物価高の影響か2025年末時点で新車価格260万円スタートであるmazda3、常軌を逸したデザインや恵まれた装備は今となっては新鮮味がないが、改めてその味を確かめていく。
今回はタイムズカーシェアで借りた。
冒頭のまとめ
1.5リッターの廉価モデルでも充分に満足できるが、動力性能や装備が万全ではないので300万円以上の上位グレードを勧める。
エンジンは必要充分な性能と楽しさ、経済性のバランスに優れており乗り心地も良好。
ハンドリング特性はクルマが自発的に曲がって行く動きが少々強いが、コシのあるリアサスや踏みごたえのあるブレーキゆえ良い手ごたえを持つ。
車内空間は廉価グレードではコストダウン感がありつつも、この価格にして追従クルコンやブレーキホールドを持つのは相変わらず嬉しい。
今となっては軽自動車の高次元化でコスパが良いというほどではなくなってしまったが、マツダの芸術性が詰まった良いコンパクトカーである。
外観・デザイン
価格帯やセグメントを忘れさせるデザイン。

評価を集めた割には街中であんまり見かけないのである。

内装
マツダと言えばコスパの良い内装だ!という認知があるが、さすがにエントリーモデルのエントリー寄りグレードでは苦しさを隠せない。


ハンドルはウレタンでありエアコンもマニュアル。

エアコンの物理ダイヤルが使いやすいのが救い。


静粛性とオーディオ
廉価寄りの立ち位置の車だが静粛性能については恵まれている。
この価格帯の車でありがちな「ゴー」というロードノイズが床下から響いてくることはない。
スピードを上げるとAピラーの辺りから乱気流のような風の音がしてくる程度で、スピードを上げてもあまり走行騒音は気にならない。
しかしオーディオについてはもう一声欲しいところ。
歌い出しの僅かな息遣いが感じ取れたり、低音の叩きつけや充分な音量があったりするため悪いわけではないのだが、音量を上げた際の鮮明さには弱いところがあり、中国車と勝負できるレベルにない。
2列目の居住性
程よい包まれ感と視界が両立している。
スペース自体もあるが、座面の角度が立っており腰の付け根が曲がるような感覚がある。
実走行インプレッション
取り回し
このmazda3、どうやらタイムズカーシェアでの事故率がトップらしい。
コンパクトカーなのになぜだと思っていたが、運転していると納得する。
車体自体は小さく小回りも良いが、外側に膨らんでいるようでキワが分かりづらい。
前は曲面ボンネットゆえどこまで寄れるかよく見えず、左右のフロントも曲面の向こうなのでよく見えず、両側面は足元すぎてよく見えず、左後ろは死角が多めで右後ろは良くも悪くもない。
狭いところで寄せる時に距離感を掴みづらいところがある。
ソナーとバックカメラはあるがアラウンドビューカメラは無し。

なんならプリウスより乗りづらく感じることも。
車体サイズが小さいから何とかなっている感は否めない。
しかし人間が丁寧に乗れば普通なので、結局は乗り手の注意力や意識がダメ。
ちなみにMTが選べるそうだ。
シフトノブの配置場所も良いため、このドラポジとエンジンフィールならマニュアルで操りたくなってくる。
パワートレイン
1.5リッターの自然吸気エンジンは大した出力を持たないが、走っていてそこまでの不満はない経済性とのバランスに優れるものとなっている。
抑えて巡航している際の燃費性能が中々に良好で、郊外主体のユーザーならわざわざハイブリッドに行く必要がないレベル。
自動追従式のクルコンも付いてくるのが嬉しい。
エンジンは111馬力しかないが、車重も1340kg程度と軽いのであまりパワー不足は感じない。
直線が充分に長ければ白点線追い越しも行えるレベル。
ある程度踏むとエンジンは回転数を上げるが、官能的に回るのでストレスがない。
むしろエンジンを感じながら気持ちよく走れる。
パワー不足が露骨に不満となるのは急な上り坂である。
例えば30km/h程度で2~3速で登っている際、加速力が欲しくてアクセルを踏み込んでも全く加速して行かない。
しびれを切らして奥まで踏むと、1速に落とされて4000回転オーバーのとんでもなく大きなエンジン音をまき散らす。
周辺の人からガン見されそうなレベルで大きいエンジン音が鳴る。
また高速道路の上り坂をクルコンで走行している際も、1000回転台では車速を維持できなくなった際に自動でシフトダウンがなされるが、設定速度や勾配次第で3500回転以上にあがることがある。
エンジン音がかなりうるさくなるため、そういうのがイヤならマニュアルモードで6速を指定してやる必要がある。
元のパワー不足が否めないが、悲惨なわけではないので充分。
巡行回転数は低く抑えられ、速度の乗りも悪くないので高速・長距離走行もそこまで苦ではない。
良好な空力特性や乗り心地、遮音性と合わせ、余裕をもってスピードを乗せていける。
新東名を140km/h程度で流すくらいなら余裕。
高速域でも風に振られたりフラつくことはない。
ハンドリング・運転の楽しさ
この車の走行性能には2つの目玉がある。
リアサスとブレーキだ。
この2つは600万円級のクルマとタメを張るくらいの手ごたえを持っている。

リアサスは「トーションビーム」という安いクルマの典型みたいな方式ではあるが、その動作は良好で価格帯を凌駕する踏ん張りを見せてくれるもので、グニャらずに質実剛健な下支えをしてくれる。
FF車でも旋回の立ち上がりに掛けてリア側に負荷を掛けていくことになるが、そうなった際にシャキッと瞬時に沈み切って反力を返し、車をイン側へと向けてくれるように動く。
ブレーキについても同様。
このクラスのコンパクトカーのブレーキと言えば、激しくノーズダイブしてリアは持ち上がり、前の二輪だけでABSを効かせながら強引に止めていくものが多い。
しかしmazda3は踏んでもあまりノーズダイブが起こらない。
踏力に対する制動力の出方も違和感がなく、踏み足していくとクイっと頼もしい制動力を出してくれる余殃になる。
前の二輪で抑え込むのではなく、四輪で沈んでいくような動き。
このあたりの動きについては拘りを持って開発が行われたそうだ。
少し強めにブレーキを踏むだけで良い味を感じることが出来る。
上記のポイントがmazda3のハンドリングの旨味である。
山道の急カーブでは、旋回の中盤以降に少しハンドルの回転量に対するフロントタイヤの舵角が不足気味になる動きが出る。
荷重コントロールで自発的に曲げて行くというより、道に合わせてハンドルを切って走っていくタイプ。
峠道でも運転は楽しめる。
急ハンドルを切ってもあまり傾くことはなく、地を這うような落ち着いている感じで曲がって行く。
リアサスの踏ん張りが効くため、登りの旋回時間を長く取れる急カーブでは、穏やかに臓器をえぐっていくようなコーナリングをしていくことが出来る。
コンパクトな車体サイズや軽いエンジンが活きているのか、瞬間的に急ハンドルを切ってイン側へと向けるとエンジンの重さで前を押し付けるようにスムーズに入っていく。
乗り心地
廉価グレードでは16インチにホイールサイズが抑えられる。
これによって生じるタイヤの厚みのクッションが良い乗り心地を提供してくれる。
欧州車コンプレックスを発動した一部のマツダ車は、ゴツゴツ硬いだけの不快な足回りを「欧州車のような質実剛健な走りだ」と誤認していることがあるが、mazda3については快適性とのバランスが充分に取れている。
極端に突き上げが硬かったり減衰がダルンダルンだったりキツすぎることはなく、ノンストレスで乗れる。
急に飛び上がったり、高速走行中に路面の高低差で高いところから低いところに行く都合でジャンプさせられた際などに上に持ち上がってしまったり、ドシンと底につくような衝撃が入ったり、瞬間的に下側に引っ張られるような動きを感じることがある程度。
良好な足回りを持つクルマだったらタイヤホイールの上下だけでパタッと消滅させそうな入力でも、人間が体感できるレベルの衝撃にしてしまっている感はある。
ちなみに高速走行中に段差と呼ぶほどでもないうねりを乗り越えた後なんかに、瞬間的にダルい動きが出ることがある。
快適性のためにあえて減衰を抜くようにセットしている可能性があるが、乗っていると一瞬だけアシがダルンダルンになる感じがある。
価格・諸元など
なぜか公式サイトの車体番号検索サービスがヒットしなかったが、おそらく230万円の「15S」最も安いグレードである。
グレードが上がるごとにスマートキーやオートエアコン、大きなホイールやLEDライト、革の内装などが装備されるようになっていく。
グレードごとの違い
MAZDA3 FASTBACK|グレード装備比較まとめ
項目 15S 15S Touring 20S Proactive 20S Proactive Touring 20S Burgundy Selection エンジン 1.5Lガソリン 1.5Lガソリン 2.0Lガソリン 2.0Lガソリン 2.0Lガソリン ホイール 16インチ 18インチ 18インチ 18インチ 18インチ エアコン マニュアル フルオート フルオート フルオート フルオート+上級 スマートキー / プッシュスタート なし(電波キーレス) あり あり あり あり ステアリング素材 ウレタン レザー レザー レザー レザー(上級) 安全装備 標準搭載 標準搭載 標準+追加装備 標準+追加装備 標準+最上位 内装質感 ベーシック 標準上位 質感アップ 質感アップ+快適装備 高級内装(バーガンディ革) 価格帯(参考) 最安 やや上 中間 上位 最上位 ※年式・特別仕様・オプションにより変動があります。
MAZDA3 ファストバックは、走行性能・安全性能・デザイン性を共通して高いレベルで備えていますが、装備面では15Sが最もシンプルで、上位になるほど快適性・質感・先進装備が充実します。
特に購入時の分岐ポイントとなる装備は以下の3点です:
- スマートキー&プッシュスタートの有無(15Sには非搭載)
- エアコン形式(15Sのみマニュアル)
- 内装ランク(ウレタン → レザー → バーガンディ)
MAZDA3|ボディ・エンジン・駆動方式ラインナップ比較
項目 15S 20S X (SKYACTIV-X) XD (1.8D ディーゼル) エンジン形式 1.5L ガソリン 2.0L ガソリン 2.0L 圧縮点火ガソリン 1.8L ディーゼル 最高出力イメージ ~110PS級 ~155PS級 ~180PS級 ~116PS級(高トルク) トランスミッション 6AT / 6MT 6AT / 6MT 6AT / 6MT 6AT / 6MT 適用ボディ ファストバック / セダン ファストバック / セダン ファストバック / セダン ファストバック / セダン 駆動方式 2WD(FF)のみ 2WD(FF)のみ 2WD(FF)/ AWD 2WD(FF)/ AWD 性格イメージ 街乗り・低燃費・価格重視 走行性能・バランス型 高効率・上質走行・最先端 長距離・燃費・経済性重視 ※年式・特別仕様により装備・選択可能駆動方式が変わる場合があります。
ボディ × パワートレイン × 駆動方式 対応表
仕様 ファストバック セダン 15S(1.5L) FFのみ FFのみ 20S(2.0L) FFのみ FFのみ X(SKYACTIV-X) FF / AWD FF / AWD XD(1.8D) FF / AWD FF / AWD