【エリシオンプレステージ(3.5L)】300馬力のV6のVTECをブチ込んだミニバンの走りとは? #154台目

3.5Lの排気量にV6を組み合わせ、前後ダブルウィッシュボーンが目玉のホンダの走りの大型ミニバンであるエリシオン。

の300馬力に迫る加速力はどうなのか、サスペンションの動作や、目に見えぬ走りはどうなのか徹底的に確かめる。

外観

今となっては古いのが隠し切れないが、最近のなんでもかんでもギラギラさせるようなオラオラな方向性とは少し違う。

単純な投影面積の大きさやメッキ、大きなヘッドライトによるイカツさこそあるが、デザインにはシンプルさもある。

3列目の居住性もしっかり確保した車種というのは往々にしてリアエンドが膨らみがち。

テールランプは光らないところまで赤色で塗りつぶされ、面積の大きさをアピールしている。

エリシオンといえばフロントのダブルウィッシュボーン。

内装

高級車を名乗れるだけの質感を持ち合わせている雄大さを感じる車内空間。

シートのクッション性ひとつとっても快適性を感じる。

サイドブレーキは電動だがブレーキホールドは付かない。

Pレンジに入れても連動しないため、勝手がわかってない人はサイドブレーキを引き忘れることになる。

2列目・3列目

サイズ感ゆえ2列目は広い。

3列目もあんまり窮屈ではなくシートの質感も良いため居住性が良い方である。

ただ同格最強であるアルファードと比べると、スペースの広さでは一歩譲る印象を受ける。

なお3列目は前に動かすかほぼフラットになるまでリクライニングする程度で、左右に跳ね上がったりはしない。

荷物室のスペース効率や積載空間を考えると不便に感じることがありそうだ。

いざとなれば3列目は取っ払えばいいので、これを理由に避ける必要はないが。

静粛性とオーディオ

両者ともに可もなく不可もなくといった程度。

床下からのゴーいうノイズが抑えられているのは感じるが、走行音自体は普通にあるし風切り音もある。 

なおBluetoothオーディオは基本的にないので、AUXケーブルに流し込むデバイスを取り付けるのがオススメだ。

実走行インプレッション

取り回し

4920×1845×1810mmというサイズに最小旋回半径は5.7メートル。

ミニバン特有の背の高さや表面積の大きさゆえ慣れるまではかなりデカく感じるが、丁寧に乗ってやれば意外と苦労することはない。

アルファードとほぼ同じサイズであること、街中にはアルファードが溢れていることを思えば問題ないだろう。

一応バックカメラとソナーはあるが、アラウンドビューモニターは無し。

車幅感覚を掴むのにもあまり役立たない。

パワートレイン

エリシオンプレステージの最大の目玉である3.5LのV6エンジン。

当初から「300馬力という大台に載せること」を念頭に置いて開発されたそうで、ホンダお得意のメカである。

始動時、発進時もクオンとV6特有の音を響かせてくれる。

その動力性能は本物で、2トンに迫る巨体がスイスイと加速し続ける。

空気抵抗や車体の重さなんて無いかのような加速力。

私の借りた4WDモデルは駆動系と排気系の干渉があったのか279馬力になるが、それでも充分すぎる。

速度の乗りはZN6のハチロク(200馬力/約1.2トン)と並ぶほどよく、160km/hくらいなら簡単に到達可能。

しかし日産のスカイラインやフェアレディZのような官能的な音や、シビックタイプRのようなブン周りを期待するのはオススメしない。

鳴り響く雑味のあるサウンド。

燃費があまりにも悪くネットで「NSXだ」とか騒がれたりしている割には、実物は恐ろしいほど速いということもなく、音や回り方もホンダのVTECに期待するだけのものは満たせない印象だ。

少なくとも300馬力オーバーの速いクルマに乗り慣れており、公道で300馬力オーバーのパワーをベタ踏みしまくっている私にはあんまりピンと来ない特性だった。

まぁ世間的にはミニバンとは思えぬ驚異的な加速性能となるわけであり、この加速を味わいながら思い切りアクセルを踏んでいる間だけは、燃費だとか維持コストだとか効率の悪さだとか、頭が痛くなるような話を忘れて居られる。

高回転型のセットになっているのか、逆に低回転域からの走り出しは少々重たく感じることがある。

5速ATに適切なキックダウンを行わせ、最低でも3500回転以上は回る様にするのがコツ。

ここで1つ不満を言うと、パドルシフトもマニュアルレンジもスポーツモードも無い

あるのはシフトノブについた3速指定ボタンと、Dの下の2速と1速のみ。

5速しかないATはワイドレシオ感や変速ショックが気になることは無かったが、せっかくのエンジンを楽しみたいと思った際にギアシフトがボトルネックになるのが残念だ。

アルファードではなくエリシオンを買う最大の理由は「走り」なのだから、全車標準搭載にしてくれても良かったのに…

ベタ踏み加速時に、「もう一個下のギアから加速を始めてくれればいいのに」と考えたり、エンジンフィールを味わう前に「いま何速に入ってるんだろ…」と考えたり。

外から見ているとあまり頼もしさの無いブレーキだが、その踏みごたえは良好。

直線の速さに見合っている。

踏み始めはフワフワ気味で快適性を損なわないが、踏んでいくとしっかり欲しいだけの性能力を出してくれる。

恐ろしすぎる燃費(リッター2.7kmを記録)

車を調達してから最寄りの高速道路に乗るまで、30分ほど渋滞が酷い市街地を走った。

30km/h程度でダラダラと走っては信号待ちにハマり、渋滞の中で長いこと待って数台分進んでまた信号待ちを繰り返す。

そんな渋滞主体の市街地走行をしていたところ、トリップメーターに表示された燃費の数値が2.7km/Lを記録していた。

驚愕するほど燃費性能である。

トヨタのハイブリッドならば、ああいう渋滞中はリッター30kmの燃費でさえも簡単に出せるのに…

なお高速道路や山間部での全開走行、燃費優先の帰り道などを含めた全区間燃費はリッター7km程度。

燃費ガン無視で楽しく走ったり、渋滞にハマったり、常識的&一般的なペースで街中と高速道路と山道を走ったりした全状況ごちゃまぜの実燃費なので、購入検討中の方も参考になる数値だろう。

※電卓と睨みあいっこしながら燃料代に頭を悩ませないといけない人や、エネルギー効率が悪いクルマが嫌いな人は本車に手を出すべきではない。

燃料コストだけ見ればおそらくフェラーリやランボルギーニと同クラス。バブル期のロマンカーみたいな感覚を持っておこう。

乗り心地・前後ダブルウィッシュボーンの足回り

エリシオンの第二の目玉といえば、前後ダブルウィッシュボーンのサスペンションだろう。

簡単に言えば「エアサスのようにパタッと動くアシ」となっている。

歩道から車道に降りるまでの縁石での段差や、ちょっとしたマンホールにコトっと落ちただけでも足回りがしなやかに動いてくれる。

というより「アーム類の配置が適切だから、四輪がのびのびと相互干渉をせずに動くできる」って感じの足回りである。

路面の継ぎ目で飛び上がるような入力を受けた時は足周りがコトン、パタっと動く。

エアサスでも入ってるんじゃないかって思うような軽やかなる動きで衝撃に対応してくれる。

コトンと衝撃自体は入ってくるんだけど、全然硬くなくて快適な乗り心地がゲットできてる

全速度域において快適な乗り心地。

走行安定性については軽快感に振っているところがある。

縮み方向でパタッと軽やかに動く足回り、重さを感じさせずにスイスイ加速して行くエンジン、しっかりと止まるブレーキ。

快適に振った足回りは、中央道で飛ばすには少々リスキーに感じるところがある。

段差を越えたときにハンドルが暴れるような動きが出たり、段差で飛び上がった後に減衰がダルいような動きが出たり。

全体的に減衰特性が少しダルいため、狂ったようにスピードを出したい人には不向きかもしれない。

減衰が締められる車高調への換装を検討しても良いくらいだ。

頂点での飛び上がりが大きく、そのまま下まで沈み込んで収束するような乗り味は突発的な上下動を抑える一方で、揺れの収まり感を少々弱くしているのである。

あくまで快適に移動するミニバンであろうとしている。

もう10年は過ぎているがゆえの経年劣化か、事故車を適当に起こした弊害なのか、段差を超えて衝撃が入った際に足周りの方でコトっと異音が鳴っているようだ。

修復歴のない個体を選ぶべきである。

ハンドリング

V6や前後ダブルウィッシュボーンに見合う軽快な旋回性能を期待したいところだが、実際は気持ちよく旋回時間の長いカーブを流すのが関の山となっている。

その理由はステアリングレシオと急旋回時のロール特性だ。

まずステアリングレシオ。

ハンドルの回転量のわりにフロントタイヤの舵角が切れてくれず、駐車場への出入りや交差点の右左折時はテンポがいまいち悪い。

また急ハンドルを切った際の動きは完全に安定性全振り。

フロントのアウト側のタイヤが突っ張ってギッチギチにロールと急激な姿勢変化を抑えるだけで、軽快な旋回特性は持たない。

急カーブをクイックに曲がるというよりは、入り口からじわーっとハンドルを切っていって、旋回時間を長く取るのが楽しむポイント。

YouTubeに転がっている、一昔前の画質が悪い車のインプレ動画にて山道のカーブをゆっくりクルージングしているシーンがあると思うが、あれくらいのペース感で走るのがちょうどよい。

諸元や価格など

後期型である。年式は2013年ごろ。

普通のエリシオンとプレステージの違い

項目エリシオンエリシオン プレステージ
コンセプトファミリー向け、爽やか・軽快高級志向、迫力・重厚感
デザイン丸みのある優しいフロント縦グリル+メッキ多めの豪華フェイス
主なエンジン2.4L(K24A)中心
一部3.0L(J30A)
3.5L V6(J35A)が主力
2.4Lも少数
走行フィール軽快で扱いやすいV6の余裕・静粛性が高い
内装明るめ・ナチュラル黒基調で高級感が強い
装備必要十分・コスパ重視豪華装備が多い(本革・高音質)
ライバル想定家族向けミニバンアルファード/エルグランドの直接対抗
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