それは「東京から名古屋まで、中央道ルートで下道で帰る」という地獄のドライブを行っていた最中であった。
実は上記の動画でも該当区間を走っている動画がハッキリと映っているのだが、そのプリウスが出てきたのは国道152号線のヒルクライムを行っていたところだ。
なお、この話は実話である。その証拠に、遭遇したのは下記の動画の撮影中であったし、具体的な場所も地図で示すことが出来る。
この道は諏訪湖のすぐ南東から杖空峠を越え、伊那市の平野へと降りる中央道のショートカットルートになっている。
数十分間の間、信号機のひとつも無い白点線の山道が続くのだ。
それはちょうど、ヒルクライムの最中であった。
私がこの登りに差し掛かったとき、後ろに居たのは準中型トラックだった。
パワーモードでペースを上げ、ガンガンに登っていくのだが、なぜか後ろから、プリウスが追い上げてきたのだ。
なぜだ。隣からクルマが出てくるような民家、脇道は無かった。
ヒルクライム区間はところどころ白点線ではあるが、見通しが悪く直線長も短い。
少なくともプリウス程度の加速力では、安全な追い越しなんか不可能だ。
なぜ後ろに居るのだ…
相手はノーマルの50プリウス。
こっちはGRではあるが、バッテリーのぶん重たいPHVだ。
基本的には不利である。
しかし、雪路面を正しく恐れつつも、タイヤとエンジン性能を使い切りに行くハイペースで走っていたおかげだろうか。
追い上げられることは無かった。
しかし、軽トラに追いついてしまう。
そこそこ速いペースで走っていたが、見通しの良いところに出たので思い切って抜いた。
そのタイミングにおいては、後ろのプリウスは抜いてこなかった。
その後、道は集落に入り、勾配もコーナーもキツくなる。
とてもじゃないが、追い越すことなんて出来ない。
そのまましばらく走り、また地元のクルマに追いつく。
しばらくは僅かな直線とカーブが続く区間であったため、安全には抜けない。
充分な車間距離を取って、普通にエコ運転をしていた。
しかしヤツが追いついてきたのだ。
さすがに焦ったため、また安全が確認できたタイミングで抜く。
その白点線区間でも、プリウスは抜いたクルマの後ろに居た。
しかしまた追いついてきたのである。
そんな恐怖体験を何回か繰り返して、私が西へ向かうために交差点を右折する。
そのとき例のプリウスは後ろに居たが、特別にアクセルを踏み込んでエンジンを唸らせたり、グイグイに車間を詰めてきたり、センターラインに寄ってアピールをしてきたりはせず、フッツーに交差点を直進して行ったのだ…
なにが不気味であったか書いていこう。
安全にトラックを抜いたり、脇から入ってきたり出来ないヒルクライム区間で追い上げてきたこと。
安全に抜けるタイミングが少ない区間で、約3台も抜いたのに事あるごとに追い上げてきたこと。
追い上げてくる最中にバックミラーで監視している限りでは、狂気を感じるような要素がこれっぽっちも無かったこと。
安全に最大限配慮した中で、全てを制御下におけるペースに抑えて走っていたため、私は危険な運転をしていないつもりだ。
しかし、安全にオーバーテイクできるポイントが限られる区間で、常識的に走っていては、まず追いついてこられないはず。
動画では取り上げなかったが、実話である。今でも謎に包まれた怖い話であった。