。

ギッチギチのアンダーステアで曲げさせずに安定を保っているのかと思いきや、突然クイックに曲がり出してくれることもあるんだから。

個人的な感覚としては走行性能は現行型のタントカスタムとどっこいどっこいか、なんならこっちのほうが不安定感は強いレベルだった。

価格の割に過剰装備で、無理せず走るクルマとしては随一のコスパだ。

みんなはあんまり過激なことは考えず、素直にかわいい見た目と最高の装備をゆったり楽しんでほしい。

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