【X1(U11)】極上の街乗りカーへの進化【sDrive 18i M Sport 試乗インプレション BMW】#115台目

冒頭のまとめ

現代のBMWが持つ芸術的な内外装と装備を手に入れ、エントリーモデルとしては十二分な質感を誇る乗りやすいサイズのSUVに深化した。

二列目も広くて大人が乗っても快適であり、オーディオや乗り心地にも特段と大きな弱点はない。

全体的な完成度は高いが、SUVゆえの腰高なグラつく動きを払拭できていない。

ボディの剛性感を感じさせる足回りは荒れた路面に追従させるためのストロークが不足しており、段差で跳ねて路面との接地を失っているかのようだ。

攻め立てれば攻め立てるほど粗が目立ってくるような特性となっており、「基本的に穏やかに流してて、 たまにちょっとスピード出す程度」の想定である。

つまり街乗りSUVとしての適性が高いわけだが、トヨタ系のハイブリッドと比べると明らかに伸び悩む燃費やハイオク指定が玉に瑕。

外装・デザイン

芸術性と彫刻のようなゴテゴテ感と先進性をアピールしつつも、オラついたイメージを抑えたデザイン。

特にリアのテールランプまわりの造形が凝ってるので好みが分かれそうだ。

フロントのグリルは近くで見るとプラスチック感があって安っぽいが、グリルの奥に透ける補強バーやエンジンルームに這わされた鉄のブレースには頼もしさを感じる。

実際にボディーと足回りは強靭だ。

リアエンドはお気持ち程度にクーペのように寝ているが、スピードを出すと普通に後方にできる乱気流に引っ張られるため空力特性はよろしくない。

ホイールはMのロゴがチラっと入っており、インチサイズは気持ち小さいが恰好はよい。

またテールランプの内部も凝った形状となっており、現行型BMWの芸術性が感じ取れる。

内装

個人的にはドイツ陣営の中ではBMWが最も使い勝手・高級感・機能などの総合点が高いと感じている。

スイッチ類が減って内装は一気にスッキリした割に、「不便になった」だとか「必要な機能が減った」という印象はない。

インフォシステムも内装も芸術性と使い勝手を兼ね備えており、簡素化とコストダウンがあまり結び付かない。

タッチ前提のセンターモニターは指で操作するのにちょうどいい位置にあり、解像度も高く、画質も鮮明で走行中の操作でもストレスが少ない。

カーナビの使い勝手も良好。

アプリ一覧から特定の機能を探すのは小さくて細かくて面倒くさいが、ショートカット機能を適宜使おう。

そもそも複雑な操作を走行中に行うべきではないし。

メルセデスのMBUXには1歩譲るが、使いやすさや機能は優秀なシステムだと個人的には思う。

しかし、パワーモニターやカスタマイズ性などが少々乏しい。

エントリーモデルなので仕方ないか。

スクリーン右下に常時エアコンの温度設定メニューが出ており、オートエアコンと組み合わせればたまにタップして設定温度を変えるだけで快適な車内も作れる。

宇宙船のような先進性を感じる浮いたセンターコンソール。

ハザードやシフトなどが近場に配置される。

走行モードやクルコンの車間設定などもワンタッチでアクセスできるため、スカスカに見えて実は機能性も高い。

クルコンの操作は少ないボタンに統合され、モード切り替えや復帰がスムーズ。

時間がたって洗練されたんだなぁと感じる。

二列目の居住性

二列目はサイズの割にやけに広い。

スペースもあり視界も広くて快適。

ただセンターアームレストとドアのアームレストは高さが合わないため、両方出すと車両中央側に傾くような姿勢となってしまう。

静粛性・オーディオ

優秀な静粛性を持っており、特にフロアの遮音がしっかり行われている。

ガラスについても防音性が高いものが採用されており、全体的に外から入ってくる騒音のエネルギーが小さい。

スピードを出してもあまりロードノイズを感じない。

オーディオについても良好で、低音高音ともに鮮明でスマホのスピーカーでは聞き取れないような音も鳴る。

スピーカーの数は少ないようだが音楽を楽しむうえで基本的に不満はない。

Apple car playの使用中はイコライザー・バランスフェーダー設定へのアクセス性が悪化する。

基本的に再生中の楽曲の画面からイコライザー設定に行けるものだが、Apple car play使用中はそれ専用のアプリを見つけ出さないといけない。

実走行インプレッション

取り回し

車体がそこまで大きくなく、形状自体もシンプルな箱型なので乗りやすい。

狭い峠道でも手狭な駐車場でもスッと収まる。

アラウンドビューカメラシステムにも変なクセがない。

バックギアでもブレーキホールドが作動するし、電動パーキングブレーキを切らずにギアを入れるとアクセルを踏んでワンテンポ経ってから車が動くことになる。

このへんの動作は頭に入れておかないと戸惑う。

パワートレイン

ドイツ車らしい低回転域のトルク重視のターボとなっており、街乗り・普段乗りにおいて全く不足することを感じない。

踏めば直6に匹敵するほど気持ちのよいエンジン音が響いてくる。

馬力は150程度であるが、料金所のような低速域からの踏み込みでは瞬間的にホイールスピンしそうになるほどの加速力を発する。

追い越し車線でのスピードの乗りも良い。

だが箱根ターンパイクの登りベタ踏みすると伸び悩む。

数値よりは速いが、そうはいっても200馬力以下である。

エフィシェントモードではアクセル開度を指示するモニターや回生力、セーブした航続距離の表示が出る。アクセルを抜いてダラダラ流していると、ニュートラルに入れてクラッチを切って空走させるような動作もする。

加速は遅くなるが、BMW流のエコを感じられるので面白いモードだ。

新型プリウスと比べると加速力の割に燃費が良いわけではないし、ハイオク指定も財布に厳しいが、ドイツ車の経済性も年々進化しているのだ。

エンジンブレーキの効きは悪い。

乗り心地

街乗りSUVとして良好な乗り心地を持っている。

少しストロークさせた後に、圧倒的なボディ剛性を活かしてバスっと後揺れを打ち消す。

強靭なボディーを感じさせる乗り心地で、良くも悪くもガッチリ感がある。

ほどほどのスピードで段差を越えれば足の伸び縮みで衝撃を打ち消しに行くような動きも感じられるが、硬すぎて飛び上がるような動きが出ることもある。

ハンドリング

あまり追い込まずに程々のペースで楽しむのがちょうどよい。

急激なハンドル操作を避けて、路面が荒れているところでは無理をせず、ほどほどの負荷で攻め込んでいけば強靭なシャシーを味わることが可能だ。

高い視点から感覚の掴みやすい箱型ボディーを自由自在に楽しめるため、箱根のような狭い峠道でもかなり楽しめる。 

コンパクトな車体サイズは、一般的な高級SUVではそもそもレーン内に収まらないような状況での走行でこそ真価を発揮するだろう。

「日々の通勤でちょっと一山超える」というのが最も楽しいところかもしれない。

タイヤの表面は硬いがグリップ自体はしてくれる。

これはあくまで抑えて乗った場合の話であり、段差や強い負荷などを与えた際には評価が180度変わる。

まずハンドルを切った際にグラッと来る感覚が酷く、どうしても腰高感がある。

路面が荒れた日本で飛ばすのには適していない。

旋回中に段差を超えた際もハンドルがガタッと瞬間的に暴れる。

またタイヤが路面にうまく接地してくれずに滑りそうになる。

特に高速コーナリング中ではクルマと路面が繋がる感覚が薄れていくため飛ばしていてもあまり安心感がない。

ハッキリ言うとこの辺の安定性・信頼感はトヨタのSUV以下だと感じてしまった。

フラつかせないよう穏やかに旋回へと入り、一旦ロールを収束させて旋回姿勢を作ってしまえば強靭なシャーシーで曲がっていってくれるが、その動きは横置きFFの域を出ない。

特段と高くはない加速性能と合わせて、「BMW」のクルマへの期待値を下回ってくる。

試乗車は280kpa近い空気圧となっており、これは推奨値を大きく上回るものである。

高速域

上下方向へのフワつきを抑え込み、路面に吸い付くような安定性は発揮してくれる。

車体そのものの直進も高い。

しかし他のドイツ車は200km/h以上出しても問題なさそうな安定感を持っているが、本車はせいぜい160km/h程度で流すのが関の山といった程度であった。

段差を越えるたびに跳ねるような動きが出るため、穏やかなカーブやただの直線でも全く油断ができない。

ハンドルを瞬間的にガタっと持って行かれるし、跳ねて路面との接地を失う。

また風に流されるような動きも強く、相当持って行かれている。

パワーが無いから減衰を調整する機能が要らない。

減衰調整ができないから固定減衰でマックススピードで安定させる必要がある。

それで乗り心地が犠牲になる。跳ねる。

BMWの318iMスポと同じ道を辿っている。

スペック・グレード・価格など

私が乗ったのはBMW X1 sDrive 18i M Sportである。

項目スペック
モデル名BMW X1 sDrive 18i M Sport
全長×全幅×全高4,500mm × 1,845mm × 1,640mm
ホイールベース2,690mm
車両重量1,540kg
乗車定員5名
エンジン1.5L 直列3気筒ターボ
最高出力100kW(136PS)/4,500-6,500rpm
最大トルク230Nm/1,500-4,000rpm
トランスミッション7速DCT
駆動方式前輪駆動(FF)
燃料消費率(WLTC)14.3km/L
使用燃料無鉛プレミアムガソリン
燃料タンク容量54L
タイヤサイズ225/50R18(標準)
新車価格(目安)約530万円(税込)

BMW X1(U11型)グレード別解説:価格・性能・装備の違いを徹底比較

BMW X1(U11型、2023年以降)は、プレミアムコンパクトSUVの中でも完成度の高いモデルとして注目されています。日本市場では、実用重視からスポーツ指向まで幅広いグレードが展開されており、2024年にはハイパフォーマンスモデルM35i xDriveも追加されました。


🟦 sDrive 18i

扱いやすさと価格のバランスが取れたFFモデル

  • 価格:約479万円(税込)
  • 駆動方式:FF(前輪駆動)
  • エンジン:1.5L直列3気筒ターボ(136PS / 230Nm)
  • トランスミッション:7速DCT
  • 燃費(WLTC):約14.3km/L

都市部中心の使い方に適した軽快なモデル。デジタルコックピットなど装備も十分で、価格も抑えられたバランス型です。


🟦 sDrive 18i M Sport

デザインと走行性能の両立を図ったFFスポーツ仕様

  • 価格:約530万円(税込)
  • 基本構成:sDrive 18iと共通(FF / 136PS)
  • 専用装備:Mエアロダイナミクス、スポーツシート、Mステアリング、専用サスペンションなど

ドライビングフィールや見た目にこだわりたいユーザーに人気。足回りもしっかり引き締められており、ワインディングも得意です。


🟦 xDrive 20d xLine / M Sport

ディーゼル×4WDの万能グレード。郊外や雪道に最適

  • 価格:xLine:約579万円 / M Sport:約610万円(税込)
  • 駆動方式:xDrive(4WD)
  • エンジン:2.0L直列4気筒ディーゼル(150PS / 360Nm)
  • 燃費(WLTC):約17.3km/L

静粛で粘り強いディーゼルエンジンに、電子制御4WDを組み合わせた万能仕様。ロングツーリングや雪国ユーザーに向いています。


🟥 M35i xDrive

Mの名を冠する最速のX1。もはやホットハッチ超え

  • 価格:約719万円(税込)
  • 駆動方式:xDrive(4WD)
  • エンジン:2.0L直列4気筒ターボ(最高出力317PS / 最大トルク400Nm)
  • 0-100km/h加速:5.4秒(欧州参考値)
  • トランスミッション:7速DCT(スポーツ設定)
  • 特別装備:Mスポーツディファレンシャル、Mコンパウンドブレーキ、19インチホイール、4本出しマフラー、専用エクステリア、強化シャシー

M35iは通常の「M Sport」より格段にハードな味付けで、走行性能はX1というよりコンパクトなMモデルの領域。高回転までよく伸びるエンジンと俊敏な足回りで、スポーツカー顔負けのダイナミクスを誇ります。


✅ X1の選び方早見表

グレード駆動エンジン出力燃費価格(税込)特徴
sDrive 18iFF1.5Lガソリン136PS/230Nm14.3km/L約479万円軽快で経済的、街乗り中心に最適
sDrive 18i M SportFF同上同上同上約530万円デザインと走りを両立
xDrive 20d xLine4WD2.0Lディーゼル150PS/360Nm17.3km/L約579万円実用性と経済性のバランスが秀逸
xDrive 20d M Sport4WD同上同上同上約610万円ディーゼル×スポーツの上級仕様
M35i xDrive4WD2.0Lガソリンターボ317PS/400Nm非公開約719万円圧倒的パフォーマンス。Mモデル級

まとめ

見かけの質感は劇的に向上し、極上の運転体験を楽しめるようになった。

運転フィーリングについてはハンドルあばれや急ハンドル時のグラつきが非常に気になるが、ドイツ車らしいトルク特性や足回りの動き、ガッチリしたボディを味わえる。

個人的にあの安定性にはガッカリしたが、街乗り主体の移動グルマとしては素晴らしい仕上がりだ。

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